企業がDXに失敗する5つの理由|成功させるためのポイントも解説

公開日:2024.06.17

企業がDXに失敗する5つの理由|成功させるためのポイントも解説

この記事で
わかること

  • DX導入で陥りがちな失敗とその原因
  • 失敗を防ぐためのプロジェクト進行のポイント
  • DX推進を成功させるためにまず行うこと

目次

DXは、単にシステムを導入するだけでなく、ビジネスモデルや企業風土を変革する難しいプロジェクトです。多くの企業がDXの推進に失敗しており、この失敗の理由を理解し、対策を講じることが重要です。また、他社の失敗事例から学ぶことで、同様の過ちを避けることができます。

今回の記事では、企業がDXに失敗する5つの理由について詳しく解説します。失敗事例と成功させるためのポイントも紹介するので、DXを推進する際にはぜひ参考にしてください。

1.企業がDXに失敗する5つの理由

企業がDXに失敗する5つの理由

ここでは、企業がDXに失敗する理由を以下のとおり5つ解説します。

  • 経営者自身がDXを理解できていない
  • 自社にDX人材がいない
  • DX推進の予算が不足している
  • システムの導入自体がゴールとなっている
  • 社内でデジタル化が浸透していない

DXの最終的なゴールは、ビジネスモデルや企業風土を変革し、市場での競争優位性を確立することにあります。ただし、人材や予算の不足に加え、システムの導入そのものをゴールとみなしてしまうことも失敗の原因となります。

経営者自身がDXを理解できていない

DXを成功させるためには、経営者自身がその意義と目標を深く理解し、明確なビジョンを描くことが不可欠です。経営者がDXの目的と達成すべき具体的な成果を示せない場合、組織全体が一丸となって取り組むことは困難になります。これは、DXがただの技術導入ではなく、組織全体での文化変革をも要求するからです。従業員の協力と参画が不可欠であり、彼らがプロジェクトの意義を理解し、積極的に関与することが成功には欠かせません。

そのためには、経営者は「DXを推進する目的」や「DXによって創出したい具体的な価値」を明確に伝えることが重要です。これにより、従業員もDXの必要性を理解し、よりスピーディかつ効率的にプロジェクトに取り組むことが可能になります。

自社にDX人材がいない

DX人材とは、デジタル技術に精通し、その知識と経験を基にビジネスモデルを変革できる人のことを指します。このような人材が不在の企業では、デジタル技術やデータを活用して新たな価値を創出することが困難です。その結果、単に「紙の情報をデジタル化する」などの表層的な施策に留まりがちで、DXを成功させることは難しくなります。

さらに、労働人口の減少や企業内教育の不足が業界や職種を問わずDX人材不足を深刻化させています。もし新卒や中途採用による人材獲得が困難な場合は、外部のDX支援サービスを利用することも有効な対策となります。

DX推進の予算が不足している

DXを推進する際、ITシステムの導入には初期費用とランニングコストがかかります。また、効率的にDXを進めるためにはコンサルティング費用が発生することも一般的です。予算が不足している場合、システム選定に妥協を余儀なくされ、本来必要とされる機能やサポートが省略されるリスクが高まります。

DXは単に一部の業務をシステム化するだけでは、投資した費用に見合う効果を得ることが難しいです。そのため、推進には十分な予算の確保が必須です。自社の経営状況を踏まえ、必要な財源を検討することが重要です。資金が足りない場合には、金融機関からの融資や自治体の補助金プログラムを利用する選択肢もあります。

システムの導入自体がゴールとなっている

企業がDXを推進する際、多くの場合新しいシステムの導入が伴いますが、この導入自体をゴールとみなしてしまうと、プロジェクトの失敗につながりやすくなります。さらに、システムの管理や運用を外部に依存することで、社内に必要なスキルを持った人材が育たず、ブラックボックス化しやすくなります。これは後に、システムの改修や別のシステムへの移行を困難にする要因となります。

システムの導入はDX実現のための重要な手段に過ぎません。システムの管理と運用を社内で行うためには、適切な人材の確保と育成が不可欠です。

社内でデジタル化が浸透していない

デジタル化とは、請求書や契約書のペーパーレス化など、アナログ業務をデジタル形式に変換する取り組みを指します。これは、DXの基盤となります。DXは、デジタル技術を活用してビジネスモデルや企業風土を変革します。そのため、企業がDXに効果的に取り組むためには、まずデジタル化が進んでいることが必要です。

デジタル化が十分に進んでいない企業がDXを推進しようとすると、従業員が新しいシステムをうまく使いこなせないリスクがあります。例えば、紙ベースでの書類管理が常態化している場合、まずは社内データをデジタル化し、一元管理することから始めることが効果的です。従業員がデジタルツールに慣れ、必要なデータを効率的に収集・活用できるようになることが、DX推進への大きな一歩となります。

2.企業のDX推進における3つの失敗事例

企業のDX推進における3つの失敗事例

DX推進における失敗事例として、以下の3つの原因が挙げられます。

  • 検証不足・指標設定の誤りによる失敗
  • 事業部間の連携不足による失敗
  • 戦略不足による失敗

他社の事例を把握しておくことで、自社で同じ失敗を避けることができます。DXに失敗する原因は数多くあるので、自社に当てはまる要因がないか注意しながらDXを推進していきましょう。

検証不足・指標設定の誤りによる失敗

百貨店業や金融業などを営む企業は、米国のソーシャルコマースサービスに出店しました。当時は世界中で注目されており、日本製品を出品したら売れると考えたからです。しかし参入したもののコストが見合わず、DX推進は失敗に終わりました。

失敗に終わった原因は、検証不足と指標設定の誤りにあります。ソーシャルコマースサービスに出店したときの事前検証を十分に行わず参入したため、想定していた顧客の反応を得られませんでした。また指標を売上や利益で設定していたことも、失敗の原因として挙げられます。

売上や利益などの成果は出るまでに時間がかかるため、短期間での指標設定には不適切です。DXを成功させるためには、入念な検証と適切な指標設定が重要となります。

参照元:日経ビジネス

事業部間の連携不足による失敗

米国の大手自動車メーカーはシリコンバレーに子会社を設立し、最新デジタル自動車の開発に挑戦しました。しかし開発されたデジタル自動車の評判が悪く翌年には損失が発生し、株価も大幅に下落したことからDX推進は失敗に終わりました。

失敗に終わった原因は、事業部間の連携不足にあります。子会社は本社から独立し、上手く連携できていない状態でした。プロダクトの品質向上には事業部の横断的なつながりが不可欠であり、DXを成功させるためには組織全体で取り組む必要があります。

参照元:JETRO/IPA New York

戦略不足による失敗

米国の一般消費財メーカーは、全社的にDXを推進することを宣言しました。しかし莫大に投資したにも関わらず、DX推進は失敗に終わりました。失敗に終わった原因は、適切な戦略が策定できなかったことにあります。DXの目的やゴールが明確でなければ、推進するうえで必要な戦略は立てられません。

戦略がないまま企業でDX推進すると、システムの導入がゴールになる可能性が高いです。一部の業務だけデジタル化されるものの、費用対効果は得られにくいでしょう。DXを成功させるためには、目的やゴールの実現に向けた戦略を策定することが必要です。

参照元:JETRO/IPA New York

3.DXの失敗を防ぐ5つのポイント

DXの失敗を防ぐ5つのポイント

企業がDXに成功することで、デジタル技術の活用により新たな価値を生み出し、市場での競争優位性を確立できます。しかし、ビジネスモデルや企業風土の変革が求められるため、すべての企業がDXを成功させるわけではありません。DXの失敗を防ぐために、以下の5つのポイントについて解説します。

  • 目的・ゴールを明確にする
  • 経営層が積極的に明確にする
  • 組織体制を構築する
  • 段階を踏んで推進する
  • 積極的にIT投資を行う

これらのポイントを抑え、全社的な取り組みを行うことで、自社のDX成功率を高めることができます。

目的・ゴールを明確にする

DXの成功には、目的やゴールを明確にし、それを従業員全体に理解してもらうことが極めて重要です。目的やゴールが不明確な場合、従業員はDXの必要性を把握できず、組織内での方向性がぶれることがあります。この不一致は、経営層と従業員間の考え方に大きなズレを生じさせ、DXプロジェクトの進行に支障を来す可能性があります。

したがって、DXの失敗を防ぐためには、企業の目的とゴールをクリアに定義し、それに基づいた戦略に沿って一貫して推進することが不可欠です。このアプローチにより、組織全体が一丸となってDXを成功に導く土台を築くことができます。

経営層が積極的に参加する

DXはビジネスモデルや企業風土を変革するプロセスであり、その成功には組織全体の取り組みが必要です。このプロセスにおいて、経営層が積極的に参画し、リーダーシップを発揮することが、従業員の意識改革に効果的です。

従業員がDXの重要性を深く理解し、経営層と共に同じ目標に向かって努力することが極めて重要です。DXは時間を要するプロジェクトであり、短期間で目に見える成果が出ない場合もあります。そうした状況下でも、経営層が一貫してプロジェクトにコミットし続けることで、現場が途中で挫折することなく、持続可能な取り組みを続けることができます。

組織体制を構築する

DXを成功させるには、デジタル技術とデータを活用できる専門人材が不可欠です。DXの初期段階で適切な人材を確保し、効果的な組織体制を構築することが重要です。中途採用や業務委託者の獲得が困難な場合は、外部のリソースを活用することをおすすめします。

また、長期的な視点で社内の人材を育成するアプローチも有効です。ただし、戦力になるまでに時間が必要であり、教育を担うスタッフも必要となるため、リソースの確保と計画が重要です。

段階を踏んで推進する

DXの失敗を防ぐためには、スモールスタートすることも重要です。DXを組織全体で展開する最終目標に到達するには、徐々に理解と支持を広げていく必要があります。最初から全員がプロジェクトの意義や目標を完全に理解し、賛同するのは現実的ではないためです。

初期段階では、小規模なチームを形成し、具体的な成功事例を作ることから始めます。このアプローチにより、実際の成果を示すことができ、他の従業員の関心や協力を引き出しやすくなります。DXプロジェクトは時間を要するため、短期間での大規模な成果を期待するのではなく、長期的な視野でじっくりと取り組むことが重要です。

積極的にIT投資を行う

DXでは、システムの導入や入れ替えにより、膨大なコストがかかることも少なくありません。しかし、企業がDXを成功させるためには、IT投資が不可欠です。十分な予算を確保せずにシステムを導入すると、操作性が悪かったり、サポートを受けられなかったりすることがあります。

一部の人しか使いこなせないシステムはブラックボックス化しやすく、コストの無駄になりやすいです。またDX推進が途中で止まる可能性も考えられるので、DXを成功させるための手段として積極的にIT投資を行いましょう。

4.失敗事例を把握したうえでDX推進に取り組もう

失敗事例を把握したうえでDX推進に取り組もう

DXを推進しても、失敗に終わる企業は少なくありません。自社で失敗のリスクを抑えたい場合は、原因や事例を把握することが重要です。これにより、事前に対策を立て、同じ失敗を避けることが可能になります。また、企業でDXを成功させるためには、自社の現状を正確に把握し、適切な戦略を策定することが不可欠です。

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監修

税理士法人V-Spiritsグループ代表 税理士・社労士・行政書士・FP

中野 裕哲

起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。 税理士法人V-Spiritsグループ代表。年間約1000件の起業相談を無料で受託し、起業家や経営者をまるごと支援。経済産業省後援 起業経営支援サイト「DREAM GATE」で12年連続相談数日本一。 著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)など20冊、累計25万部超

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