公開日:2022.03.22
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日本は地震や台風などの自然災害が多く、「災害大国」とも呼ばれています。近年では、南海トラフ巨大地震や首都直下地震の発生が懸念されており、災害への備えはますます重要になっています。
また、高齢化社会の進行や地域コミュニティの弱体化など、災害対策以外にも多くの社会課題が存在します。こうした状況の中で、被災者支援、防災教育、地域活性化などを担う NPO法人の役割は年々拡大しており、社会の安全や福祉を支える存在としての重要性が増しています。
近年では企業がCSR(企業の社会的責任)活動の一環としてNPO法人と連携するケースも増加しており、「非営利」事業の市場はさらに拡大しています。本記事では、NPO法人の基本的な概要に加え、設立のメリットやデメリット、申請から設立までの具体的な手順について解説します。
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NPO法人(Non-Profit Organization、特定非営利活動法人)は、営利を目的とせず、地域社会や特定の分野における課題解決をめざす法人です。簡単にいえば、社会貢献を目的として活動する非営利団体のことです。
1998年12月に施行された「特定非営利活動促進法」によって制度化され、法人格を持つことが可能となりました。また、2021年6月には「改正NPO法」が施行され、認定制度の見直し、提出書類の削減などが行われ、法人運営の負担が軽減されています。
現在、全国には約5万件のNPO法人が存在し、社会課題の解決に取り組む団体として地域社会や行政と連携しながら、持続可能な社会の実現に寄与しています。
NPO法人と一般企業の最大の違いは、事業の目的にあります。一般企業は営利を目的としており、株主や出資者への利益還元を重視します。ここでいう「営利」とは、単に利益を得ることではなく、得た利益を出資者に分配することを指します。
一方で、NPO法人は社会的課題の解決を目的とした法人です。事業で得た収益は出資者に分配されることなく、活動の継続や拡大に活用される点が大きな特徴です。また、事業の公益性が求められる点も一般企業とは異なります。
NPO法人と一般社団法人は、いずれも法人格を持つ非営利組織ですが、設立要件や活動の自由度に違いがあります。
NPO法人は「特定非営利活動促進法」に基づいて設立され、活動目的が法律で定められた20分野のいずれか(例:保健、医療、又は福祉の増進を図る活動)に該当する必要があります。そのため、公益性がより強く求められる点が特徴です。
一方、一般社団法人は「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づいて設立されます。活動目的に制限がないため、より自由度の高い運営が可能であり、特定の分野に縛られず、任意の非営利活動を行えます。
NPO法人には、法人格の有無や国の認定制度に応じて、大きく4つの種類があります。それぞれの形態によって、活動の自由度や税制上の優遇措置、資金調達の方法が異なります。NPO法人の設立や関与を検討する際には、各種類の特徴を理解しておくことが重要です。
法人格を持たないNPO活動は「任意団体」として運営されます。法的な法人格はありませんが、ボランティア団体など自由な形態で活動ができます。
正式に法人格を取得し、「特定非営利活動促進法」に基づいて設立された団体が一般的なNPO法人です。法人格を持つことで、契約の締結や銀行口座の開設などが可能となり、社会的信用が高まります。
設立から5年以内のNPO法人は、認定NPO法人より緩和された基準を満たすことで「特例認定NPO法人制度」に認定されます。この認定を受けることで、寄附金が税制優遇の対象となり、認定NPO法人に準じたメリットを享受することが可能です。
厳しい基準をクリアしたNPO法人は、「認定NPO法人」として認定されます。この認定により、寄附者には税額控除が適用されるため、資金調達の面で大きなメリットがあります。
NPO法人を設立するには、「特定非営利活動促進法」で定められた一定の要件を満たす必要があります。ここでは、NPO法人の設立にあたって必要とされる主な要件について解説します。
NPO法人は、「特定非営利活動」を行う団体に法人格を付与することを目的として設立されます(特定非営利活動促進法第1条)。特定非営利活動とは、不特定多数かつ多数の人々の利益の増進に寄与することを目的とした活動であり(第2条第1項)、営利を目的とすることは認められていません。社会貢献につながる事業を中心に行う必要があります。
なお、NPO法人が収益事業を行うこと自体は可能ですが、その収益はすべて法人の目的に沿った活動に充てなければなりません。法人の利益を特定の個人や法人、団体の利益とすることは禁じられており(第3条第1項)、役員や社員に利益を分配することはできません(第5条第1項)。
NPO法人の活動には、いくつかの法律上の制約があります。具体的には以下のとおりです。
宗教の教義を広めたり、宗教儀式を行ったり、信者を育成することを主たる目的とする団体は、NPO法人として認められません(第2条第2項第2号イ)。
特定の政党を支持・反対したり、特定の政治的主張を推進したりすることを目的とする団体も、NPO法人として設立できません(第2条第2項第2号ロ)。
特定の候補者や政党の推薦・支持・反対など、公職選挙に関与することを目的とする活動も禁止されています(第2条第2項第2号ハ)。
これらの規定は、NPO法人が公益性を重視し、社会的に中立な立場を維持するためのものです。
NPO法人を設立するためには、以下のような組織要件を満たす必要があります。
法人の構成員である「社員」が10人以上必要とされます(第12条第1項第4号)。社員は法人の意思決定に関わる重要な役割を担い、設立後も一定数以上の社員の存在が求められます。
社員の資格の取得・喪失に関して、不当な条件を課すことは認められていません(第2条第2項第1号イ)。公平・透明な運営を確保するための規制です。
役員のうち、報酬を受け取る者の数は役員総数の3分の1以下でなければなりません(第2条第2項第1号ロ)。これにより、営利目的化を防ぎます。
NPO法人の活動内容は、医療や福祉、教育、環境保全、災害救助など、多岐にわたる20の分野が挙げられます。社会貢献を目的としている点が特徴であり、営利を目的とする一般企業とは異なります。ただし、法人運営を維持するために、特定非営利活動に支障をきたさない範囲内で、一定の条件のもとで収益事業を行うことも可能です。
以下は、NPO法人が行える特定非営利活動の種類一覧です。
NPO法人の運営には、安定した資金調達が欠かせません。主な資金源として、以下の方法があります。
会費や寄附金は、法人の活動に賛同する会員や支援者から提供される資金であり、継続的な運営を支える重要な収入源となります。また、寄附者に対して税制優遇を受けられる認定制度を活用することで、より多くの寄附を募ることが可能です。
政府や自治体から提供される助成金や補助金も、NPO法人の重要な資金調達手段の一つです。ただし、これらの資金には用途が厳格に定められており、適切な管理が求められます。また、申請時には詳細な事業計画書を提出する必要があります。
収益事業を行うことで、活動資金の自主的な確保が可能となり、外部資金に依存しない安定した運営を実現するための手段となります。ただし、得た事業収入は、法人の目的に沿った活動に再投資することが義務付けられています。
借入も資金調達手段の一つです。日本政策金融公庫などから借入可能です。
NPO法人には、独自の特典や優遇措置が設けられています。ここでは、これらの具体的なメリットについて解説します。
NPO法人は、法人税や法人住民税、消費税などの各種税金が課されますが、その社会的役割を考慮し、一定の優遇措置が設けられています。
特に、特定非営利活動に該当する事業については法人税が非課税となるため、NPO法人は活動資金をより多く特定非営利活動に該当する事業の運営に充てることが可能です。一方、収益事業に対しては通常通り法人税が課されます。
また、法人住民税に関しても減免措置が設けられており、NPO法人が収益事業を行わない場合、ほとんどの自治体で減免が認められています。減免を受けるには、減免申請書の提出が必要になるため、必ず各自治体に申請書や手続きの詳細を確認しましょう。
NPO法人は法人格を有するため、任意団体とは異なり、人材を正式に雇用することが可能です。法人としての社会的信用が高まることで、人材採用がしやすくなり、事業の拡大や組織の強化にもつながります。専門性の高いスタッフを雇用することで、より質の高い活動を展開することが可能です。
また、一般企業と同様に、労災保険や雇用保険への加入も可能であり、給与の支払いや労働時間の管理など、適切な雇用体制を整えることで、従業員が安心して働ける環境を整えられます。
NPO法人は、法人運営の透明性を確保することが法律で義務付けられています。特に重要なのが、「利害関係人から請求があった場合の書類公開(特定非営利活動促進法第28条第3項)」および「貸借対照表の公告(第28条の2)」です。これにより、NPO法人の社会的信用が維持されています。
利害関係人に公開すべき書類は、「事業報告書」「役員名簿」「定款」の3つです。これらは機密性の高い書類ですが、公開することでNPO法人の運営が健全であることを証明できます。
貸借対照表は、一般市民を含む誰もが閲覧できるよう、「官報」「日刊新聞紙」「電子公告(法人のホームページや指令されるサイト)」「主たる事務所の掲示板」などの指定される方法で速やかに公告することが必要です。この制度により、NPO法人の財務状況が透明化され、企業や自治体との連携、資金調達、プロジェクト推進にも良い影響をもたらします。
NPO法人の設立にかかる費用は、他の法人形態と比べて比較的低く抑えられており、資金面での負担を最小限にしながら迅速に法人格を取得して事業を開始できる点が大きなメリットです。
最低資本金制度が設けられていないため、設立時に多額の資金を用意する必要がありません。また、登録免許税が不要であり、定款の認証にかかる費用も発生しないため、初期費用をさらに抑えられます。
必要な費用としては、印鑑の作成や各役員の住民票の取得など、基本的な諸経費のみです。ただし、設立手続きを専門家に依頼した場合は、別途手数料が発生するため、費用を抑えたい場合には自ら手続きを行うことを検討しましょう。
NPO法人は、活動資金を確保するために、国や地方自治体、民間団体、財団などが提供する助成金や補助金を活用できます。事業内容や活動目的に応じて、多様な支援制度が用意されており、初期費用や運営コストを抑えつつ、安定した活動を行うことが可能です。
ただし、申請には厳格な審査が行われ、活動計画や予算管理の適正さが求められます。書類の準備や報告義務などの要件を十分に理解し、計画的に対応することが重要です。
近年、国や地方自治体は福祉、医療、環境保全といった社会課題に取り組むため、NPO法人との連携を積極的に進めています。行政だけでは対応が難しい分野において、NPO法人の専門性を活かした事業委託や協力が拡大しており、その社会的役割は年々高まっています。
公的機関との連携を通じて、助成金や補助金の支援を受けながら、より大きな社会的インパクトを生み出すことが可能です。
NPO法人を設立することで多くのメリットが得られますが、一方でNPO法人特有の義務や制約も存在します。ここでは、NPO法人設立時に注意すべきデメリットを解説します。
NPO法人の設立には、他の法人の設立と比べて手続きに時間がかかります。設立には「縦覧」「審査」「認証」の3つのステップを踏む必要があります。申請後の縦覧には2週間、審査には2ヶ月程度かかります。審査を通過することで認証を受け、認証の通知を受けた後に登記が必要です。
以上のように、申請から設立完了までには最低でも2〜4ヶ月を要するのが一般的です。活動開始のタイミングを遅らせないためにも、余裕を持った計画とスケジュール管理が求められます。
NPO法人は特定非営利活動促進法に基づいて設立されるため、活動内容に一定の制限があります。主な事業は、法律で定められた20種類の特定非営利活動に限定されており、原則営利を目的とした事業は行えません。
設立時には、定款や事業計画書、設立趣旨書を提出し、社会貢献を目的とした活動であることを明確に示す必要があります。また、公益性を確保するため厳正な審査が行われます。
NPO法人は、設立後もさまざまな事務手続きが求められます。特に、毎年所轄庁へ提出が義務付けられている「事業報告書」は、事業年度終了後に速やかに提出しなければなりません(特定非営利活動促進法第28条)。
また、定款の変更手続きは、一般企業に比べて煩雑です。社員総会での議決に加え、事業計画書や活動予算書を提出し、所轄庁の認証を受ける必要があるため、手続きには多くの時間と手間がかかります(第25条)。
NPO法人は、毎年、所轄庁へ事業報告を行う義務があります。具体的には、毎事業年度終了後の3ヶ月以内に以下の書類を提出します。
これらは、法人の活動状況と財務の透明性を確保するために必要なものです。また、提出した書類は事務所で5年間保管し、一般の閲覧に供することが義務付けられています(第30条)。
報告義務を怠ると、法人としての信頼を損なうだけでなく、行政指導や認証取消につながる恐れもあります。適切な文書管理と報告体制を整えることが重要です。
NPO法人の設立には、事前準備から登記まで、いくつかの重要な手続きを踏む必要があります。ここでは、NPO法人設立の具体的な流れを解説します。
NPO法人を設立するためには、まず所轄庁に申請を行い、必要な書類を提出しなければなりません。具体的に必要な書類は以下のとおりです。
また、NPO法人を設立するには以下の認証基準を満たす必要があります。
NPO法人の申請が受理されると、以下の3段階を経て設立認証が進みます。
設立申請後、定款などの内容を2週間、市民が確認できるよう公開(縦覧)する期間が設けられます。これは、NPO法人の設立が適切かどうか社会的にチェックするための期間です。
縦覧終了後、所轄庁による審査が行われます。内容が特定非営利活動としてふさわしいか、公益性があるかなどが厳しくチェックされ、必要に応じて追加資料の提出や修正を求められる場合もあります。通常、審査には2ヶ月以内の期間が設けられています。
審査を通過すると正式に「認証」が下り、NPO法人設立が認められます。認証後速やかに登記を行います。
認証が下りたら、次に設立登記を行います。この登記は、法人として法的な地位を確立するための重要な手続きです。認証の通知を受けた日から2週間以内に法務局で登記手続きを行う必要があります。認証から6ヶ月が経過しても登記を行わない場合、認証が取り消される可能性があるため、注意してください。
また、登記後には以下の書類を提出する必要があります。
さらに、法人設立後は税務署(収益事業を行う場合)や都道府県税事務所、市町村への届出も必要となるため、忘れずに手続きを行いましょう。
NPO法人を設立する際には、オフィス環境の整備とともに、ICT環境の構築にも目を向けることが重要です。
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※文中に記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、全て2024年1月時点(インタビュー時点)のものです。
※事例は一例であり、すべてのお客さまに同様の効果があることを保証するものではありません。
NPO法人は、社会的課題を解決するための非営利団体であり、公益性を重視した活動を行う法人です。企業とは異なり、営利を目的としないため、資金調達の方法や活動範囲が法的に定められています。その一方で、補助金や助成金の活用、公的機関との連携のしやすさなど、NPO法人ならではのメリットも多く存在します。
また、NPO法人の設立には、さまざまな手続きが必要です。設立時に求められる申請書類や手順を正確に把握し、確実に進めましょう。特に、設立条件として重要なのは、「事業の公平性や公益性が確保されている」ことです。
さらに、NPO法人の運営を円滑に進めるためには、ICT環境の整備が不可欠です。通信インフラの確保やクラウドサービスの活用、オンラインでの業務管理を導入することで、効率的でスムーズな運営が可能となります。
NPO法人の設立を検討されている方は、今回の記事を参考にしながら、準備を進め、スムーズな立ち上げと効率的な運営を目めざしてみてはいかがでしょうか。
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監修
税理士法人V-Spiritsグループ代表 税理士・社労士・行政書士・FP
中野 裕哲
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。 税理士法人V-Spiritsグループ代表。年間約1000件の起業相談を無料で受託し、起業家や経営者をまるごと支援。経済産業省後援 起業経営支援サイト「DREAM GATE」で12年連続相談数日本一。 著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)など20冊、累計25万部超
V-Spiritsグループ Webサイト