公開日:2024.06.17
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日本の企業では、少子高齢化による労働力不足や既存システムの老朽化が問題となっています。この状況を打破するために必要なのが、DXの推進です。DXに取り組むことを検討している企業も多いですが、具体的な進め方に迷っている場合が少なくありません。そうした場合は、他社の取り組み事例を参考にすることをおすすめします。
本記事では、DXに成功している他社の事例や注目すべきポイントを紹介します。また、失敗事例についても触れますので、自社でDXを進める際の参考にしてください。
DXとは、データやデジタル技術を活用して業務プロセスを改善し、ビジネスモデルを変革することです。これにより、競争市場において他社との差別化を図り、優位性を確立することが可能となります。IT技術の発展は、業務効率化を通じたコスト削減だけでなく、新しい価値の創造を可能にしました。この動向は世界中で広がりを見せており、多くの産業がIT技術を取り入れることで、ビジネス環境が変化しています。
日本の企業が直面している主な問題は、既存システムの老朽化と人材不足です。この問題を克服できなければ、競争力の低下により多くの企業が経済的損失を受けるといわれています。事業の存続と発展のため、各企業はDXの推進が急務となっています。
しかし、多くの企業がDXの推進に努めてはいるものの、ビジネスモデルや組織の本格的な変革を達成している例はまだ少ないです。2023年の世界デジタル競争力ランキングでは、日本は64ヶ国中32位と評価されており、その低さが課題とされています。
このような課題に直面し、DXの導入にお困りの企業担当者の方は、「Nにおまかせ!」のお問い合わせフォームからご相談ください。通信環境やデジタル化による業務見直しまで、幅広くサポートいたします。
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実際にDXの導入に成功している企業では、どのような取り組みをしているのでしょうか。この章では、中小企業におけるDXの成功事例を紹介します。DXをスムーズに導入するため、ぜひ参考にしてください。
飲食店のA社は、従業員数約40名の老舗企業です。現在の社長が事業を継承したことを機に、天気や売り上げなどのデータをパソコンに手作業で入力し、データ活用の取り組みを始めました。さらに、デジタル化を加速するために専門の人材を獲得し、従業員への継続的な教育を実施。自社開発のAIツールを用いて来客数予測や経営データの一覧表示が可能なツールを開発しました。その結果、従来と比較して以下のような成長がありました。
DXの過程で開発したツールを活用して関連会社を設立し、他の事業者の支援にも取り組んでいます。
貨物運送や自動車の輸送、機械器具の設置工事を手掛けるB社では、業務の属人化やブラックボックス化が長らく課題でした。この問題に対処するため、IT経営の専門家と協力し、自社の経営ビジョンを明確化し、5年後の実現を目指してDXへの取り組みを進めています。
その中で、紙で管理・運用していた業務プロセスをクラウドの運用に切り替え、各業務システムとデータを連携させました。さらに、遠隔地の拠点を含む会社全体で業務改革に取り組み、効率化に成功しています。
輸送用機械器具を製造しているC社は、従業員数約200名の企業です。DXを推進するため、製造現場を熟知するメンバーとITエンジニアからなるチームを組織し、現場の課題解決に取り組みました。
C社では、製品を製造する部署間での情報連携のミスにより、工程に不具合や誤りが生じるという問題がありました。これを克服するために、入力されたデータとサーバー側の情報を照合するシステムを導入し、属人的なエラーを未然に防ぐ措置を講じました。また、製造設備のシステム制御を強化し、これにより問題を解決しています。
さらに、eラーニングの活用により社員の学習コンテンツを制作し、社内で広く利用しています。重要なのは、現場の経験とIT技術のどちらの知見も活かし、それらを融合させて事業の運営に生かすことです。
配管・油圧・メンテナンス事業を展開するD社は、従業員数約30名の企業です。近年、油圧式機器のメンテナンス需要が減少する中、同社は電気駆動式への市場のシフトに応じて、AIを活用した外観検査システムの自社開発に成功し、新たな市場に参入しました。
このAI外観検査システムは、スマートフォンやMR(Mixed Reality)※を利用して部品検査が可能で、自社のサービス向上に役立てるとともに、サブスクリプションモデルで販売も行っています。また、開発プロセスの透明化と効率化を図るため、ソフトウェア開発プラットフォームのGitHubを使用し、タイにあるラボと日本との間でのグローバル開発を効率よく進めています。
※MR(Mixed Reality):実世界と仮想世界の要素を組み合わせた技術。これにより、リアルとバーチャルが混ざり合い、相互に影響を及ぼす新しい体験が可能になる。
たれやだし、スープの製造メーカーであるE社は、従業員数約50名の企業です。地域に根付いた食の拠点となることを目指し、キッチンスペースをオープンしました。この拠点には、DXを推進する以下のような設備が備わっています。
デジタルサイネージやVR/ARなどデジタル技術も備え、オンライン上で情報発信して顧客を増やすことに成功しました。
デジタルサイネージの例は街角にある大型ビジョン、VRの例は住宅のVR内見、ARの例には試着体験があげられます。
E社は、新型コロナウイルス感染症の蔓延により打撃を受けた飲食事業者に、情報発信や商品開発の支援を行っています。
多くの企業で取り組まれているDXですが、実現に成功する企業ばかりとは限りません。DXがスムーズに進まなかった事例から学ぶことは、自社での取り組みを進める際の重要な参考になります。以下では、DXの取り組みに失敗した企業の事例をいくつか紹介し、それぞれから得られる教訓について掘り下げます。
デジタル化ツールを導入する際は、実際に使う現場の意見を取り入れることが大切です。しかし、意見を取り入れすぎると機能過多となり、結果として使いづらくなることがあります。
A社ではデジタルツールを導入する過程で、現場からのすべての意見を取り入れ、フルカスタマイズのシステムを開発しました。しかし、これが原因で操作が複雑になりすぎ、従業員がうまく使いこなせなかったため、結果的に多額の投資が無駄に終わってしまいました。この例から学ぶべきは、導入するシステムは使いやすさを考慮して機能を選定することの重要性です。
DXを推進する際、先進的なデジタル技術に対する期待が高まることがあり、結果として必要以上に高機能なシステムを導入してしまうケースがあります。B社の事例では、具体的な課題解決のために必要な機能を十分に検討せず、DX推進リーダーが高機能なシステムを採用しました。
この過剰な機能性が原因で、使いこなせない従業員が誤った操作を行い、システムが停止するという事態に至りました。結果として、システムの改修と復元作業が必要となり、その間に通常の業務が大きく停滞しました。
C社は、他の業者に先駆けて、完全キャッシュレスで運営されるテイクアウト専門店を非接触形式で開業しました。しかし、当時の日本ではまだ現金決済の意識が強く、この先進的なキャッシュレス決済システムは広く受け入れられませんでした。
その結果、テイクアウト専門という業態が顧客に浸透せず、店舗は店内飲食への業態転換を余儀なくされました。これに伴い、改装費や人件費が増大し、経営が困難となり、最終的に閉店へと至りました。この失敗は、業務効率化は達成したものの、顧客や従業員の満足度向上には繋がらなかったためです。
DXの実現に成功している企業には、以下の共通する取り組みがあります。
DXを実現させるためには、成功事例をもとにポイントを抑えた取り組みを実施することが大切です。ここからは、それぞれのポイントについて紹介します。
DXに取り組む際は、着地点となる目標を設定してから実施します。目標設定は、経営者が主導しながら行うことが大切です。DXは業務のデジタル化や効率化だけでなく、従来のビジネスモデルや企業文化の変革も伴います。
そのため、DXを推進するには、ITスキルを持つデジタル技術者だけでなく、組織全体の方針を決定する強力なリーダーシップが必要です。DXの推進に経営者が関わることで、方向性や目標が明確になり、各部署が一丸となってDXを推進できます。
DXに取り組む際は現状の課題を洗い出し「なぜ取り組むのか」という目的を明確にしてから、推進する必要があります。具体的な目標を設定することで、各部署が一丸となってDXを推進できるでしょう。目的を設定する際は、DXに関わるデジタル技術者や経営層のみが決めるのではなく、実際にツールを活用する従業員の意見も取り入れるようにします。
その上でDX推進の責任者は、経営層の意向を反映させつつ、現場の意見も取り入れながら、DXの目的を決めましょう。目的が決まったら、その目的に沿って必要な予算を組み、投資を行うことが効果的なDX推進への鍵となります。
DXに取り組むと、従来の業務プロセスや組織編制が変更されるため、一時的に社員への負担が増加します。特に中小企業では、DXをリードする部署に配置される人員が少なく、負荷が多くかかりがちです。そのため、DXを進める際に社員から不満の声があがることが予想されます。
社員の負担を減らして不満を取り除くため「担当部署メンバーへの声かけや意見の聞き取りを行う」「現場のフォローを行いDXのマニュアルを整備する」などを行うことが大切です。また、DX推進に貢献した社員を表彰するなど、モチベーションを維持するための仕組み作りを検討しましょう。
多くの中小企業では、デジタル技術に精通したDXをリードできる人材が不足しているという問題があります。このため、DXの取り組みがスムーズに進まないケースも少なくありません。
自社にDXを推進する人材がいない場合は、社外の専門家やコンサルティング会社への相談も検討しましょう。専門家と協力しながら自社特有の課題を解決する戦略を立てることで、DXの実現が可能になります。
自社のDX推進に課題があるなら、「Nにおまかせ!」の「デジタル化に関するご相談フォーム」のご利用がおすすめです。
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DXは、データやデジタル技術を用いてビジネスモデルを変革し、企業が市場で優位性を獲得するための取り組みです。日本の企業は労働力不足や既存システムの老朽化といった課題に直面しており、競争力を高めるためにDXの推進が不可欠です。特に中小企業がDXをスムーズに実現するためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
DXの取り組みについてお悩みなら、「Nにおまかせ!」の「デジタル化に関するお問い合わせ・ご相談フォーム」からご相談ください。また、まずは自社の業務状況について把握したいという方は「デジタル化スタート診断」がおすすめです。自社の課題解決のため、デジタル技術の活用をご検討している方は「デジタル化コンディション診断」をご利用ください。
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監修
税理士法人V-Spiritsグループ代表 税理士・社労士・行政書士・FP
中野 裕哲
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。 税理士法人V-Spiritsグループ代表。年間約1000件の起業相談を無料で受託し、起業家や経営者をまるごと支援。経済産業省後援 起業経営支援サイト「DREAM GATE」で12年連続相談数日本一。 著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)など20冊、累計25万部超
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