公開日:2024.10.01
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わかること
目次
金融業界では幅広い金融商品やサービスが提供されており、業務フローが複雑化しているため、IT化による生産性向上が欠かせません。ITを活用しながらビジネスモデルや組織風土などを変革することで、DXの実現につながります。
本記事では、IT化とDXの違い、金融業界におけるIT化とDXの現状や求められる理由、効果的な施策・ソリューションなどを紹介します。
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資料をダウンロードする(無料)まずは、IT化とDX(デジタルトランスフォーメーション)の違いを見てみましょう。
ITとは「Information Technology」の略称で、直訳すると「情報技術」です。IT化とは、情報技術を活用して社内の業務フローを効率化することです。たとえば、従来は紙や手作業で行っていたアナログ業務を、ITを用いて迅速化・自動化することなどが挙げられます。
一方、DXは「Digital Transformation」の略称で、「デジタル変革」と直訳できます。経済産業省の資料によると「DX」は以下のように定義されています。
<DXとは>
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
引用:「経済産業省|中堅・中小企業等向け Digital Governance Code 2.1」
(https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-chushoguidebook/dxtebikihontai2.1.pdf)
DXの定義を簡潔に述べると、「IT化を促進しながら、製品やサービス、ビジネスモデルなどを変革し、新しい価値を生み出して競争率を高めること」といえます。
また、DXには、デジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーション(DX)の3つのステップがあります。
DXの前段階である、アナログ情報をデジタル化する「デジタイゼーション」と、業務フローをデジタル化する「デジタライゼーション」において、ITの活用は不可欠です。つまり、IT化はDXの一部だということがわかります。
ここでは、金融業界においてIT化やDXはどのように進んでいるのか、2022年に報告された金融庁の資料をもとに現状を紹介します。
金融庁は、金融機関との対話を進めるなかで、各金融機関におけるDXの取り組み状況を、以下の4つの世代に分類できると報告しました。
出典:「金融庁|『金融機関のITガバナンス等に関する調査結果レポート』をもとに加筆」
(https://www.fsa.go.jp/news/r3/20220630/it02.pdf)
金融庁の調査資料では、全社的にDXに取り組む「第2世代」に属する地域金融機関はごく一部に限られ、多くは「伝統的な銀行ビジネス」または「第1世代(DX始動段階)」に分類される、と報告されています。
一方、メガバンクは、行内業務の効率化を目的としたIT化が進んでおり、「第3世代(DXサービス化段階)」に到達しつつあります。しかし、調査時点では、メガバンクもマーケットを拡大させるような、ITを活用した革新的なビジネスモデルを創出するまでには至らず、市場シェアの獲得競争に留まっているのが現状です。
参考:「金融庁|金融機関のITガバナンス等に関する調査結果レポート」
(https://www.fsa.go.jp/news/r3/20220630/it02.pdf)
続いて、金融機関でIT化・DX推進が求められる理由について、4つの項目に分けて紹介します。
金融業界において、IT化・DXの推進が求められる背景には、消費者のデジタル化への意識の高まりがあります。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するために、政府より非接触・非対面が推奨され、金融サービスのオンライン化に対するニーズが急激に高まりました。
2022年、アドビ株式会社が実施した「金融デジタルサービス利用実態調査」によると、67%が銀行のデジタルサービス利用を希望していることが明らかになりました。また、サービス利用時に重視する点という質問では、「スマートフォンだけで完結できる」という項目で、20〜30代の若い世代では3割〜4割となり、男性60代の17%や女性50代の18%を大きく上回りました。
このような消費者ニーズに対応するためにも、金融機関はIT化・DXを積極的に推進することが大切です。しかし、前述のようにDX到達には段階があるため、アナログ情報や、社内の特定業務フローのIT化に向けた取り組みから始める必要があるでしょう。
参考:「Adobe|アドビ、「金融デジタルサービス利用実態調査」の結果を発表」
(https://www.adobe.com/jp/news-room/news/202208/20220810_financial-digital-services-usage-survey.html)
金融ディスラプターが生まれることでシェアが奪われる可能性もあるため、各金融機関はいち早くIT化・DXを推進しなければなりません。
金融ディスラプターとは、AIやIoT、ビッグデータ、クラウドなど、最新のテクノロジーを活用し、既存のビジネスモデルやルールを破壊して、金融業界のシェアを奪ってしまうプレイヤーのことです。ディスラプターは、別名「破壊的イノベーター」とも呼ばれています。
たとえば、従来よりも遥かにストレスフリーなキャッシュレス生活が実現するサービスが台頭すると、これまでのサービスは立ち行かなくなってしまう恐れがあります。
金融機関だけでなく、さまざま業界の企業が、ディスラプターの脅威に晒されているのが現状です。そのため、IT化・DXを推進して、まったく新しい価値を提供するビジネスモデルを生み出し、競争優位性を見出すことが非常に重要です。
金融業界は、IT化やDXを推進し、「2025年の崖」に対応する必要があります。
2025年の崖とは、さまざまな課題によりDXを実現できなければ、2025年以降には年間で最大12兆円もの経済損失が生じる可能性があるリスクを指します。
DXを阻む具体的な課題として、以下の点が挙げられます。
時代遅れの「レガシーシステム」を業務で使用している場合、DXの推進が困難となり競合企業との差が広がってしまうリスクがあります。
とくに、金融業界はレガシーシステムに依存する傾向にあり、開発当時の仕様を把握できず、システム統合や更新、機能追加が柔軟に行えないケースが少なくありません。
2025年の崖を乗り越えるには、レガシーシステムからの脱却と、DXの基盤となるシステムの刷新が不可欠です。そのためには、DX人材の育成や確保、経営層のコミットメント、組織全体のデジタル化への意識改革など、多岐にわたる取り組みが求められます。
金融業界において生産性の向上が求められている点も、IT化やDXの推進が必要な理由の一つです。
今後、少子高齢化による人手不足が懸念されることから、少ない人数で変わらないパフォーマンスを発揮するために、ITを活用した業務効率化による生産性の向上が重要な課題です。また、長時間労働を改善し、働き方改革を推進するためにも、生産性向上を図る必要があります。
ここからは、金融業界においてIT化・DXを推進するうえでの課題を紹介します。
金融業界は、長い歴史を持つ企業が多く、古い慣習や組織文化が根強く残り、新しい働き方やビジネスモデルへの変革が、他の業界に比べて遅れている傾向にあります。
特定の業務やフローをIT化しようとすると、長年慣れ親しんだ従来のやり方を変えることに抵抗を示す従業員が出てくるなど、新システムの導入や業務フローの変更に難航するケースが少なくありません。
現在、ITの急速な進展に伴い、IT人材の需要が供給を上回っています。
とくに、金融業務の知識とITスキルの両方を保有している人材を獲得するのは、非常に困難な状況です。社内でIT化やDXを進めるためのノウハウやスキルがなく、自社ではスムーズに対応できない点も課題となっています。
このような状況下では、外部の専門企業に業務を委託するアウトソーシングや、必要なスキルを持つ人材を派遣するサービスの利用が、効果的な解決策の一つだと考えられます。
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詳しくはこちら独立行政法人中小企業基盤整備機構が実施した「中小企業のDX推進に関する調査」によると、企業規模数によって、DXに取り組むうえでの課題が異なることが判明しました。
たとえば、従業員規模が20人以下の企業において、以下の課題が抽出されました。
出典:「独立行政法人中小企業基盤整備機構|中小企業のDX推進に関する調査」
(https://www.smrj.go.jp/research_case/questionnaire/fbrion0000002pjw-att/DXQuestionnaireZentai_202205_1.pdf)
「予算の確保が難しい」がトップで26.4%、次いで「具体的な効果や成果が見えない」(24.3%)、「DXに関わる人材が足りない」(23.5%)が続いています。
また、従業員規模が21人以上の企業では、以下の課題が明らかとなりました。
出典:「独立行政法人中小企業基盤整備機構|中小企業のDX推進に関する調査」
(https://www.smrj.go.jp/research_case/questionnaire/fbrion0000002pjw-att/DXQuestionnaireZentai_202205_1.pdf)
「DXまたはITに関わる人材が足りない」が上位を占め、さらに「DXに取り組もうとする企業文化・風土がない」という課題も見られました。
従業員規模が比較的小さい企業では「予算」や「効果」に課題が出やすく、比較的大きい企業では「人材不足」や「企業文化・風土」に課題が見られる結果となっています。
参考:「独立行政法人中小企業基盤整備機構|中小企業のDX推進に関する調査」
(https://www.smrj.go.jp/research_case/questionnaire/fbrion0000002pjw-att/DXQuestionnaireZentai_202205_1.pdf)
金融機関において、「これからIT化を強化していきたい」または「IT化をすでに進めていてDXを実現したい」という考えがある場合、ここで紹介する施策・ソリューションの実践を検討してみましょう。
お客さまから預かる銀行取引に必要な紙の申込書や契約書を電子化し、ペーパーレス化を促進することで、紙の保管・管理、印刷などにかかるコスト低減につながります。
また、ペーパーレス化によって、業務フローの効率化も期待できます。紙の書類をやり取りする場合、お客さまから郵送してもらう必要があり、さらに受け取った書類の内容を行内システムへ転記する業務が発生するなど、手間がかかっていました。
そこで、ペーパーレス化を進めると、データでのやり取りが実現して、お客さまの負担も軽くなり、行内では転記作業が必要なくなります。
RPAは「Robotic Process Automation」の略で、人が行う単純業務を、ロボットが代行する技術です。
金融機関には、振込処理や口座開設、顧客対応など、さまざまな定型化した事務業務が存在します。企業のお金の動きや個人情報を取り扱う機会が多く、定型業務においてヒューマンエラーは必ず防止しなければなりません。しかし、大量の細かい作業を人間が行う場合、転記ミスや漏れをゼロにすることは困難です。
そこで、あらかじめ設定したルールに沿って作業を正確に行うRPAの導入で、反復的な作業を自動化でき、ヒューマンエラーの発生を防止できます。業務効率の大幅な改善を期待でき、人手不足の解消にもつながるでしょう。
金融機関で使用する、基幹システムや顧客向けWebシステムなどを、クラウド移行するのも施策の一つです。ITを活用しながらDXを推進し、競争力を高めていくうえで、クラウド移行は欠かせないといえます。
クラウドは拡張性と柔軟性に優れており、自社で運用するオンプレミスのシステムと比較して、改修がより簡単になります。利用者数やデータ量、アプリケーションの数、機能などのスケールアップまたはダウンが柔軟に行えるため、ビジネスの変化に対し迅速な対応が可能です。
オープンAPIとは、「Application Programming Interface」の略で、一つのアプリケーションが持つ機能やデータを、他のアプリケーションから呼び出して、活用するための技術仕様です。
オープンAPIの導入によって、金融機関と外部事業者とのサービス連携が実現し、新たな金融サービスを創出する環境が整います。
また、オープンAPIで連携した外部事業者が提供するサービスの利用者に対しても、金融機関の厳格なセキュリティポリシーを適用でき、情報漏えいのリスク低減につながると期待できます。
今回は、IT化とDXの違いや、金融業界で求められる理由、メリットなどを紹介しました。
金融業界では、消費者ニーズに対応し、競争優位性を見出すために、IT化・DXの推進が求められています。しかし、人手不足が深刻化するなか、多岐にわたる業務に追われ、「IT化・DXの必要性は理解しているものの、推進するための時間がない」という金融機関も少なくないでしょう。
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