DXを成功させる経営ビジョンの作り方|事例や作成時のポイントも解説

公開日:2024.06.17

DXを成功させる経営ビジョンの作り方|事例や作成時のポイントも解説

この記事で
わかること

  • DX経営ビジョンの概要と必要性
  • DX経営ビジョン策定プロセスと注意点
  • DX経営ビジョンの事例と、実現のためのポイント

目次

近年、自社のデジタル化を円滑に進めるために、DXの経営ビジョンを掲げる企業が増えています。DXの経営ビジョン策定を検討している企業の中には、どのように取り掛かれば良いのかお悩みの方がいらっしゃるのではないでしょうか。

DXの経営ビジョンを策定する際は、まず自社の現状を正確に把握することが大切です。その上で、従業員の意見を積極的に取り入れながら計画を進めることが重要です。経営ビジョンには、実現可能な目標を明確に設定し、従業員が理解しやすい言葉を用いて表現しましょう。

本記事では、DXの経営ビジョンがなぜ必要なのか、またその策定方法について詳細に解説しています。さらに、留意すべきポイントや事例も紹介しているので、DXの経営ビジョン策定作成を検討中の企業の方は、ぜひ参考にしてみてください。

1.DXの経営ビジョンとは?その必要性も解説

DXの経営ビジョンとは?その必要性も解説

DXとは「Digital Transformation」の略であり、デジタル技術を駆使して業務プロセスやビジネスモデルの変革を図ることを意味します。この章では、DXにおける経営ビジョンに焦点を当て、その概要と必要性について解説します。企業担当者の方はぜひご覧ください。

DXの経営ビジョンとは

DXの推進に際しては、明確な経営ビジョンと戦略を社内全体で共有し、一丸となって取り組むことが不可欠です。
経営ビジョンとは、企業が長期的にめざす理想像や、その達成に向けた具体的な目標を定義したものであり、企業の指針となります。経営ビジョンや戦略が不明確だと、従業員は取るべき行動がわからず、結果的にDXの実現が難しくなります。

企業が将来どのような姿になりたいかを明確に描くことが、DX成功の鍵となります。明瞭な経営ビジョンのもと、全社を挙げてDXの取り組みを進め、理想の未来を実現しましょう。

経営ビジョンの必要性

経営ビジョンの策定は、経営陣から一般従業員に至るまで、全員が同じ目標に向かって努力するための指針となります。
このビジョンが組織内でどれだけ浸透し、理解されているかは、企業の将来的な成長と成功の度合いを大きく左右します。

また、経営ビジョンは従業員の判断基準や行動規範の軸となるものです。経営ビジョンを策定・共有することで、会社全体の団結力向上にもつながります。

2.DXの経営ビジョンの策定5ステップ

DXの経営ビジョンの策定5ステップ

DXの経営ビジョン策定は、自社の現状を正確に把握し、外部環境の動向を詳細に分析することから始まります。この章では、DXにおける経営ビジョンの具体的な策定方法について詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。

自社のDX化の現状を把握・分析する

経営ビジョンの策定にあたり、まず重要なステップは、自社の現況を正確に把握し、包括的に分析することです。自社のDXの取り組みがどの程度進展しているか、またどの段階で足踏みしているのかを明確に特定しましょう。

表面的に見える課題だけでなく、潜在的な改善ポイントも発掘して言語化することが重要です。これにより、見過ごされがちな問題点も明らかになり、より緻密な改善計画を立てることが可能になります。

外部環境を調査する

経営ビジョンを策定する際、自社の状況のみならず、外部環境の変化とそれがもたらす可能性のある影響を調査することが重要です。外部環境を正しく把握していなければ、予期せぬ規制に遭遇し実行不能に陥るリスクや、競合企業との競争で劣勢に立たされる可能性があります。

外部環境を分析するときの方法のひとつが、PEST(Politics・Economy・Social・Technology)というフレームワークです。PESTは、政治や経済、社会、技術が自社にどのような影響を与えるのか判断するときに役立ちます。どのような影響があり、そして何を求められているのかを把握し、どうDX化を進めていけば良いか検討しましょう。

DX推進の必要性とめざす姿を明確にする

自社の現状や外部環境の調査が完了したら、実際に経営ビジョンを策定していきます。DXの経営ビジョンには、以下のポイントを盛り込みましょう。

  • DX化を進める必要性
  • DX化によってめざす姿

理想的な未来像を、経営ビジョンとして具体的に言語化することが、非常に重要です。

従業員にヒアリングする

経営ビジョンを策定する上で、従業員から共感を得ることは重要なポイントです。DX化による業務改革が全従業員に及ぼす影響は大きく、会社の目標や業務改善策が明確でないと、従業員からの積極的な支持を得るのは難しいでしょう。

そのため、従業員の意見を経営ビジョンに反映させ、彼らの参加を促すことが重要です。ヒアリングを通じて多様な視点を受け入れ、ビジョンを適宜アップデートすることで、従業員の理解と協力を促進しましょう。

社内で共有する

経営ビジョンが策定できたら、社内へ共有しましょう。全従業員へ共有し、同じ目標を掲げて業務を行っていくことが大切です。経営層だけではなく全従業員と共有することで、トップダウンとボトムアップの両方からDX化を推進する自発的な動きが生まれることでしょう。

3.DXの経営ビジョンを策定するときの2つの注意点

DXの経営ビジョンを策定するときの2つの注意点

DXの経営ビジョン策定にあたっては、以下のポイントに気をつけましょう。

  • イメージしやすい言葉や表現を用いる
  • 実現可能な目標を設定する

この章では、DXの経営ビジョンを策定するときの注意点を解説します。経営ビジョンを従業員に理解・共感してもらうためにも重要なポイントとなるので、担当者の方はぜひご覧ください。

イメージしやすい言葉や表現を使う

経営ビジョンは、従業員のみならず社外の人々にも理解しやすいものにすることが大切です。できるだけわかりやすい言葉と表現を用い、業界専門用語の使用を避けることで、誰もが意味を理解し共感しやすくなります。

客観的に見てどのような表現が適切かを検討し、必要に応じて第三者にアドバイスをもらいながら策定するのがおすすめです。また、その会社ならではのユニークな言葉を経営ビジョンの中に入れると、従業員の共感を得られやすくなるでしょう。

実現可能な目標を設定する

経営ビジョンが実現不可能であれば、その策定は無意味です。目標設定が現実離れしていると、従業員のモチベーションを逆に下げる可能性があります。目標は、自社の現状と能力を考慮し、達成可能な範囲で設定しましょう。

4.DXの経営ビジョンの事例

DXの経営ビジョンの事例

DX推進の際、「どのような経営ビジョンを立てればよいか」について具体的なイメージが浮かばず、多くの経営層や担当者が悩んでいるかもしれません。そのような状況で、成功した事例は非常に価値あるガイドラインとなるでしょう。この章では、DXを成功させた企業の経営ビジョンの事例をいくつか紹介します。

ヘルスケア事業会社

ヘルスケア事業会社では、以下のようなDXの経営ビジョンを掲げています。

「わたしたちは、デジタルを活用することで、一人一人が飛躍的に生産性を高め、そこから生み出される優れた製品・サービスを通じて、イノベーティブなお客さま体験の創出と社会課題の解決に貢献し続けます。」

こちらの企業は、これまでもAIやIoTを活用したDX化に取り組んでいました。DX化のさらなる推進により、2021年にはさらに優れたサービスを提供し社会課題の解決に積極的に取り組むことを掲げるため、DXに関する経営ビジョンを策定しました。製品・サービスDXや業務DX、人材DXを3本柱として掲げ、具体的にデジタル人材の育成や働き方改革などを進めています。

不動産事業会社

不動産事業会社では「DIGITAL FUSION」をビジョンとして掲げ、DX化によって社会のあらゆる境界を取り除き、ありたい姿を実現することを目標としています。2030年にありたい姿になるべくグループ全体でDX化を進め、2023年度には経済産業省と東京証券取引所から「デジタルトランスフォーメーション銘柄2023 (DX銘柄2023) 」に選定されました。

DX銘柄とは、企業価値の向上をもたらすDX化の仕組みを構築し、優れたデジタル活用の実績がある企業のことを指します。DX化戦略や目標実現のための組織・仕組み作り、デジタル技術を使った取り組みが評価され、DX銘柄の選定につながりました。

5.DXの経営ビジョンを成功させる4つのポイント

DXの経営ビジョンを成功させる4つのポイント

DXの経営ビジョンを実現するためには、「優先順位の設定」「DXに精通した人材の確保」など、重要なポイントがいくつか存在します。本章では、DXの経営ビジョンを成功に導くための主要な要素に焦点を当てて解説します。これから経営ビジョンを策定する方はもちろん、既に目標達成に向けて取り組んでいる企業の方も参考にしてください。

優先順位を決める

DXの経営ビジョンを成功に導く上で、社内プロジェクトとDX化の取り組みを明確にリストアップし、それらに優先順位を設定して推進することが重要です。優先順位を決定する際には、業務への影響度を考慮し、従業員の意見を積極的に取り入れることが効果的です。

特に重要なのは、全てのプロジェクトを対象に優先順位を定めることです。重要なプロジェクトを見落としてしまうと、DX化の施策とそのプロジェクトの実施が同時に進むことになり、DXの進捗に遅れが生じたり、最悪のケースでは停滞する可能性が出てきます。

DX人材を確保する

DXの推進に際しては、ITスキルや知識を持つことは基本ですが、それだけでは不十分です。各企業特有の文化や業務プロセスを理解しているDX人材の確保が、成功への鍵となります。業務の進め方や決定プロセスは企業ごとに異なるため、DX施策もそれぞれカスタマイズする必要があります。

他社の成功事例を模倣してDX化を進めることは一つの手法ですが、企業ごとの独自のニーズや文化に合致したアプローチでなければ、期待した効果を得ることは難しいでしょう。またDX人材を確保するため、セミナーを開催したり資格取得の機会を設けたりと、人材を育成する取り組みを行うことが大切です。

経営層が積極的に取り組む

DX化は、日常業務の改善だけでなく、ビジネスモデル、企業文化、組織構造に至るまで幅広い変化をもたらします。これほど大規模な変革を実現するためには、特定の個人や部門だけではなく、組織全体での共同作業が不可欠です。

経営層がDX化に消極的で、その責任を従業員にのみ委ねる状態では、DX推進は困難を極めるでしょう。DXを成功させるためには、経営層が先頭に立って、変革の重要性を認識し、具体的なアクションを取る姿勢を示すことが求められます。

定期的に評価・見直しをする

DXの経営ビジョンは、策定・共有した後も定期的に見直したり進捗状況を確認したりしましょう。進捗状況が想定していた状態と異なる場合は、必要に応じて経営ビジョンを見直すことが大切です。

また、DX化によって業務の進め方が変わるので従業員には大きな負担がかかります。定期的に評価を行い、たとえ細かな成果でも従業員へ共有することでモチベーションの向上につながります。

6.まとめ

まとめ

DX化とは、データやデジタル技術を駆使してビジネスモデルや業務プロセスの革新を図る取り組みです。DX化を推進するにあたり、経営ビジョンと戦略の明確化は欠かせない要素です。このビジョンと戦略を策定する際には、まず自社のデジタル化の現状とそれを取り巻く外部環境の理解から始めることが重要です。

また、経営ビジョンを実現するためには、社内の全プロジェクトの優先順位を見極め、DXに適した人材を確保することが不可欠です。もし経営ビジョンや戦略を策定する上で自社の現状把握ができていないならば、まずは「Nにおまかせ!」の「デジタル化スタート診断」を行ってみましょう。以下のリンクから診断ができるので、企業の担当者の方はぜひご覧ください。

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監修

税理士法人V-Spiritsグループ代表 税理士・社労士・行政書士・FP

中野 裕哲

起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。 税理士法人V-Spiritsグループ代表。年間約1000件の起業相談を無料で受託し、起業家や経営者をまるごと支援。経済産業省後援 起業経営支援サイト「DREAM GATE」で12年連続相談数日本一。 著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)など20冊、累計25万部超

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