公開日:2022.03.22

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企業に勤めている方の中には、「独立したい」「自分の事業を立ち上げたい」と考えたことがある方もいるのではないでしょうか。「将来、自分のお店を持ちたい」といった目標を持っている方も少なくありません。しかし、実際にどのように開業準備を進めれば良いのかわからず、不安を抱える方も多いでしょう。
本記事では、開業の基本について解説します。開業の定義や具体的な方法、準備の流れや資金調達の方法、さらに開業後に必要となる確定申告のポイントまで、わかりやすく紹介しています。メリット・デメリットについても触れていますので、開業を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
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開業とは、新たに事業や商売を始めることを指します。一般的には、個人事業主が自身で事業を始める場合に使われることが多い言葉です。特に資格やスキルを持った人が、自分の店舗や事務所、クリニックなどを開く際に、「開業」という言葉が使用されます。開業が使われる職種の例としては、飲食店や美容室、ネットショップ、医師、弁護士・税理士などの士業、コンサルタントなどが挙げられます。
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詳しくはこちら開業と起業は、いずれも「新しく事業を始める」という意味を持っています。しかし、起業には「これまでにない分野に挑戦する」「新しい市場を開拓する」といったニュアンスが含まれており、ベンチャー企業やスタートアップを指すことが一般的です。一方で開業は、すでに存在するビジネスモデルに基づいて事業を始める場合に使われます。また、開業は事業を始めることのほかに、すでに営業を行っている状態を表す場合にも用いられます。
独立とは、それまで所属していた組織を離れ、自力で生計を立てることを指します。所属している組織に籍を置いたまま開業することも可能ですが、その場合は副業扱いとなります。また、もともと組織に所属していない方が開業する場合には、独立は用いません。特に会社員を辞めて事業を始める場合は、独立と開業を合わせて「独立開業」と表現されることもあります。
創業は起業とほぼ同じ意味を持ちますが、一般的には事業を始めた時点から時間が経過した場合に使われます。「創業〇〇年」といった表現がその例です。事業を始めた人物は「創業者」と呼ばれ、「開業者」や「起業者」とは通常呼びません。また、創業は会社を設立する際に使われることが多く、個人事業主が事業を始める場合には「開業」の方が適切な表現となります。

開業する方法は、大きく分けて以下の3つがあります。
それぞれにメリットや注意点があるため、自身の事業内容や目的に応じて、適した方法を選びましょう。
法人とは、法律に基づいて、一定の目的の範囲内で権利や義務が認められた組織のことを指します。営利法人の代表的な形態には、株式会社、合同会社があります。
法人を設立するためには、会社名や資本金、事業目的といった会社概要の決定に加え、法人実印の作成、法人登記、法人設立届出書の提出など、いくつかの手続きが必要です。特に株式会社の場合は、公証役場での定款認証も必要です。
このように、法人設立は個人事業主として開業する場合に比べ、手続きや費用の面でハードルが高くなります。ただし、株式会社を設立した場合には、出資者と経営者を分けられるほか、社会的信用が高まりやすいというメリットがあります。
個人事業主とは、法人を設立せずに個人で事業を行う人のことを指します。未経験の分野でも、個人事業主であれば比較的簡単に開業できます。
個人事業主として事業を始めるには、税務署に「個人事業の開業届出・廃業等届出書」(通称:開業届)を提出します。手続きが簡単で、初期費用も抑えられるのが特徴です。
ただし、所得が増えてくると、法人化した方が節税効果を得られる場合もあるため、将来的な展望も踏まえて検討する必要があります。
なお、本記事では主に個人事業主としての開業について解説しています。
フランチャイズとは、企業と契約を結び、ロイヤリティを支払う代わりに、その企業のブランドや商品、経営ノウハウを利用して開業できる事業形態です。
フランチャイズ展開が多い業種としては、コンビニ、飲食店、学習塾などが挙げられます。開業したいけれどノウハウや経験がなく不安な場合に、企業のサポートを受けながら始められる点が魅力です。
一方で、企業のマニュアルや方針に従わなければならないケースが多く、自由度が低くなることはデメリットでもあります。しかし、企業のネームバリューや集客力を活用できるため、開業初期から一定の売り上げが見込める点は大きなメリットです。

個人事業主として開業することで、以下のメリットを得られます。
これらのメリットを活用することで、節税につながります。そのため、内容をしっかりと確認しておきましょう。
個人事業主は開業届を提出し、確定申告の際に「白色申告」と「青色申告」のどちらかを選択できます。特に、青色申告特別控除を利用すると最大65万円の控除を受けられるため、節税効果が大きいのが特徴です。
青色申告を行うには、事前に「青色申告承認申請書」を提出しておく必要があります。なお、最初は白色申告を選び、後から青色申告へ変更することも可能ですが、その際は改めて手続きが必要です。節税を意識するなら、開業届と同時に青色申告承認申請書も提出しておくのがおすすめです。
小規模企業共済は、個人事業主や中小企業の経営者が加入できる退職金の代わりとなる制度です。毎月1,000円から7万円まで掛金を積み立てることで、廃業時や老後に給付金として受け取れます。
会社員と異なり退職金制度がない個人事業主にとって、大きな安心材料となる制度です。また、掛金は全額所得控除の対象となるため、節税効果も期待できます。

開業にはメリットがある一方で、以下のようなデメリットも存在します。
これらのデメリットに注意しながら、慎重に開業の計画を進めることが重要です。
通常、退職後に開業届を提出すると「再就職する意思がない」と見なされ、失業保険の受給資格を失うことになります。しかし、2022年7月から制度が改正され、離職後に開業した場合でも、最大3年間は失業保険の受給期間に含まれない特例(雇用保険受給期間の特例)が設けられました。この特例により、仮に廃業した場合でも、本来の受給期間の1年間に、開業から廃業までの期間(最長3年間)を加えた期間が失業給付の受給期間として認められます。
また、開業届を提出していても、一定の要件を満たせば失業保険の「再就職手当」を受け取ることが可能です。ただし、受給手続き後の7日間の待期期間が終了した後、自己都合退職の場合には、待期期間終了後さらに1ヶ月が経過してから開業しないと受給できないため、注意が必要です。
開業しても、必ずしも事業が順調に進むとは限りません。どれだけ入念に経営計画を立てたとしても、自分の努力だけでは防ぎきれないリスクがあります。例えば、物価の高騰、為替変動、人材不足、自然災害といった社会情勢の変化が挙げられます。事業を継続するためには、常に柔軟な対応とリスク管理が欠かせません。
また、会社員であれば会社の経営状況が悪化しても、個人に責任や負債が発生することはありません。しかし、個人事業主の場合は、事業の失敗による損失や負債をすべて自分で背負わなければなりません。

開業の流れは、以下のとおりです。
この順序で進めると、スムーズに開業できます。特に最初に取り組むべきなのが資金調達です。
まずは、自己資金がどの程度あるかを把握しましょう。自己資金の目安は、開業に必要な資金の3割程度と言われています。不足分は、以下のような方法で補うのが一般的です。
開業資金は、家賃や備品の購入費用、テナント料、人件費などに充てられます。また、事業を継続するためには、運転資金も必要不可欠です。余裕を持った資金計画を立てましょう。
家族や親族、知人から資金を借りるのは比較的頼みやすい方法です。しかし、返済が滞ると関係が悪化し、トラブルに発展する恐れもあります。また、返済期限を定めず返金をしない場合、税務上「贈与」と見なされ、贈与税が課される可能性もあります。
資金を借りる際には、「借入金額」「返済期日」「毎月の返済額」などを記載した借用書や契約書を作成しましょう。書面を残すことで、貸す側の安心にもつながります。
借入先としてまず検討したいのが、日本政策金融公庫です。同公庫は、開業したばかりの個人事業主や中小企業を支援する融資制度を用意しています。特に、新規開業から2期以内の方は資金調達が難しいケースが多いため、「新規開業・スタートアップ支援資金」の利用をおすすめします。
この制度では、新たに事業を始める方や、事業開始後おおむね7年以内の方を対象に、最大7,200万円(運転資金は4,800万円まで)の借入が可能です。また、女性・若者・シニアの創業者や、再チャレンジをめざす方、中小会計を適用して創業する方には、特別金利が適用される場合があります。ぜひ活用を検討してみてください。
自己資金が不足している場合は、国や自治体が提供する補助金・助成金を活用しましょう。融資とは異なり原則返済の必要がないため、要件を満たせば有効な資金調達手段となります。
特に開業時の設備投資や、従業員の雇用・育成にかかる費用に活用できるものが多くあります。代表的なものは以下のとおりです。
補助金・助成金の制度は地域ごとに異なる場合がありますので、お住まいの自治体の最新情報を確認しましょう。
資金繰りを圧迫しないためにも、まずは基本的な備品から準備を始めましょう。特に名刺は、開業前の段階でも用意しておきたいアイテムです。個人事業主の場合、名刺を持つことで社会的信用を得やすくなり、営業活動にも役立ちます。また、名刺にはSNSやホームページの情報も記載しておくと、営業活動がよりスムーズに進みます。
印鑑については、2021年以降、開業届への押印は不要となりました。新たに印鑑を用意するかどうかは、屋号を設定するかなど、ケースバイケースで判断してください。
その他、業種によって必要な備品は異なります。例えば、オフィス用品としては机、椅子、テーブル、ソファなどが挙げられます。
開業届は、事業所得・不動産所得・山林所得が生じる事業を開始した方が提出対象です。所得が事業所得に該当する場合、個人事業主として開業届を提出する必要があります。提出期限は、事業開始から1ヶ月以内です。
提出方法は3つあり、税務署窓口への持参、郵送、またはe-Taxを利用したオンライン提出が可能です。なお、業種によっては開業届以外にも、営業許可に関する書類提出が必要となります。飲食店の場合主な許可、届出は以下のとおりです。

開業資金を準備する際は、平均的な開業費用を参考にすると目安がわかりやすくなります。また、自己資金の割合を把握することで、必要な貯蓄額の目安もつかめます。
近年の開業費用の平均額は、日本政策金融公庫総合研究所の調査によると、2024年の平均は985万円、中央値は580万円でした。また、資金調達額の平均は1,197万円となっています。ただし、この調査は個人事業主と法人を分けていないため、事業形態や業種によって費用は異なります。
1990年代の平均額と比べると、開業費用の平均は下がっています。近年は、自宅での開業やインターネットを活用したビジネスが増え、低コストで開業する傾向が強まっているためです。
日本政策金融公庫総合研究所の調査によると、2024年の開業費用における自己資金の平均額は293万円で、資金調達額に対する割合は24.5%です。残りの資金は、平均780万円を日本政策金融公庫や地方自治体の制度融資など、金融機関から借り入れているケースが多いことがわかっています。自己資金のみで開業費用が不足する場合は、公的機関の融資や補助金の活用が一般的な方法です。

開業後は、毎年確定申告を行う必要があります。特に以下の2点が重要です。
確定申告を適切に行わないと、延滞税や無申告加算税などのペナルティが科されるため注意が必要です。
開業後の確定申告は、毎年必ず行いましょう。確定申告は、白色申告と青色申告があります。申告期間は通常、2月16日〜3月15日です。ただし、開始日や締切日が休日の場合は、その翌平日が期限となります。
開業直後で所得が少なく赤字の場合でも確定申告を行いましょう。青色申告であれば、赤字を翌年以降3年間にわたり繰り越し、各年の所得から差し引くことが可能です。一方、白色申告では一部の例外を除き、赤字の繰り越しは原則として認められていません。
以下では、白色申告と青色申告それぞれの概要とメリットを紹介します。
白色申告は、比較的簡単に申告ができる制度です。理由は、帳簿が単式簿記で済むためです。単式簿記では、日付・科目・収入・支出・簡単な取引内容などを記載します。
提出する書類は、確定申告書・収支内訳書・各種控除証明書のみで済みます。また、白色申告は青色申告のように事前の申請手続きが不要です。初めての確定申告を簡単に済ませたい方は、白色申告が向いています。
青色申告をする場合は、事前に税務署で「所得税の青色申告承認申請手続き」を行う必要があります。青色申告は、複式簿記での帳簿付けが原則です。取引を「借方」「貸方」に分けて記録し、仕訳帳や総勘定元帳を作成します。さらに、これをもとに損益計算書と貸借対照表を作成します。
必要な提出書類は、確定申告書・青色申告決算書(損益計算書・貸借対照表を含む)・各種控除証明書です。青色申告には以下のメリットがあります。
個人事業主は、領収書の保存が義務付けられています。保存期間は以下のとおりです。
| 白色申告 | 領収書は5年間保存 |
|---|---|
| 青色申告 | 原則7年間保存(前々年分の事業所得が300万円以下の場合は5年) |
また、適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の場合は、白色申告・青色申告ともにインボイスに該当する領収書は7年間保存が義務付けられています。さらに、帳簿は取引発生ごとに正確に記録しなければなりません。日々の取引で発生する領収書は必ず保管し、帳簿付けに活用しましょう。
開業と同時に整えたいのが、オフィス環境です。オフィス環境の整備は、業務効率に直結します。特に以下の5つは、スムーズな事業運営のために導入を検討しましょう。
それぞれの内容やおすすめサービスについて解説します。
固定電話の導入は、取引先や顧客からの信頼性の向上、通話の安定性といったメリットがあります。特に開業直後は、仕入れ先や取引先と頻繁に連絡を取る機会が多いため、開業前に電話番号を取得しておくのがおすすめです。電話番号の取得はNTT東日本グループに相談可能です。NTT東日本グループの電話番号は【0120-765-000】です。
インターネット通信速度が遅かったり接続が不安定だったりすると、業務に支障が出るだけでなく、顧客対応の品質にも影響します。そのため、光回線の導入は非常に重要です。光回線は、複数人で通信帯域を共有できる点もメリットです。事業内容や利用人数に応じて、必要な回線数を用意しましょう。
社外での通話環境を整えたい場合は、ひかりクラウドPBXの導入が便利です。NTT東日本グループの「ひかりクラウドPBX」は、クラウド上のサーバーを使って社内外との通話が可能になります。専用アプリをインストールすることで、スマートフォンやパソコンを内線化できるほか、外出先からオフィスの電話番号で発着信が可能です。
※外線通話を利用される場合には、ひかり電話オフィスA(エース)またはひかり電話オフィスタイプの契約と、当社指定の外線ゲートウェイ・固定IPのご契約が必要です。
クラウドストレージを導入すると、インターネットを通じてデータやファイルを安全かつ簡単に共有できます。NTT東日本グループの「コワークストレージ」は、デスクトップ・ブラウザ・モバイルなど、慣れたデバイスで直感的に操作可能です。また、国内で厳重なセキュリティ管理のもとデータが保管されるため安心です。初期費用不要で、人数や予算に応じて5つのプランから選択できます。
NTT東日本グループの「ギガらくVPN」は、VPN対応のサブスクリプション型ルーターサービスです。ネットワークの設定・構築・管理を遠隔でサポートしてくれるため、ITに詳しくない個人事業主でも安心して導入できます。万が一のトラブル時にもサポートセンターが対応するので、手間をかけずに安全な通信環境を確保できます。
NTT東日本グループが提供する「Nにおまかせ!」は、独立・起業・開業・創業に関わるさまざまな業務をトータルでサポートするサービスです。
株式会社パブリ様は、2023年の創業時に「Nにおまかせ!」を活用し、スムーズに事業をスタートさせました。まず、担当者が一括窓口となり、オフィスづくりに必要な各事業者とのやり取りを代行しました。また、NTT東日本グループのノウハウを活用することで、ネットワーク構築やセキュリティ面での不安も解消。さらに、当初見積もりで高額だったホームページ制作も予算内に収められ、IP電話の導入によってランニングコストの低減も実現しました。その結果、約500万円ものコストダウンを達成しました。
このように、「Nにおまかせ!」は、開業時の手間やコストの負担を軽減することで、事業主が開業直後の重要なタスクに集中し、迅速なビジネス展開を可能にします。
創業準備の際に発生する煩雑な手続きや通信環境の整備はもちろん、さまざまな業務を「Nにおまかせ!」にまかせることで、大幅なコスト削減を実現できます。
事例紹介
創業準備にかける各社との煩雑な対応など、通信環境以外もすべて「Nにおまかせ!」することで、おおよそ500万円のコスト削減を実現!
※ 文中に記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、全て2024年1月時点(インタビュー時点)のものです
※ 事例は一例であり、すべてのお客さまに同様の効果があることを保証するものではありません
開業とは、新しく事業や商売を始めることを指します。法人の設立やフランチャイズ契約もありますが、個人事業主としての開業は比較的気軽に始められます。
開業にあたっては、資金調達や備品購入から準備を進めましょう。開業届の提出は、準備が整ってからで問題ありません。資金調達については、日本政策金融公庫からの借入を検討するのがおすすめです。
また、開業時にはオフィス環境の整備も重要です。電話番号や光回線、インターネット環境の整備を一括で請け負ってくれる事業者に依頼することで、スムーズに準備が進められます。
事業の継続は簡単ではありませんが、自分で事業を立ち上げることには大きなやりがいがあります。ぜひチャレンジしてみてください。
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監修
税理士法人V-Spiritsグループ代表 税理士・社労士・行政書士・FP
中野 裕哲
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。 税理士法人V-Spiritsグループ代表。年間約1000件の起業相談を無料で受託し、起業家や経営者をまるごと支援。経済産業省後援 起業経営支援サイト「DREAM GATE」で12年連続相談数日本一。 著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)など20冊、累計25万部超
V-Spiritsグループ Webサイト