公開日:2024.10.16
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わかること
目次
医療現場では、すでにAIが実用化されています。代表的なものとしてAI画像診断が挙げられます。事前に学習した膨大な病変の画像をもとに、患部に病変がないかをリアルタイムに判断可能です。医療現場にAIを活用することで、医療従事者の業務負荷の軽減や、将来予想される深刻な人材不足の有効打になると期待されています。
一方、AI活用の課題はゼロではありません。責任の所在をどうするのか、AIによる誤診や故障による誤動作も想定され得ることです。
本記事では、医療現場におけるAI活用の事例や、AI活用における課題、また喫緊の人材不足などへの対策として「AI活用以外の方法」についてご紹介します。是非参考にしてください。
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資料をダウンロードする(無料)ここからは、医療・福祉の現場が抱える課題と、AIに期待される2つのことについて紹介します。
日本では高齢化に伴い、将来的に医療・福祉分野における人材不足が深刻化すると予測されています。
「2022年版厚生労働白書」によると、75歳以上の後期高齢者数は年々増加傾向にある一方、20〜64歳の現役世代は減少傾向にある現状です。
2024年には、医療・福祉分野で約1,070万人の就業者が求められるのに対し、供給は974万人にとどまり、需要が供給を上回ると見込まれています。
AIの活用は、この深刻な医療・福祉人材不足に対する解決策の一つとして期待されています。
出典:「厚生労働省|令和4年版厚生労働白書」
(https://www.mhlw.go.jp/content/000988388.pdf)
医療現場の人材不足は将来のみならず、喫緊の課題でもあります。人手不足などが原因となり、医療従事者の長時間労働が常態化しているのが現状です。
業務負荷の増大は、医師のモチベーション低下や判断ミスなどのヒューマンエラーを引き起こし、医療の質と安全に影響を及ぼしかねません。
そこで、画像診断AIや問診AIを導入することで、ヒューマンエラーを減少させるとともに、医療従事者の負担軽減も期待できます。
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詳しくはこちら厚生労働省は2017年6月に「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」を開催し、AI活用の重点領域として以下の6つの領域を選定しました。
ここからは、AI活用の6つの重点領域をそれぞれ紹介します。
ここからは、日本の技術力を活かし、比較的実用化が早いとされる4つの領域について解説します。
ゲノム医療は、AI活用の重点領域の一つで、比較的実用化が早いとされています。
ゲノム医療とは、遺伝子(ゲノム)を解析することで個々人に合わせてより効率的かつ効果的な診断や治療を行うことです。たとえば、がんゲノム医療はがんの組織を用いて複数の遺伝子を同時に解析し、患者それぞれの体質や病状に合わせた診療を行います。
【ゲノム医療の取り組み】
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領域 | 我が国の強み(◯)・課題(△) | 厚生労働省の主な施策 |
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ゲノム医療 |
△欧米と比較して取り組みに遅れが出ている |
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画像診断支援では、患者の患部の画像などをAI技術で解析し、疾患の可能性がある部位を画面上に表示することで、医師の正確な診断をサポートします。
画像診断はAIと相性が良く、漏れやミスを防ぐのに効果的です。
【画像診断支援の取り組み】
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領域 | 我が国の強み(◯)・課題(△) | 厚生労働省の主な施策 |
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画像診断支援 |
◯日本の高度な開発技術 ◯診断系医療機器における貿易収支は黒字で、1,000億円の規模を誇る |
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診療方針の決定には、問診や検査など、医師の知識と経験に基づく判断が不可欠です。しかし、属人的になってしまう可能性も否定できません。AIの導入により、これらのプロセスをある程度標準化し、医療の質の向上に期待できます。
【診断・治療支援の概要】
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領域 | 我が国の強み(◯)・課題(△) | 厚生労働省の主な施策 |
---|---|---|
診断・治療支援 |
△医療情報の増加により、医療従事者への業務負担が増している △医師の地域間や診療科ごとの偏在への対応が求められている △難病において、診断の確定までに長期間を要するケースが多い |
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医薬品開発には、長い期間と巨額の投資が必要であり、時には開発中止となるケースも少なくありません。
しかし、AIの導入により、創薬ターゲットの選定(疾患と関連する遺伝子やタンパク質を特定すること)や開発プロセスの効率化が期待されています。
【医薬品開発の概要】
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領域 | 我が国の強み(◯)・課題(△) | 厚生労働省の主な施策 |
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医薬品開発 |
◯日本は医薬品の創出能力を備えた数少ない国の一つ ◯技術貿易収支においても、3,000億円の大幅な黒字を記録している |
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ここからは、現場のニーズを開発に反映する必要がある、またはデータ連携に課題があるため、段階的に進めるべきとされる領域について解説します。
介護現場においては、ロボットの活用が進められています。しかし、現場の多様なニーズを開発にどう反映させるかが大きな課題となっている状況です。
AIを搭載した介護ロボットは、利用者の排泄などの生活リズムを予測できるため、介護従事者の負担軽減につながると期待されています。
【介護・認知症支援の概要】
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領域 | 我が国の強み(◯)・課題(△) | 厚生労働省の主な施策 |
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介護・認知症支援 |
△高齢者の自立サポートの促進 △ 介護スタッフの業務負担を軽減する対策 |
厚生労働科学研究費の助成を受け、介護における早期発見と重症化予防を目的としたデータ収集および予測ツールの開発 |
医師全体の数が2004年から2014年にかけて増加しているのにもかかわらず、外科医の数はわずかに減少しており、中でも40歳未満の若手外科医が減少傾向にあります。
現在、外科医の負担軽減は喫緊の課題であり、AIの導入による解決が期待されています。
【手術支援の概要】
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領域 | 我が国の強み(◯)・課題(△) | 厚生労働省の主な施策 |
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手術支援 |
◯日本は手術データの統合に関する取り組みで先駆的な進展を見せている。 △外科医の人員不足により負担の軽減が必要である。 |
厚生労働科学研究費補助金などを活用し、手術関連データの相互連携を促進するためのインターフェースの標準化 |
医療現場ですでに実用化されている4つのAI活用事例は、以下のとおりです。
ここからは、それぞれを詳しく解説します。
医療現場におけるAIの実用化事例の一つが、AIアプリによる症状チェックです。
このアプリでは、利用者が悩んでいる症状についてAIの質問に答えるだけで、可能性のある病気を表示してくれます。
何らかの病気が考えられる際に、どの診療科を受診すべきか判断が難しい場合でも、AIアプリを活用すれば適切な診療科や病院を見つける手助けをしてくれます。
医療現場では、すでに画像診断も実用化されています。
例えば、大腸内視鏡検査に搭載されたAIによって、医師の目視では見落としがちな微細な病変をリアルタイムで検出し、診断をサポートするなどです。
また、早期胃がんの診断においても、AIの画像認識技術に関する研究成果が報告されており、形状が複雑な場合にも、93.4%の陽性的中率と83.6%の陰性的中率を達成し、専門医の診断精度を上回る結果となったという報告もあります。
医療現場では、がん検査を支援するためにAI技術が活用されています。
がんの診断では、疑わしい箇所を顕微鏡で何度も詳細に確認する必要があり、見落としのリスクが懸念点の一つです。
AIは、大量のがん画像データを学習し、病変の可能性を効率的にチェックした上で、医師の診断をサポートします。
診断の精度が向上し、より効率よく正確な診断に期待できるでしょう。
医療現場では、医師の診断支援にAIが活用され始めています。
患者が診察に問診アプリに入力しておくことで、事前に学習した大量の医療データをもとに、考えられる病名の抽出が迅速に可能になります。
医師は重複した問診を行う必要がなくなり、より正確かつ効率的な診断につなげられるでしょう。
医療現場におけるAI導入にはメリットが多く、すでに実用化も進みつつあります。
しかし、さらなる普及に向け、以下のような課題を解決する必要があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
AIを医療現場に本格的に導入し、その能力を最大限に引き出すためには、質の高い学習データの整備が不可欠です。
AIは、膨大な量の構造化されたデータ(学習に適した形式に整えられたデータ)に基づいて学習を行うため、バイタルサイン情報(血圧、体温、脈拍などの基礎情報)や画像データなど、多岐にわたる医療データを収集・整理する必要があります。
しかし、現状ではこれらのデータが十分に整備されているとは言えません。
また、AI学習のためのデータ収集にあたっては、患者のプライバシー保護に細心の注意を払うことが求められます。
AIが診断を行い、ロボットが手術を行うといった高度な医療が実現した場合、誤診や治療ミスが発生した場合の責任の所在は、大きな問題として浮かび上がります。
現状、AI診療は医師の診断を補助するツールとして位置づけられ、最終的な診断と治療の決定は、医師が行うという形が医療業界における共通認識となっています。
AIは機器である以上、万能ではありません。未学習の症例や複雑な病状に対しては、誤った判断をする可能性があります。
また、AIの判断過程がブラックボックス化(どういう理屈でその判断に至ったのかが判別できない)しやすいという課題も存在するため、最終的な診断は、AIの解析結果を踏まえて、医師が総合的に判断することが重要です。
医療や福祉の現場でAIを普及させるためには、導入や維持に関するコスト問題を解決する必要があります。
医療AIの開発やカスタマイズ、導入、維持には、高度な技術と専門知識が必要であり、それに伴う費用が必要です。
また、院内におけるICT管理のための人材確保や育成も必要となり、これらを総合的に考慮すると大きな費用負担が発生する可能性があります。
医療分野でのAI導入は急速に進展していますが、AIによる診断結果の取り扱いに関する法整備はまだ整っていません。
現状では、AI診断システムは補助的なツールとして使用され、最終的な判断は医師によって確認されています。
医薬品医療機器法や医師法などの関連法規や制度に対する適用方法については、引き続き検討が必要です。
AIは医療の質と安全を向上させる大きな可能性を秘めています。
しかし、その実現には課題があるのも実情です。また医療現場の人材不足は、将来のみならず喫緊の課題でもあります。AI活用以外にも、医療の質と安全を高めるために、以下の2つの方法が考えられます。
ここからは、上記2つそれぞれを詳しく解説します。
医療の質と安全を向上させるためには、医療現場のICT環境を整備することが重要です。
病院やクリニックのICT環境を整えることで、業務の効率化とサービスの向上が期待できます。
例えば、電子カルテの導入をすることで、業務の効率が大幅に改善されます。また、患者のデータを紙からデジタル化することで、システム連携が可能になり入力の手間やミスを減らすことも可能です。
他にも、オンライン診療やオンライン資格確認などを活用することで、スタッフの負担が軽減されれば離職率の低下にもつながり、人手不足解消につなげられるでしょう。
医療現場でのDXやICT環境の整備を進める際、重要な課題となるのがICT人材の確保です。医療分野に特化したICT推進には、医療に関する知識とシステムに関する知識の両方が求められます。
そのため、専門的な人材を確保するのが難しい場合には、人材派遣や業務委託などの外部人材の活用を検討するのも効果的です。
年々人手不足が深刻化している医療現場では、AIの実用化が解決策として挙げられています。AI画像診断やAI問診などのアプリを導入することで、医療従事者の業務負荷を軽減でき、医療サービスの質の向上にも期待できるでしょう。
ただし、AIの活用には「最終判断は医師が行う」ことが前提であり、AI技術を適切に使いこなすスキルも求められます。
また喫緊の医療現場の人材不足に対し、AIの実用化が今すぐの解決策になるとは限りません。「Nにおまかせ!」では、医療現場の課題に対しICT環境の整備や外部人材活用の側面からサポートが可能です。
「院内の業務を効率化させたい」、「スタッフの業務負担を軽減したい」という場合は、ぜひ「Nにおまかせ」にご相談ください。
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