公開日:2025.08.13
この記事で
わかること
目次
資金調達・補助金・コスト軽減についてのお悩みのヒントに!
資金調達を検討する際、「融資」「出資」という用語が頻繁に登場します。自社にとって適切な方法を選択するためにも、それぞれの定義を整理しておきましょう。
「融資」とは、銀行や信用金庫などの金融機関が、事業者に一定期間お金を貸し付け、利息を含めて返済を求める仕組みです。借りた資金は、契約で定められた期間内に元本と利息を返済する必要があります。
「出資」とは、将来的な利益を見込んで企業や事業に資金を投じることです。投資家は、出資先の成長にともなう配当や株価上昇によるキャピタルゲインを得られますが、企業の業績が悪化した場合、投資家は損失を被るリスクもあります。また投資家は企業の経営に関与する権利をもつ場合があるため、意思決定に影響を及ぼす可能性があります。
ここからは、「融資」と「出資」に焦点を当てて解説します。
融資と出資はどちらも資金調達の手段ですが、目的や条件に大きな違いがあります。以下の5つの観点で、それぞれの特徴を比較してみましょう。
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融資 | 出資 | |
---|---|---|
資金提供者 | 銀行・信用金庫・日本政策金融公庫などの金融機関 | ベンチャーキャピタル・個人投資家など |
資金提供の目的 | 利息収益 | 株式売却益や配当収益 |
返済義務 | 元本+利息の返済が必要 | 返済義務なし |
財務諸表上の扱い方 | 負債として計上(借入金の増加) | 純資産として計上(資本の増加) |
どのような事業者に向いているか |
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融資の提供者には、銀行や信用金庫、日本政策金融公庫などの金融機関が挙げられます。これらの機関は、利息収益を目的として資金を貸し出します。
一方で、出資の提供者は、ベンチャーキャピタル※1やエンジェル投資家※2などが中心です。これらの投資家は、成長が期待される企業に資金を提供し、その見返りとして株式などを取得します。
融資と出資は、どちらも資金を提供する点では共通していますが、融資は事業の返済能力(信用力)、出資は成長性を重視する点が異なります。
※1 ベンチャーキャピタル:成長が見込まれる未上場企業などに出資し、企業価値向上後の株式売却などで利益を得るファンドを運営する会社。
※2 エンジェル投資家:スタートアップや創業初期の企業に出資し、成長を支援する個人投資家。
融資の目的は、金融機関が利息収入を得ることです。そのため、融資を受ける企業に対しては、事業の成長性よりも「確実に返済できるかどうか」が重視されます。安定した売上や明確な返済計画が求められるため、スタートアップ企業の場合は審査のハードルが高くなるケースもあるかもしれません。
一方、出資の目的は、株式の価値が上がった際の売却益を得ることです。投資家は企業の成長によるリターンを期待して出資するため、出資を受ける側は、事業の成長性や将来の市場規模を投資家に示す必要があります。
このように、融資は返済能力の高さが、出資は成長のポテンシャルが重要視されると考えられます。事業の状況に応じて、適切な資金調達方法を選ぶことが大切です。
融資を受けた場合、元本と利息を決められたスケジュールで返済する義務があります。返済が滞ると信用情報に影響を与え、追加融資が受けにくくなり、注意が必要です。
一方、出資は自己資本として計上されるため、返済義務はありません。投資家は、株式の売却益や配当を通じてリターンを得るため、資金提供を受けた企業が直接返済する必要はないといえます。
ただし、事業が成長しなかった場合は、投資家へのリターンを十分に提供できず、追加の資金調達が難しくなるケースもあるかもしれません。
融資と出資では財務諸表上の処理方法が異なり、経営判断や金融機関の評価に影響を与えることがあります。そのため、資金調達の際には財務への影響を考慮することが大切です。
たとえば、融資を受けた場合、資金は「負債(借入金)」として計上されます。その結果、貸借対照表の負債が増加し、自己資本比率が低下します。自己資本比率が低いと、金融機関や投資家から「財務の安定性が低い」と判断され、追加の資金調達が難しくなる場合があるため注意が必要です。
一方、出資による資金調達は「純資産(資本金)」として計上されるため、自己資本比率が向上し、財務の健全性が高まるメリットがあります。とくに今後の資金調達を考えている場合、自己資本の充実は金融機関や投資家の信頼獲得につながる可能性があります。
資金調達を考える際に、融資と出資のどちらが適しているかを迷う経営者は多いでしょう。
もし、安定した売上があり、返済計画をきちんと立てられるのであれば、融資が適しています。とくに、既存事業の拡大や設備投資・運転資金の確保を目的とする場合、融資を活用することで 、経営の自由度を維持しながらの資金調達が可能です。金融機関の信用を維持しやすい点もメリットといえます。
一方、新規事業の立ち上げやスタートアップ企業など、成長の可能性が高く、返済リスクを抑えたい場合には出資がおすすめです。出資は返済義務がなく、事業拡大に向けた資金を確保しやすいほか、投資家の知見やネットワークを活用できる点も魅力といえます。ただし、経営の自由度が下がる可能性があるため、長期的な視点で判断するのがよいでしょう。
どちらの方法を選ぶかは、事業の成長性や財務状況、将来のビジョンによって異なります。慎重に検討し、自社に合う資金調達方法を選択することが重要といえるでしょう。
資金調達を検討する際は、自社の事業規模や成長性を考慮した選択が大切です。以下では、融資と出資のメリットを比較し、どのような状況に向いているのかを解説します。
まずは融資を受けるメリットを紹介します。
融資のメリットは、金融機関などの資金提供者が事業運営に関与しない点です。融資の目的は利息収益のため、企業の経営方針や意思決定に対して意見することは基本的にありません。
そのため、経営の自由度を維持したまま資金調達が可能といえます。とくに、経営権を守りながら事業拡大をめざす場合には、融資が適しているでしょう。
融資は、事業の安定性や信用力が評価されれば、比較的まとまった資金を一度に調達しやすい手段です。とくに、設備投資や事業拡大などの大きな資金が必要な場面では、融資の活用により計画的な資金調達が可能と考えられます。
また、返済を滞りなく行うことで信用力を維持でき、追加の融資を受けやすくなるメリットもあります。安定的に事業を成長させながら、継続的な資金調達の可能性を広げる点でも、融資は有効な選択肢といえるでしょう。
つぎに、出資を受けるメリットを紹介します。
出資を受ける際の大きなメリットは、資金調達後に返済する義務がないことです。融資では、元本と利息の支払いが求められますが、出資の場合はその必要がありません。
そのため、調達した資金をすべて事業の成長や拡大に充てられます。とくに、成長速度を重視するスタートアップ企業や、新規事業の立ち上げ段階にある企業にとって、出資は有効な選択肢となるでしょう。
融資では返済能力が厳しく審査されるため、事業実績や信用力が低い企業は資金調達が難しくなる場合があります。しかし、出資は企業の成長性や市場での将来性が評価されるため、現在の信用力が低くても資金調達が可能です。
たとえば、革新的な技術やビジネスモデルをもつ企業が、投資家の関心を引きつけることで、事業の初期段階から大規模な資金調達を実現するケースも考えられるでしょう。
出資を受けると、資金提供者である投資家やベンチャーキャピタルからのサポートを受けられることも大きなメリットです。多くの投資家は過去に多数の企業へ出資した経験があり、事業成長に関するノウハウをもっています。
そのため、経営戦略のアドバイスを受けられたり、ビジネスネットワークを紹介してもらえたりする機会が増える可能性があります。さらに、他の投資家を紹介してもらえるケースもあり、これらのつながりが事業成長の加速につながることも期待できるでしょう。
融資・資金調達についてのお役立ち情報を見る
詳しくはこちら資金調達を検討する際には、メリットだけでなくデメリットも把握することが大切です。
まずは、融資を受ける場合のデメリットを紹介します。
融資を受けた場合、元本と利息を決められた期間内に返済する義務があります。たとえ事業が順調に進まなくても、契約に従って返済を続けなければならない点がリスクとなるでしょう。
とくに、創業初期や景気の変動によって収益が不安定な場合、返済負担が経営を圧迫する可能性があるかもしれません。事業の成長スピードに見合った融資額を設定し、事前に無理のない返済計画を立てることが大切です。
金融機関からの融資を受ける際、多くの場合で経営者が連帯保証人になることや担保の提供を求められる場合があります。経営者が連帯保証人となる場合、万が一返済が滞ると、経営者個人が責任を負うことになるため注意が必要です。
また、担保を設定する場合、事業がうまくいかず返済できなくなった際に、担保として提供した不動産や設備が差し押さえられるリスクも生じます。そのため、資産をもたない個人事業主やスタートアップ企業にとっては、融資のハードルが高いと感じることがあるでしょう。
ただし、日本政策金融公庫などの公的融資制度では、担保や連帯保証人が不要なケースもあります。保証の条件が厳しいと感じる場合は、公的融資制度の活用も検討するのがよいでしょう。
つぎに、出資を受ける際のデメリットを紹介します。
出資には返済義務がないというメリットがありますが、その代わりに投資家に利益を還元する場合があります。なかでも株式では、企業が得た利益の一部を配当金として投資家に支払うことがあります。配当を支払うと企業の利益が減少するため、内部留保を増やしたい場合には負担となる可能性があります。
また、投資家への利益還元の一つとして、M&A(企業買収・合併)もあります。これは、成長した企業を第三者に売却することで、投資家が出資額以上の利益を得られる仕組みです。経営者がM&Aを望んでいなくても、投資家の意向によって売却を求められるケースがあるため注意しましょう。
出資を受けると、投資家が株主として企業の経営に関与する権利をもつこともあるため、経営の自由度が下がる可能性があります。とくに投資家の株式取得率が高い場合、経営方針の決定に大きな影響を与えるリスクが生じるかもしれません。場合によっては、経営者がめざしていたビジョンが実現しにくくなることも考えられます。
こうした影響を避けるためには、投資契約の際に経営のコントロール権や意思決定のルールを明確にしておくことが大切です。
企業が融資を受ける際には、資金提供元や審査基準を把握し、適切な方法を選ぶことが大切です。融資を相談できる主な機関には、以下が挙げられます。
それぞれの機関には特徴があり、審査基準や金利、返済条件が異なります。また、融資を受ける際の大まかな流れは、以下のとおりです。
<融資を受けるまでの流れ>
申し込みをスムーズに進めるためには、事業計画書の精度を高め、収益モデルや返済計画を明確に示すことが大切です。また、どの融資制度を利用するかによって、提出する書類や審査基準が異なるため、事前に各機関の融資条件を確認しておくとよいでしょう。
企業が資金調達の手段として出資を受ける方法はいくつかあり、主に以下が挙げられます。
なかでもベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの出資は、多くのスタートアップ企業が活用する手段といえます。出資を受ける際の基本的な流れは、以下のとおりです。
<出資を受けるまでの流れ>
経営計画・事業計画の策定
投資家に対して魅力的な提案を行うために、ビジネスモデルや市場成長性を明確に示した事業計画書を作成する
問い合わせ・交渉
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家などと接触し、事業の将来性や出資のメリットなどをプレゼンテーションする
審査
投資家が事業の成長性や財務状況、リスクを分析して出資の可否を判断する
契約
出資条件や株式の割合などを決定し、投資契約を締結する
出資実行
出資金を受け取った後、事業の成長を加速させるための施策を実施し、場合によっては投資家からのサポートを受ける
出資を受ける場合、事業の成長性や将来のビジョンを明確に伝えることが大切です。また、投資家との関係が経営に影響を与える可能性があるため、条件交渉の段階で慎重に検討する必要があるでしょう。
融資と出資には「資金提供者」「資金提供の目的」「返済義務」などに違いがあるため、それぞれの特性に応じた準備が必要となります。
融資を受ける際、金融機関や日本政策金融公庫などが重視するのは、企業の「信用力」です。信用力とは、事業が安定して利益を生み出し、融資を受けた資金を確実に返済できるかどうかを示す指標であり、その評価で融資の可否や条件が決まります。
融資審査では、事業計画書や決算書などを提出し、将来的な収益見込みを根拠とともに示す必要があります。そのため、事業計画書には具体的なビジネスモデルや収益構造、資金の使い道を明記し、融資する側が納得できる内容を整えることがポイントとなるでしょう。
また、自己資金の有無も審査のポイントとなる可能性があります。自己資金が多いほど、金融機関は経営者の本気度を評価し、融資の承認を得やすくなります。自己資金が不足している場合は、希望額の融資を受けられない場合もあるため、計画的に資金を準備しておくことが大切です。
出資を受ける際には「事業の将来性」が重視されます。投資家は提供した資金のリターンを期待しているため、事業が成長し続ける可能性があるかどうかを慎重に判断します。
そのため、出資を受ける企業は、市場における競争優位性や独自性を明確に示し、投資家にアピールすることが大切です。また、市場規模の拡大や事業がスケールアップできる可能性を示すことも効果的といえます。
投資家との交渉では、事業のビジョンや成長戦略、収益モデルをわかりやすく伝え、「この事業であればリターンが期待できる」と感じさせることが成功のカギとなります。資料作成の際には、市場分析や収益予測、競争優位性を示すデータを盛り込み、説得力のあるストーリーを構築することが大切です。
資金調達の手段として、融資や出資以外に補助金を活用するという選択肢もあります。補助金は、国や地方自治体が企業の成長や事業拡大を支援するために提供する資金であり、返済義務がないのが特徴です。
たとえば「IT導入補助金2024」では、最大3,000万円※3の補助を受けることが可能でした。この補助金は、業務の効率化や生産性向上を目的としたITツールの導入を支援する制度であり、中小企業や個人事業主にとって大きな助けとなり得ます。
ただし、補助金は基本的に「後払い方式」となる点には注意が必要です。事業者は先に対象となるシステムや設備を導入し、その後補助金を受け取る仕組みとなります。そのため、補助金を利用する場合でも、一時的に自己資金や融資などで費用をまかなう必要があることと、必ずしも採択されない可能性がある点を留意しておきましょう。
なお、補助金の種類や申請条件は年度ごとに変更されるため、常に最新の情報を確認し、自社の事業計画に適した補助金があるかを見極めることが大切です。
※3 最大3,000万円:IT導入補助金2024「複数社連携IT導入枠」を活用した場合
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詳しくはこちら事業の資金調達には、融資と出資の2つの方法があります。融資は返済義務があるものの、経営の自由度を保ちながら資金を確保できるのが特徴です。一方、出資は返済不要ですが、利益の分配や経営権の一部譲渡が求められる可能性があります。どちらを選ぶかは、事業の状況に応じた慎重な判断が必要といえます。
また、資金調達の手段として補助金の活用も有効です。補助金は返済不要の資金調達方法ですが、申請には細かい要件や手続きがあり、適切な準備が求められます。活用する際には専門的なサポートを受けるとスムーズに進められるでしょう。
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