不動産業開業の流れを6STEPで解説!必要な資格や資金の目安も

公開日:2025.11.05

不動産業開業の流れを6STEPで解説!必要な資格や資金の目安も

この記事で
わかること

  • 不動産開業に必要な免許・資格、開業までの流れ
  • 不動産開業にかかる資金の目安と、メリット・デメリット
  • 開業で失敗しないための準備ポイント

目次

不動産業を開業するには、宅地建物取引業の免許取得や宅地建物取引士の資格取得、事務所の設置、保証協会への加入など、さまざまな準備が必要です。さらに、個人経営にするか法人にするかといった、経営形態の選択も重要になります。

この記事では、不動産業開業までの具体的な流れを6つのステップで解説し、必要な資格や資金の目安についても詳しく紹介します。開業で失敗しないためのポイントもあわせて解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

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不動産業開業に必要な免許・資格

不動産業を開業するには、宅地建物取引業の免許と宅地建物取引士の資格が必要です。以下に、それぞれの概要を表にまとめました。

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宅地建物取引業の免許
  • 不動産業を営むために必要な免許証
  • 宅地建物取引業法にもとづき、国土交通大臣または都道府県知事が定める免許を必ず取得しなければならない
宅地建物取引士の資格
  • 不動産取引の専門家であることを示す資格
  • 不動産業を営む事業所では、5人につき1人の割合で宅地建物取引士を配置することが義務付けられている

不動産業は、資格と免許さえあれば、業界経験者・未経験者問わず開業できるのが大きな特徴です。ここからは、上記2つについてそれぞれ詳しく解説していきます。

宅地建物取引業の免許

宅地建物取引業、通称「宅建業」は、宅地建物取引業法に基づき、土地や建物の売買、交換、賃貸借の仲介などを専門に行う事業です。

高額な取引が伴う不動産業界では、消費者の保護と公正な取引を担保するため、許可を得た事業者のみが参入できます。個人・法人を問わず、宅建業を営むには国土交通大臣または都道府県知事の承認を得て、免許を取得することが必須となります。

具体的に免許が必要となる事業は以下のとおりです。

  • 不動産仲介業
  • 不動産売買業
  • 不動産開発業(デベロッパー)
  • 分譲マンション販売
  • 戸建て住宅販売

宅地建物取引業の免許は、事業者が一定の要件を満たし、適正な業務を行う能力があることを示すものです。

宅地建物取引士の資格

宅地建物取引士(宅建士)とは、不動産取引の専門家であることを証明する国家資格です。宅地建物取引業法に基づき、不動産取引における公正さを確保し、消費者を保護するために重要な役割を担っています。

宅建士だけに許された独占業務として、主に以下の3つがあげられます。

  • 重要事項の説明
  • 重要事項説明書(35条書面)への記名・押印
  • 契約書(37条書面)への記名・押印

不動産業を営む事業所では、従業員5人につき1人の割合で宅建士を配置することが法律で義務付けられています。この「設置義務」は、不動産取引の安全性を担保するために非常に重要です。

宅建士になるためには、国土交通大臣が定める宅地建物取引士資格試験に合格する必要があります。この試験は、不動産に関する幅広い専門知識が問われる国家試験であり、合格後には実務経験または登録実務講習の修了を経て、都道府県知事への登録と宅地建物取引士証の交付を受けることで、正式に宅建士として業務を行うことができます。

不動産業開業までの流れ

不動産業を開業するまでには、資金の準備や事務所の設置など、さまざまな準備が必要です。ここでは、不動産業開業までの一般的な流れをわかりやすくご紹介します。

経営方針の決定

不動産業の開業では、明確な経営方針を定めることが肝要です。まず「経営形態」と「業種形態」の二つの柱を具体的に決定します。

経営形態は、個人事業主か法人経営かを選択することで、開業にかかる時間や資金、そして将来の税負担が大きく変わります。税金については、後の項目で詳細を解説しますのでそちらをご参照ください。

また、業種形態では、「売買仲介業」「賃貸仲介業」「不動産開発」など、事業を展開する分野を明確にします。自身の経験や資金力、そして将来のビジョンに基づいて慎重に選択することが、事業成功への第一歩となるでしょう。

開業資金の調達

経営方針が固まり次第、必要な費用を見積もりましょう。事務所費や設備費に加え、協会への加入金、保証金などで初期費用として数百万円単位の資金が必要になります。

自己資金が不足する場合は、日本政策金融公庫の融資や各種補助金の活用を検討しましょう。これらは低金利で利用できたり返済義務がなかったりするため、創業期の大きな支えとなります。

さらに、開業資金だけでなく、家賃や人件費、広告費といった運転資金の用意も重要です。実現性のある事業計画書を作成し、計画的に資金を調達することで、安定したスタートを切れるでしょう。

事務所の設置

不動産屋を開業するにあたり、事務所の設置が必要です。個人事業主として小規模に始める場合、自宅を事務所として活用することも可能ではありますが、宅地建物取引業免許の要件を満たすためには、事務所専用の出入り口を設ける必要があるため要注意です。

近年は、オンライン相談や内見、IT重説(インターネットを利用してオンラインで行う重要事項説明)などに対応する不動産業者も増えています。しかし、不動産取引は高額になるケースが多いため、オンライン対応のみでは、顧客から信頼性に不安を持たれる可能性も少なくありません。

自宅とは別に専用の事務所を設けることで、社会的信用の向上につながるといえるでしょう。

宅地建物取引業免許の申請

前述のとおり、不動産業開業には宅地建物取引業の免許が必須です。この免許は、国土交通大臣または都道府県知事から交付されるもので、取得していなければ宅建業を営むことはできません。

免許を申請するためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。

  • 事務所の設置
  • 宅地建物取引士の設置
  • 営業保証金の供託または保証協会への加入

免許の申請から実際に交付されるまでには、通常2週間から1ヶ月程度かかります。書類の準備や審査に時間を要するため、開業スケジュールを立てる際は、この期間を考慮して計画的に進めることが重要です。スムーズな開業のためにも、余裕を持った準備を心がけましょう。

保証協会への加入

高額な取引を扱う不動産業では、万が一トラブルが発生した場合、取引相手に大きな損害を与えてしまうおそれがあります。こうしたリスクに備えるため、宅地建物取引業法では、営業保証金として1,000万円を事前に法務局に供託することが義務付けられています。

ただし、開業時にその全額を準備するのは難しい場合も少なくないでしょう。そこで、不動産保証協会に加入すれば、営業保証金の供託が免除され、代わりに協会へ一定額の「弁済業務保証金分担金」を納付することで対応可能です。

弁済業務保証金分担金は、基本は60万円、複数の事務所を有する場合は支店ごとに30万円が必要になります。初期費用の負担を抑えたい方には、保証協会への加入をおすすめします。

事業の広告宣伝・集客

不動産業開業前には、最低限の広告・宣伝で集客を始めることが重要です。集客施策としては、オンラインとオフラインの両面からアプローチするのが効果的です。

オンラインでは、SNS(Instagram、Xなどでの物件紹介やルームツアー動画)の活用や、自社Webサイトの制作、Googleビジネスプロフィールへの登録などがあります。Webサイトは会社の「顔」となり、SEO対策やブログ記事の定期更新を通じて長期的な集客に期待できるでしょう。

一方、オフラインでは、地域に密着したポスティングやチラシの配布、看板設置などが有効です。ターゲット層が高齢者の場合は、紙媒体がより効果的な場合もあります。

開業当初は予算やリソースが限られるため、これら複数の施策を試しながら、事業やターゲット顧客に合った方法を見極めていくことが大切です。

不動産業開業にかかる資金の目安

不動産業開業には一定の資金が必要で、経営形態によって目安が異なります。一般的に500万~1,000万円程度が資金の目安です。

主な初期費用としては、以下のものがあげられます。

  • 事務所の初期費用
  • 営業保証金
  • 業界団体への加入・年会費
  • 免許申請の手数料
  • 人件費(従業員を雇う場合)など

加えて、開業後すぐに利益が出るとは限らないため、当面の運転資金を用意しておくことが極めて重要です。事務所の賃料、光熱費、通信費、広告宣伝費、人件費など、最低でも3ヶ月~6ヶ月分の運営費用を確保しておくことが望ましいとされています。綿密な事業計画を立て、資金計画を慎重に進めましょう。

不動産業開業するメリット

不動産業の開業には多くの利点がありますが、本記事では他業種と比べて際立つ特徴的なメリットに絞り、以下の2点を取り上げて解説します。

  • 資金をそこまでかけずに開業できる
  • 在庫リスクが少ない

それぞれ詳しくみていきましょう。

資金をそこまでかけずに開業できる

不動産業は、必要な免許の取得と宅建士配置、事務所の用意さえできれば一人でも始められるため、開業資金が他業種に比べて少なく済む点が大きなメリットです。

法人設立費用や保証協会への加入などを踏まえても、通常500万円~800万円程度で開業できるとされています。個人で小規模に始めるのであれば、500万円以下に抑えられるケースもあります。

在庫リスクが少ない

不動産仲介業として始めるのであれば、在庫リスクが少ない点もあげられます。不動産仲介業は、一般的な小売業や製造業のように商品や材料を大量に仕入れて抱え込むビジネスモデルではないため、売れ残りによる在庫負担や、在庫を保管するための費用負担といった心配がありません。

そのため、損失リスクが低く、仕入れのために多額の先行投資も不要です。安定した経営がしやすく、小規模開業にも向いています。

不動産業開業するデメリット

不動産業開業には多くのメリットがありますが、その一方で注意すべきデメリットも存在します。主なデメリットは以下のとおりです。

  • 資金繰りが難しい
  • 選ばれるための戦略が必要になる

それぞれ詳しく解説していきます。

資金繰りが難しい

不動産業の中でも、不動産売買業の場合は取り扱う金額が大きいため資金繰りが難しいという課題があります。帳簿上は黒字でも、資金が手元にない状態が続くと、支払いが滞り倒産に至るケースもあります。

安定した経営のためには、事前に資金繰りの計画を立て、少なくとも半年分の運転資金を確保しておくことが重要です。

選ばれるための戦略が必要になる

不動産業界は競争が激しく、多くの競合が存在するため、開業後には「選ばれるための戦略」が欠かせません。ただし、大手と正面から競うのではなく、開業したばかりの小さな不動産屋だからこそ打ち出せる強みを活かすことが重要です。

丁寧な対応や柔軟なサービスなど、小規模事業者ならではの特徴を活かし、顧客に寄り添った差別化を図ることが、成功のカギとなるでしょう。

不動産業開業で失敗しないための準備のポイント

不動産業開業で失敗しないためのポイントとして、以下の3つがあります。

  • 法人と個人事業主の違いを理解して選択する
  • 人脈を構築しながら準備を進める
  • 準備段階から開業後の効率的な運営を意識する

上記をそれぞれ詳しくみていきましょう。

法人と個人事業主の違いを理解して選択する

先述のとおり、不動産業の経営形態には「法人経営」と「個人事業主」があり、それぞれに税金の負担、社会的信用、設立手続きの難易度などで違いがあります。以下にそれぞれの特徴をまとめました。

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  個人経営 法人経営
社会的信用度 低い 高い
責任 無限責任 有限責任(株式会社の場合)
主な税金 所得税、個人住民税、個人事業税、消費税 法人税、法人住民税、法人事業税、消費税
設立手続き 開業届、事業開始等申告書の提出 定款の作成、法人登記

不動産業を個人で開業する場合は、手続きが比較的簡単で、少ない資金でも始めやすいというメリットがあります。一方、法人として開業する場合は、社会的な信用度が高まりやすく、責任の所在が明確になるほか、税制面での優遇を受けられる可能性もあります。

それぞれの特徴をしっかりと理解し、自身の目的や状況に合った形態を選ぶことが大切です。

人脈を構築しながら準備を進める

不動産業界に限らず、開業時には人脈が重要です。開業後は物件情報の入手や顧客紹介、他業者との連携、さらにはトラブル時の相談相手として、人脈が大きな力になります。

とくに地域密着型の不動産業をめざす場合は、地域コミュニティや関連業者とのつながりが欠かせません。

不動産業界は、「信頼と人脈がものをいう世界」とも言われるため、全日本不動産協会が主催するセミナーやイベントなど、業界関係者が集まる場に積極的に参加し、人脈を築きながら開業準備を進めることが大切です。

準備段階から開業後の効率的な運営を意識する

不動産業開業に向けた準備では、目の前のタスクに追われがちですが、本当に重要なのは「開業後の安定的な運営」を見据えることです。そのためには、事務所のネットワーク環境の整備や業務のICT化が欠かせません。

たとえば、高速インターネット回線の導入、外国人顧客への対応を想定した翻訳サービスの活用、顧客情報を安全に管理できるクラウドシステムの導入など。開業後の業務効率が向上すれば、より多くの顧客に対応できるようになり、結果として売上拡大にも直結します。準備段階でのICT投資は、開業後の業務効率化や競争力強化につながる、大切な先行投資と捉えることが重要です。

不動産業開業の準備は「Nにおまかせ!」

不動産業の開業準備には、各種手続きや関係先との調整など、想像以上に多くの時間と労力がかかります。開業後のスムーズな集客・運営につなげるためにも、開業支援に詳しいプロの力を借りるのがおすすめです。

「Nにおまかせ!」では、開業時のICT環境の整備、WebサイトやSNSを活用した集客支援など、不動産業開業に必要な準備を幅広くサポート。実際に、ICT環境の構築やホームページ制作などを一括して任せたことで、約500万円の初期費用低減に成功した事例もあります。

開業に不安を感じている方は、まずはお気軽にご相談ください。

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まとめ

今回は、不動産業開業の流れや必要資金の目安、メリット・デメリットについて詳しく解説しました。不動産事業の成功には、専門知識はもちろん、市場の動向を正確に把握し、戦略的に行動することが不可欠です。

開業準備から運営、事業拡大まで不安なことがあれば、「Nにおまかせ!」にぜひご相談ください。経験豊富なプロが、ICT環境の整備やWebマーケティングを活用した集客支援をはじめ、幅広くサポートいたします。

開業をご検討されている方必見!

監修

税理士法人V-Spiritsグループ代表 税理士・社労士・行政書士・FP

中野 裕哲

起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。 税理士法人V-Spiritsグループ代表。年間約1000件の起業相談を無料で受託し、起業家や経営者をまるごと支援。経済産業省後援 起業経営支援サイト「DREAM GATE」で12年連続相談数日本一。 著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)など20冊、累計25万部超。

V-Spiritsグループ Webサイト
監修