公開日:2024.06.17
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ITガバナンスは、企業がシステムを戦略的に活用するための仕組みを指し、ITに関する規程の策定や内部統制の強化など、多岐にわたる取り組みを含みます。最近では、ITガバナンスを導入することにより、情報セキュリティを強化し、コスト削減に取り組む企業が増えています。
そこで今回の記事では、ITガバナンスの構成要素や強化ポイントについて解説します。ITガバナンスを強化したいと考えている企業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
ITガバナンスとは、システムを戦略的に活用する仕組みを指します。この章では、ITガバナンスの意味や求められる背景を解説します。ITガバナンスが企業にとってなぜ重要なのか、その必要性を理解できる内容となっています。ぜひ、参考にしてください。
ITガバナンスの考えはコーポレートガバナンスから派生しているとされ、IT活用の監視・規律強化を行うことを目的としています。ITガバナンスを強化するには、システムの開発や人材の育成、設備の導入・運営など幅広い取り組みが必要です。例えば、以下のような取り組みが挙げられます。
ITガバナンスと似た言葉で「ITマネジメント」があります。ITマネジメントとは、ITの設計から運用までをスムーズに行う役割のことを指し、企業の目標を達成するためにITを使って価値を創出することを目的としています。
ITガバナンスへの関心が高まった背景には、2002年に発生したみずほ銀行の大規模システム障害があります。この障害は、3つの異なるシステムを統合する過程で、稼働テストが不十分であったために起こり、大きな影響をもたらしました。
この出来事は、システム障害が企業に甚大な損害をもたらす可能性があること、そして、トラブルを未然に防ぐためのシステム管理や内部統制の重要性を広く認識させる契機となりました。今後も、ITに関する規程作りや内部統制を徹底し、ITガバナンスに関する取り組みが必要となっていきます。
ITガバナンスは「戦略とシステムの整合性」や「組織体制の確認・見直し」など、8つの要素から構成されます。この章では、ITガバナンスを構成する8つの要素を解説します。ITガバナンスを実践しようと考えている企業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
ITガバナンスを強化するためには、企業戦略とシステムの整合性が欠かせません。例えば、コスト削減を目標に設定しながらシステム導入に高額な費用がかかる場合、戦略とシステムの間に不一致が生じ、期待される成果が得られないことがあります。
また、システムを導入しても従業員が使いこなせなかったり自社の環境に合わなかったりすると、逆に業務効率が下がってしまう恐れがあります。システムを導入する際には、自社の戦略に合ったものかを十分に検討することが重要です。
新たなIT技術やシステムを導入する際には、組織体制の見直しが重要です。適切な管理体制が整っていなければ、たとえ最新の技術やシステムを導入しても、それを企業利益に結びつけることが困難になるかもしれません。
IT部門の新設や、情報セキュリティやコンプライアンスを担当する専門家の配置など、組織構造を見直し、適切な役割と責任を設定することは、ITガバナンス強化のための重要なステップです。
ITガバナンスの実施において、将来にわたる業務の理解と把握が重要です。業務内容を正確に把握していない場合、どの業務にシステムを適用すべきか、またはどのようなシステムが必要かを正しく判断することができません。今後発生する業務を把握し、適切なシステムを導入しましょう。
業務を把握した後は、その情報を従業員に伝達し、理解を深めさせることも必要です。システム導入後は、その効果を定期的に検証し、使用している従業員からのフィードバックを収集して、継続的な改善につなげることが大切です。
新たなシステムの導入にはコストがかかります。費用対効果を考慮しながら「IT化にどの程度のコストがかけられるのか」を試算することが必要です。
システムによっては初期投資だけでなく、維持・運用にも継続的な費用が発生することがあります。導入するシステムの効果がコストを上回らない場合、デジタル化の取り組みが期待する成果をもたらさないどころか、経営に悪影響を及ぼす可能性もあります。したがって、コスト管理と費用対効果の評価は、ITガバナンスを実践する上で重要な要素となります。
システムの持続的な運用のためには、その目的に合致した運用体系の構築が重要です。具体的にはシステムを効率的に動かすためのフローや、トラブル発生時の対応手順などを定めたマニュアルの作成など、運用をスムーズに行うための体制を整えることが求められます。
システムが実際に運用され始めたら、「運用が計画通りに行われているか」を定期的にレビューし、運用上の課題や問題点を洗い出し、必要に応じてプロセスの見直しや改善を行うことが重要です。
システム導入後は、情報セキュリティリスクの軽減やシステム障害防止のためルールやガイドラインの設定が必要です。併せて、プライバシーポリシーやコーポレートガバナンスなど必要な方針の策定も行いましょう。ルールや方針を策定したら、社内にも周知を徹底し従業員が遵守できるようサポートを行うことが大切です。
システムを導入すると、情報セキュリティ面だけではなくヒューマンエラーやシステム障害など、さまざまなリスクが発生します。リスクを軽減するためには、リスクの明確化やトラブル発生時の対策・評価が重要です。
さらに、システムを日々使用する従業員に対するネットリテラシーや情報セキュリティに関する教育も重要なポイントです。これにより、従業員自身がリスクを理解し、予防措置を講じることができます。また、内部統制の強化により、自社のデジタル資産を保護し、リスクをシステマティックに管理することが可能になります。
システム導入時には、外注先の選定方法や契約管理などについてガイドラインを定め、それに沿う形で選定を進めましょう。ガイドラインを作成する前には、自社の戦略的な目的と予算、リスク許容度などを明らかにしておく必要があります。
また、一度に全てを導入するのではなく、段階的にシステムを導入する場合もあります。このような状況を想定して、ガイドライン準備しておくことで、各段階での選定や導入プロセスをスムーズに進行させることができます。
ITガバナンスの強化には、以下の3つのポイントを心掛けることが大切です。
この章ではITガバナンスを強化するポイントについて解説するので、企業のIT担当者の方はぜひ参考にしてください。
ITガバナンスを強化するには、情報セキュリティの強化が欠かせません。情報セキュリティ対策を怠ってしまうと、ウイルスの感染やサイバー攻撃などのリスクが高まります。情報漏えいやサイバー攻撃による業務停止などはデータの流出だけではなく、社会的な信用の失墜や競争力低下などを招く可能性があります。
まず、自社で現在実施している情報セキュリティ対策を点検し、必要に応じてアップデートや強化を行います。例えば、最新のウイルス対策ソフトの導入やパスワードポリシーの見直しなどが挙げられます。特に複数の拠点を持つ企業の場合は、本社だけでなく全組織にわたって情報セキュリティの意識を高め、対策を講じることが重要です。
システムにかかるコストの適正化ができていないと、企業の経営を圧迫する可能性があります。費用を管理する体制や環境を整え、定期的にシステムのコストを見直し、無駄がないか、よりコストを抑える方法がないかを検討する必要があります。
すぐにコスト削減を実現することは難しいかもしれませんが、中長期的に見て費用が抑えられるようPDCAサイクルを回しながらコスト適正化をはかっていきましょう。
ITガバナンスの強化において、適切なツールやサービスの選定はとても重要です。コスト、使いやすさ、機能性などはもちろんのこと、特にクラウドサービスを選択する際には、セキュリティの側面を特に検討する必要があります。安全なデータ管理やプライバシー保護が確保されたサービス選びが求められます。
また、ガバナンスを重視し過ぎると、環境の変化に対応できなかったり意思決定が遅くなったりする可能性があります。社内ルールの設定やコストの適正化ができる機能が搭載されたツール・サービスを選定することで、機敏性とガバナンスを兼ね備えた運用が可能になるでしょう。
ITガバナンスを実施する上で、組織間の意思疎通やリスクとコストのバランスなどの課題が生じる可能性があります。この章では、ITガバナンスにおける課題を解説します。ITガバナンスの実施を円滑に進められるよう、担当者の方はあらかじめ対策をしておきましょう。
ITガバナンスを成功させるには、IT部門だけでなく組織全体の協力と理解が不可欠です。適切な情報共有と意思疎通を行うことで、全社的な支持を確保し、ITガバナンスの取り組みをスムーズに進めることができます。情報が共有されていないと、トラブルの発見や解決が遅れるリスクがあります。
このため、ITガバナンスの方針や手順書を明確にし、業務の透明性を高め、トラブル発生時の迅速な情報共有の仕組みを構築することが重要です。
ITガバナンスでは、コンプライアンスの遵守と情報セキュリティの確保が求められますが、高度なセキュリティを実現しようとするほど、それに伴うコストも増加します。そのため、リスクとコストのバランスを見極め、適切なセキュリティ対策を施すことが重要です。
リスクとコストのバランスを取るためには、インシデント発生時の対応プロセスを事前に準備し、運用することが効果的です。システム障害やサイバー攻撃などのインシデントが発生した場合でも、事前に定められた対応策に従って迅速に対応することができます。
ITガバナンスでは、システムの進化に対応することが重要です。古いシステムを使い続けると、限られた機能性や稼働の不具合といった問題が発生し、デジタル化の進展に支障を来すことがあります。新しいシステムへのアップグレードや変更は、コストや時間を要しますが、これを怠ると将来的により大きな課題に直面する可能性があります。
システムの更新と進化に対応するためには、従業員の教育とトレーニングが不可欠です。実践的なトレーニングや資格取得の支援を通じて、従業員のITスキルと知識を向上させることが重要です。
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ITガバナンスとはシステムを戦略的に活用して効果の最大化をめざす仕組みで、2002年に発生したみずほ銀行の大規模なシステム障害をきっかけに注目されるようになりました。システムの活用を促すだけではなく、規律・監視の強化を進めるといった特徴があります。
ITガバナンスは「戦略とシステムの整合性」や「組織体制の確認・見直し」など8つの構成要素から成り立ち、実施の際には情報セキュリティの強化やツール・サービスの選定など環境を整えることが大切です。
また、組織間の意思疎通やシステムの進化への対応などが課題となる可能性があるので、あらかじめ準備しておきましょう。DX(デジタル化)を推進するにあたり、必要な「IT基盤・ガバナンス」の現状把握がまだできていないお客さまには「Nにおまかせ!」の「デジタル化スタート診断」がおすすめです。気になる方は、ぜひ以下のリンクから自社の状況を診断してみましょう。
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監修
税理士法人V-Spiritsグループ代表 税理士・社労士・行政書士・FP
中野 裕哲
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。 税理士法人V-Spiritsグループ代表。年間約1000件の起業相談を無料で受託し、起業家や経営者をまるごと支援。経済産業省後援 起業経営支援サイト「DREAM GATE」で12年連続相談数日本一。 著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)など20冊、累計25万部超
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