公開日:2024.10.16
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目次
新型コロナウイルス感染症が収束し、経済活動が正常化に向かう中、飲食業界の深刻な人手不足が問題になっています。日々の営業で人手不足を実感し、「お店が回らない」「営業時間を短縮せざるを得ない」という悩みを抱える飲食業の方もいらっしゃるでしょう。
人手不足が深刻化すると、店舗運営に影響を及ぼすだけでなく、売上や顧客満足度の低下につながるおそれがあります。人手不足に陥っている店舗では、人材確保や生産性向上に向けて対策を講じる必要があるのです。
この記事では、飲食業界の人手不足の現状を解説するとともに、飲食店が人手不足に陥る理由や店舗への影響、人手不足解消に向けた5つの解決策をご紹介します。
現在、人手不足でお悩みの経営者の方やスーパーバイザー、エリアマネージャー、店長などの方々はぜひ参考にしていただければ幸いです。
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資料をダウンロードする(無料)人手不足はさまざまな業界の課題であり、中でも飲食店の状況は深刻といえます。
飲食店の経営者やマネジメント業務に携わる方の中には、日々現場で人手不足を実感している方も多いのではないでしょうか。
その実感を裏付けるデータがあります。以下に示す帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2024年4月)」によると、非正社員が「不足」と感じている企業の割合は、「飲食店」が74.8%でトップとなりました。この結果は、多くの飲食店でアルバイト・パートなどの非正社員が不足している現状を反映しています。
過去2年間のデータを見ても、飲食業界の人手不足が深刻であることがわかるでしょう。2023年と比較して、2024年の非正社員の人手不足割合は10.2ポイント改善しましたが、依然として高水準の人手不足が続いている様子がわかります。
出典:「人手不足に対する企業の動向調査(2024年4月)|帝国データバンク」
(https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p240501.pdf)
2020年、新型コロナウイルス感染症によって世界的なパンデミックが起き、日本でもさまざまな行動制限がかけられるようになりました。中でも飲食店は時短営業や営業自粛を余儀なくされたため、多くの店舗が苦境に立たされました。このような状況から、人件費を削減するために人材を整理せざるを得なかった飲食店も少なくありません。
2023年5月から、感染症法上における新型コロナウイルスの分類が「5類感染症」に移行しました。その後、飲食店への客足は回復したものの、一度離れたスタッフを呼び戻すのに難航し、人手が不足しているケースもあります。制限が解除されても、人手不足のせいで以前のように店舗運営ができない飲食店も少なくありません。
このように働き手が戻らない飲食店では、新規人材の獲得により一層注力する必要があるでしょう。
飲食店の人手不足の背景には、どのような問題があるのでしょうか。人手不足に陥ってしまう原因について、次の3つの観点から解説します。
飲食業は入職率が高い一方で、離職率も高い傾向にあります。厚生労働省発表の「令和5年上半期雇用動向調査結果」によると、「宿泊業,飲食サービス業」の入職者数は980.8千人で、各産業の中で最も多い結果となりました。そして、離職者数は792.0千人で、こちらも最も多い結果となっているのです。
上記の調査結果から、飲食店が人手不足に陥る理由の一つとして、新規人材を採用しても定着せず離職してしまうことがあげられるでしょう。
また、従業員が離職してしまう理由として、以下のような例があげられます。
従業員が離職してしまう理由(例)
従業員の離職を防ぐには、労働条件や待遇の改善、研修・育成体制の強化など、人材の定着率を高める取り組みが欠かせません。
飲食業界では、職種や地域によっては求職者よりも求人数が上回る「売り手市場」の状態になっており、新規人材の採用が難しくなっているケースがあります。
実際に、厚生労働省による「一般職業紹介状況(令和6年5月分)」では、全国の有効求人倍率が1.05倍であるのに対して、「飲食物調理従事者」は2.67倍、「接客・給仕職業従事者」は2.95倍となっており、キッチン・ホールともに売り手市場です。
新規人材の採用が難しい理由の一つとして、未経験者から敬遠されている可能性も考えられます。たとえば、未経験者の中で、飲食業での労働に対して「体力的にきつい」「賃金が安い」といったネガティブなイメージが先行してしまっており、応募に結びつかないという状況です。
このような状況に対して飲食店では、労働条件・待遇の改善や、研修・育成体制の強化などに取り組む必要があるでしょう。働きやすさを改善し、職場の魅力を向上させ、ネガティブなイメージを払拭することが大切です。
また、最近では雇用形態や採用手法が多様化しているため、採用活動の見直しや強化を行うことも有効です。詳しくは後述の「人手不足解消に向けた5つの解決策」で解説します。
店舗の売上や先行きが不安定な場合は、費用や手間の面からスタッフを増やす余裕がないこともあるでしょう。たとえば、「人材採用や育成コストをかけられない」「一時的な採用になる可能性があり、長期雇用に踏み切れない」といったケースです。
人手不足解消への対策はいくつかあります。たとえば、労働条件の見直しや採用戦略の再検討、ITシステム・ロボットの活用、アウトソーシングなどです。それぞれについて詳しくは、「人手不足解消に向けた5つの解決策」で後述します。
スタッフを増やす余裕がない場合、まずは取り組むべきことを洗い出し、何を優先すべきなのか整理するところから始めましょう。
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前章では、飲食店が人手不足になる理由をいくつかご紹介してきました。
この章では、人手不足が深刻化すると飲食店経営にどのような影響があるのかについて、具体的に解説していきます。
飲食店の人手不足が深刻化した場合、シフトを組めなくなり、営業時間の短縮や休業を迫られます。
飲食業では、店舗の営業時間や営業日数が売上に大きな影響を与えます。営業時間の短縮や休業により、店舗の売上が低迷したり、周辺地域での競争力が低下したりすると、最悪の場合には閉店を余儀なくされるでしょう。
実際に、東京商工リサーチによる「2023年度『飲食業の倒産動向』調査」では、2023年度の飲食業の「人手不足」による倒産は年間57件で、過去最多を更新したと報告されました。店舗が運営を続ける上で、人手不足の解消は避けて通れない道なのです。
店舗運営に十分な人手が確保できないと、顧客を待たせる時間が増えたり、業務過多によってミスが増えたりします。それによってサービスの品質が落ちれば、顧客満足度が低下するおそれがあるでしょう。
最悪の場合はクレームにつながり、対応に手間を取られてしまいます。また、口コミの評価が下がり、集客やリピートに悪影響を及ぼすリスクもあるのです。
慢性的な人手不足が続き業務過多の状態が続くと、従業員一人ひとりにかかる負担が増え、離職の原因となることもあります。
業務過多によって、従業員のワークライフバランスが悪化すれば、従業員が不満を持つきっかけになります。従業員は今よりよい労働条件を求めて、転職を考える可能性が生じるでしょう。このようにして、業務過多が従業員の離職原因になってしまうのです。
また、一人の従業員が離職すると、残された従業員へより多くの負荷がかかり、業務過多がさらに深刻化するおそれがあります。このような負の連鎖が起きれば、従業員離れがさらに加速し、採用や育成にかけられる余裕もなくなってしまうという悪循環に陥ってしまうのです。
飲食店が人手不足を解消するには、既存人材の定着率向上や新規人材の獲得、業務効率化や生産性向上などに取り組んでいく必要があります。それらを実行する具体的方法について、以下の5つの施策を解説します。
また、それぞれの施策は相互に影響を及ぼすため、どれか一つを行えばよいというものではありません。複数の施策を取り入れ、相乗効果を高めることが重要です。
以下の表では、対策のまとめとその効果を示しました。自社の課題に合った対策を検討する際にお役立てください。
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対策/課題 | 既存人材の 定着率向上 |
新規人材の獲得 | 業務効率化・ 生産性向上 |
---|---|---|---|
①労働条件・待遇を改善する | ◯ | ◯ | - |
②採用戦略を見直す | - | ◯ | - |
③研修・育成体制を強化する | ◯ | ◯ | ◯ |
④ITシステムやロボットを活用する | - | - | ◯ |
⑤IT管理や事務作業をアウトソースする | - | - | ◯ |
既存人材の定着率向上や新規人材の獲得に向けて重要なのは、労働条件や待遇を改善することです。賃金の引き上げや勤務時間の柔軟性の向上などに取り組み、従業員がモチベーションを高めながら働き続けられる労働環境を整えましょう。
以下に具体例をご紹介します。
飲食店労働では、業務量が多く、求められる質も高い一方、給与水準が低く設定されがちです。厚生省の「令和元年度賃金構造基本統計調査(初任給)」では、飲食業の大卒初任給が20万800円と、全業種平均の21万200円と比べると低いことがわかります。
賃金を引き上げることで、自店で働く魅力を引き上げたり、待遇に対する従業員の不満を抑制したりする効果が期待できるでしょう。
さまざまな業界で、週休3日や時短の勤務を認める動きが増えつつあります。現時点のシフトや日数の枠でうまく調整ができない場合、勤務時間の柔軟性を高めるのもよい方法です。たとえば、「3時間からシフト可能」といったように、スタッフが働きやすい設定にするのもよいでしょう。
その他の例では、ある飲食店は「多様な勤務体系」を設定し、従業員が以下の3つから勤務体系を選べるようにしました。
この3つの働き方は、半年ごとに変更することも可能で、従業員のライフステージに対応した勤務時間を設定しています。従業員が安心して働けるようになった成功事例です。
「パートタイム・有期雇用労働法」では、待遇差の内容と理由について、会社側が口頭で説明することが義務化されています。雇用側としては、資料を整備し、誰が説明しても同じになるようにしなければなりません。
しかし、同じ仕事をしている正社員とパートタイム従業員がいた場合、パートタイムの給与が安いというケースは珍しくありません。またベテランと新人に待遇差が出ることもあります。
これらを解消するには、厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」※2を参考に、自社の状況に合った取り組みを選択してみてください。待遇差がどこにあるのか、客観的に把握できるでしょう。実際にこのチェックシートを活用し、自主点検を実施した結果、賃金に関する待遇差を改善できた例もあります。
※2 2023年6月に発行された。同一労働同一賃金への対応に向けて、自社がどのような状況にあるか点検し、制度改定の必要があるときの対応について整理できるパンフレット。
人事評価制度や昇給基準を整備すれば、「頑張った分は評価される」という心理が働き、従業員のモチベーションアップにつながります。
また、スキルや経験に応じて昇給基準を設ければ、従業員のスキルアップや、既存人材の定着率向上が期待できるでしょう。
飲食店は、週末や連休が繁忙期になるため、年中無休であることも珍しくありません。そのため、飲食店勤務の従業員は、「休みが不規則」「連休が取れない」「希望通りの休暇取得ができない」「家族・友人と休日が合わない」という不満を抱えていることも少なくないでしょう。
そのような不満を軽減するために、順番に土日祝日の休暇を取得可能にしたり、できる限り希望に沿ったシフトを組んだりするなどして、休暇が取得しやすい体制を整えましょう。
中には、「暦の休日数通り年120日休む宣言」を実行し、休暇を倍増させることに成功した飲食企業もあります。
新規人材の獲得に向けて、採用戦略を見直し、ターゲットや手法を再検討することも大切です。昨今では、求人広告だけでなくSNSやオウンドメディア(企業が採用や人材育成に関連する情報を発信する独自メディア)など採用手法が多様化しています。新しい手法を取り入れ、採用手法を拡大できないか検討してみましょう。
たとえば、SNSを活用し採用効率を高めるといった手法も考えられます。SNSで、店舗の画像や働く従業員の様子を動画にするなどして、店舗の雰囲気や従業員のイメージを伝えれば、採用のミスマッチを減らす効果も期待できるでしょう。
また、1日3時間からの短時間勤務を可能にして、学生や主婦、シニアなど、採用ターゲットの幅を拡大させた企業もあります。このように、労働条件と連動させながら採用戦略を見直し、アプローチできる層を広げられれば、人材を確保しやすくなるでしょう。
マーケティングの考え方を、採用活動に応用した「採用マーケティング」に取り組むのも有効です。応募者が求めているものや競合他社の打ち出し方を分析し、自社の採用戦略を立てることで、採用活動の効率化につながります。
研修を拡充したり、人材育成の体制を強化したりすることも大切です。従業員が店舗オペレーションや技術、業務についての基礎知識などをしっかりと身に付けられる機会を用意しましょう。
研修カリキュラムやOJT※3といった育成体制を整備すれば、新しく採用された人材が安心して店舗運営に参加できるため、人材の定着率向上が期待できます。特に、未経験の新規人材にとって、研修が充実していることは安心材料になります。そのため、求人の魅力が高まる効果も生まれるでしょう。また、従業員が研修を受けてスキルアップすることで、生産性が向上するといった効果も見込めます。
人手不足によりOJTが難しい場合には、動画マニュアルやeラーニング、外部研修を活用するという方法もあります。
また、各従業員のスキルアップ状況を人事評価制度で評価し、昇給・昇進制度と連動させれば、従業員のモチベーション向上も期待できるでしょう。
※3 OJT:「On The Job Training」の略。職場の先輩社員が後輩社員に対して、業務上必要な知識やスキルを実践しながら教えること。
社員のスキルアップ、意識改革を実現するなら「Nにおまかせ!」
詳しくはこちらITシステムの活用は、現在多くの企業で実践され、飲食業界でもIT化に取り組む企業が増えています。ITシステムやロボットを活用することで、業務効率化や生産性向上が期待できます。
一方で、IT化を検討したくても、どこから手を付ければよいのか悩む方もいらっしゃるでしょう。以下の表では、ITシステムやロボットの活用で効率化できる業務について、例をご紹介します。
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シフト作成・管理 | シフト作成システムを活用することで、システム上で従業員の希望シフトの収集や、シフトの自動作成、調整、共有などができる。 |
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予約管理 | 予約管理システムを活用することで、電話や店舗のホームページ、外部の予約サイトなどから受け付けた予約を一元管理できる。 |
オーダー | 顧客が自身のモバイル端末から注文できる「モバイルオーダーシステム」や、店舗のタブレット端末で注文できる「セルフオーダーシステム」などがある。ホールやレジ業務の省人化になる。 |
決済 | キャッシュレス決済に対応することで、レジ作業の負荷軽減や混雑緩和などが期待できる。キャッシュレス決済のみに限定すれば、現金管理の工数を低減できる。 |
配膳 | 配膳にロボットを導入することで、ホール業務を省人化できる。 |
調理 | 調理にロボットを導入することで、調理業務を省人化できる。また、提供する飲食物の均一化にもつながる。 |
食器洗い | 業務用食洗機を導入することで、食器洗いを省人化できる。 |
ITシステムやロボットを活用することで、スタッフのマネジメント合理化やコスト削減、予約や注文ミスの減少、予約管理の簡略化など、さまざまなメリットが生まれます。
また、ITシステムを導入する際には、「IT導入補助金」など、政府から補助金による支援を受けられることがあります。「Nにおまかせ!」では、ITシステム・ロボット導入による業務改善から、補助金活用のサポートまで、人材不足解消のお悩みに対するトータルサポートを提供しています。「ITシステムやロボットを活用してみたいけれど、何から手を付ければよいのかわからない」「補助金を活用したいが、煩雑でよくわからない」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
ITシステム・ロボット導入から、補助金活用サポートまで。飲食店の人手不足解消の対策をトータルでご提案!「Nにおまかせ!」について詳しくはこちら
詳しくはこちら飲食店では経理や人材採用、シフト編成・勤怠管理、ITシステム運用など、多くのバックオフィス業務が存在します。このような業務に時間を取られてしまうと、店舗運営に従業員のリソースを集中できません。
「バックオフィス業務に時間を取られてしまう」という課題を抱えている場合には、煩雑なシステム管理や、定型的な事務作業をアウトソース(BPO※4)する方法が有効です。
店舗で行う必要はない業務を外部に委託することで、飲食店のコアとなる業務に従業員のリソースを集中させることが可能となり、生産性の向上が期待できるでしょう。
※4 BPO:ビジネスプロセスアウトソーシングの略。特定業務をアウトソーシングすることで、企業などがコア業務に集中できるようになる。
飲食業界は深刻な人手不足に陥っています。特に新型コロナウイルス感染症の拡大以降は、一度離れたスタッフを呼び戻すのに難航している店舗もあり、業界全体が慢性的な人手不足になっているといえます。
人手不足が深刻化すると、売上減少だけでなく、最終的には店舗閉鎖に追い込まれる可能性もあります。
そこで、人手不足を解消する抜本的な5つの方法をご紹介しました。それは、「労働条件や待遇の改善」「採用戦略の見直し」「研修・育成体制の強化」「ITシステムやロボットの活用」「アウトソースの活用」です。
慢性的な人手不足を改善するには、これらの対策を複数取り入れながら、総合的に取り組むことが大切です。
「Nにおまかせ!」では、ITシステムやロボットの活用、スポット※5の人材確保、バックオフィス業務のアウトソース、補助金活用など、人材不足解消のお悩みに対するトータルサポートを提供しています。人手不足対策についてお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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詳しくはこちら離職の防止の決め手は社員教育!社員のスキルアップ、意識改革を実現するならeラーニングがおすすめです。離職防止のための社員教育をご提案!
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