公開日:2024.05.23
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目次
近年、DXを推進し競争力の強化や新しい価値を生み出すことに取り組む企業の数は増加しています。一方で、なかなか効果を実感できていない企業も多いのではないでしょうか。DXが対象とする範囲は幅広く、ただITツールやデジタル技術を導入するだけでは実現できません。
そこで本記事では、DXを推進するうえで企業が得られるメリットと成功させるポイントを解説します。DX推進に取り組む前に知っておくべき基本的な知識が理解できる内容になっていますので、ぜひ最後までお読みください。
DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略です。企業や組織がデジタル技術を取り入れビジネスモデルや業務プロセスを根本的に変革することを指します。近年、多くの企業でDXを推進していますが、その過程で多様な課題や障害に直面しています。
DX推進は組織文化やビジネスモデルに加え、顧客体験の根本的な変革を伴うため全社的な取り組みが必要です。しかし、多くの企業がデジタル技術の導入に取り組みつつも、組織内のデジタルリテラシーが低いことや既存の業務プロセスとの連携に課題を抱えています。DXを推進する中で、まだ成果に結び付けられていない企業が多く存在しています。
2018年に経済産業省がまとめたレポートで、DXの推進が必要である背景について公表しました。その背景には、大きく分けて以下の2つが挙げられます。
本章では、それぞれの内容を詳しく紹介します。
「2025年の崖」とは、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」で提起された問題です。日本企業がDXの取り組みを行わなかった場合、2025年以降にさまざまなリスクを抱え、競争力を失う企業が続出する可能性があることを指します。
日本企業のDXが実現できなければ、老朽化・複雑化・ブラックボックス化した既存のシステムが残ることになります。DXレポートによると2025年以降、既存システムの影響により年間で最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると記載されています。
2025年がタイムリミットとして設定されているのは、既存のITサービスや、既存の基幹システムなどがサポートを終える時期が集中しているためです。「2025年の崖」への対応は、日本企業にとってDX推進の重要な契機となり、迅速な対応が求められます。
グローバル市場において競争力を維持・向上させるためには、DX推進が不可欠です。スイスの国際経営開発研究所(IMD)が毎年発表している「世界デジタル競争力ランキング」によると、日本のデジタル競争力は年々低下傾向にあり、2023年には32位と過去最低を記録しました。
デジタル技術の活用により、業務効率化や新たなビジネスモデルの創出ができます。海外企業との競争において、デジタル技術を用いたサービス提供は差別化を行う手段の1つです。DXを進めることで市場の変化へ迅速に対応し、競争優位性を確保できます。
DXは意義を理解して適切に推進すれば、企業に以下のようなメリットをもたらします。
本章ではそれぞれのメリットについて、具体的に解説します。
DXの最大のメリットは、業務効率化による生産性の向上です。DXを推進することによって業務のデジタル化が進み、業務スピードが上がります。日々のルーティン業務の自動化や正確化が測れ、作業時間が短縮できたり人件費が軽減できたりします。
さらにはヒューマンエラーを減らせるので、より企業の信頼が高まります。生産性の向上でコストの削減や成果の増大につながり、資金に余裕が生まれて新たな事業へ投資を行うことも可能です。
DX推進は、災害や緊急事態におけるBCP対策(事業継続計画)の強化に貢献します。デジタル技術を活用したリモートワークやクラウドベースのシステムにより、どこからでも業務を継続できるためです。
天災やパンデミックの際でも、クラウド技術を利用してリモートで業務を行うことで、企業の活動が持続できます。DX化によるBCP対策(事業継続計画)の強化は、突発的な事態に対して損害を最小限に抑え、早期復旧を図るために重要です。
DX推進は効率的なデジタルツールの導入により、従来は人が行っていた作業を自動化することで人材不足の解消につながります。特に繰り返しの多い業務や単純作業を自動化することで、人的リソースをより戦略的な業務や創造的な活動に割り振ることが可能です。
例えば、カスタマーサービスにおけるAIチャットボットの導入により、単純な問い合わせ対応を自動化し、従業員は複雑な顧客対応や新規商品の開発などに集中します。DXによる自動化と効率化は、限られた人材を最大限に活用し、人材不足の解消につながります。
新規事業を創出することにより他社と差別化が図れるため、企業競争において有利な立場が確立できます。理由はデジタル技術の活用で、従来のビジネスモデルを超えたイノベーションが可能になり、未開拓市場や新たな顧客層へのアプローチができるからです。
例えば、データ分析やAIを用いて顧客の不満を発見し、それを基にした新サービスや製品の開発ができます。DXはビジネスの新たな可能性を広げ、企業の成長と発展を切り開く重要な要素です。
莫大な予算を投下したにもかかわらず、DX化の多くが失敗に終わっているのも事実です。DX推進における主な失敗パターンは、以下のようなものが挙げられます。
本章ではそれぞれの事象について、対策も踏まえて分かりやすく解説します。
新システム導入のみに注力し、本質的な業務改善が見過ごされているのは失敗につながる原因の1つです。システムを導入することで、業務効率化が自動的に行えるわけではありません。業務の課題を明確にした上で、解決策としてシステムの導入を行いましょう。システムの導入は手段であり、業務改善と効率化が目的であることを忘れずに進めることが重要です。
基本的なデジタル化のインフラが整っていない状態では、DXの推進が失敗に終わる可能性が高いです。DXが進まない理由として、古いシステムを利用しなければならない事情があることや社内にIT人材が不足していることなどがあります。
自社のデータを紙ベースで管理している状態であるにもかかわらず、顧客データを活用した新サービスの開発に着手しても計画通りに進まないでしょう。デジタル化の土台を作るには、全社員を対象にした研修などの実施により、DXへの理解を深めることが重要です。
短期間で成果を求めすぎると、DX推進の取り組みが中断し失敗に終わる場合があります。DXは一朝一夕に成果が出るものではなく、継続的な社内ノウハウの蓄積とそのための時間が必要です。
DXを円滑に推進する社内環境を整備したとしても、新しいやり方が社内に浸透しなければDXの持続は難しくなります。社内のルールや仕事の進め方を業務プロセスに組み込んで、仕組み化することが重要です。
企業がDXを成功させるためには、以下のポイントを押さえて取り組むことが大切です。
本章ではそれぞれの特徴について、具体的に解説します。
DX推進を経営戦略やビジョンと密接に連携させるためには、「DXの実現によりどのような成長を遂げるのか」という方向性を明確に打ち出すことが求められます。DXはデジタル技術を用いてビジネスを革新させるだけでなく、自社の企業風土を刷新していく取り組みでもあります。
DXを推進する際には、従業員が自分のこととして受け入れられるビジョンを経営トップが発信し、全社的に共有することが重要です。DXのビジョンが自社の中核にあることで、プロジェクトの意図が関係者で共有されます。
DX推進にあたっては中長期的な視点を持ち、短期間での成果にとらわれない判断が必要です。短期的に成果が出ないことでDX自体をあきらめないように、中長期的に効果を測定して評価できる仕組みを作ることが求められます。
新しいデジタルツールを社内で活用し始めると、慣れないうちは業務効率が落ちたように感じるため、現場から不満の声が挙がることもあるでしょう。各部署へのヒアリングを通してDX推進計画を立てて、全社に共有するなどの仕組み作りが大切です。
DXを成功させるには、まずは現場責任者から意識改革を行うことが必須です。現場のリーダーがデジタル変革の重要性やDXの意義を理解し推進することで、部下やチームの動きも活性化するからです。
定期的な研修やワークショップを通じて、現場責任者にデジタル技術の知識とその活用方法について教育する機会を設けます。現場リーダーをDX推進のキーパーソンとして育成し、組織全体のDXを促進する役割の一端を担ってもらいましょう。
DX推進は全社戦略として捉え、社内全体で共通の理解と取り組みを進めることが成功への第一歩です。一部の部門やグループだけではなく、全社員がDXの目標と方向性を共有することで、組織全体のシナジーを生みます。
全社的なデジタル化推進プロジェクトを立ち上げ、各部門が連携して取り組むことで、業務プロセスの統一と効率化が測れます。全社員がDXの重要性を理解して一丸となって取り組むことで、デジタル変革を成功に導くことが可能です。
DX推進の成功のためには、基盤となるITシステムの構築が重要です。デジタル変革のプロセスを支え、新しい技術やアプローチを柔軟に取り入れることができるITシステムを構築しましょう。
基盤ITシステムの構築によって、クラウド化・データ分析・情報セキュリティ対策などのDXプロジェクトを支援し、新しいビジネスモデルの展開に期待がもてます。共通した1つのプラットフォーム上で個々のシステムが連動し、稼働できる環境を整えることで、相互の連携により効率的な運用が可能です。
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DXの推進によって業務プロセスの最適化が行われ、新たな市場機会を創出し企業の競争力が高められます。それを実現させるには、以下の多面的なアプローチを中長期で取り組むことが必要です。
単に新しいテクノロジーを導入することではなく、組織文化や顧客体験など全面的な改革を行う必要があります。企業がビジネス環境でさらなる成長を実現するために、DXの推進に取り組みましょう。
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監修
税理士法人V-Spiritsグループ代表 税理士・社労士・行政書士・FP
中野 裕哲
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。 税理士法人V-Spiritsグループ代表。年間約1000件の起業相談を無料で受託し、起業家や経営者をまるごと支援。経済産業省後援 起業経営支援サイト「DREAM GATE」で12年連続相談数日本一。 著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)など20冊、累計25万部超
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