公開日:2022.03.22

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わかること
目次
個人事業主が事業を法人化すると、事業拡大や節税などのメリットが得られます。しかし、法人化には多くの準備や手続きが必要となるため、デメリットもしっかり理解しておくことが重要です。本記事では、法人化に役立つ基本的な知識をわかりやすく解説します。
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個人事業主が法人化すると、税負担の軽減や社会的信用度の向上、経費計上できる範囲の拡大、赤字繰越期間の延長など、さまざまなメリットがあります。
個人事業主が法人化すると、税金面で大きなメリットがあります。例えば、法人に適用される法人税は個人事業主が納める所得税よりも税率の累進が緩く、高所得者にとっては税負担が軽減される可能性があります。また、法人化することで経費計上できる項目が増え、課税額を抑えることが可能になります。このため、結果的に節税効果が期待できます。
個人事業主は、年間所得(売上から経費を差し引いた金額)に基づいて所得税を納めています。所得税は累進課税制度を採用しており、所得が増えるほど税率が高くなります。所得税率は5%〜45%の7段階に分かれており、所得が増えるほど納める税額も増える仕組みです。
個人事業主が法人化すると、所得税ではなく法人税を納めることになります。法人税は、会社の資本金や年間所得によって税率が異なります。法人税率は原則として23.2%、資本金1億円以下の法人の場合、年間所得800万円以下の部分については、2027年3月31日まで軽減税率が適用され、15%となっています。
一方の個人事業主の所得税率は、年間利益330万円以上で20%、695万円以上で23%です。比較すると所得税よりも法人税の方が収益に対する税率の増え幅が緩やかであり、法人化した方が所得が増えても税負担を抑えられます。
個人事業主と法人では、経費として計上できる費用の範囲が異なります。個人事業主は、売上から必要経費を引いた金額(事業所得)すべてが課税対象となります。給与という概念がなく、自分自身の収入も経費に計上することができません。
一方、法人化すると経費にできる範囲が拡大します。
法人だけに経費計上が認められている項目としては、経営者個人や家族従業員への役員報酬や給与、退職金、出張手当、生命保険料、社宅の家賃などがあります。経営者が受け取る役員報酬も、所得税の計算において給与所得控除の対象となります。
これにより、経費が増えて利益(事業所得)が減少し、最終的な課税額が低くなります。例えば、個人事業主の事業所得が800万円、必要経費100万円の場合、課税対象額は700万円(800万−100万)です。一方、法人の場合、役員報酬と給与を経費として計上できるため、利益(事業所得)が同じ800万円だったとしても、課税対象額は700万円よりも低くなります。
法人化して家族を役員に設定することで、役員報酬が支払えるようになります。家族に役員報酬を支払うと、経営者1人で全額を受け取るよりも所得が分散されます。
例えば、夫婦2人による経営で800万円の所得があるケースで比較してみましょう。
個人事業主の場合は、給与としての計上ができないため、800万円全額が所得税の課税対象となります。
一方で法人化した場合は、夫婦2人分の給与として経費計上できるので、400万円ずつが所得税の課税対象です。
所得税は、収入が多いほど税率が高くなる累進課税制であるため、所得を家族で分けることで、1人当たりの所得税額が少なくなり、全体の税負担を抑えることが可能です。ただし、実際には勤務実態がないのにもかかわらず節税目的で家族に役員報酬を支払っていると、税務署調査で指摘を受ける可能性があるため注意してください。
個人事業主と法人とでは、赤字の繰越に関する取り扱いが異なります。
青色申告をしている個人事業主の赤字繰越期間は最長3年です。赤字は純損失として計上し、翌年以降の所得から最長3年間にわたり控除できます。
これに対し、法人では赤字を最長10年間(2018年4月1日より前に開始した事業年度に生じた赤字については9年間)繰り越すことが可能です。
その年に発生した赤字を翌年以降の黒字額から控除し、法人税額を減らすことが可能になります。もしも事業で大きな損失を出してしまった場合、個人事業主の赤字繰越期間は法人に比べて短いため、税負担を軽減できる期間が限られています。
その点、法人化していれば長期にわたって赤字を繰り越せるのは大きなメリットです。
個人事業主と法人とでは、責任の所在が異なります。個人事業主は、事業で損失が出た場合は責任のすべてを個人が負わなければなりません。借金の返済処理も経営者個人が行わなければならないので、結果として、自宅や預金などの個人資産が差し押さえられる可能性があります。
一方、法人化すると、個人と法人の責任が区別されます。もし会社が存続できなくなったとしても、経営者は出資額以上の支払い義務を負うことはありません。そのため、金融機関からの融資で個人保証をしていなければ、個人資産は守られます。また、損失は法人の資産売却などで補填し、それでも不足している場合は破産手続きを行います。
個人事業主の場合、万が一大きな損失が出ると個人資産にも影響が及ぶ可能性がありますが、法人化することで個人資産が保護されるため、リスクを軽減できます。
法人化することで、社会的信用も向上します。
信用はビジネスに欠かせない要素です。個人事業主は法人と比較して開業や廃業が容易で、外部から事業実態を把握しにくいなどの理由から社会的信用度が低くなる傾向にあります。
これに対して、法人化すると会社の情報が登記によって公示されるため、社会的信用が高まります。また、個人事業主よりも法人の方が事業の継続性があるとみなされるため、取引先と長期的な関係を築きやすくなり、金融機関の評価も高くなる傾向にあります。
さらに、個人事業主は財務諸表の公開義務がありませんが、株式会社の場合は株主に対して財務状況を開示する義務があります。これにより財務の透明性が確保され、事業の安定性を示すことで社会的信用を高めることができます。

個人事業主が法人化すると、税制面や信用面でのメリットがありますが、一方で手続きの煩雑さやコスト増などのデメリットも存在します。
個人事業主が赤字決算であった場合、所得税の支払いは生じず、住民税も非課税です。
一方、法人は事業が赤字であれば法人税は生じませんが、法人住民税は納めなければなりません。
これは住民税が「均等割」と「法人税割」の二つで構成されているためです。法人税割は、法人税額に基づいて課税されるため赤字の場合は納める必要がありません。一方の均等割は、法人であれば等しく納めなければならない税金です。利益の大小に関係なく、その自治体に事業所を持つ法人に課税され、資本金額や従業員数などの法人の規模に応じて税額が決まります。
個人事業主は白色申告であれば単式簿記という簡易的な帳簿付けで済むのに対し、法人は厳密な会計ルールに則った会計処理を行って必ず複式簿記で帳簿を記録し、財務諸表や法人税申告書を作成しなければなりません。
個人事業主の会計処理に比べて専門性が高く、より複雑になるため、法人の会計処理は税理士や公認会計士に依頼することが一般的です。若しくは会計ソフトの導入によって会計業務や決算書の作成を効率化する方法もあります。
いずれにしても費用がかかるため、費用対効果を考慮してどちらの方法を採用するか検討しておきましょう。
個人事業主が法人化すると、法人の規模に関わらず社会保険への加入が義務付けられます。
個人事業主の場合、社会保険にできませんが、法人の場合は経営者のみで他に従業員がいなくても必ず加入しなければなりません。
社会保険には健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険・介護保険の五つが該当します。
法人は労災保険を除く保険料を従業員の給与から天引きし、天引き分と併せて一定額を負担します。健康保険と厚生年金保険、介護保険は労使折半、雇用保険は法人の負担割合の方が大きくなります。労災保険料は全額が法人負担です。健康保険料率は毎年3月を基準に見直しがあり、年度ごとに改定される場合があります。
最新の情報を参考にし、従業員の給与や賞与の額などに応じて一人ひとりの社会保険料率を算出するようにしましょう。
これまで個人事業主が法人化することで生じるメリットとデメリットについて解説してきましたが、ここで改めてそれぞれの違いについてみていきましょう。法人と個人事業主は、設立手続き、税金、社会保険、社会的信用の面で大きな違いがあります。
個人事業主は、税務署に開業届を提出するだけで事業を開始できます。一方、法人は会社設立のために定款作成や登記申請などの手続きを要し、設立には時間と費用がかかります。
個人事業主の所得には累進課税が適用され、所得に比例して税率も高くなり、売上が増えれば増えるほど税金の負担額も増えていきます。
一方、法人が納める法人税の税率は、法人の規模や種類による違いはあっても基本的には一定であるため、事業が成長して売上が急に増えても税率が急激に上がることはありません。
また法人化すると、経費として認められる範囲が広がり、節税効果が期待できます。特に、役員報酬が経費として計上できるため、税負担を軽減する手段となります。
個人事業主は、従業員を雇用しない場合は社会保険へ加入する義務はありませんが、法人化すると、従業員(役員も含む)の社会保険への加入が義務化されます。そのため法人には社会保険料という追加のコストが発生します。
法人には決算書の義務があり、取引先や金融機関から求められた場合は決算書を開示することがあります。これによって財務状況の透明性を確保することで、金融機関からの信用を得やすくなり、融資が受けやすくなります。
また、法人は経営者が変わっても法人を存続して事業を継続できるため、取引先との信頼関係も築きやすくなります。
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個人事業主が法人化を決断する際、適切な時期を見定めることが重要です。法人化に適した時期について詳しく説明していきます。
個人事業主が法人化を判断するタイミングの一つは、売上が1,000万円を超えたときです。個人事業では売上が1,000万円を超えると消費税の納税義務が発生します。
しかし、法人化すると前々事業年度を基準として売上高の判定がされるため、個人事業主時代の売上実績が反映されず、消費税の課税対象とならないことから、2年間は消費税が免除される特例があります(資本金1,000万円未満の法人に限る)。
そのため、法人化によって生じる社会保険料や会計処理・決算書作成にかかるコストと、2年間の消費税免除額を秤にかけて考える上で、売上1,000万円というボーダーが一つの目安となります。
年間利益が500万円を超えたときも、法人化を検討するタイミングの一つです。同じ500万円の利益でも、個人事業主と法人では納税額が異なります。個人事業主(従業員雇入なし)と法人の納税額をおおまかに比較してみましょう。
個人事業主の収入は事業所得として扱われるため、給与という概念がなく、給与所得控除の対象外となります。ただし、青色申告をしていれば最大65万円の控除が受けられます。生命保険料控除や扶養控除といった各種控除を考慮しない場合、課税対象額は青色申告控除を差し引いて435万円です。
一方、法人化して500万円を給与として受け取った場合、給与所得の所得税がかかりますが、給与所得控除が適用されます。500万円は「収入金額×20%+440,000」という算出方法に該当し、給与所得控除額は144万円です。そのため、所得税の課税対象額は控除額を差し引いた356万円となります。
このように利益が500万円を超えると課税対象額に大きな差が生じ、個人事業主として事業を続けるよりも法人化した方が税制面でのメリットが大きいことがわかります。
新規事業の立ち上げに向けて融資や資金が必要になったときも、法人化を検討するタイミングです。
金融機関からの融資を受ける際は、返済能力が重視されます。法人は個人事業主に比べて長期的な経営が見込め、財務状況の透明性が確保されているため金融機関の信用を得やすい傾向にあります。
資金調達は事業を維持・拡大していくために必要不可欠であり、新たな資金調達をめざすのであれば法人化を検討しましょう。
個人事業主が法人化する際には、資本金の他に登記費用や定款認証費用などが必要です。また、法人形態によっても費用が異なります。
資本金は事業の運営資金で、金額は自由に設定できます。1円からでも設定は可能ですが、資本金が低すぎると資金が足りず、事業運営がままなりません。法人化にかかる設備資金と運転資金を考慮して適切な金額を設定しましょう。
15万円若しくは資本金×0.7%の金額が大きい方
6万円若しくは資本金×0.7%の金額が大きい方
定款認証は不要
定款の作成を司法書士に依頼する場合は、報酬としての費用も必要です。報酬は5~20万円が相場となります。

法人化するには、法的な申請手続きや資金の準備、オフィス環境の整備などさまざまな作業が必要です。必要なステップを具体的にみていきましょう。
定款とは、法人の社名や本店所在地などの基本情報、事業内容、運営に関する規則を記載したもので、法人設立の登記に必要な書類です。株式会社の場合、作成した定款には公証人の認証が必要です。これに対し、持分会社(合同会社や合資会社)では公証人の認証は不要です。株式会社は株主が存在し、不特定多数の関係者が運営に関わることから、責任の所在が不明確になりやすく、設立後の不正防止や紛争防止のために公証人の認証が求められます。
定款には、会社名(商号)、本店所在地、事業目的、設立時の出資金額、発起人(または出資者)の氏名および住所の記載が必須です。株式会社において発起人は通常1人以上となり、合同会社では設立者(社員)が1人以上で、社員全員の氏名と住所、および全員が有限責任社員であることを明記する必要があります。
さらに、定款には会社の運営方法に関する規定も含まれます。例えば、取締役会の設置や、議決権の行使方法、株式の発行方法、配当金の分配方法などの記載が一般的です。これにより、設立後の運営がスムーズに行われることが期待されます。また、定款は法人設立後の変更も可能であり、事業の発展や組織変更に応じて適宜修正できます。
2006年に会社法が改正される前は、最低資本金制度により、株式会社の場合は1,000万円、有限会社の場合は300万円の資本金が必要とされていました。しかし、現在は最低資本金制度が廃止され、1円でも会社を設立できるようになっています。
とはいえ、資金調達や取引先との関係構築を考慮すると、資本金があまりにも少なすぎることは、会社の安定性や信頼性に悪影響を及ぼす可能性があります。今後の事業発展を考えると、一定の資本金を確保することをおすすめします。
法人登記は、会社を正式に立ち上げるために欠かせない手続きです。この手続きを終えることで、法人は法的に認められた存在になります。
登記簿に登録される情報は、取引先や金融機関が会社の信頼性を確認する際に参考にされるため、しっかりと準備をすることが大切です。書類に不備がないか確認し、スムーズに申請を進めることが会社設立後の活動を順調にスタートさせるための鍵となります。
また、法人登記が完了した後も、会社情報に変更があれば速やかに届け出をすることが必要です。

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ただし、法人化にはデメリットがある点も覚えておく必要があります。例えば、法人住民税の支払いは事業が赤字の際も発生することや、専門家への会計処理の依頼費用、社会保険の加入義務などによる支出の増加などです。これらのコストを事前に把握し、計画に組み込んでおくことが大切です。
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監修
税理士法人V-Spiritsグループ代表 税理士・社労士・行政書士・FP
中野 裕哲
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。 税理士法人V-Spiritsグループ代表。年間約1000件の起業相談を無料で受託し、起業家や経営者をまるごと支援。経済産業省後援 起業経営支援サイト「DREAM GATE」で12年連続相談数日本一。 著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)など20冊、累計25万部超
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