人材育成マネジメントとは?課題や進め方、推進施策や役立つスキル・資格を解説

公開日:2025.07.10

人材育成マネジメントとは?課題や進め方、推進施策や役立つスキル・資格を解説

この記事で
わかること

  • 人材育成マネジメントの概要と進め方
  • 推進施策の種類と必要なスキル・資格
  • 従業員満足度向上や離職防止に向けた施策について
組織力を強化する上で、人材育成は欠かせません。しかしその重要性を認識していても、実際には「研修制度はあるものの、スキルアップにつながっているかを把握できていない」「体系的な育成プログラムを組むのが難しい」といった悩みを抱える企業が多いのではないでしょうか。こうした課題を解決するために重要なのが、人材のスキル情報を管理し、育成を推進する「人材育成マネジメント」の考え方です。

本記事では、人材育成マネジメントの概要をはじめ、具体的な進め方や推進施策、必要なスキルや資格まで詳しく解説します。人材育成の戦略性を高めたいとお考えの経営者や人事担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

目次

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人材育成マネジメントとは?

人材育成マネジメントとは、自社の人材育成方針に基づいて従業員のスキル向上や能力開発を支援し、定期的に評価・改善しながら組織全体の成長を促進する、体系的な管理プロセスのことです。研修を実施するだけでなく、計画的に人材を育成し、組織力を高めることを目的としています。

効果的な人材育成マネジメントを行うには、以下のような取り組みが求められます。

人材育成マネジメントを効果的に行うための取り組み 例

  • 人材育成方針の明文化
  • 体系的な育成プログラムの策定・企画
  • 測定可能な指標の設定と定期的な効果測定・改善
  • 従業員のスキル状況や育成実施状況の把握
  • 育成を推進する人事制度の設計
  • 従業員の中長期的なキャリア構築支援

育成施策を統制しやすくなり、中長期的な組織力の強化が期待できるでしょう。

人材育成マネジメントにおける課題

人材育成マネジメントを推進する上で、多くの企業が直面する課題の一つが、リソースやノウハウの不足です。特に中小企業では、人事担当者が採用や労務管理など他の業務と兼任しているケースが多く、育成プログラムの策定や実施に十分な時間を確保できないことがあります。このような状況で、「育成にかける時間がない」「体系的な育成プログラムの策定が難しい」といった課題に直面することも少なくありません。

また、「従業員のスキルを一元管理できない」という課題を抱えている企業もあるでしょう。たとえば、スキルの習得状況を各部署が独自に記録していたり、Excelファイルや紙で管理していたりすると、全従業員のスキル情報を包括的に把握することが困難になります。その結果、現状把握や適切な人材配置に多くの時間が必要となり、スムーズに人材マネジメントを行うことが難しくなってしまうのです。

このような課題に対応するためには、以下のような対策が有効だといえます。

課題と対策 例

ノウハウ不足|人事担当者のスキルアップ
資格取得や研修などを通して、人事担当者のスキルアップを図る

リソース不足|社外の研修プログラム活用
社外からでも習得可能なスキルについては、社外研修やeラーニング、資格取得講座などのプログラムを活用する

人材管理|ICT活用による人材管理の効率化
ICTシステムを導入し、人材のスキル所有状況や面談記録などを効率的に管理する

人材育成マネジメントを効果的に進めるためには、上記のような対策を組み合わせて取り入れることが重要です。後半では、人材育成マネジメントに役立つスキルや資格について詳しく紹介するため、人事担当者のスキルアップを図りたいとお考えの方はぜひ参考にしてください。

人材育成マネジメントの進め方

人材育成マネジメントの進め方

人材育成マネジメントを効果的に進めるためには、明確な目標を定め、計画的に施策を実行していくことが重要です。以下では、人材育成マネジメントの進め方について解説します。

Step1.現状把握

人材育成マネジメントを進める際は、まず現場における人材の課題をできる限り正確に特定することが大切です。現在の従業員がどのようなスキルを持っているのか、現場でどのような課題が発生しているのかを把握することで、的確な育成方針を立てやすくなるでしょう。

現状把握の方法として、タレントマネジメント※1システムを活用し、従業員の情報を一元管理することが挙げられます。また、従業員からのヒアリングや、エンゲージメント調査※2などの従業員向けアンケートを実施するのも効果的です。さまざまな取り組みを行うことで、より詳細な情報を収集できるでしょう。自社の人材育成における課題を洗い出し、次のステップへとつなげていくことが重要です。

※1 タレントマネジメント:従業員が持つ能力・スキル・経験などに関する情報を一元管理し、組織横断的に戦略的な配置や育成を行う人材マネジメントの手法を指す。

※2 エンゲージメント調査:従業員に対する意識調査の一つで、モチベーションや企業への帰属意識などを定量的に把握するための調査。

Step2.目標の設定・計画の立案

次に、目標の設定と計画の立案を行います。現状把握で明らかになった課題や、組織全体の中長期的な人材育成計画とのギャップを埋めるために、具体的な目標を設定しましょう。

目標の例として、たとえば「◯年後までにスキル保有者を◯人にする」といったものが挙げられます。効果測定が可能な目標を掲げることで、従業員がめざすべき方向性が明確になり、達成度を評価しやすくなるでしょう。

目標が設定できたら、その達成に向けて具体的な計画を立てます。従業員一人ひとりに適した訓練プログラムの実施や、目標達成に向けた人事制度の新設などを検討し、職種別や階層別の人材育成計画を立てましょう。施策について詳しくは、「人材育成マネジメントを推進する施策」にて紹介します。

Step3.社内共有・施策の実行

人材育成の目標や育成施策の目的を社内で共有し、計画を着実に実行していきます。人材育成を効果的に行うためには、従業員一人ひとりが施策の意図を理解し、自ら積極的に取り組むことが重要です。そのために、育成担当者や育成対象者に向けた説明会や個別面談を実施し、施策の背景や期待される行動について丁寧に伝えるとよいでしょう。

また、施策が経営方針とどのように連動しているのか、なぜ人材育成が必要なのかを具体的に説明することが大切です。特に、従業員自身が成長することで得られるメリットを明確に示すことで、納得感が高まり、主体的な行動を促しやすくなります。たとえば、スキルアップによるキャリアの広がりや、業務効率アップによる働きやすさの向上など、実感しやすいポイントを伝えることがおすすめです。

Step4.評価・改善

人材育成マネジメントを進める際には、定期的な評価と改善が欠かせません。半期や年次などのタイミングで、Step2で設定した目標に対する達成状況や進捗を振り返り、施策が適切に機能しているかを確認しましょう。

評価の際には、従業員との面談を行い、本人の成長実感や課題について、直接コミュニケーションを取ることが重要です。また、エンゲージメント調査やパルスサーベイ※などの定点調査を活用すれば、定量的な指標で効果計測を行えます。

課題が見つかった場合は、迅速に改善策を検討し次の施策に反映させます。PDCAサイクルを回しながら改善を繰り返し、より適した育成環境を整えましょう。

※ パルスサーベイ:従業員に対する意識調査の一つで、週1回〜月1回程度の短期間で簡単な質問を繰り返し、従業員の満足度や意識をリアルタイムでチェックする手法のこと。

人材育成マネジメントを推進する施策

人材育成マネジメントの効果を高めるには、課題に合わせて適切な施策を導入することが欠かせません。以下では、人材育成マネジメントを推進する具体的な施策について、従業員教育・人事制度・ICTシステム活用・従業員サーベイの4つの観点から紹介します。

従業員教育

従業員教育にはさまざまな手法があり、それぞれに特徴があります。主な手法であるOJT・OFF-JT・自己啓発について紹介します。

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OJT
  • OJT(On the Job Training)は、実際の業務を通じて従業員に必要なスキルを習得させる手法
  • 新入社員や中途入社者が職場で実務を行いながら、先輩社員や上司から直接指導を受けることで、業務に必要な知識や技術を身に付けられる
OFF-JT
  • OFF-JT(Off the Job Training)は、職場や業務から離れて行う教育・学習によりスキルを習得させる手法
  • 一般的には、外部の研修や社内で実施される講義形式の研修のこと
  • 特定のスキルや知識を体系的に学べる
  • 従業員が業務外で集中して学習できる
自己啓発
  • 自己啓発は、従業員が自分自身で学習計画を立て、自己のペースで学び続ける手法
  • 自己啓発を推奨することで、従業員は自分のキャリアアップに対して主体的に取り組める

それぞれのメリット・デメリットについては、以下の記事で解説しています。

人材育成とは?基本となる考え方・大切なこと、手法や取り組みの具体例を解説

詳細はこちら

人事制度

人材育成マネジメントの推進につながる人事制度について、概要や特徴を紹介します。自社の課題や人材育成の目的に合わせて、制度の見直しや整備を行いましょう。

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人事評価制度
  • 企業が従業員の業績や能力、行動を一定の基準に基づいて評価し、適正な処遇や育成につなげる制度
  • スキルアップや資格取得が人事評価の向上や報酬の獲得につながるように制度を整えることで、求める人材像を明示できるほか、従業員の学習意欲向上につながる効果が期待される
ジョブローテーション
  • 従業員を計画的に配置転換する人事異動制度
  • さまざまな業務を経験させることで、多様なスキルや視点を身に付けさせ、中核人材を育成する
社内資格制度・育成プログラム
  • 企業が従業員に対して資格制度を設け、研修や試験を通じてスキルを評価し、育成する制度
  • 自社の課題や保有技術などに合わせて、独自に体系的な制度やプログラムを開発することで、能力開発につなげられる
社内公募制度
  • 社内の従業員が、別のポジションに応募できる制度
  • 社内における部署・ポジションごとの募集要項を明示することで、従業員の自律的なキャリア構築や、従業員のモチベーション向上が期待できる

ICTシステム活用

人材育成の計画立案には、従業員のスキル保有状況や育成状況を把握することが欠かせません。しかし、従業員全員の情報を個別に管理していると、全体の状況を把握することに時間がかかり、適切な育成施策を迅速に計画・実施することが難しくなります。

そこで、人材情報を一元管理できるICTシステムを活用すれば、より効率的に人材管理やタレントマネジメントを行えます。従業員ごとのスキルや研修履歴、評価結果などをデータとして蓄積でき、個々の成長に合わせた育成計画を立案しやすくなるでしょう。

人事業務の効率化に役立つICTシステムを活用することで、人事施策の計画や運用がスムーズになる効果が期待できます。

従業員サーベイ

エンゲージメント調査やパルスサーベイといった従業員向けのアンケートを定期的に実施することで、育成施策に対する満足度や指導体制への評価、現場での困りごとや課題を把握しやすくなります。従業員サーベイによる情報は、育成施策の効果を評価し、改善につなげるための有効な手段です。

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人材育成マネジメントに必要なスキル

人材育成マネジメントに必要なスキル

人材育成マネジメントに必要なスキルについて、「コンセプチュアルスキル」「ヒューマンスキル」「テクニカルスキル」の3つの観点から紹介します。

​​コンセプチュアルスキル

コンセプチュアルスキルは、全体を俯瞰し、複雑な状況を整理するために必要な能力です。従業員の課題を的確に把握し、効果的な施策を計画・実行するためには、以下のようなスキルが求められます。

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現状把握能力
  • 組織や従業員が抱える課題やスキルギャップを把握する能力
  • 育成ニーズに合った施策を計画・実施する上で重要となる
目標管理能力
  • 課題解決に向けて、明確な目標を設定し進捗を管理する能力
  • 人材育成施策の目的達成に向けて、着実に取り組みを前進させるために重要となる
論理的思考
  • 物事を筋道立てて整理し、因果関係や根拠をもとに考える能力
  • 経営目標の実現に向けて、人材育成の課題を整理し、妥当性のある施策を検討する上で重要となる
批判的思考
  • 既存の施策や計画を鵜呑みにせず、問題点や改善点を洗い出し、より良い方法を模索する能力
  • 取り組みの成果を検証し、柔軟に施策を修正する際に必要となる

ヒューマンスキル

ヒューマンスキルとは、経営層や従業員と円滑なコミュニケーションを図り、良好な信頼関係を築く能力です。ヒューマンスキルを構成する要素として、以下のようなものが挙げられます。

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コミュニケーション能力
  • 従業員との信頼関係を築き、育成施策の目的や意図を的確に伝える能力
  • 経営層への提案をスムーズに進めたり、部門間の調整を図ったりする上でも重要となる
ヒアリング力
  • 従業員の意見や悩みを引き出し、課題やニーズを把握する能力
  • ヒアリング力が高いほど、実態に即した適切な育成施策や改善案を立案しやすくなる

テクニカルスキル

人材育成マネジメントをスムーズに進めるには、実務を遂行するためのテクニカルスキルが必要です。従業員の能力を引き出し、組織全体の目標に向かって成長を促進するために必要な実務能力として、以下のようなものが挙げられます。

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人材育成・能力開発企画
  • 従業員の成長を促進する施策や研修プログラムを計画する能力
  • 組織目標に合わせて、スキルギャップの解消やキャリア支援を目的とした体系的な育成プランを立案するために必要となる
研修の企画・運営
  • 研修の目的や対象者に応じた内容を設計し、実行する能力
  • スケジュール調整や講師との連携、事前準備など、研修を滞りなく運営するスキルが求められる
ファシリテーション
  • 研修を円滑に進行したり、グループワークを設計したりする能力
  • 参加者が意見を引き出しやすい環境を整え、議論や学びを活性化させる上で重要となる
キャリア構築支援
  • キャリア形成に関する知識を持ち、職種ごとにキャリアパスや習得すべきスキルを整理する能力
  • 従業員のキャリア構築支援を拡充することで、定着率向上や自律型人材の育成が期待される

人材育成マネジメントに役立つ資格

人材育成に関する資格を取得することで、育成計画の策定や評価の精度を高めることが可能となるでしょう。以下では、従業員の能力開発や人事企画に役立つ資格について紹介します。

キャリアコンサルタント

キャリアコンサルタントは、従業員のキャリア形成をサポートするための資格です。人事がキャリアコンサルタントの資格を持つことで、職務変更やスキルアップに関する相談に対して専門的な視点から助言・指導をし、従業員が自律的なキャリアパスを構築する手助けを行えます。従業員一人ひとりのキャリアに対する悩みや希望を把握でき、適切な支援につなげやすくなるでしょう。

近年、多くの企業がキャリアコンサルティングの仕組みを導入しており、キャリア支援を通じて、従業員のエンゲージメント向上や労働意欲・学習意欲の向上が期待されています。

中小企業診断士

中小企業診断士は、中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家であり、法律上の国家資格です。経済産業大臣が「中小企業支援法」第11条に基づいて登録を行っています。

人事担当者が中小企業診断士の資格を持つことで、経営課題を深く理解した上で人材育成や能力開発を考えられるようになるでしょう。経営戦略の一環として育成施策を検討し、組織の成長に効果的な人材戦略を立案・実行することが期待されます。

ビジネス・キャリア検定

ビジネス・キャリア検定は、ビジネスパーソンとして必要な知識やスキルを証明するための資格です。「人事・人材開発・労務管理」分野の検定試験があり、1級は全社戦略の実現に向けたマネジメント能力、2級・3級は人事・人材開発や労務管理の実務に必要な知識が問われる試験内容となっています。

「人事・人材開発」分野では、人事企画やOJT計画、OFF-JT計画、自己啓発支援計画などが試験内容に含まれており、人材開発業務に関する幅広い知識の習得に役立つでしょう。

従業員満足度向上や離職防止に向けて人材育成を推進しよう

昨今、「資格や免許の取得につながる仕事」や「さまざまな知識やスキルが得られる仕事」を求める働き手が増加傾向にあり、働く上で自己成長を実感できることを重視する人々が増え始めました。このようなニーズに対応するためにも、企業は人材育成を積極的に推進する必要があるでしょう。人材育成の推進は、従業員満足度やエンゲージメントの向上、離職防止にも寄与する可能性があり、企業にとって重要な施策の一つです。

人材育成を推進するための施策は、従業員訓練や人事制度を実行することだけではありません。タレントマネジメントシステムを導入して人材の適切な配置・育成計画を立てることや、従業員サーベイを実施して従業員の意見やニーズを把握することも大切な取り組みです。

「Nにおまかせ!」では、DXや情報セキュリティ、ダイバーシティなどに関するeラーニングをはじめとして、従業員のスキルアップや離職防止に効果的なソリューションを提供しています。エンゲージメント調査やタレントマネジメントシステムの導入支援なども行っているため、人事施策の効果や効率性を高めたいとお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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出典:「中小企業庁|2024年版 中小企業白書」
  (https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/chusho/b2_1_1.html)

まとめ

人材育成マネジメントは、従業員のスキル向上や組織力の強化を目的とした重要な取り組みです。効果的な人材育成を進めるためには、現状の把握、目標の設定、計画の立案、施策の実行、評価・改善といったステップを踏むことが大切です。

また、従業員教育や人事制度の整備、ICTシステムの活用、従業員サーベイの実施など、多角的な施策を組み合わせることで、より効果的な人材育成が可能となるでしょう。このような取り組みにより、従業員の満足度向上や離職防止が期待できます。

人材育成に関する課題解決や施策の推進には、「Nにおまかせ!」がおすすめです。eラーニングやタレントマネジメントシステムの活用を通じて、従業員教育を支援し、組織の成長を後押しします。従業員教育や離職防止について課題をお持ちの経営者・人事ご担当者の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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