【図解】建設業の2024年問題とは?3つの影響と5つの対策も解説

公開日:2024.10.01

【図解】建設業の2024年問題とは?3つの影響と5つの対策も解説

この記事で
わかること

  • 建設業における2024年問題の内容と背景
  • 働き方改革関連法が建設業に与える影響
  • 2024年問題を乗り切るための具体的な対策

目次

建設業の2024年問題とは、働き方改革関連法が建設業に適用されたことにより生じる問題の総称です。2024年4月以降、働き方改革関連法の一環として改正労働基準法が施行され、時間外労働の上限規制が設けられました。働き方改革関連法は、建設業に対してもすでに施行されており、違反すると罰則があるため注意が必要です。

本記事では建設業における2024年問題の意味やポイント、働き方改革が求められる背景、2024年問題による影響、対策をわかりやすく解説します。

1.建設業の2024年問題とは?

建設業の2024年問題とは、建設業にも働き方改革関連法が適用されることによって生じる問題の総称です。

働き方改革関連法の一環で、2024年4月より労働基準法が改正され、時間外労働に上限が設けられました。この改正によって、休日出勤を含めた長時間労働の制限が厳しくなり、天候による工期の遅れを取り戻すことが困難になっているなどの声が、現場担当者から挙がっています。これまでは、休日出勤などによって遅れを取り戻していたところ、現在は休日を確保しなければならず、工期遅れへの新たな対処法を検討しなければならない状況に直面しています。

時間外労働の上限規制は、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から順次適用され、建設業などでは2024年4月から適用開始となっています。

建設業に5年間の猶予期間が設けられた理由は、人手不足や長時間労働の慢性化などの課題があり、他業界と足並みを揃えて直ちに対応しようとすると、業務に支障をきたす恐れがあったためです。しかし、その猶予期間も終わり、2024年4月から建設業でも適用が始まっています。

2.建設業における2024年問題のポイント

建設業の2024年問題を理解するには、働き方改革関連法の一環として改正された、以下の2つのポイントを押さえておく必要があります。

  • 時間外労働の上限規制
  • 割増賃金の引き上げ

それぞれの内容を見てみましょう。

時間外労働の上限規制

2024年4月1日より、建設業では時間外労働に罰則付きの上限が設けられています。そもそも労働時間は、労働基準法によって以下のように上限が決められています。

<労働時間の上限>

  • 1日8時間および1週40時間
  • 毎週少なくとも1回の休日

これを超えて労働者に時間外労働をさせる場合や法定休⽇に労働させる場合、労使の合意に基づく以下の手続きを取る必要があります。

<法定労働時間を超えて時間外労働をさせるための手続き>

  • 36(サブロク)協定の締結
  • 36(サブロク)協定の所轄労働基準監督署長への届出

従来は、36協定を締結して労働基準監督署へ届出を行っていれば、上限なく時間外労働をさせても罰則はありませんでした。しかし、改正後は以下のように罰則付きの上限が、法律で規定されるようになりました。

<時間外労働の上限規制>

  • 時間外労働の上限:
    • 原則として月45時間および年360時間
  • 労使が合意する特別条項の場合:
    • 時間外労働が年720時間時間以内
    • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
    • 時間外労働と休日労働の合計が、2〜6カ月で平均80時間以内
    • 時間外労働が月45時間を超えられるのは、年6回が限度
  • 建設業が、災害時の復旧・復興事業に取り組む場合、以下は適用されない:
    • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
    • 時間外労働と休日労働の合計について、2〜6カ月平均80時間以内

参考:「厚生労働省|建設業 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
  (https://www.mhlw.go.jp/content/001116624.pdf)

改正前と改正後を比較すると、次の図のように表すことができます。

上限規制のイメージ 改正前と改正後の比較

出典:「厚生労働省|時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
  (https://www.mhlw.go.jp/content/001140962.pdf)

36協定で定めた時間を超えて時間外労働をさせた場合の罰則

36協定で定めた時間以上に時間外労働をさせた場合、法律違反となります。罰則として、「6カ月以下の懲役または30万円の罰金」が科される恐れがあります。

また、36協定を締結しない、あるいは、締結をしても労働基準監督署へ届出をせずに時間外労働をさせた場合なども法律違反となり、同様の罰則につながる可能性があります。

割増賃金率の引き上げ

2023年4月の労働基準法の改正では、中小企業における月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられました。

従来、中小企業における月60時間超の割増賃金率は25%でした。しかし、2023年4月以降は大企業と同様に50%となっています。なお、ここでいう「中小企業」とは、次表の①または②に該当する企業を指します。

横にスクロールします

業種 ①資本金または出資の総額 ②常時雇用する労働者数
小売業 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
上記以外の
その他の業種
3億円以下 300人以下

企業の立場から見れば、残業時間の削減に取り組まなければ、残業コストによって経営がひっ迫する恐れがあるといえます。

参考:「厚生労働省|月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」
  (https://www.mhlw.go.jp/content/000930914.pdf)

3.建設業に働き方改革が求められる背景

2024年4月に法改正が施行されたいま、建設業は従来と比較して長時間労働がしにくくなっている状況にあるといえます。会社全体で残業時間を減らしながらも、業務に支障をきたさないようにするためには、働き方改革が急務です。

ここからは、建設業に働き方改革が求められている背景を詳しく説明します。

長時間労働の慢性化

建設業では、長時間労働が慢性化しています。

国土交通省の資料によると、全産業と比較して建設業は、年間の実労働時間・出勤日数が多い傾向です。たとえば、2022年における建設業の年間出勤日数は、他産業と比較した場合に12日も多く、年間実労働時間は68時間も長いことが明らかになっています。

産業別年間出勤日数と産業別年間実労働時間

出典:「国土交通省|最近の建設業を巡る状況について【報告】」
  (https://www.mlit.go.jp:8088/policy/shingikai/content/001633500.pdf)

さらに、同資料では、技術者・技能者ともに週休2日を確保できていない状況も明らかにされ、休日出勤を含めた長時間労働が課題として挙げられます。

若手人材の不足と技能者の高齢化

建設業では、若手人材の不足と技能者の高齢化が懸念されています。

国土交通省の資料によると、建設業の就業者は1997年の685万人をピークに減少傾向で、2022年では479万人となりました。そのなかでも特に、技能者の高齢化と若手の人材不足が顕著で、60歳以上の技能者は77.6万人と全体の約4分の1を占めています。

その一方で、建設業の将来を担う29歳以下の若手の人材は、35.3万人でわずか11.7%しかいません。若手不足で、比較的年齢の高い技能者に業務負荷が集中するという問題のほか、後継者不足で技術継承が難しい状況も課題だといえます。

年齢階層別の建設技能者数

出典:「国土交通省|建設業をめぐる現状と課題」
  (https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001610913.pdf)

不適切な工期設定

不適切な工期設定によって、労働者が長時間働かざるを得ないケースもあります。

建設工事では、契約時の工期内に建物などを竣工させることが重要です。しかし、工期に余裕がない場合、残業時間の増加や休日出勤、施工品質の低下などの問題が生じることとなります。

なお、著しく短い工期の設定は建設業法で禁止されていて、違反した場合には勧告や指示処分、社名が公表される可能性があります。

4.2024年問題が建設業に与える影響

建設業界に対して、残業時間の上限規制はすでにスタートしています。建設関連会社が2024年問題に対応せず、働き方改革に取り組まない場合、どのような影響があるかを説明します。

人手不足が悪化する2025年問題にさらに拍車がかかる

2025年問題とは、2025年に75歳以上の後期高齢者が増加して、大量の退職者が出る社会問題のことです。建設業では、2025年には就業者数が約90万人も不足するといわれています。

2024年4月、株式会社東京商工リサーチが発表した「人手不足」に関する調査結果によると、すでに8割超の建設会社が「正社員不足」と回答していることが明らかになりました。

建設会社がこのまま人手不足対策を講じなければ、問題はさらに悪化し、労働者1人当たりへの業務負荷が増大して、残業時間の削減が困難になる可能性も考えられます。

参考:「株式会社東京商工リサーチ|「人手不足」企業、69.3%で前年よりも悪化 建設業は8割超が「正社員不足」で対策急務」
  (https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198512_1527.html)

大企業と比較して、中小企業の人材獲得がさらに困難になる

人手不足や長時間労働が解消されなければ、中小企業では経営が厳しくなり、大企業と比べて人材獲得がさらに困難になる恐れもあります。大企業では、給与アップや労働環境の改善に向けた予算を比較的確保しやすい傾向にありますが、中小・零細企業では余裕がなく難しいと考えられるためです。

実際、複数の大手建設会社では、2025年採用の新入社員(大卒)の初任給について、前年と比べて約7〜9%の賃上げとなる「28万円」に設定しています。

このような状況下において、中小企業は若手人材や既存の従業員にとって魅力的な職場づくりができなければ、求人情報を公表しても、優秀な人材の獲得は容易ではないでしょう。

倒産リスクが高くなる

2024年問題が解消されないことによって、建設会社の倒産リスクが高くなる恐れがあります。

建設業は人手不足だけでなく、「資材高騰」という問題にも直面しています。資材高騰によって建設コストが上昇し、会社の経営状況がひっ迫するリスクが高いと考えられます。

株式会社帝国データバンクの建設業における「倒産動向調査」によると、2023年の倒産件数は1,671件と、前年より38.8%増加していました。2024年問題に対応しなければ、今後さらなる建設コストの上昇に伴い、倒産件数が増加すると懸念されています。

参考:「株式会社帝国データバンク|「建設業」倒産動向調査(2023 年)」
  (https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p240103.pdf)

5.建設業の2024年問題への対策

建設業の2024年問題への対策 ポイント

ここからは、建設業の2024年問題への具体的な対策について見ていきましょう。人手不足の解消や、長時間労働を是正するための方法を紹介します。

週休2日制を確保した適正な工期設定

時間外労働の上限規制に対応するためには、週休2日制を確保した適正な工期設定が重要です。短い工期は長時間労働の原因となっているため、改善に向けて工期設定を見直しましょう。

国土交通省の資料によると、発注者と受注者間で協議を行い、受注者の要望が受け入れられた場合には、「妥当な工期」を確保できる割合が高くなることがわかっています。しかし、受注者の要望が受け入れられない場合には、短工期の工事が多いというデータも公表されています。

受発注者による協議が重要なのはもちろんのこと、発注者が「適正な工期設定が重要だ」という認識を持つことも不可欠だといえます。

参考:「国土交通省|建設工事における適正な工期の確保に向けて」
  (https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001612259.pdf)

労働時間の管理

労働時間の管理を徹底しましょう。

2019年に労働安全衛生法が改正され、労働時間の適正な把握が求められています。具体的には、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録などを利用して、客観的に記録を取る必要があります。

従業員一人ひとりの労働時間を正確に把握できれば、残業時間の削減に向けた具体的な対策を講じやすくなります。さらに、割増賃金を正確に計算できるなどのメリットも挙げられます。

技能や経験に見合った給与支給

従業員に対して、技能・経験に見合った給与を支給できるよう、環境を整えましょう。

十分な給与や、充実した福利厚生が準備されていれば、若手人材が「働きたい」「働きやすい」と感じられる職場環境につながります。

働き手が増加すると人手不足は解消され、長時間労働の削減も期待できるでしょう。

デジタル化の推進

業務のデジタル化を推進し、効率化を図りましょう。具体的には、以下の取り組みが挙げられます。

  • 建設業向けの案件管理システムやアプリを導入して、現場に関連する情報を一元管理し、業務上の無駄を省く
  • 集客をデジタル化して、SNS運用や動画作成に取り組み、自社の魅力を発信して人材獲得につなげる

また、前述した労働時間の管理もデジタル化することで、労務管理業務の効率化も可能になります。

建設業に特化した人材マッチングサービスの活用

人手不足の解消には、建設業に特化した「人材マッチングサービス」の活用も一つの方法です。

人材マッチングサービスでは、たとえば「施工管理経験のある職人」など、条件を設定して検索するだけで、適切な人材を見つけられます。人材確保に役立ち、経験者を採用すれば育成コストの低減にもつながるなど、複数のメリットがあるでしょう。

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6.まとめ

本記事では、建設業の2024年問題について詳しく解説しました。

人手不足に対して建設会社が何も対策を講じなければ、「残業が減らない」「割増賃金の支払いが増え、人件費で経営がひっ迫してしまう」など、複数の問題が積み重なっていく恐れがあります。さらに、「人手が足りないから案件の受注を見送らざるを得ない」など、会社として機会損失を被ってしまう側面も憂慮されます。

会社として今後も事業を持続・発展させていくためには、人手不足の解消が急務だといえます。

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