建設業許可とは?わかりやすく取得条件や開業ステップを解説

公開日:2024.10.01

建設業許可とは?わかりやすく取得条件や開業ステップを解説

この記事で
わかること

  • 建設業許可証明書の必要性と取得条件
  • 開業準備の流れとチェックポイント
  • 建設業開業時の想定予算と失敗を避けるコツ

目次

建設業として開業を検討している人のなかには、「建設業許可の取得が必要になる条件を知りたい」あるいは「取得後の手順を知りたい」と悩む人もいるでしょう。建設業許可は、軽微な建設工事のみを請け負う場合を除き、開業して事業を行ううえで必要です。また、建設業の開業には、許可証明書の取得以外にもさまざまな準備や手続きをしなければなりません。

本記事では、建設業許可の基礎知識から取得の要件、さらに建設業を開業するときの進め方までわかりやすく解説します。

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1.開業に必要?建設業許可とは

建設業許可とは?

建設業許可とは、建設業法に基づき、一定規模以上の工事を請け負う場合に必要な許可です。

一定規模の建設工事の完成を請け負う場合、元請、下請、法人、個人を問わず許可を受ける必要があります。ただし、軽微な工事のみを請け負う場合には、この許可は必要ありません。

建設業許可が必要ない「軽微な建設工事」とは

建設業法第3条によると、建設業許可が必要ない「軽微な建設工事」は、次のとおりです。

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建築一式工事
  • 1,500万円未満の工事
  • 請負代金の額に関わらず延べ面積が150平方メートル未満の木造住宅の工事
建築一式工事以外の
建設工事
  • 請負金額が500万円未満の工事

なお、建設業法第47条の規定により、無許可で「軽微な建設工事」の範囲を超える工事を請け負うと、建設業法違反となり、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります。

参考:「e-GOV|建設業法」
  (https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC0000000100)

大臣許可と知事許可の2種類がある

建設業の許可には、大臣許可と知事許可の2種類があります。それぞれの概要は次のとおりです。

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大臣許可 2つ以上の都道府県の区域に営業所を設ける場合、国土交通大臣の許可が必要
知事許可 1つの都道府県の区域に限り、営業所を設ける場合、都道府県知事の許可が必要

いずれの場合にも、建設工事の場所や営業範囲に制限はありません。大きな違いは、営業所を設置する場所が、2つ以上の都道府県をまたいでいるかどうかという点です。

対象となる業種・区分

建設業の許可は、建設工事の業種ごとに、それぞれ取得が求められます。建設工事は、以下の2つに分けられ、合計29業種となります。

  • 一式工事(2業種)…総合的な工事
  • 専門工事(27業種)…内容の専門性に応じて分類される工事

各業種名は、以下のとおりです。

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一式工事
  • 土木一式工事
  • 建築一式工事
専門工事
  • 大工工事
  • 左官工事
  • とび、土工、コンクリート工事
  • 石工事
  • 屋根工事
  • 電気工事
  • 管工事
  • タイル、れんが、ブロック工事
  • 鋼構造物工事
  • 鉄筋工事
  • 舗装工事
  • しゅんせつ工事
  • 板金工事
  • ガラス工事
  • 塗装工事
  • 防水工事
  • 内装仕上工事
  • 機械器具設置工事
  • 熱絶縁工事
  • 電気通信工事
  • 造園工事
  • さく井工事
  • 建具工事
  • 水道施設工事
  • 消防施設工事
  • 清掃施設工事
  • 解体工事

さらに、建設業許可は「特定建設業」または「一般建設業」に区分されます。元請事業者が下請事業者に工事を依頼して下請契約を結ぶ場合、金額によっていずれかの許可の取得が必要です。

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特定建設業許可 元請事業者として発注者から工事を請け負い、下請事業者へ依頼するために、4,500万円(建築工事は7,000万円)以上の工事に関する下請契約を締結する場合
一般建設業許可 ①元請事業者として発注者から工事を請け負い、下請事業者へ依頼するために、4,500万円(建築工事は7,000万円)未満の工事に関する下請契約を締結する場合
②工事の全てを自分(自社)で施工

有効期限は5年

建設業許可の有効期限は、5年間です。引き続き登録を受ける場合には、有効期限満了の30日前までに更新の手続きを行う必要があります。

約1ヶ月前から更新の受付が必要な理由は、審査に時間を要するからです。期日までの手続きを忘れてしまった場合、期間満了に伴い効力を失い、営業できなくなるため注意しましょう。

2.建設業許可を取得するための条件

建設業許可とは?

建設業では、長期間にわたり不特定多数の会社が施工に関与します。

建設業は参入障壁が低く、不良不適格業者が介在しやすい特性があり、建設工事の品質を確保し、受注者を保護することを目的に、許可性が設けられました。そのため、建設業許可の取得には、いくつかの条件をクリアする必要があります。

ここからは、建設業許可を取得するための5つの条件について、それぞれ詳しく解説します。

経営業務の管理を適正に行う能力

まず、経営業務の管理を適正に行う能力が条件の1つです。

建設業は、発注者から預かったお金で工事を進め、完成・引き渡し後最終の支払いを受けたり、複数の事業者が関わったりなど、工事を滞りなく完成させるために管理能力が必要です。そのため、専門知識や一定期間の業務経験を有する者を、最低でも1人配置しなければならないという要件が定められています。

具体的には、以下のとおりです。

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法人 常勤の役員のうちの1人
  • 建設業の管理責任者として5年以上の経験がある
  • 建設業の管理責任者に準ずる「経営管理責任者」として5年以上の経験がある
  • 建設業の管理責任者に準ずる「管理責任者を補佐する業務」を6年以上行った経験がある
  • 建設業で2年以上の役員経験があり、さらに5年以上役員または役員に次ぐ立場としての経験を有し、常勤役員などを補佐する役割として「財務管理」「労務管理」「運営業務」に携わった経験がある
  • 5年以上の役員経験などがあり、建設業で2年以上役員などの立場としての経験を有し、さらに常勤役員の直接補佐役として「財務管理」「労務管理」「運営業務」に携わった経験がある
個人 本人または支配人のうちの1人

専任技術者

続いて、建設業許可を取得するための条件として、建設工事に関する専門知識や経験を保有する「専任技術者」が、営業所ごとに1名以上必要となります。

専任技術者の要件は、一般建設業と特定建設業の区分により、以下のように異なります。

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区分 概要
一般建設業
  • 指定学科を修了し、高卒後5年以上もしくは大卒後3年以上の実務経験がある
  • 指定学科を修了し、専門学校卒業後5年以上もしくは専門学校卒業後3年以上の実務経験があり、専門士または高度専門士を称する
  • 許可を受けようとする建設業に関連する工事において、10年以上の実務経験がある
  • 国家資格者
  • 複数業種に関する実務経験がある
特定建設業
  • 国家資格者
  • 指導監督的実務の経験がある
  • 特別認定講習を受けて効果評定に合格した、もしくは国土交通大臣が定める考査に合格した、大臣特別認定者

誠実性

建設業法では、建設業許可の取得要件として、誠実性が求められています。

誠実性が条件の1つである理由は、着手から完工までに長い時間がかかり、前払いが商習慣になっている建設業では、「信用」が取引の前提となっているからです。請負契約の締結や履行にあたり、不正や不誠実な行為があってはならず、未然に排除しなければなりません。

誠実性を求められる対象者として挙げられるのは、以下のとおりです。

  • 建設業許可を受けようとする法人、法人の役員
  • 個人事業主
  • 支店長や営業所長などの使用人

財産的基礎

続いて、建設業の許可が必要となる規模の工事を十分に請け負うことのできる、財産的基礎が必要です。建設業では、資材や機械の購入、労働者の確保のために、一定の準備資金を要するためです。

財産的基礎の要件は、一般建設業と特定建設業の区分により、以下のように異なります。

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区分 概要
一般建設業
  • 自己資本の額が500万円以上
  • 500万円以上の資金調達能力がある
  • 過去5年間、許可を受けて継続して営業を行った実績がある

※上記3点のいずれかに該当

特定建設業
  • 資本金の20%を超える欠損を生じていない
  • 75%以上の流動比率である
  • 資本金が2,000万円以上、さらに自己資本の額が4,000万円以上である

※上記3点のすべてに該当

欠格要件

許可申請書に虚偽記載や重要な事実の記載漏れがある、もしくは許可申請者等が法令違反行為を行った場合には、建設業許可を取得できません。

具体的な欠格要件の例は、次のとおりです。

  • 破産者
  • 建設業許可を取り消されてから5年が経っていない
  • 営業停止が命じられて、停止期間が終了していない
  • 暴力団員が事業活動を行っている

3.建設業を開業するための7つのステップ

ここまでは、軽微な建設工事を除き、取得が必須となる建設業許可の概要について解説してきました。続いては、開業までの進め方を説明します。開業までの全体像は、以下のとおりです。

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ここからは、準備期間を8ヶ月と想定し、開業までの具体的なステップと、各段階で取り組むべきことについて解説していきます。

STEP1.事業計画・資金計画(開業4〜8ヶ月前)

まずは、事業計画書と資金計画書を作成しましょう。

計画書では、自社のコンセプトやターゲットとなる顧客、競合分析を実施し、自社の優位性を明らかにすることが大切です。

とくに、建設業は競合が多く、価格競争に陥りやすい傾向にあります。価格競争が起こると案件単価が安くなり、せっかく準備を進めて開業しても、経営が困難になる可能性も少なくありません。

そこで、自社にしかない付加価値を見つけ、アピールすることが求められます。

<事業計画チェックリスト>

  • なぜ開業するのかを自分の言葉で他人に説明できる
  • 自社コンセプトが明確である
  • セールスポイントがある
  • 集客や販売促進の案を決めている
  • 他社にはない自社の強みを理解している
  • 事業計画書が完成している

STEP2.立地調査・物件探し(開業4〜8ヶ月前)

次に、建設業法を満たす営業所を設置する必要があります。準備の初期段階で、物件探しを進めておきましょう。

建設業許可を取得するには、営業所の写真添付も必要となります。具体的には、営業所の外観、看板、入り口、内部などの写真を提出しなければなりません。また、周辺の地域性や環境も考慮して物件を選ぶことが大切です。

<許認可におけるチェックポイント>

  • 自己所有の建物もしくは賃貸契約などを締結している
  • 住居専用の契約ではない
  • 居住スペースもしくは他の会社の場所と独立したスペースがある(自宅開業またはシェアオフィスの場合)
  • 固定電話の設置が可能(業務用携帯電話も可)
  • 商談用のスペースが設けられている
  • 外観から営業所とわかる看板が設置できる(雑居ビルの場合、ポストに自社名を入れるなども可)

STEP3.建設業許可の申請(開業2〜3ヶ月前)

続いて、フォーマットをダウンロードし、建設業許可を申請します。用意しなければならない書類は、次のとおりです。

<申請に必要な様式番号の書類>

  • 建設業許可申請書(様式第一号)
  • 工事経歴書(様式第二号)
  • 直近3年の各事業年度における工事施工金額(様式第三号)
  • 使用人数(様式第四号)
  • 契約書(様式第6号) 他

<申請に必要な別紙の提出書類>

  • 役員等の一覧表
  • 営業所一覧表
  • 専任技術者一覧表
  • 常勤役員などの確認書 他

その他、以下の添付書類も必要となります。

<確認資料>

  • 経営管理責任者の確認資料(登記事項証明書や事業所名の印字がある健康保険証など)
  • 専任技術者の確認資料(免許証や資格証明書の写し、事業所名の印字がある健康保険証など)
  • 営業についての確認資料(登記事項証明書、名刺、案内図、営業所の写真など)
  • 法人番号を証明する資料(法人番号指定通知書など)
  • 社会保険への加入を証明する資料(保険料領収書の写しなど) 他

<各役所から入手が必要な資料>

  • 登記されていないことの証明書【法務局から】
  • 登記事項証明書【法務局から】
  • 身分証明書【区役所から】
  • 納税証明書【都道府県税事務所や税務署から】 他

許可要件や必要書類などは、都道府県の建設業許可担当部署や、行政書士に相談することをおすすめします。

なお、申請書類の提出先は、前述のように営業所の所在地により異なります。1つの都道府県にしか営業所がない場合は「都道府県知事」に、2つ以上の都道府県にある場合は「地方整備局長など」に提出しましょう。

STEP4.内装工事・設備導入(開業2〜3ヶ月前)

契約した物件の内装工事や設備導入を行います。

打ち合わせスペースやバックオフィス、工具、資材置き場など、使いやすいレイアウトを考えることが大切です。また、この段階で、ネット環境の整備も行います。インターネット回線の開通やWi-Fiの導入についても、検討してみましょう。

STEP5.オペレーション/採用・教育(開業1〜2ヶ月前)

建設業務のオペレーションを整備し、従業員を雇用する場合は、採用活動と教育を実施しましょう。

建設業では、若手人材の不足が深刻化しています。そのため、積極的に採用したい場合には、求人サイトや自社の採用サイト、SNSで情報を発信していくことが効果的です。

また、教育体制も整え、属人性を排除し、誰もが専門技術や知識を身に付けられる体制を整えることで、組織全体のスキルアップと生産性向上につなげられます。

STEP6.広告宣伝・プロモーション(開業1〜2ヶ月前)

広告宣伝・プロモーションは、オープン1〜2ヶ月前から開始します。

具体的には、Webサイトの制作やWeb広告の出稿、SNSでの発信などが挙げられます。自社のプロモーション動画を作成して、自社の特徴や強みをアピールすることも重要です。

STEP7.オープン

開業のタイミングに合わせて、メディアリリースや告知、地域住民・近隣店舗へあいさつを行いましょう。仕事を受注するために、Web集客や紹介などにより、つながりを広げていくことも大切です。

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4.建設業を開業するための想定予算

建設業の平均的な開業にかかる資金の総額は、約800万円が目安とされています。内訳は、自己資金500万円、創業融資300万円、開業資金として800万円が一般的です。

しかし、規模によって必要な資金は大きく変動します。以下では、開業資金200万円、700〜1,200万円、1,000万円以上の場合を、具体的に見ていきましょう。

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規模に応じた開業資金の目安
200万円程度
  • 自宅開業
  • 従業員なし
  • 建設業許可なし
700〜1,200万円程度
  • 専用事務所あり
  • 店舗5〜10坪
  • 家賃10万〜15万円程度
  • 従業員なし
  • 建設業許可あり
1,000万円以上
  • 専用事務所あり
  • 店舗5〜10坪
  • 家賃10万〜15万円程度
  • 従業員1名
  • 建設業許可あり

5.建設業の開業時に失敗を避けるためのコツ

建設業の開業を進める際、次のような失敗が起こる可能性があります。

  • ネット環境の構築を後回しにしてしまい、ネット回線がないままオープンしてしまった…
  • 鍵のかかる棚を準備しておらず、建設業許可をすぐに取得できなかった…
  • Web集客に取り組む時間がなく、新規顧客を獲得できない…
  • 自社に合った開業のスケジュールや準備する書類がわからなくて、なかなか進まない…

開業には、さまざまな準備が必要であり、自社のみで取り組むには負担が大きすぎる恐れがあります。そこで、専門家に相談するのも一つの方法です。

「Nにおまかせ!」では、開業時に規模や働き方に合わせて、ICT(情報通信技術)導入をトータルでサポートしています。Wi-Fiの設置やオンライン集客、必要な什器の準備など、開業時のお困りごとについて、気軽にご相談ください。

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6.まとめ

今回は、建設業を開業するにあたり、知っておくべき「建設業許可」について詳しく解説しました。建設許可証明書の取得は、事業規模や工事の種類により、必要かどうかが異なります。開業前に十分に確認し、スムーズなスタートを切りましょう。

また、開業準備は多岐にわたり、1人で進めるのは簡単ではありません。開業前の準備から通信環境の整備、業務デジタル化まで、開業時のお困りごとは「Nにおまかせ!」にご相談ください。

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監修

税理士法人V-Spiritsグループ代表 税理士・社労士・行政書士・FP

中野 裕哲

起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。 税理士法人V-Spiritsグループ代表。年間約1000件の起業相談を無料で受託し、起業家や経営者をまるごと支援。経済産業省後援 起業経営支援サイト「DREAM GATE」で12年連続相談数日本一。 著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)など20冊、累計25万部超

V-Spiritsグループ Webサイト
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