公開日:2024.06.17
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目次
安全性分析とは貸借対照表や損益計算書などの財務諸表をもとに、企業の倒産リスクを評価する財務分析手法の1つです。安全性分析の実施を検討しているものの、具体的な方法が分からないという方は多いと思います。安全性分析は主に7つの指標を使って行われ、目的によって指標を使い分けたり総合的に判断したりすることが大切です。
そこで今回の記事では、安全性分析の7つの指標や注意点などを解説します。財務状況の安全性を確認したい企業担当者の方は、この記事を参考に安全性分析の実施を検討してみてください。
安全性分析は、企業の財務諸表をもとにして倒産リスクを評価する財務分析の1つです。企業は、自社の経営状況を客観的に理解するために、このような分析が不可欠です。財務分析から得られる結果は、問題点の特定や改善策の策定に役立つ重要な情報源です。
その中でも安全性分析は、貸借対照表や損益計算書などを利用して、企業の資産、負債、自己資本のバランスを評価し、資金繰りの安定性や倒産リスクを把握します。利益を上げている企業であっても、資金繰りが悪化すれば倒産する可能性があります。
資金調達が困難になると資金繰りが悪化し、結果として企業の安定性が脅かされます。安全性分析は、企業が長期にわたって安定して事業を運営できるかどうかを判断するための重要な指標となり、銀行融資や投資家の投資判断においても利用されています。
安全性分析を行う際には、代表的な指標として流動比率や自己資本比率、固定比率など7つの指標が用いられます。この章では、安全性分析に使用する7つの指標について、計算式や「その指標から何が判断できるか」を解説します。安全性分析を実施する担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
流動比率とは短期的な支払い能力を示す指標の1つで、流動負債に対する流動資産の割合を表します。
流動比率の計算式
流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100
流動資産とは現預金や受取手形、売掛金などのように1年以内に現金化が見込める資産のことです。一方で流動負債とは、買掛金や短期借入金など1年以内に返済が必要な負債です。流動比率は100%以上が望ましく、短期的な支払いに関する能力に問題がない企業だと判断できます。逆に100%を下回った場合は、短期的な支払い能力に不安があると考えられます。
当座比率とは短期的な安全性を判断するときに使用される指標で、当座資産を使って計算するため、より実態的な短期的支払い能力が判断できます。そして当座資産とは、現預金や有価証券など流動性が高く資金化しやすい資産を指します。
当座比率の計算式
当座比率(%)=当座資産÷流動負債×100
当座比率が100%を超えていれば、すぐに現金化しやすい資産で流動負債の支払いができるため安全性が高く、逆に100%を下回ると資金ショートの恐れがあると判断されます。一般的に、当座比率は100~150%の企業が多いです。
固定比率とは、自己資本に対する固定資産の割合を表す指標です。
固定比率の計算式
固定比率(%)=固定資産÷自己資本×100
固定資産は長期間の保有を前提とした資産や現金化まで1年を超える債権を指し、自己資本とは返済義務がない資金のことです。固定比率では、固定資産をどれくらい返済不要な資金で調達しているかが判断できます。固定比率が100%以下の場合、借入金に頼らずに固定資産が獲得できており安全性が高いことが分かります。
固定長期適合率は長期的な安全性を見るときに利用される指標で、自己資本(純資産)と固定負債に対する固定資産の比率を表します。
固定資産長期適合率の計算式
固定資産長期適合率(%)=固定資産÷(自己資本+固定負債)×100
この指標は、長期的に費用化する固定資産を自己資本や安定資金である固定負債でどれだけ賄えているかを分析することで長期的な経営の安全性を把握することができます。
自己資本比率は、総資本のうちどれだけ自己資本から調達されているかを把握するための指標です。
自己資本比率の計算式
自己資本比率(%)=自己資本(純資産)÷総資本×100
自己資本は負債と異なり返済の必要がありません。そのため、自己資本比率が高いほど企業経営の安全性が高く、不況時にも強くなります。
負債比率とは、自己資本に対する負債の割合を示す指標です。自己資本は負債を担保すべきものと考え、負債が自己資本でどの程度カバーされているかをみることができます。
負債比率の計算式
負債比率=負債÷自己資本(純資産)×100
負債比率が低いほど、債務の返済能力があると評価されます。また、通常負債比率は100%以下がのぞましく小さいほど良いとされています。
インタレスト・カバレッジ・レシオとは利息の支払い能力を示す指標で、損益計算書を使って計算します。企業の事業および金融商品から安定して得られる利益で、利息の支払いができているかを確認でき、主に金融機関が融資の判断などを行うときに使用されます。
インタレスト・カバレッジ・レシオの計算式
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)=(営業利益+受取利息+受取配当金)÷(支払利息+割引料)
インタレスト・カバレッジ・レシオは、1.0倍を下回らないようにすることが必要です。もし下回る場合は、自己資金から利息を支払っていることになるため、経営が不安定だと判断される可能性があります。
安全性分析を行うときには、総合的な判断をしたり目的によって指標を使い分けたりと、いくつか注意点があります。この章では、安全性分析を行うときの注意点について解説します。これから安全性分析を実施する企業担当者の方は、これらの注意点に気をつけながら進めていきましょう。
安全性分析においては、1つの指標だけを確認すれば良いわけではありません。それぞれの指標が何を示しているのかを理解し、総合的に判断することが大切です。例えば、固定比率で安全性が高いと判断されても、当座比率が100%以下なら短期的な支払いに必要な資金が不足していることになります。さまざまな指標を比較・検討し、総合的に自社の安全性を評価していきましょう。
安全性分析は、さまざまな指標を使って行われます。「短期的な安全性を判断するときは当座比率や流動比率」「長期的な安全性の場合は自己資本比率や固定比率」といったように、目的によって指標を使い分けましょう。目的によって指標を使い分けることで、より適切に経営判断を行うことができます。
安全性分析の指標は、業種によって目安が異なるケースがあります。そのため、財務状況を比較したいときは、同業他社の平均や自社の過去の数値と比べることをおすすめします。各指標の推移を見ることで企業の状況や傾向が把握できるので、過去の数値を含めて安全性分析を行いましょう。
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自社の財務状況の安全性を向上させたいなら、日頃の資金管理や財務構造を意識した経営が重要です。この章では、安全性を向上させるポイントについて解説します。これらのポイントを押さえて、自社の財務状況を理想に近づけていきましょう。
財務状況の安全性を向上させるためには、日頃から資金管理を行い資金繰りを悪化させないようにすることが大切です。例えば、以下のようなことを心掛けて、できる部分から改善していきましょう。
資金繰りが悪化すると倒産リスクが高まるので、日頃から資金管理を行い早めの対処を心掛けてください。
長期的な視点で考えた場合、財務構造を意識した経営を行うことが安全性を高めるポイントとなります。経営層の方々の中には、損益計算書は確認される一方で、貸借対照表に目を向ける機会が少ないという方もいらっしゃいます。しかし、損益計算書の利益は計算上のものであって資金ではありません。資金が手元に無ければ、財務状況が安全とは言えないので注意が必要です。
貸借対照表を活用して、資産や現預金に関する目標を設定し、安全性を意識した経営を心がけることが大切です。また、企業によっては節税対策としてあえて利益を少なくするケースがありますが、過度な節税対策はおすすめできません。自己資本比率を高めるには、利益剰余金を継続して積み上げることが大切です。
安全性は自社の財務状況を把握する上で重要な指標の1つであり、資産や負債、純資産の構成から企業が安定した事業を続けられるかを判断できます。安全性分析では流動比率や自己資本比率、固定比率などさまざまな指標が用いられますが、目的によって使い分けたりバランス良く総合的に判断したりすることが大切です。自社の安全性を向上させるためには、日頃の資金管理や財務構造を意識した経営を心掛けましょう。
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監修
税理士法人V-Spiritsグループ代表 税理士・社労士・行政書士・FP
中野 裕哲
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。 税理士法人V-Spiritsグループ代表。年間約1000件の起業相談を無料で受託し、起業家や経営者をまるごと支援。経済産業省後援 起業経営支援サイト「DREAM GATE」で12年連続相談数日本一。 著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)など20冊、累計25万部超
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