公開日:2024.10.16
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わかること
目次
工場の自動化は、ロボットやAI、IoTなどのテクノロジーを活用することで、生産工程の効率や正確性を向上させることです。ファクトリーオートメーション(FA)などと呼ばれることもあります。
日本の製造業は、少子高齢化によって深刻な人材不足に直面していると言われています。熟練者の技術に依存してきた企業は、高齢の熟練技術者の退職などによって、生産体制を大きく見直す必要に迫られる可能性があるといえるでしょう。
本記事では、日本の工場が抱えている課題や、自動化のための技術やメリット、推進する上での課題やその解決策について詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
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資料をダウンロードする(無料)工場の自動化とは、ロボットやコンピュータ制御技術などを駆使し、生産工程の自動化を図ることです。ファクトリーオートメーション(Factory Automation)とも呼ばれ、FAと略されることもあります。
日本における工場の自動化は戦後から取り組みが始まり、「産業用ロボットの普及元年」と呼ばれる1980年を迎え、主に自動車産業でロボットが広く活用されはじめました。その後、センサーやコンピュータを用いた自動化が進んでいったという経緯があります。
現在は、「第4次産業革命」と呼ばれる時代になり、IoTやビッグデータ、AIなどの技術革新が、工場の自動化・高度化を推進しています。
「工場の自動化」というと、すべての生産工程をロボットに任せるようなイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし実際は、工程ごとに自動化を進めたり、人間とロボットが協働したりするなど、少しずつ着手して生産プロセス全体の最適化を図っていく進め方が一般的であるといえます。
工場が抱えている、現場のよくある課題を紹介します。大きく次の3点が挙げられます。
製造業では、人手不足が懸念されています。
経済産業省の資料によると、製造業の就業者数は、ここ20年間で減少し続けていることがわかります。2002年の就業者数は1,202万人でしたが、2023年には1,055万人へと減少しました。また、全産業に占める製造業の就業者の割合も、2002年の19.0%から2023年には15.6%となり、減少傾向にあるといえます。
出典:「経済産業省|令和5年度ものづくり基盤技術の振興施策」
(https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2024/pdf/all.pdf)
また、34歳以下の若年就業者数も減少傾向にあり、2002年は384万人でしたが、2023年は259万人にまで減っています。一方で、65歳以上の高齢就業者数は2002年に58万人、2023年には88万人へと増加し、製造業でも少子高齢化の進行がうかがえます。
日本のものづくりは、熟練の作業員に頼ってきた側面があります。今後、熟練者が退職を迎えると、ものづくりの現場に大きな影響を及ぼすと懸念されます。
このような状況が今後も続いた場合、工場で働く作業員1人当たりの負担が増え、人材育成に十分な時間を割くことができず、さらに技能継承が困難になると考えられるため、自動化による省力化や品質維持が求められているのです。
参考:「経済産業省|令和5年度ものづくり基盤技術の振興施策」
(https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2024/pdf/all.pdf)
作業員の経験やスキルなどによって、品質にバラつきが生じる点も課題として挙げられます。
たとえば、製品の検査工程を目視や手作業で行っている場合、作業員によってスピードや水準に差が出ることがあります。人の経験や技術・勘に依存した方法では、複数の作業員が同じ作業に取り組む際、一定の水準やスピードを保つことが難しく、バラつきが生まれてしまう傾向にあるためです。
そこで、AIを活用して検査作業の自動化を図ることで、不良品の出荷や納期遅れのリスクが減ると期待できます。
人力で作業を進めるなかで、危険を伴う場面がある点も課題だといえます。
たとえば、以下のリスクが想定されます。
ここからは、工場で利用される自動化技術について紹介します。大別して以下の2種類があります。
ロボットによる自動化技術(ハードウェア)、IoT・AIによる自動化技術(ソフトウェア)の2つの側面からアプローチすることになります。それぞれの概要を見てみましょう。
産業用ロボットの導入によって、工場の自動化が実現します。ロボットを利用することで、これまでは人力で行っていた作業を自動化することが可能です。具体的に、以下の5種類が挙げられます。
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垂直多関節ロボット | 4〜7個の可動軸を持ち、人間の腕と同じような動き(垂直方向)ができるため、手作業の一部を置き換えられる。 |
---|---|
直交ロボット | シンプルな仕組みで、直線的な動きが得意。 物の搬送や組立に活用できる。 |
スカラロボット | 水平多関節ロボットとも呼ばれる。 部品の押し込み作業や、物をつかんで別の場所へ置く作業など、水平方向の動きができる。 |
パラレルリンクロボット | ゲームセンターのクレーンゲームのアームのようなロボット。 ベルトコンベアー周辺に取り付け、流れてくる部品をつかんで持ち上げる動作ができる。 |
自動搬送ロボット | 自律走行できるロボット。 工場・倉庫内などで人に代わって物を運搬できる。 |
IoTは、「モノのインターネット」と呼ばれ、さまざまなモノをインターネットへ接続できる技術のことです。
たとえば、製造機器にセンサーを取り付けると、工場内の生産状況などの情報をリアルタイムで収集できます。そのデータをインターネット経由で別のシステムに連携させ、AIを用いて分析することで、生産ラインの状況や課題を可視化することが可能です。従来は、人が集計を行うなど非効率な方法で管理していたデータも、IoTやAIなどを通じて正確かつ迅速に管理・分析できるようになります。
なお、このような管理体制を整備するには、工場内の生産設備や業務端末、サーバーなどが互いにデータ接続できるよう、ネットワーク環境を整備しておく必要があります。
製造業の人手不足解消、工場の自動化は「Nにおまかせ!」
詳しくはこちらここからは、工場の自動化によるメリットをさらに掘り下げていきましょう。
工場の生産ラインが自動化されることで、設定どおりに機器が動くため成果物の仕上がりにバラつきがなくなり、品質の均一化が実現します。
具体例として、AIを使った外観検査が挙げられます。製品の外観について「良品」「不良品」などをAIに学習させておきます。そのAIモデルに成果物の画像を読み込ませることで、熟練作業者による目視検査と同水準の外観検査ができるようになります。
人による作業がロボットに置き換わることで、人件費の軽減、ヒューマンエラーによる修正や廃棄物処理にかかるコストの削減なども期待できます。
たとえば、海外に工場を保有していて外国人労働者を雇用している場合、その国が経済的に発展すると人件費が上昇する可能性もあります。実際に、昨今の中国ではさまざまな地域で最低賃金の引き上げが起こっている状況です。しかし、工場の自動化を進めることで人件費を抑制でき、労働賃金の高騰に左右されなくなるメリットがあります。
工場の自動化によって、製造や組立、製品検査などにかかっていた労働時間の短縮につながります。
人による作業は長時間にわたるなかで集中力が低下したり、不慣れな人が作業したりすることで、時間がかかってしまうことがあります。そこで、ロボットやAIを活用することで、生産工程の時間を大幅に削減できる可能性があります。
また、空いた稼働時間を、品質向上や安全対策など、ほかの業務に活用できるようになる点もメリットです。
自動化によって、生産性向上の実現も期待できます。「生産性」とは、基本的に以下の計算式で求められます。
生産性=生産量÷投入量
ここでいう「生産量」とは、製造による成果物の数のことです。「投入量」は、原材料費や人件費などを意味します。工場の自動化によって生産量が増加し、なおかつ人件費を抑えられると、生産性が向上すると考えることができます。
危険を伴う作業を人の代わりにロボットが行うことで、安全性の向上につながります。
工場で安全対策を実施し、機械のメンテナンスや操作確認、作業員へ教育を行う以外にも、危険を伴う作業はロボットに任せて自動化することが可能です。事故の発生を回避でき、より安全に作業できるようになるでしょう。
ここからは、工場の自動化によるデメリットや、推進するうえでの課題を紹介します。
ロボットやIoT機器、AIの導入などに初期投資費用が必要で、高額になりやすい点が挙げられます。
たとえば、ロボットの導入は、本体だけでなく周辺装置やロボットを動かすためのシステム関連のコストも必要です。また、初期投資だけでなく、定期的なメンテナンス費用もかかるほか、新製品の製造などで生産ラインに変更があると、システム改修が必要な場合も出てきます。
経済産業省の資料によると、製品の組立工程にロボットを導入した場合、6,000万円の投資が必要と試算されています。
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ロボット本体(4台) | 1,200万円 |
---|---|
ロボット関連装置 (画像処理・ハンド等) |
1,000万円 |
ロボット周辺設備 (各種補助装置等) |
1,800万円 |
システムインテグレーション関連費 | 2,000万円 |
合計 | 6,000万円 |
参考:「経済産業省|ロボット活用の基礎知識2017」
(https://www.robo-navi.com/webroot/document/robokiso.pdf)
金額だけを見ると高額な印象があるかもしれません。しかし、生産性や品質の向上、生産量の増加によって、3〜5年程度で投資コストを回収できた事例も見られます。したがって、計画的に実施していくことで早期回収を見込めるでしょう。
また、「ものづくり補助金」など、一部の補助金制度ではIoTやロボット導入に伴う経費の一部を補助してもらえる可能性があります。
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詳しくはこちら自社にロボットやIoTなどの知識を持った人材が不足していると、工場の環境に合ったロボットやネットワークなどの選定が困難な場合もあるでしょう。また、導入後、メンテナンスやトラブル対応ができる人材の確保が難しい可能性もあると想定されます。
人材不足やシステム、ネットワークにまつわる課題解消の方法として、NTT東日本グループが提供する「Nにおまかせ!」のサービスを利用できます。たとえば、製造ラインでさまざまな機器を連携させ、ハイスピードで稼働を続けるためのインターネット回線の環境構築などの支援も可能です。
製造業の人手不足解消、工場の自動化は「Nにおまかせ!」
詳しくはこちら工場の自動化の進め方を3つのステップに分けて解説します。
まず、自社の工場における課題を明らかにしましょう。
生産工程における非効率な業務、ミスが多い製造ラインや工程などの課題を抽出します。その後、課題解決につながる適切なシステムを選定します。
システムを実際に導入した後、効果検証を実施しましょう。工場の自動化に取り組むうえで、さらなる課題を見つけて改善につなげられるよう、PDCAを繰り返すことが重要です。
システム導入による生産性アップの成果を確認したうえで、自動化の適用範囲を広げていきましょう。
はじめから全工程の自動化に取り組むのではなく、効果を出してから範囲を拡大していき、稼働に影響を及ぼすリスクを低減させます。最終的には、すべての生産工程を自動化し、自動化を通して収集できた生産に関するデータを社内で共有し、最適化を図っていくことが重要です。
車の注文が入ると、プレス、溶接、塗装、組立、検査の5つの製造プロセスにおいて、人が取り組みにくい作業にロボットを使い、できるだけ早く車を届けられるような仕組みを構築しています。
また、機械を導入する前に、人の手で製造作業に取り組んだうえで改善し、ムダを省いたうえで機械にビルトインすることで、品質の高いものづくりにつながる生産ラインを実現しました。
工場の自動化は、これまで主に大規模な工場において進められてきました。今後は、中小規模の工場においても人手不足、少子高齢化などの観点から自動化を進めなければいけない局面に差し掛かってきているといえます。
しかし、自動化を推進するための人材やノウハウ、資金などが大きな壁となって立ちはだかる可能性も高いと考えられます。
そのような場合、NTT東日本グループの基盤を活用できる「Nにおまかせ!」にご相談ください。人材確保からネットワークやシステムの構築、補助金申請にまつわるコンサルティングまで、幅広い問題解決に向けたサポートを提供します。
製造業の人手不足解消は「Nにおまかせ!」
詳しくはこちら本記事では、工場の自動化を進めるメリットや課題などを紹介しました。
工場の自動化に踏み切ることで、省力化や安全性・競争力の向上など、数多くの利点が期待できます。
一方で、「どこから手を付けてよいかわからない」「長期的な資金繰りの面が不安」、などの悩みがある方も多いのではないでしょうか。
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