公開日:2024.05.23

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わかること
目次
近年、企業を取り巻く環境は移り変わりが早く、経営戦略をしっかりと立てておくことが大切です。しかし、経営戦略を立てるといっても、具体的なプロセスや考え方を知らないと効果的な戦略を立てることが難しいものです。このような状況の中、今後の企業経営をどう舵切りするのか頭を悩ませている経営者や担当者の方は多いと思います。
そこで今回の記事では経営戦略の種類や立て方、成功するためのポイントについて解説します。自社の経営戦略をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

経営戦略は企業の成長を目指した長期的な計画です。企業が経営戦略を重視すべき背景には外部・内部の環境変化の激しさが挙げられます。ここでは経営戦略の定義のほかに、戦略の策定に必要となるプロセスや経営戦術との違いなどについても解説します。
経営戦略とは企業が掲げるビジョンや、経営目標の達成に向けた計画全般を指します。また、企業全体の方針に加えて、組織体制づくりや財務に関する方針など、さまざまな要素が含まれます。経営戦略は市場競争において優位性を確保し、企業の成長と発展を図るために重要です。
企業が保有する経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報等)は有限であり、企業が掲げるビジョンや目的に応じて、適切に配分することが求められます。経営戦略は企業の将来像を描き、その達成のための道筋を定めるもので、事業を行ううえで重要なプロセスの一つです。
経営戦略は市場や業界の変化に対応し、競争優位を確立するために必要です。例えば、現代で経営戦略が必要となる背景には、以下のような環境の変化への対応が挙げられます。
例えば、消費者ニーズが多様化している現代では、1つの商品を提供するだけではお客さまのニーズを満たすことができず、売上拡大にはつながりません。このように、経営戦略は外部環境の変化に対応して企業の目標達成を実現するために重要です。また、自社の競争優位性を生みだすためにも重要な役割を担います。
経営戦略は企業の方向性を示すものであり、経営戦術は行動計画を実行するための具体的な手段です。戦略は「何をするか」を、戦術では「どのように実行するか」を定めます。
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| 経営戦略 | 企業目標達成のための方向性を決める |
|---|---|
| 経営戦術 | 経営戦略を意識しながら具体的な施策を決める |
例えば、戦略として新市場への進出を目指す場合、戦術はその市場での製品価格設定や販売チャネルの選定などを指します。そのため、戦略と戦術には相互関係があり、戦略による方向性が定まらなければ、戦術という具体策が決定できません。戦略は中長期的に効果を求めるのに対し、戦術は短期間で実施・振り返りを行い、内容を精査し続けることが重要です。

経営戦略が指す範囲は広く、対象と範囲の違いを以下3つの段階に分類して考えることが大切です。
本章では、それぞれの経営戦略を策定する方法について解説します。
企業戦略とは企業全体として、どの事業領域で活動するのか定め、どの立ち位置で成長を目指すのかを決める最上位レベルの戦略です。企業戦略は企業として今後どう動くべきかを検討します。検討の際には、まず以下について明確にします。
経営理念、経営ビジョン、経営目標は企業が掲げる中長期的な将来像を具体的な方針として示すものです。掲げた将来像をもとに、「新規事業の開発」や「新市場の開拓」「既存事業の拡大」といった将来像の実現に向けた企業戦略を策定します。企業戦略は経営戦略の3つの段階のうち最初に決める戦略で、これにより企業の目指すゴールへのおおまかな見通しが立ち、次に行う事業戦略の立案に繋がります。
事業戦略とは企業の事業単位に焦点を当てた戦略で、経営目標を実現させるための事業ごとの方向性を指します。
事業戦略は市場の需要や競合環境、技術の進化などを考慮して、競合他社に対する競争優位を確立する戦略を策定することが重要です。例えば、以下のような戦略を策定します。
事業戦略は企業戦略を具体的な事業活動に落とし込み、効果的な戦術を策定するために重要です。
機能別戦略とは、事業戦略の実行に向けて現場レベルで方向性を定めるための戦略を指します。各機能部門の効率性と有効性を高め、企業全体の戦略を支えるために重要です。
機能戦略は事業を行うのに必要となる機能部門に焦点を当てます。例えば、小売業であれば組織・商品・販売促進・店舗施設などがあげられます。販売促進であれば、広告活動を行い認知度を向上させるなど、事業戦略に直結した戦略立案を行います。
機能別戦略は企業全体の戦略を実現するために、部署として「どう動けば良いか」を示す方針です。

経営戦略を立てる際には、経営理念・ビジョンの策定から実行・評価のプロセスまで一貫性を持たせます。そのためには、以下のプロセスにしたがって経営戦略を立てることが大切です。
本章では、それぞれのプロセスを具体的に紹介します。
経営理念とビジョンの策定は、経営戦略を立てる上でのゴールを定めることであるため、最初に取り掛かる必要があります。経営理念を社員に浸透させ将来像を明確にした上で、企業の文化やブランド価値の形成へ繋げることも策定する目的の1つです。
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| 経営理念 | 企業がどのような経営をしたいのかを示す 時代の変化に関係なく不変的な考え方 |
|---|---|
| ビジョン | 組織全体の針路を明確にする 経営理念を基にした企業の将来像やゴール |
経営理念とビジョンは組織の目指す方向性を示し、従業員や利害関係者と共通の目標として共有できます。
単なる標語ではなく、目標とすべき具体的な行動と成果につながる、価値ある経営理念・ビジョンを策定しましょう。
外部環境の分析は市場の機会と脅威を理解し、戦略に向けた課題の抽出を目的に実施します。自社の外部における、以下のような要因が経営戦略に影響を与えるため分析が必要です。
外部環境分析には大きく分けて マクロとミクロの2 種類あり、分析を行う際にはそれぞれ次のようなフレームワークが活用できます。
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| 大きな視点で行う 「マクロ環境分析」 |
PEST分析 | 4つの要因に分類し、自社に与える影響を読み解く
|
|---|---|---|
| 小さい視点で行う 「ミクロ環境分析」 |
ファイブフォース分析 | 自社の脅威を5つの要因に分類して収益性を分析
|
外部環境の分析により、企業は市場での自社の立ち位置を明確にし、市場の機会と脅威を把握することができます。そのため効果的な戦略の策定につながります。
内部環境の分析は、自社の内部にある要因を分析した上で組織の強みと弱みを把握し戦略を立てることを目的に行います。組織のリソースやプロセスなど、内部要因が戦略の成功に大きく影響を与えます。
分析には以下のような手法が活用できます。
内部環境の分析により組織の強みや弱みを理解し、効果的な戦略を策定するための気づきが得られます。また、内部環境分析と外部環境分析の両方を分析するフレームワークとして、SWOT分析があります。SWOT分析では企業の内部環境(強みと弱み)と外部環境(機会と脅威)をマトリックスで一元化し多角的に分析することで、自社の市場機会や事業課題を見極めることが可能です。
戦略オプションの立案と選択は競合の動向などの外部環境と自社の強みや弱みを考慮し、組織が追求すべき具体的な戦略の道筋を定めるプロセスです。複数の戦略オプションを考慮することで、最適な方向性を決定します。
選択の際は戦略オプションごとに、必要なリソースや実行の難易度を検討し、実行する戦略に優先順位を付けます。
戦略オプションの立案と選択は、組織の目標と外部・内部環境との適合性を評価し、戦略の方向性を決定することが重要です。
戦略の実行は、戦略に基づいたアクションプランの策定・必要なリソースの割り当て・進捗のモニタリングなどが実行フェーズに含まれます。実行を主導するリーダーが周りの人を巻き込みながら、計画された目標を達成するため前向きに取り組みましょう。
戦略の評価はバランス・スコアカードを用いて戦略の効果を測定し、必要に応じて調整を行います。バランス・スコアカードは4つの視点から経営を評価するシステムです。
市場環境の変化や予期せぬ挑戦に対応し、戦略の有効性を継続的に確保するには、定期的な評価が必要です。評価を行う方法としては、以下のようなものがあります。
戦略の評価は戦略が目指す成果を達成しているかを検証し、必要に応じて戦略の修正を行うことが目的です。

経営戦略は策定段階から周到な準備をしていることが重要です。経営戦略を成功させるポイントは主に以下の3つが挙げられます。
本章では、それぞれの特徴をわかりやすく紹介します。
経営戦略には、フレームワークを活用した包括的な分析を行うことが大切です。フレームワークを用いることで体系的に分析を行い、戦略の方向性を決定する際に役立ちます。
フレームワークにはさまざまな種類があり、自社の目的や課題に合わせて適切なフレームワークを選ぶことが重要です。例えば、3C分析は顧客・競合他社・自社の状況を分析するために使います。
フレームワークは経営戦略の立案において洞察力を高め、より有効な戦略を導き出す手段です。
経営戦略の成功は自社の強みを理解し、それを市場で最大限に活かすことがポイントです。自社の強みを活かすことで競合と差別化が図れ、顧客へ独自の価値を提供できる可能性が高まります。
自社の強みは以下の経営資源の中から特定することもできます。競合他社との比較や市場全体を俯瞰して見ることを繰り返し行うことで自社の強みを理解しましょう。
自社の強みを明確にし、競合他社と差別化することで市場におけるポジションを築くことが、経営戦略を成功させる重要なポイントです。
経営戦略を成功させるためには、外部の専門家の知見や経験を活用することが有効です。新しい視点を取り入れることで従来の思考パターンに囚われず、革新的なアイデアや解決策を見出すことが期待できます。
経営コンサルタント・業界アナリストなどの専門家からアドバイスを受けることで、戦略の質が向上することが期待できます。外部の専門家を活用することで経営戦略に新たな視点をもたらし、より効果的な戦略の立案につながります。
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経営戦略は、それぞれの企業が掲げる理念やビジョン、置かれている環境によって、取るべき戦略が異なります。まずは自社の経営課題を特定し、経営状況を「見える化」した上で自社に適した対策を講じることが重要です。
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監修
税理士法人V-Spiritsグループ代表 税理士・社労士・行政書士・FP
中野 裕哲
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。 税理士法人V-Spiritsグループ代表。年間約1000件の起業相談を無料で受託し、起業家や経営者をまるごと支援。経済産業省後援 起業経営支援サイト「DREAM GATE」で12年連続相談数日本一。 著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)など20冊、累計25万部超
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