公開日:2022.03.22

この記事で
わかること
目次
資本金とは株式会社設立の際に必要な資金であり、株主や投資家が出資したお金です。また、資本金を活用すると、事業を円滑に進められます。資本金は下限額がなかったり、信用度につながったりと特徴や役割があるため、事業を行う上で、資本金の知識は必須です。
しかし、資本金はいくら必要なのか、税金とはどのような関係があるのかなど気になるでしょう。ほかにも、メリット・デメリット、注意点なども気になります。今回の記事では、資本金に必要な金額や税金との関係、増資・減資などを説明します。資本金についての基本がわかるので、会社の設立を検討している方は必見です。
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株式会社を設立する際の資本金とは、株主や投資家が会社に出資するお金のことを指します。資金が必要になった際、株主や投資家から調達した資金は、資本金に分類されます。資本金は事業を行うための元手となります。資本金を活用することで、事業を円滑に進められるでしょう。
ただし、外部から出資を受けられるのは、将来的な株式上場など、成長が期待される事業に限られるのが一般的です。多くの場合、無理のない範囲で自己資金を投じているとされています。
決算書での資本金の扱いは、貸借対照表の純資産の部に計上します。純資産とは返す必要のない資金です。一方で、返す必要のあるお金とは、借入金のような負債です。資本金は返済義務がないので、経営の安定化につながりやすいでしょう。
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詳しくはこちら資本準備金とは、株主から出資された資金の中で、資本金として計上しなかった資金を指します。会社法では、出資を受けた総額の1/2を超えない額を、資本準備金として計上することを認めています。
資本準備金は資本金と異なり登記の必要がありません。そのため、金額の増減に伴う変更登記の申請や登録免許税は不要です。取り崩しも、債権者保護手続きと株主総会での普通決議で可能になります。この性質から、将来の損失や支出のための備えとして活用されることが多く、企業の財務安定性を高める役割を果たします。なお、資本準備金は株主への配当原資としての活用はできません。
資本剰余金とは、株式会社が株式発行などの資本取引を行った際に発生する剰余金から、利益剰余分を引いた金額のことです。資本金と資本準備金は、株主への配当原資にはできませんが、資本剰余金はそれが可能です。資本金と資本準備金を配当原資にするには、債権者保護手続きや株主総会での決議を経て、資本剰余金にしなければなりません。資本剰余金も登記の必要がなく、企業の財務状況を補完する役割を果たします。

資本金の特徴と役割は「資本金は1円から可能」であることと、「資本金は会社の信用度」になることです。この章では、資本金の限度額があるか、資本金額が会社の信用度となる理由は何かなどがわかります。
資本金は1円から設定することが可能です。これは、2006年の会社法の改正で定められました。近年、インターネットやIT技術の進歩で、事業形態が大きく変化しています。そのため、比較的少ない資金で起業できるケースが増えました。
以前は会社形態によって、資本金の下限額が決まっていましたが、近年の事業形態の変化に合わせて改正されました。
先述のとおり、資本金は1円から可能です。しかし、資本金の大きさが、会社の信用に影響する可能性があります。ビジネスでは資本金が多いほど、会社の信用が得られやすいという傾向があります。会社によっては、取引先候補の相手会社の資本金を、履歴事項全部証明書などで確認し判断する場合があるでしょう。このことから、取引先がある場合は、相応の金額を資本金として用意する必要があります。

資本金をいくらに設定するか決める際に、考慮すべきポイントは「開業時の資金を準備する」「取引先からの見え方を基準にする」です。必要な資金は、業種や取引先の有無によって変わります。詳しく紹介していきます。
資本金は開業時の設備資金と運転資金を準備すると良いでしょう。これは、特に運転資金はしばらくの間売上がなくても、事業を続けられるようにするためです。はじめの3ヶ月は、売上が少ない可能性が大いにあります。そのため、仕入れ・設備などの初期費用に合わせて、3ヶ月分の運転資金と設備資金を準備しておきましょう。なお、開業に関わる資金は全てを資本金で賄う必要はありません。多くの場合は融資と合わせて調達します。
資本金は取引先からの見え方を基準にします。先述のとおり、資本金は信用度につながるからです。大手企業の場合は、資本金額で取引先を選定する場合があります。反対に取引先が少ない場合は、資本金が少なくても問題ないでしょう。取引先があるかどうかで、資本金額を決めるのも一つの方法です。

資本金の平均額は300万~500万円です。令和3年経済センサス活動調査によると、資本金3,000万円未満の法人が占める割合は91.1%と最多です。中でも、300万~500万円未満に属する企業の割合が33.2%と、最も多いのがわかります。資本金は信用度につながるので、取引先がある場合は300万円以上を基準額にしましょう。
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| 資本金階級 | 企業数 | 割合(%) |
|---|---|---|
| 300万円未満 | 200,501 | 11.5 |
| 300万~500万円未満 | 578,882 | 33.2 |
| 500万~1,000万円未満 | 253,148 | 14.5 |
| 1,000万~3,000万円未満 | 555,646 | 31.9 |
| 3,000万~5,000万円未満 | 72,933 | 4.2 |
| 5,000万~1億円未満 | 52,126 | 3.0 |
| 1億円以上 | 30,930 | 1.8 |

株式会社設立時における資本金払い込みの方法は次の3ステップです。
それぞれについて、詳しく解説します。
株式会社設立時は法人登記前なので、会社名義の銀行口座は作成できません。そのため、発起人個人の銀行口座を用意しましょう。発起人が複数いる場合は、代表者(発起人総代)を決めて、その方の銀行口座を利用します。
銀行口座は、新規に作らなくても既存の普通預金口座で問題ありません。国内の銀行であれば、ネット銀行を含め、すべての銀行を使用可能です。銀行口座の用意ができたら、実際に資本金の払い込みをしますが、この時に注意すべきは「入金」ではなく「振込」をすることです。
株式会社設立時は設立事項によって、各発起人の出資額が決められています。振込をすることで、誰がいくら払い込みしたか明確に記録されるため、資本金の出資を証明できます。発起人が単独のケースでは入金でも問題ありません。
資本金の払い込みが完了したら、それを証明するために通帳のコピーを作成します。記帳を行った後で「通帳の表紙」「表紙裏」「振込内容が記載されているページ」のコピーを取りましょう。
金融機関名、支店名、口座番号、口座名義などの情報が重要で、一般的には表紙裏に記載されています。お持ちの通帳がそうなっていない場合は、該当箇所のコピーを取ります。また、取引日や取引金額が明確にわかるかも、しっかりと確認しましょう。
インターネットバンキングで通帳がない時は、取引明細をプリントアウトし、必要な情報が含まれているかを確認します。いずれの場合も、振込日や金額、氏名の項目にわかりやすいよう、マーカーで印をつけておくと親切です。
最後に、資本金の払い込みを証明するための「払込証明書」を作成します。払込証明書には以下の7項目が必要です。
「払込金額の総額」「払い込みがあった株数」は定款に記載されている数字をそのまま記載しましょう。「1株当たりの払込金額」は「払込金額の総額」÷「払い込みがあった株数」で計算した数字を記載します。
「日付」には資本金が振り込まれた日付を記載します。もし、複数回の払い込みがある場合は、最も遅い日付を記載しましょう。「会社本店の所在地」「会社名(商号)」は、設立事項に定めたものをそのまま省略せずに記載することが大切です。
これらの項目に加えて、会社代表印の押印が必要です。場所は、払込証明書の左上と代表取締役氏名の右側の2か所です。通帳のコピーと合わせて保管しておきましょう。

税金との関係を考えると、資本金額の決定には十分な考慮が必要です。資本金をいくらに設定するかで、税金がどの程度抑えられるかが決まります。税金の種類は以下のとおりです。
資本金と税金の関係について、詳しく見ていきましょう。
消費税は1期目や2期目の期首の資本金が1,000万円以上であれば、課税事業者に認定されるため、初年度から納めなければなりません。また、1,000万円未満の場合は、初年度の消費税は免除されます。
加えて、2年目は前年度の期首から6ヶ月の期間の課税売上高が、1,000万円以下または給料の支払い合計額が1,000万円以下であれば消費税が免除されます。ただしインボイス制度により、適格請求書発行事業者の登録を行った場合は、資本金額や基準期間の売上や給料支払い額に関係なく消費税が課税されます。
法人税は資本金が1億円以下であれば、法人税率の一部を軽減できます。資本金が1億円以下は、中小企業とみなされるからです。また、令和2年の4月時点では、資本金1億円以下の場合、年間所得が800万円以下の企業にかかる法人税率は15%です。法人税は資本金が1億円の場合、有利にビジネスを継続できます。そのため、法人税についても考慮しながら、資本金額を検討しましょう。
地方税は、都道府県及び市町村に支払います。資本金が少ない場合は、軽減措置を受けられます。これは資本金額によって、地方税率が調整される仕組みによるものです。例えば、軽減措置の均等割を受けると資本金額1,000万円以下の会社は、少ない税負担で済みます。ほかにも、資本金額が1,000万円以上1億円以下の場合は、一定の軽減税率が適用されます。軽減措置も考慮しながら、資本金額を検討しましょう。
登録免許税は会社設立の登録をする際に、必要な税金です。資本金額によって、納める金額が変わります。
株式会社の場合
150,000円もしくは資本金額×0.7%の、どちらか高い方です。約2,140万円以下の場合は、登録免許税は一律150,000円です。
登録免許税も考慮しながら、資本金額を検討しましょう。

資本金の増資と減資の、メリット・デメリットをご紹介します。どちらにもメリット・デメリットがあるので、企業にとって何を優先すべきか考慮して決める必要があるでしょう。増資や減資を行うことでメリットがあるように思えても、場合によっては「優遇措置を受けられなくなる」「信用度が低下する」といったリスクが生じることがあります。
増資のメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット
1)財務基盤を強化
2)信用度が増す
デメリット
1)既存株主にとって不利益
2)税務上の優遇措置が受けられない
増資のメリットとデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
資本金増資のメリットは、2点あります。
1)財務基盤を強化
資本金が増えることにより、決算書上の純資産が大きくなります。これによって、自己資本比率が高まり、企業の財務基盤を強化できる仕組みです。
2)信用度が増す
1)に関して資本金が大きくなると、他社や金融機関からの信用度が増します。このことから、融資を受けやすくなったり、大手の取引が入ったりするなど、恩恵を受けられる可能性があります。
資本金増資のデメリットは、2点あります。
1)既存株主にとって不利益
新たな株式を発行して増資すると、1株当たりの利益・議決権の割合が小さくなります。そのため、既存株主に対して、不利益をもたらす可能性があるでしょう。
2)税務上の優遇措置が受けられない
消費税・法人税における、優遇措置の条件である資本金を超えると、増資した後の税負担が増える可能性があります。
減資のメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット
1)繰越欠損金との相殺が可能
2)税務上の優遇措置が受けられる
デメリット
1)信用度の低下
2)手続きが煩雑でコストもかかる
減資のメリットとデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
資本金減資のメリットは、2点あります。
1)繰越欠損金との相殺が可能
経営状況が良くない場合、過去の赤字は繰越欠損金として決算書に表記されます。こうなると、融資を受ける際に悪影響を及ぼしてしまいます。ただし、減資によって取り崩した資本金と、繰越欠損金を相殺することで決算書の表面を良くできます。
2)税務上の優遇措置が受けられる
税務上での優遇措置を受けるため、減資する場合もあります。資本金が1億円を超える法人が減資で1億円以下とする場合、法人税率が下がるので、メリットを受けられます。
資本金減資のデメリットは、2点あります。
1)信用度の低下
信用度の低下です。単に資本金額が減少するだけではありません。赤字が続く中、決算書の表面を良くするために行っていると、第三者にマイナスイメージを与える可能性があるので、注意が必要です。
2)手続きが煩雑でコストもかかる
減資を行うには、株主総会の特別決議での承認、債権者保護手続き、登記申請といった厳密な手続きを経なければなりません。またホームページや会社案内など資本金が書かれている箇所は全て修正しなければならなくなり、手続きや修正が煩雑でコストもかかります。

資本金に関する注意点は、以下の3点です。
許認可を受けるには一定以上の資本金が必要な場合がある
会社の価値は資本金では測れません。資本金から会社の体力・規模は推し測れます。しかし、会社の価値についてまではわかりません。資本金は事業出資の合計額であって、会社の業績とは関係ありません。そのため、会社の価値を測る際は、資本金だけではなく売上高や利益、貸借対照表に記載されている純資産の大きさなどをチェックしましょう。
融資を受けるには、一定以上の資本金が必要な場合もあります。例をあげると、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合、制度上では自己資金の要件はありませんが、審査上では全体に必要な資金の、約3分の1は自己資金から出資しているという観点でみられます。そのため、3分の1の自己資金は準備しておきましょう。
許認可を受けるには、一定以上の資本金が必要な場合もあります。例えば、一般建設業許可の場合は、資本金500万円以上という条件があります。ほかにも、労働者派遣事業は資産の総額から負債総額を控除した、基準資産額2,000万円以上が許可の条件です。
ここまで、資本金に関してお伝えしてきましたが、会社設立では、資本金の使い道が非常に大切です。そこで、この章では、効率的な事業運営を行う上で必要なオフィス環境について解説していきます。
オフィスには、通信環境・電話・共有ストレージなどの整備が必要です。オフィス環境を整えなければ、従業員は十分なパフォーマンスを発揮できず、会社全体の生産性低下につながってしまいます。オフィス環境の整備に役立つサービスについてご紹介します。
1つ目は光回線の導入です。日々の業務に、インターネットは欠かせません。データの送受信・ファイルの共有・データバックアップなど、さまざまな業務に必要です。同時に、安定した回線であれば、作業がスムーズに進みます。
2つ目はひかりクラウドPBXです。ビジネスフォンや、リモートワーク用の電話が必要な場合に便利です。ひかりクラウドPBXは社内外との通話機能を、クラウド上のサービスから提供します。
専用のアプリを用いるとスマートフォンを内線化できたり、外出先からオフィスの電話番号で発着信ができたりします。詳細は以下のリンクから、ご確認いただけます。
※外線通話を利用される場合には、ひかり電話オフィスA(エース)またはひかり電話オフィスタイプの契約が必要です。
3つ目はクラウドストレージです。社内で情報共有する場合に必要です。また、インターネット上にあるファイル・データを保管できます。リモートワークにも活用できたりと、業務効率アップにつながります。
クラウドストレージを導入するなら、「コワークストレージ」がおすすめです。詳細は以下のリンクから、ご確認いただけます。
4つ目はギガらくVPNです。社内の通信環境の安定性や、最適化を管理する必要があります。遠隔でルーターを設定し、ネットワーク管理や構築などを簡単にできる、マネージドルーターサービスです。働き方の環境に合わせて、柔軟で安定したネットワーク環境が提供されます。
社内の通信環境を安定させるには、「ギガらくVPN」を導入しましょう。詳細は以下のリンクから、ご確認いただけます。
株式会社パブリ様における「Nにおまかせ!」活用事例をご紹介します。
株式会社パブリ様では、創業に当たり以下のような課題を抱えていました。
創業準備に伴う複数の業者との調整が煩雑
これらの課題を解決するため、「Nにおまかせ!」を活用し、以下の対応が行われました。
具体的には、創業準備をスムーズに進めるため、ビジネスフォンの導入に加え、パソコン、複合機、周辺機器の選定と設置をサポート。さらに、各業者とのやり取りを一本化し、時間と手間の大幅削減を実現しました。
また、ネットワーク構築と情報セキュリティ対策に関しては、わかりやすいネットワーク構成図を作成し、適切な環境を構築。社内用とゲスト用Wi-Fiの分離、SSIDによるセキュリティ強化、IP電話の導入なども行われました。
ホームページ制作については、NTTタウンページを活用することでコストを抑え、IP電話の導入により初期費用とランニングコストの削減を実現。その結果、約500万円の初期費用削減につながりました。
このように、「Nにおまかせ!」の導入により、創業時の負担を軽減し、スムーズに事業をスタートさせることに成功しました。
事例紹介
創業準備における各社との煩雑な対応など、通信環境以外もすべて「Nにおまかせ!」することで、おおよそ500万円のコスト削減を実現!
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※ 事例は一例であり、すべてのお客さまに同様の効果があることを保証するものではありません。

資本金は会社を立ち上げ、事業を安定させる際に必要な資金で、代表者本人や外部株主、投資家が会社に出資したお金です。資本金を活用すると、スムーズに事業を進められます。ただし、第三者から出資を受けられるのは株式上場をめざすような、有望な事業のみです。
また、資本金にはいくつかの特徴と役割があります。内容を理解せず資本金額を決定すると、信用度や税金関係で損をしてしまう可能性があります。メリット・デメリットや、注意点を理解しておく必要があるでしょう。会社を立ち上げようと考えている方は、今回の記事を参考にしていただけると幸いです。
開業をご検討されている方必見!
監修
税理士法人V-Spiritsグループ代表 税理士・社労士・行政書士・FP
中野 裕哲
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。 税理士法人V-Spiritsグループ代表。年間約1000件の起業相談を無料で受託し、起業家や経営者をまるごと支援。経済産業省後援 起業経営支援サイト「DREAM GATE」で12年連続相談数日本一。 著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)など20冊、累計25万部超
V-Spiritsグループ Webサイト