DX推進ガイドラインをわかりやすく解説

公開日:2024.05.23

DX推進ガイドラインをわかりやすく解説

この記事で
わかること

  • DX推進ガイドラインの概要と目的
  • ガイドラインを構成する要素
  • ガイドラインを活用したDX推進の進め方

目次

DXを推進することで、業務効率や生産性の向上が期待できます。しかし「具体的に何をすれば良いか分からない」とお悩みの方は多いのではないでしょうか。DX推進ガイドラインを活用することで、効果的な施策を立案できるようになります。

今回の記事では、DX推進ガイドラインの定義や構成要素について詳しく解説します。活用手順も紹介しますので、自社のDX推進でお悩みの方はぜひ参考にしてください。

1.DX推進ガイドラインとは?DX推進指標との違いも解説

DX推進ガイドラインとは?DX推進指標との違いも解説

DX推進ガイドラインの内容を確認するとともに「何の目的で作られたのか」を理解しておく必要があります。またDX推進指標との違いも把握することで、より効果的に活用できるでしょう。この章では、DX推進ガイドラインの定義やDX推進指標との違いについて解説します。

DX推進ガイドラインとは

DXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、企業や組織がデジタル技術を取り入れビジネスモデルや業務プロセスを根本的に変革することです。最終的には変革を通して新たな価値を生み出し、市場で競争優位性を確保することを目的としています。

DX推進ガイドラインとは、経済産業省が企業に向けて策定した指針です。企業でDX推進に取り組む際に、経営者に求められる行動や認識をまとめています。

企業にとってDX推進のロードマップとなり、ビジネスモデルの変革を実現するための土台を提供しています。DX推進ガイドラインは、自社の課題を把握したり、解決策を検討したりする際に有用です。

DX推進ガイドラインが作られた背景

DX推進ガイドラインの目的は、取り組みの弊害となる課題を解決することです。市場の変化が激しい中で企業が生き残るためには、DXによって適応力を高める必要があります。しかしDX推進に取り組んでいるものの、ビジネスモデルの変革まで辿りつかない企業は多いです。

またDXを推進するうえでITシステムの導入が不可欠となりますが、保守コストやセキュリティリスクの増大が懸念されています。中にはDXを推進する前に、老朽化・複雑化したレガシーシステムを改善しなければならないケースもあります。DX推進ガイドラインは、各企業が抱えるDXに関する問題を解決に導くために策定されました。

DX推進指標との違い

DX推進ガイドラインとDX推進指標は、経済産業省によって策定されました。いずれも企業でDX推進に取り組む際に役立ちますが、活用する対象と方法が異なります。DX推進ガイドラインは主に経営者向けの指針で、取り組むうえで必要な行動やアプローチが記載されています。

一方でDX推進指標は、実際の取り組みを自己判断するための基準です。経営者だけでなくIT部門や事業部門でも活用できますが、DX推進ガイドラインより複雑な内容となっています。それぞれ併用することで、DX推進に効果的な施策を立案できるようになります。

2.DX推進ガイドラインは「デジタルガバナンス・コード2.0」に統合されている

DX推進ガイドラインは「デジタルガバナンス・コード2.0」に統合されている

デジタルガバナンス・コードとは、企業の主体的なDX推進を促す目的で策定された指標です。デジタル社会に適応するために、経営者が実践すべき事柄をまとめています。しかしDX推進ガイドラインと類似点が多かったことから、利用者の利便性を考慮して統合されました。

デジタルガバナンス・コード2.0ではDXの認定基準が追加され、SX(Sustainability Transformation)/GX(Green Transformation)との関係性が整理されています。

3.DX推進ガイドラインを構成する2つの要素

DX推進ガイドラインを構成する2つの要素

DX推進ガイドラインは以下2つの要素で構成されています。

  • DX推進のための経営のあり方
  • DXの基盤となるITシステムの構築

DXを成功させるためにはITシステムの構築だけでなく、経営陣の理解も重要です。それぞれの構成を理解し、自社のDX推進に活用しましょう。

DX推進のための経営のあり方

DX推進のための経営のあり方は、さらに以下の5つの項目に分けられます。

  • ビジョンや経営戦略の提示
  • 経営者トップへのコミットメント
  • DX推進のための体制整備
  • 投資などの意思決定のあり方
  • スピーディーな変化への対応力

企業でDXを成功させるためには、経営陣が主体的に取り組む必要があります。ビジョンや経営戦略を提示しなければ、従業員の協力は得られません。また長期的な取り組みとなるため、DX推進の体制整備も重要です。この章では、5項目の内容をそれぞれ解説します。

ビジョンや経営戦略の提示

経営陣がビジョンや経営戦略を、従業員へ提示する必要性を解説する項目です。DX推進にあたり、企業はデジタル技術を活用した新たな価値の創出方法を決める必要があります。単にITシステムの導入だけでは、ビジネスモデルや企業風土は変革されません。DXの最終目的は、これらの変革によって市場で競争優位性を獲得することです。

ビジョンや経営戦略が曖昧だと、デジタル技術の活用がゴールとなってしまいます。また経営陣と従業員で共通認識を持てず、失敗するリスクも高まるでしょう。DX推進は組織全体で取り組む必要があり、従業員の協力が不可欠です。ビジョンや経営戦略を明確にすることで社内の足並みが揃い、スムーズにDXを推進しやすくなります。

経営トップへのコミットメント

経営陣が自社のDX推進に関与する重要性を解説する項目です。DXはITシステムの導入によって、業務効率や生産性の向上が実現できます。その一方で、業務の遂行方法が大きく変わるため、抵抗を感じる従業員は少なくありません。

社内で反対意見が上がったとしても、経営陣はリーダーシップを発揮して意思決定を行うことが重要です。経営陣が積極的にDX推進に取り組むことで、徐々に従業員の理解も得られるようになります。

DX推進のための体制整備

DX推進に向けた体制整備の重要性を解説する項目です。DX推進は組織全体で取り組むプロジェクトであり、結果が出るまでに時間がかかります。DXをスムーズに推進するためには、以下3つの体制整備が求められます。

  • マインドセット
  • DX推進部門の設置
  • DX人材の育成・確保

ここで言うマインドセットとは、失敗を恐れず新たな事象に対しても積極的に挑戦できることです。DX推進は前例が少ないうえ、必ずしも自社で通用するとは限りません。施策が結果に結びつかなかった場合は、課題を見つけ改善する必要があります。そのためDX推進部門の設置やDX人材の育成・確保などによって、継続的に挑戦できる環境を提供しましょう。

投資などの意思決定のあり方

DX推進の投資などにおける意思決定のあり方を解説する項目です。投資には既存システムの再構築だけでなく、新たなビジネスモデルの創出や長期的な価値創造を実現するための費用も含まれます。意思決定を行う際は、以下3つのポイントを満たしていることが重要です。

  • 費用の安さだけでなく、ビジネスへのプラス要素も考慮している
  • 確実なリターンは求めていない
  • 投資しない場合のデジタル競争力が低下するリスクを考えている

継続的なDX推進には、適切な投資判断や予算確保・配分が不可欠です。途中で予算がショートすると戦略通りに進まなくなり、失敗に終わるリスクが高まります。

スピーディーな変化への対応力

ビジネス環境の変化に対するスピーディーな対応力を解説する項目です。近年市場の変化が非常に速く、企業はそれに適応したビジネスモデルを構築する必要があります。変化へのスピーディーな対応は、競争性優位の獲得や持続可能な成長に不可欠です。経営陣は財務状況や消費者ニーズなどを常にチェックし、いつでも変更できる状態にしておきましょう。

DXの基盤となるITシステムの構築

DXの基盤となるITシステムの構築は「体制・仕組み」と「実行プロセス」のカテゴリに分けられ、それぞれ3項目ずつあります。この章では、全6項目の内容をそれぞれ解説します。

【体制・仕組み】全社的なITシステムの構築のための体制

DX推進におけるITシステムの構築に必要な体制を解説する項目です。企業がDXを成功するためには、経営陣やIT部門を始めとした組織全体での取り組みが不可欠です。また、自社のDXに必要なITシステムを構築する体制や人材の確保が重要となります。部門を超えて協力することで共通認識が生まれ、効率的に自社のDXを推進できるでしょう。

【体制・仕組み】全社的なITシステムの構築に向けたガバナンス

全社的なITシステム構築に向けたガバナンスの重要性を解説する項目です。そもそもDX推進におけるガバナンスとは、組織全体で取り組むための指針を指します。効率的なDX推進に役立ちますが、取り組みに対して社内の理解を得ていることが前提です。そのためガバナンスには、経営陣のコミットメントやビジョン・経営戦略の提示なども含まれています。

【体制・仕組み】事業部門のオーナーシップと要件定義能力

事業部門の主体性と要件定義能力の必要性を解説する項目です。日本企業のDXが遅れている原因として、ITシステム構築において要件定義からベンダー企業に任せてしまうことが挙げられます。依頼範囲が広くなるほど費用がかさむだけでなく、自社にノウハウが蓄積されません。

そのためベンダー企業に丸投げせずに、自社の事業部が主体的に取り組むことが重要です。事業計画や要件定義は基本的に自社で行い、ベンダー企業のアドバイスを踏まえたうえで意思決定を行いましょう。事業部門が開発の主導権を握ることで、自社にとって有益なシステムを構築できます。

【実行プロセス】IT資産の分析・評価

既存システムやソフトウェアなど、IT資産の分析・評価を行う必要性を解説する項目です。現状のIT資産を分析することで、投資の優先順位を設定できます。システムのコストやビジネスへの影響などを考慮した上で評価を行いましょう。IT資産の分析・評価を行うことで、効果的なリソース配分が可能となります。

【実行プロセス】IT資産の仕分けとプランニング

DX推進においてIT資産の仕分けとプランニングの必要性を解説する項目です。具体的には、既存システムの見直しや不要なIT資産の廃棄などが挙げられます。必要なシステムのみ残すことで、ランニングコストの削減につながります。またコスト削減によって浮いたお金をDX推進の予算に回すことも可能です。

【実行プロセス】変化への追従力

ITシステムでビジネス環境の変化に対応する重要性を解説する項目です。新しいシステムは、市場の変化に対応できなければ意味がありません。更新性が低いと変化に対してスピーディーに適応できず、システムがブラックボックス化するリスクが高まります。変化に対してスピーディーに対応するためには、デジタル技術だけでなく持続的な更新能力も重要です。

また、機能を追加するときの容易さやメンテナンスの高さも求められるでしょう。ITシステムに適応性を持たせることで企業は市場の変化へ迅速に対応し、競争優位性を獲得できます。

4.DX推進ガイドラインの活用手順

DX推進ガイドラインの活用手順

DX推進ガイドラインには成功するための筋道が、11項目に分かりやすく整理されています。ここでは、DX推進ガイドラインの活用手順を解説します。

  • DXの推進状況を把握し課題を洗い出す
  • 優先順位に沿ってロードマップを引く

ガイドラインを活用することで、課題の洗い出しやアクションの検討が容易になるでしょう。

DXの進捗状況を把握し課題を洗い出す

企業がDXを推進する場合、まずは現状把握が必要になります。自社の現状を把握しなければ、課題も洗い出せません。推進ガイドラインの項目に沿って現状を分析することで、ビジョンとのギャップが明らかになるでしょう。より正確に自社の現状を分析したい場合は、DX推進指標の活用がおすすめです。DX推進ガイドラインを35項目に細分化し、成熟度で指標が示されています。

現状把握ができたら、DXガイドラインと比較して課題を洗い出します。それぞれの課題に対する解決策も検討しましょう。これらのプロセスを手短に終わらせたい場合は、「Nにおまかせ!」の「デジタル化スタート診断」がおすすめです。10項目の質問に答えるだけで、現状把握と次のアクションが明確になります。業務改善策の検討にも役立てられるので、自社でDXを推進する際に活用してみてください。

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優先順位に沿ってロードマップを引く

立案した対策に優先順位を決めて、ロードマップを引きます。実行の開始日や期間が分かるように作成しましょう。対策の優先順位は、解決に必要なコストやリソースなどを考慮することが大切です。なお日本のDX推進では「2025年の崖」が指摘されています。

2025年以降は既存システムの残存による課題の経済損失が、年間で12兆円まで増加する可能性があると考えられています。そのためロードマップを作成する際は、2025年までに改善しておくべき項目を明確にしましょう。DX推進ガイドラインは全12項目と多く、場合によっては同時に進めなければならないケースもあります。

5.DX推進ガイドラインに沿って自社の変革を進めよう

DX推進ガイドラインに沿って自社の変革を進めよう

DX推進ガイドラインとは企業に向けて策定された指針で、経営者が自社で取り組む際に押さえておくべきポイントをまとめています。経営とITシステムの要素で構成されており、自社の現状把握や課題の洗い出しに役立ちます。

DXを成功させるためには、現状把握が非常に重要です。DX推進ガイドラインよりも手軽に現状を把握したい場合は、「Nにおまかせ!」の「デジタル化スタート診断」がおすすめです。一問一答の形式で、10項目の質問があります。回答するだけで、現状把握と次のアクションの明確化が可能です。業務改善案の検討にも活用できるので、自社のDX推進でお悩みの方はぜひ活用してみてください。

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監修

税理士法人V-Spiritsグループ代表 税理士・社労士・行政書士・FP

中野 裕哲

起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。 税理士法人V-Spiritsグループ代表。年間約1000件の起業相談を無料で受託し、起業家や経営者をまるごと支援。経済産業省後援 起業経営支援サイト「DREAM GATE」で12年連続相談数日本一。 著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)など20冊、累計25万部超

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監修