公開日:2024.10.01
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現代において、IT技術は社会の基盤として欠かせないものとなっています。さらに近年では、企業のDX推進や情報セキュリティ対策などの必要性が高まっています。
しかし、日本ではIT人材が不足しており、DX化をめざす企業や社会の課題になっていることが多いのです。そこで、本記事では、IT人材不足の原因や現状について、人材不足で悩んでいる分野や職種を解説します。
この記事では、IT人材不足による企業への影響やリスク、IT人材不足の解消に向けて企業が取るべき対策についてもご紹介します。現在、IT人材獲得に悩んでいる経営者や、人事担当者の方はぜひ参考にしてください。
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資料をダウンロードする(無料)企業のDX推進や情報セキュリティ対策に欠かせないIT人材。しかし、IT産業の需要拡大に対して、IT人材は量や質が不足しており、日本ではIT人材不足が問題となっています。
日本におけるIT人材不足の問題としては、主に以下のようなものが挙げられます。
具体的には、デジタル人材の7 割強がIT 企業内に偏在し、 国内事業会社の約9 割がIT 人材の質・量ともに不足感を感じているといったデータや、国内のIT 技術者数の約6 割が東京圏(東京、千葉、埼玉、神奈川)に集中しているといったデータもあります。
企業が競争力を維持し情報資産を守る上で、いまやデジタル技術は欠かせないものになっています。IT人材不足問題は、上記のような問題を把握し、社会全体で取り組むべき課題であるといえるでしょう。
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IT人材の不足は、企業にとって深刻な課題といえます。
ここでは、過去から未来を予測した試算データや、企業の人材不足に関する調査結果をご紹介します。日本におけるIT人材不足の現状について、詳しく見ていきましょう。
みずほ情報総研株式会社(経済産業省委託事業)の「IT人材受給に関する調査」によると、2030年には最大78.7万人ものIT人材が不足すると予想されています。
以下の図は生産性向上率※1を0.7%、IT需要の伸びを「高位」※2とした場合、供給される人材数に対して、2018年から2030年に渡りIT人材の不足数が徐々に増加し、2030年には78.7万人も不足するという予想を棒グラフにしたものです。
IT産業への需要が今後も伸び続けた場合、IT人材の供給が追いつかず、IT人材不足が年々深刻化すると予測されています。
出典:「みずほ情報総研株式会社|IT人材需給に関する調査」
(https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf)
※1 生産性向上率:「労働投入量に対する算出成果物の比率」。1人あるいは1時間の成果物産出量を示す指数。グラフに示される0.7%は2010年代の労働生産性上昇率の年率平均値。
※2 高位:低位と中位と高位の3つの条件を設定し、最もIT需要の伸びが「高位」になる条件を示す。
独立行政法人情報処理推進機構の「デジタル時代のスキル変革等に関する調査(2022年度版)」によると、代理店やSIerなどのIT活用を支援するIT企業・事業会社※3の両方において、質・量ともに7割以上の企業がIT人材不足を感じていることがわかりました。
出典:「独立行政法人情報処理推進機構|デジタル時代のスキル変革等に関する調査(2022年度)企業調査報告書」
(https://www.ipa.go.jp/jinzai/chousa/ps6vr7000000z6cc-att/skill-henkaku2022-kigyou.pdf)
※3 この調査では、IT企業とは受託開発ソフトウェア業、組み込みソフトウェア業、パッケージソフトウェア業、情報処理サービス業、情報提供サービス業、その他情報サービス業を指し、それ以外を事業会社と定義している。
次に、IT人材の確保状況を中小企業庁の「2021年度版 中小企業白書」公開の資料から確認してみましょう。
以下のグラフはIT人材の確保状況を示しており、半数以上の中小企業がIT人材を「確保できていない」ことがわかりました。特に、「デジタル化の取り組み全体を統括できる人材」や、「ITツール・システムを企画・導入・開発できる人材」の確保に難航している様子がうかがえます。
出典:「中小企業庁|2021年版 中小企業白書 第2節 中小企業におけるデジタル化に向けた現状」
(https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2021/chusho/b2_2_2.html)
前段でもご紹介したように、IT人材不足の大きな原因の一つは、IT人材の需要と供給のバランスが悪いことです。
日本政府は2018年から、産業に対するDX化(デジタルトランスフォーメーション※4)の必要性を唱えてきました。そして、コロナ禍によりDX需要がさらに顕在化。近年では、IoTやビッグデータ解析・AI活用など、「第4次産業革命」とも呼ばれる技術革新が急速に進み、その結果、国内のIT市場はますます拡大しました。
その一方で、前段でも解説してきたように、IT市場の拡大に対してIT人材の供給が追いついていません。IT人材は、新卒や若手人材の増加により全体として母数は増えているものの、IT需要の伸びには追いついていないため、結果的にIT人材不足に陥っています。
IT関連産業の従事者数は増加しながらも、予想よりもはるかにIT産業の需要が伸びると予想されているため、今後もIT人材不足の状況は続くでしょう。
※4 DX:「Digital Transformation」の略。デジタル技術を活用して、業務プロセスを改善したり、ビジネスモデルそのものを変革したり、競争優位性を確率すること。
IT人材不足は今後も続くと予想されていますが、具体的にはどの分野や職種でIT人材不足が進んでいるのでしょうか。これからご紹介する分野や職種が、今後特に人材の確保が難しいと言われています。
どの分野と職種で人材不足が著しいのか確認してみましょう。
情報セキュリティ人材とは、情報セキュリティ分野の専門家や技術者を指します。企業の情報システムやネットワークを保護し、サイバー攻撃やデータ侵害、その他セキュリティの脅威となることから防御する技術を取得した人材です。具体的には、以下のような職種があります。
職種例:セキュリティアナリスト、セキュリティコンサルタント、セキュリティアーキテクト、セキュリティエンジニア、セキュリティマネジメント、CISO(Chief Information Security Officer)※5など
ISC2※6の2023年の調査報告書によると、日本におけるサイバーセキュリティ人材は48万659人に達し、過去最多となっています。
人材の数は増加傾向にあるにもかかわらず、サイバーセキュリティ人材の需給ギャップは過去最大に達しており、依然として需要が供給を上回っていることがわかりました。日本のデジタル資産を保護するために、今後はさらに約11万人の専門家が必要であると試算されています。
出典:「ISC2, Inc.のプレスリリース|ISC2、サイバーセキュリティ人材の需給ギャップに関する調査結果を発表:日本のサイバーセキュリティ人材が48万人強に増加した一方、未だ11万人に及ぶ記録的な人材不足に陥っていることが明らかに」
(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000103584.html)
世界でも同様の傾向が見られ、その中でも特に目立つのが、日本とインドであると報告されています。
※5 CISO:Chief Information Security Officerの略。最高情報セキュリティ責任者のこと。
※6 ISC2:International Information System Security Certification Consortiumの略。サイバーセキュリティ専門家のトレーニングと認定を専門とする非営利組織。
先端IT人材とは、先端IT従事者とも呼ばれ、最先端技術を扱う知識・スキルを持つ高度IT人材を指します。クラウドコンピューティング、ビッグデータ、IoT、AIなどの先端技術を扱う人材です。具体的には、以下のような職種があります。
職種例:データサイエンティスト、IoTエンジニア、データエンジニア、AIエンジニアなど
みずほ情報総研株式会社(経済産業省委託事業)の「IT人材受給に関する調査」によると、IT需要の伸びが2%~5%ほどの「中位」だった場合、2030年時点で従来型IT人材※7は9.7万人余る一方で、先端IT人材が54.5万人不足するという試算結果が出されました。
また、独立行政法人情報処理推進機構による「デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査」では、2019年のIT人材全体のうち先端IT人材は11.8%、従来型IT人材は88.2%と算出されました。いかに先端IT人材が希少な存在かがわかります。
先端IT技術者は、最先端技術を扱う知識・スキルを持つ高度IT人材であるため、現在のIT技術の進歩にその数が追いついていません。IoTやビッグデータ解析・AI活用などの市場は今後も拡大することが予想されるため、先端IT人材の需給ギャップもますます拡大していくと見込まれます。
※7 従来型IT人材:従来のシステム請負開発、運用・保守などに従事している人材。
DXを推進する人材に関して明確な定義がないものの、経済産業省は以下のような人材を想定しています。
上記の人材像からもわかるように、実際にDXプロジェクトを推進する際には、デジタル技術に精通しているだけではなく、事業部側にDXを正しく理解させながら、同時にプロジェクトを統括して進めていける人材が必要です。
具体的には、以下のような職種があります。
職種例:ビジネスプロデューサー、ビジネスデザイナー、ビジネスアーキテクト、データサイエンティスト、プロダクトマネージャー、ソフトウェアエンジニア、プログラマー など
日本では、近年DXに取り組む企業が増加しています。独立行政法人情報処理推進機構の「DX白書2023」によると、2021年度にDXに取り組む企業の割合は55.8%でしたが、2022年度には69.3%に増加しています。
一方で以下の図表では、DX化を推進する企業の8割以上が、DXを推進する人材に対して、質・量ともに不足を感じているという調査結果が出ました。
DXの一番の目的は、事業改革です。DXを推進する人材はどの企業でも欲しい人材ですが、この段落でご紹介したように、人材の供給自体は徐々に増えている一方で、人材の需要がそれ以上に伸びているため、企業の人材不足感が大きくなっているのです。
出典:「独立行政法人情報処理推進機構|DX白書2023」
(https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/gmcbt8000000botk-att/000108048.pdf)
この記事では、IT人材不足についてその現状と原因、IT人材不足の分野や職種について解説してきました。IT人材が不足し続けると、情報セキュリティリスクが高まるだけでなく、システム開発が遅れる、自社エンジニアの負担が増すなど、さまざまな問題が発生します。
そこで、IT人材不足の解消に向けて企業が取るべき対策を5つご紹介します。
ただし、この中のどれか一つに取り組めば十分ということはありません。自社のIT人材不足の解消に向けて効果を高めるには、対策を複数取り入れながら総合的に取り組むことが大切です。
以下を参考に、自社が取り組めそうな対策をいくつか検討してみてください。
内閣府の「令和4年度年次経済財政報告」では、日本のIT人材の72%がIT企業で雇用されており、非IT企業に従事する人材は28%に止まっており、IT人材がIT企業に偏っていることが指摘されました。
転職によるIT人材の流動性は高まりつつあるものの、非IT企業は人材確保に苦労しているのが現状でしょう。
その課題を解消するために、アウトソーシングや人材派遣などを活用することが有効です。外部リソースをうまく活用することで、自社にIT人材を採用・育成する余力がなくても、経験者やスキル保持者に開発事業に従事してもらうことが可能になります。
ITアウトソーシングを請け負う企業は、ITに関する技術を持つだけでなく、トレンドにも素早く対応できます。トレンド把握に時間がかかる自社と違い、より迅速な対応により、対応の遅れによるミスも減らすことが可能になるでしょう。
「専門的な業務」「スポット※」「業務の効率化」…そのお悩み、「Nにおまかせ!」人材不足解消の対策をトータルでご提案!
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社内人材のリスキリングやアップスキリング※8を促し、社内人材を育成していくことで、人材不足を解消する方法もあります。
政府もリスキリングやアップスキリングを推奨しており、助成金などの支援(次段の「助成金を活用する」で詳しく解説します)や、「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」などを設けています。このような公的な支援や制度を活用するのも一つの手段になるでしょう。
また、高度スキル人材を確保できないため、IoTやRPAなどの活用が進められておらず悩んでいる中小企業も多いのではないでしょうか。しかし、中小企業のDX推進においては、高度なスキルを持つデジタル人材がいない場合でも、デジタル化を進めることは可能です。
たとえば、デジタル化に対する戦略立案やマネジメント・プロジェクト推進などのビジネススキルを中心に、社内人材を育成したり、登用したりする方法もあります。ほかにも、プログラム開発ができなくても、ノーコードツールやクラウドシステムを活用することで、効果を上げている事例があります。
ビジネススキルやシステム活用について学びの機会を設け、DXを推進していくことも視野に入れてみましょう。
※8 アップスキリング:既存のスキル向上を指し、より高度な知識やスキルを身に付けること。または、業務上必要となる知識や能力・スキルをアップデートすること。
政府は2022年10月に「リスキリング支援として5年間で1兆円を投じる」方針を示しました。政府だけでなく、地方自治体もIT人材のリスキリングやアップスキリングに補助金制度を設けています。IT人材を育成しようと検討している中小企業は、ぜひご検討ください。
IT人材の育成に利用できる補助金制度は、たとえば以下のようなものが挙げられます。
IT人材の育成に利用できる助成金制度 例
厚生労働省の「人材開発支援助成金」では、2022年から「人への投資促進コース」が新設されました。また、IT分野未経験者向けの育成コースや、高度人材育成のコースなどが設けられており、目的や状況に応じて訓練メニューが選べるようになっています。訓練内容によっては、最大75%の経費助成を受けられるケースもあります。
しかし、助成金の申請は煩雑になりやすく、手続きに手間がかかる点がデメリットです。助成金によっては条件が違うこともあり、一番適した助成金がどれかわからないこともあるでしょう。そのような場合は、助成金申請をサポートしてくれるサービスもあるため、ぜひ一度検討してみてください。
「Nにおまかせ!」では「補助金活用サポートサービス」を提供しています。補助金申請にお悩みの方はぜひ一度ご検討ください。
詳しくはこちらIT人材を採用するにあたり、従来の採用戦略そのものを見直すことも大切です。その理由は、IT人材は即戦力になる人材の採用が難しく、求人倍率も高い傾向にあり、非常に採用が難しい領域になっているためです。
採用計画と採用後の人材育成プログラムの両方を組み合わせ、人材戦略を見直してみると採用の幅が広がるかもしれません。たとえば以下のような例が挙げられます。
人材戦略の見直し例
また、そもそも必要な人材について定義できていないケースも少なくありませんが、求めるスキルや人物像を明確化することも、極めて重要な施策の一つです。
求める人物像やスキルを明確にすることで、以下のようなメリットが生まれ、人材採用計画に良い影響を与えます。採用戦略を見直す際には、ぜひ一度取り組んでみてください。
求める人物像やスキルを明確化することのメリット
人材の標準的スキルについては、経済産業省や独立行政法人情報処理推進機構が公表している「デジタルスキル標準」、「DX推進スキル標準(DSS-P)」、「ITSS+」などを参考にしてみましょう。
また、中小企業では、採用体制が整っていないことがIT人材確保の課題となっているケースも多くあります。採用にかけるリソースやノウハウが足りない場合には、採用代行サービス(RPO)※9を利用することも検討に入れてみてください。RPOを活用することで、採用のリソースやノウハウを補うことができ、採用活動を進めやすくなるでしょう。
※9 採用代行サービス(RPO):「Recruitment Process Outsourcing(リクルートメント・プロセス・アウトソーシング)」の略語。採用業務を外部に委託すること。
採用のバックオフィス業務を、必要な分だけ専門人材に依頼しませんか?採用のオペレーション業務は「Nにおまかせ!」
詳しくはこちら2024年7月の某転職サイトの求人倍率を見ると、ITエンジニアの求人倍率は10倍以上になり、いまやIT人材は売り手市場、引く手あまたの存在です。競争の激しいIT人材採用市場の中で、自社を選んでもらうには、「入社したい魅力がある」「参画したいプロジェクトがある」といったメリットを出していく必要があるでしょう。
IT人材は、転職時に前職よりも高給・好待遇を重視する傾向があります。そのため、他社よりも少しでも給与を高くする、テレワークを導入し働きやすい環境を提供するなど、魅力的に感じる制度を整備することも重要です。
IT人材不足は、いまや日本の将来をも揺るがす問題です。特に2030年に向けて、大幅なIT人材不足が試算されているという現状を認識せざるを得ません。
この記事では、急激なIT市場の拡大により、IT人材の供給が追いつかないことを解説しました。その中で特に、情報セキュリティや先端IT、DX化という分野で著しい人材不足が起きていることがわかりました。
また、IT人材を確保するためには、アウトソーシングサービスや人材派遣などの手段を用いるとともに、自社人材にはリスキリングやアップスキリングを行っていくことが大切です。そして、助成金制度の活用、採用・育成戦略見直し、高度技術職の待遇改善なども重要な取り組みです。
自社でこれらの対策を行うのは難しいとお考えの場合は、ぜひ一度「Nにおまかせ!」をご検討ください。IT人材不足のお悩みの解決をめざしましょう。
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