公開日:2024.09.18
この記事で
わかること
目次
日本では、少子高齢化や人口減少の影響で、「人手不足」を感じている企業は少なくありません。人手不足は、企業にとって優先的に対処しなければならない重大なリスクであり、国内企業の間で懸念が高まっています。
人手不足の深刻度合いは業界によっても異なるため、適切な対策を講じるには、自社の状況を正しく把握することが重要です。
本記事では、日本が抱える人手不足問題の背景や深刻な業界の現状とその理由、企業に及ぼす影響について詳しく解説します。
企業が採るべき6つの対策もご紹介しますので、人材不足が課題となっている経営層や人事担当の方は、ぜひ参考にしてください。
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資料をダウンロードする(無料)人手不足とは、企業が業務を行う上で必要な働き手が足りておらず、企業活動に支障をきたしてしまうことです。
企業が人手不足に陥ると、事業を拡大することが困難になります。また、既存の業務がひっ迫されてしまい、生産性が落ちる可能性もあります。そのため、人手不足は企業にとって、優先的に対処しなければならない、重大なリスクの一つです。
日本で人材不足を感じている企業は相当数あり、実際に、人手不足に悩む企業の割合は上昇傾向にあります。
帝国データバンクが発表した「人手不足に対する企業の動向調査(2024年1月)」によると、全業種の従業員の過不足状況について、正社員が「不足している」と感じている企業は52.6%、非正社員では29.9%に上り、コロナ禍以降、上昇が続いています。
また、日本銀行が毎年各企業に対して行っている、雇用状況の調査にも同じ傾向があらわれています。2024年3月に発表されたデータでは、雇用判断DI値※が2020年以降「不足」へと転じており、全産業で人手不足が悪化傾向にあることが明らかになりました。
※雇用判断DI値:労働者数について当期末と前期末を比較し、「増加」と答えた事業所の割合から「減少」と答えた事業所の割合を差し引いた値のこと。
なぜ、日本の企業では人手不足感が高まっているのでしょうか。
人手不足が起きている背景の一つとして、日本では少子高齢化・人口減少が進んでおり、生産年齢人口(15〜64歳)が減っていることがあげられます。
内閣府が発表したデータによると、1995年以降、生産年齢人口(15〜64歳)は減少しており、今後も減少傾向が続くと予想されています。
労働政策研究・研修機構による「2023年度版 労働力需給の推計」でも、上記と同様の予測が示されました。人々の労働参加が2022年と同水準で推移した場合、労働力人口※は減少すると推計されています(下図「一人当たりゼロ成長・労働参加現状シナリオ」)。
将来的にも生産年齢人口の減少が続くと見込まれるなかで、企業が今後も長期的に存続し、事業を成長させていくには、人手不足解消に向けてさまざまな対策に取り組む必要があります。
※労働力人口:15歳以上の人口のうち、就業者と完全失業者を合わせた人口のこと。
日本全体の傾向や背景について解説してきましたが、労働人口の減少以外にもさまざまな要因が影響し、人手不足が深刻な状況に陥っている業界も存在します。
人手不足が深刻な業界では、今何が起こっているのでしょうか。ここでは、近年特に人手不足が深刻となっている4つの業界を取り上げ、現状や背景、問題点について解説します。
建設業を営んでいる多くの企業が人手不足を感じています。
帝国データバンクが発表した「人手不足に対する企業の動向調査(2024年1月)」によると、建設業の69.2%の企業が正社員の人手不足を感じていることが明らかとなりました。
また、国土交通省が発表した「最近の建設業を巡る状況について【報告】」(2023年)によると、2022年の建設業就業者数は479万人で、1997年のピーク時(685万人)と比べて約200万人も減少しています。
さらに、2022年時点で、就業者の29歳以下が全体の11.7%であるのに対し、55歳以上が35.9%を占めるなど、人材の高齢化も進んでおり、次世代への技術継承も大きな課題です。
就業人口が減少している一方で、国内での建設需要は増加しています。日本建設業連合会(日建連)の報告によると、2023年度の国内建設受注額は17兆6646億円に上り、過去20年で最高額となりました。
建設業では、労働者数が減少しているのにも関わらず、国内での建設需要が高まっていることから、人手不足が深刻化しているのです。
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情報サービス(IT)業も、人手不足が顕著になっている業界の一つです。
情報サービス産業協会の「JISA-DI調査(令和6年3月期)」によると、情報サービス業において従業員の不足を感じている企業が、充足を感じている企業よりも74.0ポイント上回り、不足を感じている企業が圧倒的に多いことがわかります。
また、帝国データバンクによる「人手不足に対する企業の動向調査(2024年1月)」でもほぼ同じ傾向が見られ、業種別の人手不足割合では、建設業を上回ってトップとなっています。
情報サービス業の人手不足が顕著になっている背景として、DX需要が増加しているにも関わらずそれを担う人材の育成が追いつかず、結果的にIT人材の需給ギャップが拡大していることが挙げられます。
整理すると下記の表のようになります。
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背景 | 概要 |
---|---|
DX需要の増加 | 2018年、経済産業省が「DXレポート」を公表し、産業におけるデジタルトランスフォーメーションの必要性を訴えてきた。それに加えて、コロナ禍によりDX需要が顕在化し、国内のDX市場は増加傾向にある。 |
IT人材の不足 | DX需要の増加に対し、担い手となるIT人材は不足している。経済産業省が発表した「IT人材需給に関する調査(2019年)」によると、IT人材の需要と供給の差は2025年で36万人、2030年で45万人と試算されており、今後も人材不足が続くものと予想される。 |
近年、IoTやビッグデータ、AIなど、「第4次産業革命」と呼ばれる技術革新が急速に進んでいます。今後も国内のIT市場は拡大していくと見られ、IT人材の不足は依然として続くものと考えられます。
製造業も、人手不足の傾向が高まっている業種です。
厚生労働省が公表した「2023年版ものづくり白書」における「中小企業における産業別従業員数過不足DI※の推移」を見ると、2011年以降、従業員の不足感が強まっています。コロナ禍では数値が回復傾向にありましたが、2022年では以前の水準に戻りました。
さらに、同上の「2023年版ものづくり白書」によると、約20年間で製造業の就業者数は158万人減少、若年就業者数は129万人減少していると発表されています。その一方で、高齢就業者の数は32万人増加していると報告されており、就業年齢の高齢化が顕著です。
また、能力開発や人材育成に関する問題点として「指導する人材が不足している」と回答した事業所が6割を超えており、製造業では人材育成も大きな課題となっています。
※従業員数過不足DI…調査日時点の労働者数について、「不足」と答えた事業所の割合から「過剰」と答えた事業所の割合を差し引いた値のこと。
厚生労働省が公表した「令和5年上半期雇用動向調査結果の概況」によると、2023年6月末時点の「卸売業、小売業」の未充足求人数※は25万5200人と高い数値を示し、「宿泊業、飲食サービス業」に次ぐ2位となりました。
小売業のような店舗型ビジネスで人手不足が深刻化している背景には、休日の取得しにくさや長時間労働、低賃金などがあると指摘されています。
スーパーやコンビニエンスストアでは年中無休の店舗も多く、従業員にかかる負担が大きくなりがちです。その結果、なり手が少なく、募集に対して十分な応募が集まらない状況に陥っていると考えられます。
このような問題を解決するため、小売業では、ICT活用や賃金の是正、労働環境の整備といった対策が急がれています。
※未充足求人数:仕事があるにも関わらずその仕事に従事する人がいない状態を補充するために行っている求人数のこと。
ここまでで、日本全体の人材不足問題や、業界ごとの現状について解説してきました。ここからは企業に焦点を当て、企業がなぜ人手不足に陥ってしまうのかについて、原因を解説します。
ここで紹介する内容は、多くの企業や業界に関連するため、ぜひ参考にしてみてください。
企業が人材不足に陥る原因の一つとして、産業全体で人材の需要と供給にギャップが生じていることが挙げられます。
「人手不足が深刻な業界の現状とその理由」で取り上げた建設業や情報サービス業などがこのケースに該当します。市場の拡大が続いている一方で、若手人材の流入や人材育成が追いついていないため、業界全体が慢性的な人手不足に陥っているのです。
人材の需要と供給にギャップが生じると、優秀な人材や即戦力となる人材を企業間で取り合うこととなり、人材獲得競争が苛烈化するため、各企業の人材確保が難しくなります。
このような場合、各企業は人材獲得競争で他社に勝つために、採用戦略を見直す、労働条件を改善し魅力度を高めるといった対策に取り組む必要があるでしょう。
労働環境が整っているかどうかは、労働者にとって重要な要素であり、企業の魅力度や採用力に大きな影響を与えます。人材不足に悩んでいる企業のなかには、労働者が労働環境に不満を抱いていることが原因で、若手や新規人材の流入不足や、従業員の離職を招いているケースもあります。
労働環境が過酷であったり、給与や福利厚生が不十分であったりすると、働きたいと考える人は少なくなるでしょう。また、既存社員のモチベーション低下や離職のリスクも生じます。
結果として、新規人材の流入不足と既存人材の流出という二方向から、人手不足が深刻化してしまうのです。
人手不足は、深刻化すると会社の存続にも影響する大きな課題です。ここでは、人手不足が企業に及ぼす主な影響や問題について、以下の3つの観点から解説します。
人手不足により従業員一人当たりにかかる業務負担が増えると、残業時間が増えたり有給休暇の取得率が低下したりするなど、労働環境が悪化してしまいます。
現場が業務過多になり、従業員の肉体的・精神的負担が増えた場合、モチベーションの低下や従業員の健康被害などを招くおそれがあります。最悪の場合、従業員の離職へとつながり、人手不足がさらに深刻化するでしょう。
人手不足により、商品やサービスの生産・製造に関わる部門へ人材を十分に配置できなくなると、企業としての生産力が低下してしまいます。
また、ルーティン業務を回すので精一杯となり、企業の中長期的な成長のために必要となるコア業務に人員を割けなくなると、マーケティングや事業開発が滞り、競争力低下につながるおそれがあります。
人手不足が深刻化し、生産体制を整えられなくなると、企業は受注の抑制を検討せざるを得なくなるでしょう。その結果として、利益の低下や事業縮小につながり、最悪の場合は債務超過による倒産の危機に直面するリスクも考えられます。
実際に、人手不足による倒産は増加しています。帝国データバンクが公表した「人手不足倒産の動向調査(2023年度)」によると、従業員の退職や採用難、人件費高騰などに起因する「人手不足倒産」は2023年度に過去最多を更新しました。
特に中小企業は、賃金面などで大手企業以上の高待遇を示すのが難しいため、新規人材の獲得において、かなり厳しい状況を強いられています。
事業縮小や倒産を回避するためにも、人材不足に悩んでいる中小企業は、早急に人材不足の解消に向けて取り組む必要があります。
人材不足解消の対策をトータルでご提案!
詳しくはこちら人手不足の解消に向けて、企業はどのような対策に取り組んでいけばよいのでしょうか。ここでは企業が採るべき対策として、以下の6つをご紹介します。
なお、このなかのどれか一つに取り組めばよいのではなく、複数の対策を組み合わせながら効果を高めていくことが大切です。
人手不足を解消するために、まずは自社の労働条件を見直し、改善を図りましょう。具体的には、他社よりも給与を高くしたり、休日を取りやすくしたりするといった対策が挙げられます。
また、労働条件は給与に限ったことではありません。近年では、リモートワークに対応できることや育休が充実していること、出産後も働きやすいことなども重視されています。
労働条件を見直し、よりよい環境へ改善できないか、さまざまな側面から検討してみましょう。
人員に対する業務量が適切でなく、一人当たりの業務負担が大きい場合、従業員の離職リスクが高まります。
せっかく採用した人材が早期離職してしまうと、また新たに採用費をかけて人材を雇用し、研修の時間を取らなければならなくなるため、企業にとっては大きな損失となります。そのため、業務配分を見直し、適正な業務量になるようマネジメントすることが大切です。
また、従業員が働きやすいようにオフィス環境を整えるなど、魅力ある職場づくりも意識しましょう。例として、コミュニケーションツールの活用があげられます。リモートでも業務について相談・共有しやすい環境を用意することで、働きやすさの向上が期待できます。
「人員を増やしたいが、予算などの関係で正社員での人材採用が難しい」といった場合には、アウトソーシングや人材派遣などで、専門スキルのある人材を活用する方法が有効です。
たとえば、建設業は案件の受託状況によって必要な人材が変動しやすいため、常に多くの人材を雇用しておくのが難しい場合もあるでしょう。そういった場合には、業務委託などを活用し、期間限定で専門人材に稼働してもらう方法がおすすめです。
また、バックオフィス部門は年末調整や決算の時期に業務が集中しやすく、繁閑の差があります。経理や人事などの専門職も、アウトソーシングや人材派遣を活用すれば、人手を確保しやすくなり、繁忙期の業務負荷を軽減できるでしょう。
募集に対して応募が来ないという悩みがある場合には、採用戦略そのものを見直す必要があります。また、採用のミスマッチを減らすために、そもそも自社にフィットする人材像はどのような人物なのか、明確にする必要もあるでしょう。
採用戦略においては、マーケティングの考え方を採用活動に応用した、「採用マーケティング」に取り組むのも有効です。応募者は何を求めているのか、競合他社はどのように打ち出しているのかを明確にして採用活動を行うことで、自社に合った人材にアプローチしやすくなり、入社後のミスマッチを減らすことにつながります。
また、人材の早期戦力化や離職防止のため、採用戦略に合わせて育成戦略を見直すことも大切です。採用した人材が安定的に成長できる体制を整え、組織への定着を促しましょう。
離職防止のための社員教育をご提案!
詳しくはこちら人材不足を解消する上で、ITツールやロボットによる業務効率の改善も有効です。
たとえば、クラウドの経費精算システムやテレビ会議システムのようなITツールを導入すれば、業務効率を高められるほか、リモートワークの推進にもつながります。
また、建設業などではネットワークカメラを導入し、現場に赴くことなくリアルタイムで施工状況を確認できるよう、遠隔臨場に取り組んでいる企業もあります。飲食店であれば、ロボットに配膳などの業務を任せることで、少ない人員でも効率よく店舗運営ができるでしょう。
ITツールやロボットの活用により業務を省力化・自動化することで、従業員の負担軽減や生産性の向上につながります。自社内の業務のなかで、ITツールやロボットを導入できる業務はないか、ぜひ検討してみてください。
日本の企業では、電子サインなどが少しずつ普及しているものの、まだまだ紙の書類や押印文化が根強く残っています。これらをデジタルに変えて脱アナログ化することで、業務の効率化や従業員の業務負荷の軽減につながります。
たとえば、契約作業に必要だった押印や郵送を電子化することで、手間が軽減されるほか、契約のタイムスパンを短くすることが可能です。さらに、印紙代や郵送代などが不要になるため、コスト低減の効果も期待できます。
また、紙の書類から情報を転記しなければならない作業は、AI-OCR(AIで文字情報をテキストデータ化できる技術)と、RPA(パソコン上で行われる作業を自動化できる技術)を組み合わせれば、大幅に効率化できます。
自社内に紙文化が根強く残っている場合、「デジタル化できるアナログ作業はないか」「デジタル技術でさらに業務効率化できる業務はないか」などを検討してみましょう。
人手不足が国内で深刻化してきていますが、深刻度合いは業界によっても異なっています。たとえば、情報サービス業や建設業では、人材の担い手が不足している一方で、業界の市場は拡大傾向にあるため、業界全体で慢性的な人手不足が続いています。
企業の人手不足解消に有効な対策は、労働環境の整備や採用戦略の見直し、ITツールやロボットの導入、DX化などです。効果を高めるためには、複数の施策を組み合わせる必要があります。
しかし、人材不足への対策にうまく取り組めておらず、課題の改善が進んでいない企業もあるでしょう。
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