公開日:2022.03.22
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日本は「災害大国」と呼ばれるほど、さまざまな自然災害に見舞われています。中でも、1995年1月17日に起きた「阪神・淡路大震災」では、死者が6,000人以上、負傷者は4万人以上もの被害が出ており、NPO法人やボランティア団体による支援を受けて、災害復興を行いました。
加えて、今後30年の間に高い確率で発生するとされている「南海トラフ地震」と「首都直下地震」では、これまでにない被害規模が予測されており、「若い世代への防災教育」や「災害に強い街づくり」などの活動が、政府により促進されています。
近年、教育や福祉における「社会貢献活動」が世界的に注目されています。「企業イメージの向上」をめざすCSRだけでなく、NPO法人などの「非営利」事業という市場への期待が大きいためと推測されます。
今回の記事では、社会貢献活動を主事業とする「NPO法人」について、メリット・デメリットや具体的な設立手順を解説します。
参考:「国土交通省|近年の災害ダイジェスト版」
(https://www.gsi.go.jp/chirijoho/chirijoho41067.html)
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NPO(Non-Profit Organizationの略記)法人は、1998年12月に施行された「特定非営利活動促進法」によって制定された法人です。特定非営利活動促進法は、非営利活動の中でも、特に「社会貢献活動」の発展を推し進める目的で施行されました。
2021年6月には「改正NPO法」が施行され、「収益基盤の強化」や「認定制度」の見直し、提出書類の削減などが行われました。こうした優遇措置の制定や制限緩和を背景に、NPO法人数は5万件を越え、多くのNPO法人が活動範囲を国内外に広げています。
NPO法人には、「認定」や「法人格」の有無などによって、4つの種類があります。
ここでの任意団体とは、「法人格のない社団あるいは財団」のことで、単なる個人の集まりではなく、団体として統一された意思決定のもと、活動を行う団体を指します。NPO活動は、ボランティアを主として活動する場合に限り、「法人格」がなくとも活動できます。残りの3つは法人格を有しており、「非営利活動」に限って、収益事業が許されています。
NPO法人の前に、「認定」あるいは「特例認定」と名称がつく場合、国の審査を受けることで税制上の優遇措置を受けているということを表しています。加えて、設立から5年以内のNPO法人を対象とした「特例認定NPO法人制度」を利用することで、PSTの免除と、一回に限り税制上の優遇措置を受けられます。
参考:「内閣府|NPO認定制度について」
(https://www.npo-homepage.go.jp/about/npo-kisochishiki/ninteiseido#karinintei-npo)
NPO法人の活動内容は、約20種類の「特定非営利活動」に制限されています。また、特定非営利活動は、不特定多数の利益につながる分野が指定されており、代表例は以下の通りです。
NPO法人の活動は、特定非営利活動が原則ですが、資金や運営費を確保するために、主たる活動に支障がない限り、特定非営利活動以外の事業を行うことができます。
NPO法人の資金源は、主に4つに分けられます。
上記の通り、NPO法人の活動は「非営利」であることが義務付けられています。しかし、余剰収益を次の事業計画の資金に充てることができるほか、寄付金制度や減税措置が法整備されています。
注意点としては、助成金や補助金といった「公的機関や民間団体からの援助金」は、用途の報告義務や厳しい申請基準や審査が用意されていることが多く、会計検査を実施される場合があります。
参考:「J-Net21|補助金・助成金の違いや補助金活用における注意点について」
(https://j-net21.smrj.go.jp/qa/financial/Q1339.html)
参考:「P-Tips|補助金と助成金、給付金の違いとは?」
(https://pca.jp/p-tips/articles/fl210101.html)
NPO法人と一般企業では、取り扱う事業が異なります。NPO法人は、上記で述べた「特定非営利活動」を主業務としており、一般企業は「営利目的の事業」を主業務としています。法人における「営利」とは「収益をあげる」ということではなく、「事業で生まれた余剰収益の分配」です。
NPO法人と一般社団法人は、共通して「非営利活動」を主業務としていますが、NPO法人は中でも制限の強い「特定」非営利活動を主業務としています。また、NPO法人は、一般社団法人に比べて、設立に時間がかかります。
NPO法人の事業には制限がかかる一方、資金調達の手段が豊富などの利点があります。しかし、国内には、5万件以上のNPO法人が存在しており、競業他社が非常に多いという懸念点があります。現在、「DX」が国によって推し進められており、事業へのIT導入と業務効率化が、法人の設立・運営の成功の鍵です。
NPO法人の設立と共に、情報通信技術やクラウドサービスの導入を検討されている方は、ぜひ以下の資料を参考にしてみてください。
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詳しくはこちらNPO法人の設立には、メリットが複数あります。一般社団法人や財団法人といった、他の法人にも共通するメリットだけでなく、NPO法人のみに適応される優遇措置があります。
NPO法人には、さまざまな税金が課されています。しかし、NPO法人の目的が「社会的利益」の追及であることから、各税目に軽減措置や免除といった法整備が行われています。主な税金は以下の通りです。
NPO法人は、「特定非営利活動」に分類される事業には、法人税が課されません。つまり、会費や入会費といった収入に対する課税が免除されています。加えて、NPO法人の主な資金基盤である「寄附金」制度が是正され、最高控除率が50%ほか、寄附金に対する控除方法が選択できるようになりました。
参考:「内閣府|内閣府NPO主な制度改正」
(https://www.npo-homepage.go.jp/about/seidokaisei-keii/seido-kaisei)
NPO法人は、任意団体とは異なり、非営利ですが「法人格」を有しています。よってBtoB領域への進出が容易であるというメリットがあります。加えて、社会的な信用が高く、人材を雇い入れやすくなっています。人材の雇い入れに伴い、事業規模の拡大や、組織だった事業展開が可能になります。
また、NPO法人は、一般社団法人や株式会社と同様に、労災保険や雇用保険への加入が可能です。雇用が可能であると同時に、雇用者としての責務が存在することに注意が必要です。
NPO法人は、法律によって「利害関係人への書類の公開」と「貸借対照表の公告」が義務付けられています。
利害関係者へ公開する書類は主に「事業報告書」「役員名簿」「定款」の3種類です。どれも機密性の高い書類であり、これらの公開によって、NPO法人は法人運営の健全性を保証することができます。
また、貸借対照表は、「官報」「日刊新聞紙」「電子公告」のいずれかの方法で作成後速やかに公開する必要があり、公的機関や法人、企業だけでなく一般市民の閲覧が可能となっています。事業の透明性と投資基準ともなり得るため、資金集めや事業拡大に重要な制度となっています。
参考:「e-GOV法令検索|特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)」
(https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC1000000007)
NPO法人を設立する際、登録免許税法第2条の対象外であるため、申請に手数料が発生しません。加えて、最低資本金制度がなく、定款作成に関する費用がかかりません。必要な費用は印鑑の用意や住民票請求などにかかる諸経費のみです。ただし、設立を専門家などに依頼する場合は、別途手数料が発生します。
上記でご紹介した補助金や助成金を通して、NPO法人を支援する民間団体が増えています。法人の中でも、NPO法人のみを対象とした資金援助が増えており、上手く活用することで、円滑な法人運営を行えます。
近年、国や地方自治体による「福祉や医療といったセーフティネット」の限界が取り沙汰されています。業務委託による人材や事業の拡充が図られており、事業分野において重なる部分が多いNPO法人との連携が重要視されています。
NPO法人の設立にあたり、懸念点がいくつかあります。懸念点を設立前に把握することで、最悪の場合、法人の維持に支障をきたすリスクを回避することができます。
NPO法人の設立に必要な期間は、約3ヶ月です。他法人の設立に比べて、国民による精査や認可が必要なため、時間がかかります。申請には以下の通り3つのステップがあり、公正性を保証するために期間が設定されています。
「縦覧」とは、市民に自由に閲覧してもらい、申請が妥当であるかを点検する作業です。インターネット上あるいは公報へ「申請状況」「申請年月日」「特定添付書類」が掲載されます。株式会社などの営利法人の場合、定款作成などの事前準備によりますが、約2週間で設立することができます。注意点として、NPO法人は、認証日から6ヶ月以上経過しても登記を行わない場合、認証を取り消される可能性があります。
NPO法人は、定款や事業計画書、設立趣旨書といった添付書類を申請時に提出する必要があります。定款や活動趣旨書には、先に紹介した「特定非営利活動」を主たる活動として記載しなければなりません。加えて、「公益性」が非常に重要であり、非常に厳しい審査が行われます。
NPO法人は事業年度ごとに一回、事業報告書を所轄庁(法人の認証や監督を行う行政機関)に提出する義務があります。同様に、収支計算書や社員名簿の提出を行います。
一般企業や他法人に比べて、NPO法人の定款の変更に関する手続きは複雑な上、厳格な審査が伴い時間がかかります。申請前に社員総会の議決が必要な他、事業計画書や活動予算書の提出が必要です。
参考:「内閣府|NPO認定制度について」
(https://www.npo-homepage.go.jp/about/npo-kisochishiki/ninshouseido)
NPO法人は、「事業報告書等の作成」と「事務所への備置きと公開」の義務があります。正確には、毎年、事業年度開始から3ヶ月以内に、事業報告書等(前年度の事業報告書、計算書類、財産目録、年間役員名簿)を作成し、約5年間、全ての事務所に備え置くことが義務付けられています。
参考:「e-GOV法令検索|特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)」
(https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC1000000007)
NPO法人の設立は、主に「申請前の事前準備」と「国や国民による審査」「認証後の届け出」の3つに大別できます。複数回に渡って細部まで練られた定款や、法人印の用意といった事前準備が、スムーズな許認可を実現します。
NPO法人の認証基準は、法律によって規定されています。申請基準は以下の通りです。
基準の根底は、「公益性の確保」であり、上記以外にも、役員報酬や公職者に関する規定が行われています。
参考:「e-GOV法令検索|特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)」
(https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC1000000007)
NPO法人設立の主な手順は、以下の通りです。
「設立発起人会」とは、「事業・設立目的」「申請スケジュール」といった法人設立に関する議論を行う組織です。また、設立発起人会にて作成した法人の基本方針や定款の承認を「設立総会」にて行います。
設立総会の議事録や定款といった申請に必要な書類作成が完了した後、国による審査を受けます。約3ヶ月の審査後、審査に問題が無ければ「認証書」が交付されます。認証書交付日から2週間以内に法務局へ、設立の登記を行います。
注意点としては、登記後、「設立登記の証明書」と「財産目録」を所轄庁に届け出る義務があります。加えて、事務所が所在する全ての地域でそれぞれに登記が必要です。
参考:「内閣府|NPO認定制度について」
(https://www.npo-homepage.go.jp/about/npo-kisochishiki/ninshouseido)
法人設立後、事務所が、実務を行う上で必要となります。現在、クラウドサービスの発展と共に、SaaSやPaaSを利用したバックオフィス業務が普及しました。加えて、新型コロナウイルス感染症の影響や働き方改革によって、テレワークを導入する法人が増加しています。
NPO法人の実務に関する環境構築は、専門知識やノウハウが必要です。NPO法人の設立やITの導入について詳しい情報はこちらからご覧ください。
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詳しくはこちらNPO法人は、「社会的利益」の追及のために設立される「非営利活動法人」です。日本は、自然災害が多発する「災害大国」と呼ばれており、今後、歴史上に類を見ない大規模な災害が起こると予測されています。国や地方自治体の手の届かない分野にて、社会的役割を期待される法人です。
他の法人や一般企業と異なり、「社会的な信用が高い」「公的機関と事業範囲が似ている」といった特徴があります。NPO法人は、事業展開に制限がかかるほか、設立に時間がかかるといったデメリットがある一方、「補助金制度などの資金調達方法が豊富」「資本金や出資金が必要ない」といった恩恵があります。
また、NPO法人の設立には、細かな手順があります。設立条件として重要な点は「事業の公平性や公益性が保障されている」ということです。今回の記事では、必要な申請書類や申請後の細かな手順について解説しました。これから設立を考えられている方は参考にしてみてください。
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監修
税理士法人V-Spiritsグループ代表 税理士・社労士・行政書士・FP
中野 裕哲
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。 税理士法人V-Spiritsグループ代表。年間約1000件の起業相談を無料で受託し、起業家や経営者をまるごと支援。経済産業省後援 起業経営支援サイト「DREAM GATE」で12年連続相談数日本一。 著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)など20冊、累計25万部超
V-Spiritsグループ Webサイト