公開日:2024.09.25
この記事で
わかること
目次
人材獲得競争が苛烈化している昨今では、優秀な人材を確保するために、採用戦略が欠かせません。採用手法の多様化も広がる中で、採用活動の効率性も重要になっています。
そこで、採用活動の戦略性・効率性を高めるためにカギとなってくる考え方が、「採用マーケティング」です。
本記事では、人事担当者や経営層の方へ向けて、採用マーケティングとは何か、採用マーケティングにおけるファネル※1やチャネル※2、メリットや効果、活用できるフレームワーク、成功のポイントについてわかりやすく解説します。「採用活動の見直しを検討している」「採用戦略を強化したい」という方は、ぜひ参考にしてください。
※1 採用マーケティングにおけるファネル:人材が入社するまでのプロセスを漏斗に見立てた図のこと。
※2 チャネル:マーケティングにおける集客の流入経路や方法のこと。
新卒・中途採用における採用手法や募集経路が多様化している昨今、採用戦略の重要性が増しています。その中で注目されているのが、「採用マーケティング」です。
採用マーケティングとは、企業の採用活動にマーケティングの考え方や手法を取り入れることです。マーケティングにおける「顧客」を、採用活動における「入社者」に置き換え、求める人物像が入社に至るよう、戦略的なアプローチを立案し実行します。
採用マーケティングでは、応募者が入社するまでのプロセスを「認知」「興味」「応募」「選考」「入社」の段階に切り分けて考えます。プロセスが進むにつれてだんだんと人数が少なくなっていく様子を、漏斗に見立てて図式化したものが「ファネル」(上図)です。
採用マーケティングでは、それぞれの段階ごとに施策を立案し、下の段階へ遷移率が高まるようにチャネルやコンテンツなどの展開を戦略的に考えます。
採用マーケティングでは、ターゲットに合わせた戦略の立案が重要です。主なターゲットは、以下の4種類に分けられます。
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就職・転職潜在層 | 現在は就職・転職活動をしていないが、将来的に転職を考える可能性がある求職者のこと。 |
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就職・転職顕在層 | 現在、就職・転職活動を行っている求職者のこと。 |
社員 | 自社で働く社員。エンゲージメント向上施策を行うことで、採用活動への協力が期待できる。 |
退職者 | 自社を退職した元社員。「アルムナイ」とも呼ばれる。退職後にも良好な関係性を保つことで、再雇用が期待できる。 |
採用マーケティングでは、ターゲットに対して応募前の段階からアプローチします。そのため、まだ就職活動や転職活動をはじめていない潜在層をターゲットに入れ、潜在層に向けた施策を展開するといった戦略を取ることも可能です。
また昨今では、「ファンマーケティング」※の考え方を取り入れ、入社後の社員や退職後の社員にまで採用マーケティングの範囲を広げている企業もあります。たとえば、入社後の社員を「リピーター」に見立ててエンゲージメント向上施策を行ったり、退職した社員の再雇用を目的とした「アルムナイ採用」を行ったりするなど、新たな取り組みもはじまっています。
※ ファンマーケティング:企業の商品やサービスの愛好家を育て、継続的な売上を獲得するとともに、口コミや紹介などによる新規顧客獲得も狙うマーケティング手法の1種。
採用マーケティングと似た言葉に、「採用ブランディング」があります。
採用ブランディングとは、自社の魅力やカルチャーを継続的に発信し就業イメージを定着させ、求職者に「働きたい」と感じてもらうためのプロモーション施策のことを指します。
採用マーケティングは採用活動を効率的かつ効果的に行うための戦略です。そのため、採用ブランディングは、採用マーケティングにおける施策の一つであるといえます。
採用ブランディングを行う際は、採用マーケティング戦略に基づいたコンセプトを打ち出し、両者を連動させながら施策を展開していくことが重要です。
採用マーケティングが必要となる背景には、以下があげられます。
それぞれについて詳しく解説します。
コロナ禍からの経済回復や、人手不足を背景に、就職・転職ともに「売り手市場」となっています。売り手市場とは、求人数が人材数を上回っている、つまり売り手(求職者)よりも買い手(人材を採用したい企業)が多い状態のことです。
労働人口は今後減少することが見込まれ、人材不足がますます進んでいくため、人材獲得競争はさらに苛烈化すると予想されます。
スカウトサービスや採用SNS、社員が大学の後輩など知り合いに声を掛けて、選考を受けてもらうリファラル採用など、採用手法や採用媒体は多様化してきています。
そのような中で求める人材に対して効率的にアプローチするために、マーケティングの考え方を取り入れた採用戦略が必要なのです。
上述したように、採用マーケティングにおけるファネルは「認知」「興味」「応募」「選考」「入社」の5つのフェーズに分けられます。
採用ファネルにおける各フェーズと、それぞれのチャネル例について、以下の図にまとめました。
それぞれの具体的な詳細について、以下でわかりやすく解説します。
「認知」は、ターゲットがはじめて企業の採用情報に触れる段階です。
ターゲットに「この企業は採用活動を行っているのか」と認識してもらうことではじめて、自社が就職・転職先候補に選ばれる可能性が生まれます。逆に認知してもらえなければ、その先の興味や応募といったフェーズに進んでもらうことはできません。そのため、まずはターゲットからの認知を獲得することが非常に大切です。
以下にチャネルの例を挙げました。このようなチャネルの中から、自社の求める人物像にアプローチしやすい経路を選ぶことが重要です。
チャネル例
SNSを使った採用活動を検討中だが、
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「興味」は、ターゲットが企業に対して興味を持ちはじめる段階です。この段階では、ターゲットは企業の社名を認識しているため、インターネットや求人媒体などで企業名を検索するなど、個社の情報を調べる可能性が高いでしょう。
そのため、企業への理解を深め、応募意欲を高める施策を打ち出していくことが重要です。
チャネルの具体例として、以下のようなものがあげられます。
チャネル例
また、このフェーズで発信・提供していくコンテンツとしては、以下のような例が挙げられます。
コンテンツ例
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「応募」は、ターゲットが実際に応募し、選考にエントリーする段階です。
応募プロセスが煩雑でわかりにくいと、応募に至ることなく離脱される可能性があります。そのため、応募しやすいシステムを導入し、スムーズかつ迅速に応募者と連絡を取れる体制を整えることが重要です。
応募フェーズにおける主なチャネルとしては、以下のような例があげられます。
チャネル例
「選考」は、応募者が企業の選考に参加する段階です。
特に、面接は求職者の志望度に大きく影響する重要な場です。リクルート「2024年新卒採用大学生の就職活動に関する調査」によると、「内(々)定企業への志望度が最も高まった場面」として2割が「面接」と回答しています。
面接フェーズでは、求職者の志望度を高められるよう、面接官トレーニングによる面接の質向上や、選考をスムーズにするための重要なプロセスを確認しながら進めていくことが重要です。
面接フェーズにおけるチャネルには、主に以下があげられます。
チャネル例
また、面接フェーズのコンテンツは、主に以下のとおりです。
コンテンツ例
「入社」は、内定者が企業からのオファーを受け入れて入社を決める段階です。この段階では、内定後の面談や内定者フォローなどを通して、内定者の入社意欲を高める施策を行います。
面談で入社してほしいという熱意を伝えたり、見学会などを実施したりすることで、内定者によい印象を与え、実際に働くイメージを持ってもらうことが大切です。
入社フェーズにおける主なチャネルは、以下があげられます。
チャネル例
また、入社フェーズにおける主なコンテンツは、以下のとおりです。
コンテンツ例
このように、採用マーケティングでは、ファネルを細かいフェーズに切り分け、適切なチャネルを選択してアプローチしていかなければなりません。そのため、戦略立案や施策実行にしっかりと時間を割くことが大切です。
日程調整などの頻繁に発生する定型的な業務は、アウトソーシングやITツール活用によって効率化する必要があるでしょう。
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詳しくはこちら採用マーケティングに取り組む主なメリットや効果は、以下のとおりです。
それぞれについて、以下で詳しく解説します。
採用プロセスをファネルに分解することで、どの段階で何が問題となっているのかといったボトルネックを特定しやすくなります。ボトルネックとは、全体のプロセスの中で停滞や生産性の低下を引き起こしている部分のことです。
ボトルネックを発見しやすくなると、打ち手(有効的な施策)を検討しやすくなったり、優先順位をつけやすくなったりするといったメリットがあります。たとえば、ファネルの中で応募率が低いことがわかった場合、以下のような仮説と打ち手が考えられるでしょう。
例:応募率が低い場合
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考えられる仮説 | 打ち手例 |
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ターゲットが、応募を決意するのに十分な情報を提供できていない | 採用ホームページのコンテンツを拡充する |
スカウトメールの文面で、魅力を伝えきれていない | スカウトメールの文面を見直す |
応募のハードルが高い | カジュアル面談を設ける |
このように、採用マーケティングの実施によりボトルネックを特定できれば、採用につながる施策を立案しやすくなります。
求める人物像を明確にし、アプローチ方法を整理することで、効果的な施策への予算配分を増やし、効果が見込めない施策の予算を削減するなどの対応が可能となり、採用コストを最適化しやすくなります。
たとえば、自社の採用実績から求人媒体ごとの応募率や入社率を割り出し、それらが低い媒体の予算を減らし、高い媒体の予算を増やすなどです。
このように、採用マーケティングで自社にとって効果的な施策を見極め、そこに対して多くの費用や人手を再配分することで、コストの最適化につながるでしょう。
実際に採用マーケティングに取り組む際には、どのように戦略策定を進めていけばよいのでしょうか。戦略策定の流れについて、5つのステップに分けて簡単に紹介します。
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1.環境分析 | 就職・転職における世の中の動向や求職者を取り巻く環境、採用競合の状況、自社の魅力などについて調査・分析を行う。フレームワークとしては「3C分析」が使える。 |
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2.課題の特定 | 自社の採用活動における課題を整理し、優先順位をつける。 |
3.ターゲティング | 求める人物像について明確化する。フレームワークとして、「ペルソナ」「キャンディデイトジャーニー」が使える。 |
4.採用計画の立案 | 目標を立て、採用計画を立案する。2で特定した課題の解決策や、求める人物像にアプローチしやすい施策を優先し、スケジュールに落とし込む。 |
5.実行・改善 | 計画を実行し、定期的に評価・改善を行う。 |
次の章では、「1.環境分析」や「3.ターゲティング」で活用できるフレームワークをご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
採用マーケティングに活用できるフレームワークを3つご紹介します。
それぞれのフレームワークについて特徴を理解し、目的に合わせて活用してみてください。
3C分析とは、Customer(顧客・市場)、Company(自社)、Competitor(競合)の3つの視点から環境を分析する、マーケティングにおいてよく活用されるフレームワークのことです。
採用マーケティングでは、Customer(顧客)をCandidate(候補者)に置き換えて考えましょう。以下の3つの観点について、それぞれ情報を洗い出して整理を行います。
3C分析を行うことで、採用市場における環境を俯瞰的に把握しやすくなります。採用戦略の方向性を決める際に活用してみてください。
ペルソナとは、商品やサービスを利用する典型的な顧客について、年齢、性別、居住地、趣味、ライフスタイルなどの情報を基に作り上げた、架空の人物像のことです。
採用マーケティングにおけるペルソナは、自社が採用したい人物像のことを指します。年齢、性別、学歴、職歴、価値観などについて具体化し、自社が求めるのはどのような人物像なのかを掘り下げながら明確にしていきましょう。
ペルソナを作成するメリットとして、求める人物像についての共通認識を関係者の間で持ちやすくなることや、求める人物像へのアプローチ手法を検討しやすくなることなどが挙げられます。
キャンディデイトジャーニーとは、マーケティングにおける「カスタマージャーニー」の考え方を採用活動に応用したものです。
採用マーケティングでは、ターゲットが求人情報を認知してから入社に至るまでの過程について、仮説を立てて図式化したものを指します。
キャンディデイトジャーニーを活用して、ファネルごとにターゲットの行動や求めている情報を洗い出すことで、自社がどのようなチャネルでどのようなコンテンツを提供するかを考えやすくなります。
採用マーケティングを成功させるには、以下のポイントを意識することが重要です。
それぞれの内容について、詳しく解説します。
採用マーケティングの考え方を取り入れようとすると、ペルソナやキャンディデイトジャーニーの作成、ファネルごとの分析、新たなチャネルの開拓、新規コンテンツの作成など、やらなければならないことが膨大になります。
限られたリソースの中で採用マーケティングを進めるためには、自社の課題を見失わずに優先順位をつけて取り組むことが重要です。ボトルネックとなっている部分を迅速に特定し、その改善に集中することが大切です。
採用マーケティングの効果を得るには、戦略立案だけでなく、施策実行や改善にも継続的に取り組まなければなりません。そのための時間を長期的にしっかりと確保する必要があるのです。
しかし、採用担当の時間を確保するのが難しいケースもあるでしょう。採用担当が目の前の業務で手一杯になっている場合、戦略立案や施策実行、改善にまではなかなか手が回りません。
採用担当の時間を確保するのが難しい場合は、採用代行サービス(RPO※3)などの外部リソースを活用し、定型業務やオペレーション業務をアウトソースすることも有効的な手段です。「採用活動の質を向上させたいが時間がない」という方は、ぜひRPOの活用を検討してみてください。
※3 採用代行サービス(RPO):「Recruitment Process Outsourcing(リクルートメント・プロセス・アウトソーシング)」の略語。採用業務を外部に委託すること。
採用マーケティングとは、採用活動にマーケティングの考え方を取り入れた手法のことで、その重要性や効果から近年注目されています。採用マーケティングを効果的に取り入れるには、「認知」「興味」「選考」「応募」「採用」といったファネルに切り分けて、それぞれのフェーズにあったチャネルを選定していくことが重要です。
また、効果的な採用戦略を立案するために、3C分析やペルソナ設定、キャンディデイトジャーニーの作成などにも取り組む必要があります。
このように、採用活動の課題を改善するためには、多くの時間と人員を使ってさまざまな施策を進めなければなりません。しかし、社内リソースに限りがあることから、なかなか思うように進められないこともあるのではないでしょうか。
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