定款(ていかん)とは?意味や目的、作り方、変更手続きをわかりやすく解説

公開日:2022.03.22

定款(ていかん)とは?意味や目的、作り方、変更手続きをわかりやすく解説

この記事で
わかること

  • 定款の内容と作成が必要な理由
  • 定款で記載すべき事項
  • 定款作成時のポイントと会社設立までの流れ

目次

会社を設立する際、定款の作成は避けて通れないステップの一つです。この定款には会社の基本規則がまとめられているため、細心の注意を払って作る必要があります。とはいうものの、定款に馴染みがなく、作成に苦労する方も多いのではないでしょうか。

本記事では、定款の概要や構成要素、作成プロセスを順序立てて説明していきます。ぜひ、この記事を読んで理解を深めてください。

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会社設立に必要な定款(ていかん)とは

定款(ていかん)は、会社運営にあたって必要不可欠な基本ルールを定めた書類です。会社の基本情報から株式や取締役会に関する取り決めまで、根本的なルールが盛り込まれています。

定款は会社の憲法のようなもの

定款は、会社にとって憲法のようなものです。社内で判断に迷う懸案が発生した場合、定款が参考になります。例えば、株主総会の開催規定や事業年度に関する定めなどです。

定款は法的な効力を持ち、社長や重役であっても違反行為は許されません。会社運営の最高規範であり、すべての活動や決定の基盤となります。

定款は会社設立時に必ず必要

定款は会社法に基づき作成が義務付けられています。特に、事業の目的や商号、本店所在地などの「絶対的記載事項」と呼ばれる項目は、記載漏れがあると定款自体が無効になるため注意しましょう。

また、定款は公証役場で認証を受ける必要があり、正しく作成しない場合は手続きがやり直しになるケースもあります。

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定款を作成する意味・目的

そもそも、なぜ定款を作らなければならないのかわからない、という方も多いでしょう。その理由は以下の2点です。

「法人格」を与えるため

定款を作成する重要な目的の一つは、「法人格」の付与です。

会社は人間とは異なり、自然な人格を持ちません。定款によって基本的な属性や行動範囲を明確に定義し、登記することで、会社は法律上の人格を獲得します。

「法人」という呼称は、まさにこの定款によって定められた範囲内で法的な人格を持つ存在であることを示しています

会社の自治を守るため

会社法は、すべての会社の個別の状況まで細かく規定することはできません。そこで、定款が重要な役割を果たします。定款には、法律で定められていない事項や、その会社独自の運営方針を規定することができます。これにより、各社の特性や目的に応じた柔軟な運営が可能になります。

さらに、定款には、経営者を含むすべての関係者を拘束する効力があります。そのため、適切に活用することで、社内で発生しうるトラブルを事前に防ぐことができます。例えば、株主総会の運営方法や取締役の権限範囲などを明確に規定しておくことは、将来的な紛争の回避につながるでしょう。

定款の内容

定款に記す内容は、大きく次の3点に分けられます。

  • 絶対的記載事項
  • 相対的記載事項
  • 任意的記載事項

絶対的記載事項

会社法によって定款に必ず盛り込むべき項と定められています。会社の基本的な属性や構造を定義するもののため、慎重に検討し、正確に記載しなければなりません。また、取引先や投資家に対して重要な情報を提供し、透明性を確保する役割も果たしています。そのため、信頼性と法的安定性を確保する上でも極めて重要です。

具体的には、以下の5つを記します。

  • 事業の目的
  • 商号
  • 本店所在地
  • 資本金額(出資財産額)
  • 発起人の氏名または名称および住所

事業の目的

会社が行う事業内容です。この記載には、以下の3つの要件を満たさなければなりません。

  • 営利目的であること
  • 違法な事業でないこと
  • 客観的かつ正確に事業内容を示していること

一般的に、設立後すぐに開始する事業を前半に、将来的に展開する可能性のある事業を後半に記載します。定款の変更手続きを避けるため、あらかじめ幅広い事業内容を盛り込む会社もあります。  
しかし、過度に多くの事業を列挙すると、主要事業が不明確になってしまう可能性があります。そのため、事業目的は適切な範囲に収めることが重要です。

なお、定款に盛り込まれていない事業を行っても、法的に罰せられるわけではありません。ただし、定款に記載された事業と実際の経営実態が異なると、取引先などからの信用に影響するおそれがあるため、注意が必要です。

商号

会社の正式名称です。商号には、法律で定められた組織形態を示す文言として「株式会社」「合資会社」「合同会社」「合名会社」のいずれかを社名の一部として使用しなければなりません。また、2006年5月1日以降、「有限会社」が新設できなくなっている点に注意しましょう。

商号は、ローマ字表記でも登記できますが、英語表記の登記はできません。そのため、海外取引を検討している場合には、日本語とローマ字の両方を定款に盛り込んでおくことが推奨されます。例えば、「当社は、株式会社Nにおまかせと称し、英文では、ENUNIOMAKASE,Inc.と表示する。」のようにです。

なお、商号を決める際は、同一住所での重複使用禁止、他社との誤認防止、著名な商号との類似回避、商標権侵害の防止などに注意しましょう。

本店所在地

本社の住所です。定款に記載するのは、最小行政区画である市区町村までで問題ありません。例えば、「東京都港区」のように記します。具体的な住所(丁目・番地・号)までの記載もできますが、その場合、最小行政区画内の本店移転であっても定款変更が必要になってしまうため注意しましょう。

また、自宅を本店所在地にすることに抵抗がある場合は、バーチャルオフィスも利用できます

資本金額(出資財産額)

「この会社を作るためにいくら出資したか」を記すものです。資本金額に上限や下限はありません。そのため、1円からでも設定できます。ただし、設立後の運営資金や信用力を考慮し、適切な金額を設定しましょう。

また、資本金額を増減する場合は、法務局で変更登記を行わなければなりません。

発起人の氏名と住所

設立に関わったすべての発起人の氏名と住所です。この情報は、設立時の定款にのみ記載されます。設立後に発起人の住所や氏名が変わっても、定款の変更は必要ありません。

なお、会社謄本(登記事項証明書)には、現在の会社代表者の氏名と住所が記載されます。

相対的記載事項

定款に盛り込まなければ効力を発揮しない項目です。これらを記さなくても設立自体は可能ですが、明示しておかないと後々のトラブルの原因となる危険性があります。

相対的記載事項の標準的なものは、以下の4つです。

  • 現物出資
  • 財産引受
  • 発起人の報酬および特別利益
  • 設立費用

これらによって会社の財産や発起人への報酬などが明確になり、株主や債権者の利益を保護できます。また、これらは「変態設立事項」とも呼ばれ、記載の際に検査役による調査が必要となる場合があります。

相対的記載事項を定款に盛り込まない場合、それらの事項は法令の規定や慣習に従って処理されます。しかし、透明性や信頼性を高めるためには、必要に応じてこれらを適切に記しておくのがおすすめです。

現物出資

現物出資とは、設立時に出資された金銭以外の財産です。この場合、以下の内容を定款に盛り込む必要があります。

  • 現物出資する人の氏名と住所
  • 出資する資産の詳細情報(名称や種類など)
  • 資産の価額(時価で評価)
  • 出資者に割り当てる株式数

現物出資の対象となるのは、不動産や自動車、パソコン、有価証券などです。

財産引受

財産引受とは、会社の設立後に特定の財産を取得することを約束する場合の内容を指します。発起人が、会社の設立を条件として、株式会社の成立後に特定の財産を譲り受ける契約です。

定款には、以下のような内容を記します。

  • 対象となる財産の詳細
  • その財産の価額
  • 譲渡人の氏名または名称

財産引受を記す目的は、設立後すぐに必要となる財産を確実に取得するとともに、取得財産の過大評価による不当な対価の支払いを防ぐことです。定款に盛り込んでおけば株主や債権者の利益を保護し、財産的基礎を明確にできます。

発起人の報酬および特別利益

設立において、発起人が行った労務や貢献に対して支払われる報酬や享受する利益です。どのような報酬や特別利益が支払われるかを記します。また、その発起人の氏名または名称も明示しなければなりません。

この項目は、発起人への過剰な利益供与(いわゆる「お手盛り」)を防ぎ、会社財産の適正な維持を目的としています。

設立費用

設立時に発生する費用のうち、発起人が会社に請求できる項目です。発起人による過剰な費用請求の予防、会社財産の保護を目的としています。発起人が設立費用を請求するためには、原則として定款に記されていなければなりません。

項目として認められるのは、事務所の賃料や水道光熱費、事務員の給与、事務用品費、株主募集の広告費などです。一方、工場敷地の買収費用や製造機械の費用など、事業開始に必要な費用は含まれません。

任意的記載事項

任意的記載事項とは、「わざわざ定款で定めなくても問題ないが、定めておいた方が無難な項目」です。記載する内容に特段制限はありませんが、会社法や公序良俗に反しない範囲にとどめる必要があります。記載されることが多い項目を以下に列挙しますので、確認しておきましょう。

定時株主総会の招集時期

会社法では、株式会社は事業年度終了後に株主総会を招集することが求められています。ただし、具体的な開催時期の規定はないため、いつ開催するかを定款で規定することができます。招集時期の明記は、透明性向上と株主の権利保護につながります。

役員の数

多くの会社が定款で役員の数を明記しています。規模や事業内容に応じた適切な経営体制を明確にする上で重要なポイントだからです。ただし、株式会社における役員の数については、法律による定めがあるので注意しましょう。取締役会を設置する場合には、会社法331条5項により、最低3人以上の取締役が必要とされています。一方、取締役会を設置しない場合、会社法326条1項に基づき、取締役は1名以上で問題ありません。

事業年度の設定

1年以内であれば任意の期間で自由に事業年度を設定できます。多くの日本企業は4月開始、3月終了の事業年度を採用していますが、それに従わなくても問題ありません。資金繰りを考慮し、納税時期と売上の低い時期が重ならないようにしましょう。なお、事業年度は途中でも変更できます。

定款にフォーマットはある?

定款の作成には、法律で定められた特定のフォーマットはありません。内容を満たしていれば自由に作成できます。しかし、一般的な書き方としては、以下のような形式が挙げられます。

  • A4サイズの用紙に横書きで作成
  • 明朝体やゴシック体を使用し、黒文字で統一
  • 末尾に発起人全員の署名と捺印を記載

また、PDF形式による電子定款の作成も可能です。その場合、印紙代4万円が不要になるため費用を節約できます。必要事項を入力するだけで定款の雛形を自動生成できるサービスやサイトも存在します。

定款の構成

定款の基本的な構成は以下の通りです。

  • 第1章 総則
  • 第2章 株式
  • 第3章 株主総会
  • 第4章 取締役
  • 第5章 計算
  • 第6章 附則

この構成は会社の基本的な運営ルールを網羅していますが、シンプルかつ基本的な内容です。規模や特性に応じ、この構成に必要な項目を追加しても問題ありません。

第1章 総則

定款の冒頭に位置し、会社の存在意義や基本的な枠組みを示す重要な部分です。この章を読めば、会社の基本的な性質や目的が理解できます。そのため、誰が読んでも理解できるよう、わかりやすく明確な表現を使用することが大切です。また、不必要に詳細な記述は避け、簡潔に記載しなければなりません

具体的には、商号や本店所在地、事業目的、公告方法を明記します。その際、現在の事業だけでなく、将来的に展開予定の事業を盛り込むケースも多いです。

第2章 株式

会社の株式に関する重要な規定を定めています。株主の権利や義務、株式の流通性を管理する上で重要な役割を果たす項目です。発行可能株式総数や株式の譲渡制限、株券を発行するかどうかなどを記します。

第3章 株主総会

定款の第3章「株主総会」は、株主総会の運営に関する重要な規定を定めています。例えば、以下のような事項です。

株主招集方法 一般的には、株主が一堂に会する方法が多いです。また、招集通知の発送時期や方法も規定します。
決議方法 議決権数に基づく多数決で、出席した株主が保有する議決権の過半数の賛成が必要な普通決議や、出席した株主が保有する議決権のうち、3分の2以上の賛成が必要な特別決議などがあります。
議事録作成 株主総会終了後、遅滞なく議事録を作成しなければなりません。
その他の規定 議長の選任方法や株主総会の開催時期、議決権行使の方法などを記載します。

第4章 取締役

取締役の選任方法や任期、取締役会の設置に関する規定を定める重要な部分です。会社の経営体制や意思決定プロセスを明確にし、効率的な運営を図るために重要な内容を含んでいます。以下、その主な内容です。

取締役の選任方法 一般的に、取締役は株主総会で選任されます。定款に定めを設けることで、その株主総会が成立するために必要な定足数を緩和したり、決議に必要な議決権の割合を加重したりといったことが可能です。
取締役の任期 原則として2年ですが、後述する非公開会社であれば定款で最長10年まで延長可能です。
取締役会の設置 取締役会を設置する場合、最低3名以上の取締役が必要です。非公開会社では、取締役会を設置しないこともできます。その場合、取締役は1名以上で問題ありません。
監査役や監査役会との関係 監査役や監査役会を設置する場合は、別章を設けて規定することもあります。

第5章 計算

会社の財務に関する重要な事項を規定する項目です。株主の利益と会社の成長のバランスを取るための重要な規定を含みます。主な内容は以下の通りです。

事業年度の設定 通常は1年間で設定しますが、1年以内で自由に決定できます。
剰余金の配当 配当の基準日や方法です。

第6章 附則

附則は、上記以外で会社設立に関する特別な取り決めがある場合に記載する章です。設立時点で明確にしておくことで運営上の混乱や誤解を防ぐ役割を果たします。例えば、設立時の特別事項や法令準拠などです。

また、附則は設立後も定款の一部として残るものの、不要となった場合は削除できます。その際には、原則として株主総会での特別決議が必要です。

定款の作り方と会社設立までの流れ

定款作成に必要な項目がわかったところで、実際に定款を作成していきましょう。また、作成後の手続きについても説明していきます。流れは以下の通りです

  • 定款作成
  • 公証役場での定款認証
  • 法務局での法人登記
  • 会社設立

なお、定款は「保存用」「公証役場用」「法務局用」の3部を準備します。

①定款文案の作成

まずは定款文案を作成しましょう。その際に必要不可欠なのが、絶対的記載事項の記載です。会社法第27条に明記されており、漏れがあった場合は法律上効力を発揮しないため注意が必要です。さらに、会社の特性に応じて相対的記載事項や任意的記載事項を追加しましょう。取締役および代表取締役に関する規定など、法人登記手続きに必要な事項も盛り込みます。

文案作成にあたっては、「または」「および」といった接続詞の使用法に注意しましょう。表現が曖昧だったり言葉の選択を間違っていたりすると、記載した内容が本来意図した内容と異なる意味になってしまうためです。

②定款認証

作成した定款は、認証を受けなければ効力を発揮しません。特に株式会社の場合、定款の認証が必須となっています。認証には定款の紛失や改ざん、社内紛争などのリスクを抑止する目的があります。

認証は、公証人が公証役場で定款の正当性を証明する手続きです。公証人は元裁判官や元検事といった法律業務に携わってきた人物で、定款認証の権限が与えられています。公証役場は全国にある法務省法務局管轄の公的機関です。定款の認証は、本店所在地を管轄する公証役場で受けなければなりません。定款を作成したら公証役場に予約を取り、必要書類と手数料を提出しましょう。

定款の認証に必要な書類

定款認証に必要な書類は以下の通りです。

  • 定款(3通)
  • 実質的支配者となるべき者の申告書
  • 発起人全員分の印鑑登録証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
  • 委任状(代理人が手続きを行う場合のみ)

電子定款を利用した場合、書面の定款3通は不要です。その代わり、電子データで提出します。その他、以下のようなものが必要です。

発起人が個人の場合 実印
発起人が法人の場合 登記事項証明書(代表者事項証明書・履歴事項全部証明書・現在事項全部証明書のいずれか1つ)、法人代表者の印鑑証明書、実質的支配者となるべき者の申告書と本人確認書類
代理人が公証役場に行く場合 委任状、代理人の本人確認書類

定款の認証にかかる費用

定款の認証にかかる主な費用は以下の3つです。

定款の認証手数料 資本金100万円未満の場合は3万円(ただし、条件によっては1万5000円)、資本金100万円以上300万円未満の場合は4万円、資本金300万円以上の場合は5万円
印紙税としての収入印紙代 紙の定款の場合は4万円、電子定款の場合は不要
定款の謄本の請求手数料 1ページにつき250円。一般的な総額は2,000円前後

③法人登記

法人登記は、公証役場での定款認証後に行う手続きです。会社設立の最終段階であり、これにより法人として正式に認められます。

登記は法務局にて行われ、定款と就任承諾書、収入印紙、印鑑証明書、出資金払込証明書類を用意しておく必要があります。

就任承諾書は取締役や監査役の就任を承諾する書類で、承諾者の氏名、住所、印鑑が必要です。印鑑証明書は、取締役会を設置している場合は代表取締役のものだけで構いませんが、取締役会非設置の場合は役員全員分が求められます。出資金払込証明書類とは、設立時の代表取締役が作成した払込証明書と銀行通帳のコピー(表紙、裏表紙、出資金・出資者がわかるページ)を指します。

これらの書類に不備がなければ、申請から1週間~10日で完了します。

④会社設立

法務局での法人登記が完了すると、登記事項証明書が発行され、会社設立が正式に完了します。しかし、その後は法人税や消費税などの納税義務が生じるため、設立した法人を管轄する税務署や年金事務所に必要な申請を行わなければなりません。また、法人口座の開設も重要です。開設時には登記事項証明書や印鑑証明書、定款などの提出が求められるため、事前に数枚準備しておきましょう。

これらの手続きを完了することで、会社としての活動を本格的に開始できるようになります。

定款の作り方のポイント

定款作成においては、いくつか気を付けるべきポイントがあります。何らかのフォーマットを選ぶ場合でも、次に紹介する点を考慮しましょう。

公開会社か非公開会社か

定款作成時には、会社の将来的な展望や経営の安定性を考慮し、適切な会社形態を選択することが重要です。特に公開会社か非公開会社かの選択は、会社の将来に大きな影響を与えます。

公開会社と非公開会社の主な違いは、株式譲渡制限の有無です。非公開会社ではすべての株式に譲渡制限があり、株式の譲渡には会社の承認が必要です。しかし、公開会社は一部または全部の株式に譲渡制限がありません。株式を自由に譲渡できます。

非公開会社のメリットは経営の安定性です。そのため、上場をめざさない新規設立の株式会社の多くが非公開会社を選択しています。上場をめざす場合でも、株主を安定させるために非公開会社とするのが一般的です。

取締役の人数

先述したように、取締役会設置会社では3名以上の取締役が必要ですが、取締役会非設置会社は1名の取締役でも問題ありません。そのため、基本フォーマットも、取締役の人数によって異なります。

また、取締役の任期は相対的記載事項の一つです。原則は2年ですが、非公開会社の場合は定款に定めれば最長10年まで延長できます。

役員の人数と任期は会社の将来的な成長や変化を見据えた上で、株主構成や経営方針に応じて設定しましょう。

取締役会の設置有無

取締役会を設置する場合、3名以上の取締役と監査役1名の設置が必要です。取締役会は公開会社や上場をめざす会社では設置が義務付けられていますが、非公開会社はそうではありません。取締役会の設置も監査役の任命も任意です。

取締役会の設置には、経営における意思決定の迅速化や業務執行を監督できること、対外的な信用力の向上といったメリットがあります。一方、役員報酬の負担増加や定期的な取締役会開催の必要など、デメリットもあります。

設置するかどうかは会社の将来的な成長戦略や経営方針に大きく影響するため、慎重に検討しましょう。

定款は常に備え置く

定款は会社の基本的な事項を定めた重要書類であるため、適切に保管し、必要時にすぐに取り出せるようにしておく必要があります。特に株式会社は定款を本店および支店に備え置き、会社が存続する限り保管し続けなければなりません。

一方、公証役場では、定款は承認から20年間保存されます。そのため、この期間内であれば、公証役場で定款の謄本を請求できます。ただし、公証役場で保管されているのは原始定款のみなので注意しましょう。定款変更後の最新版は公証役場にはありません。

定款の変更手続きについて

定款は変更可能です。手続きは以下のように行います。

株主総会での特別決議 変更を決定するためには議決権の過半数を有する株主の出席と、出席株主の議決権3分の2以上の賛成が必要です。持分会社の場合は定款に別段の定めがない限り総社員の同意が必要です。
議事録の作成 特別決議の内容を記録する必要があります。日時や内容、出席議決権総数、賛成の数などです。
法務局での変更登記(必要な場合) 登記事項に該当する変更がある場合、変更が生じてから2週間以内に申請します。
税務署への届出(必要な場合) 事業年度や納税地、事業目的、商号、資本金額などを変更する場合には、税務署に届け出なければなりません。
変更後の定款を保管 変更後は、最新版を原始定款とともに保存します。

定款変更にかかる費用

株主総会での特別決議には、原則として直接的な費用は発生しません。しかし、法務局への登記申請が必要な場合には、登録免許税が原則として3万円かかります。変更内容による費用例は下記の通りです。

商号(会社名)変更 3万円
事業目的変更 3万円
本店所在地変更 管轄内で3万円、管轄外で6万円
役員変更 1万円(資本金1億円超の会社は3万円)
増資 増加資本金額の0.7%または3万円の高い方

また、司法書士への依頼費用や郵送費、交通費などもあらかじめ考慮しておきましょう。

電子定款を利用する方法もある

定款変更においても電子定款を利用できます。その場合は収入印紙代が不要となり、コストを抑えられます。また、手続きの効率化もうれしいポイントです。ただし、電子証明書付きのマイナンバーカードやICカードリーダライタ、電子署名ソフトなどが必要となります。会社の状況に応じ、電子定款と紙の定款のどちらが適しているかをよく検討しましょう。

定款を提出する際の注意点

公証役場や法務局、金融機関、行政機関などに定款を提出する際には、原本の取り扱いに注意しましょう。定款の原本は公証役場と会社でそれぞれ1部ずつ保管されているからです。先述したように定款には保存義務があるため、原本を直接提出することはできません。そこで、原本の代わりに定款の写しを提出します。写しに原本証明を付けて提出することで、原本と同等の扱いを受けられます。

原本証明は、定款の写しが原本の内容と同じであることを証明する書類です。特定のフォーマットはなく、提出先によって記載事項やルールが異なります。そのため、作成の際は提出先にしっかり確認しておきましょう。一般的には、以下の事項を記載します。

  • 該当の定款の写しが原本と相違ない旨の一文
  • 原本証明を行った日付
  • 会社住所
  • 社名(商号)
  • 代表者
  • 代表者印

定款作成は自分で行うと大変

ここまで解説してきたことからもわかる通り、定款作成を自分で行うのは大変です。細かいルールや規則があるため、公証役場や法務局にて申請したものの、書類不備で何度もやり直しが必要になるケースも珍しくありません。

自分でできる自信がない方は、司法書士に依頼したりクラウドツールを活用したりすると良いでしょう。多少の費用はかかるものの、正確性と迅速性というメリットを得られます。特に、早く起業して事業を始めたいという方は、外部の力を効果的に使うのがおすすめです。

定款作成後に考えたいオフィス環境整備

定款を作成し、会社を設立したら、次に考えるべきはオフィス環境の整備です。設立時は基本的な設備投資でも問題ないかもしれませんが、業務内容は次第に増大し複雑化するものです。

そうした場合に効果的なのが、ICTのようなデジタルツールの活用です。ICTの整備についてより詳しく知りたい方は、以下の資料を参考にしてください。

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「Nにおまかせ!」を活用したオフィス環境構築の成功事例

株式会社パブリ様は、コンサルティングやセミナーを通じて、出版社と図書館、書店と販売会社、そして読者をつなぐ事業を展開する企業です。  
同社は創業時にNTT東日本グループの「Nにおまかせ!」を活用し、ビジネスフォンを含む創業準備全般のサポートを受けました。藤川社長は、NTT東日本グループの信頼性の高さと担当者の迅速な対応を評価し、すべてをまかせる決断をしたと語っています。 

この取り組みにより、同社は以下のような成果を得ました。 

  • ホームページ制作費の大幅削減
  • IP電話の導入による通信コストの削減
  • 通信環境整備の効率化
  • 初期費用約500万円の削減
  • 自社のコア業務へのリソース集中

藤川社長は、NTT東日本グループ担当者の優れたコミュニケーション力と迅速な対応を高く評価。「Nにおまかせ!」のサポートにより、本来の事業構築に専念できたことで、スムーズなスタートを切ることができたと述べています。

このように、「Nにおまかせ!」では、さまざまな業種におけるオフィス環境構築のトータルサポートを行っています。開業後の事業展開をスムーズに行いたいという方は、ぜひご相談ください。

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※ 文中に記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、全て2024年1月時点(インタビュー時点)のものです。

※ 事例は一例であり、すべてのお客さまに同様の効果があることを保証するものではありません。

まとめ

会社設立の際、定款作成は切っても切り離せないステップです。会社の根本規則になるからこそ、自分が納得するまでしっかり考え抜いて作成しましょう。

作成に際しては、記載すべき事項が法律で定められています。また、認証や登記など法的手続きをしっかり踏んで対応しないと後々面倒な事態になるケースも多いです。そのため、どうしても作成に困った場合は1人で抱え込まず、外部の力を上手に活用しましょう。

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監修

税理士法人V-Spiritsグループ代表 税理士・社労士・行政書士・FP

中野 裕哲

起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。 税理士法人V-Spiritsグループ代表。年間約1000件の起業相談を無料で受託し、起業家や経営者をまるごと支援。経済産業省後援 起業経営支援サイト「DREAM GATE」で12年連続相談数日本一。 著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)など20冊、累計25万部超

V-Spiritsグループ Webサイト
監修