公開日:2024.06.17
この記事で
わかること
目次
「会社の経営状態を良くするために、生産性を測る指標や計算方法について理解を深めたい」「生産性指標について理解し、財務分析に活用したい」と考えている方は多いのではないでしょうか。
昨今、労働人口の減少や少子高齢化などの日本の現状を背景に、企業の人手不足が深刻化してきています。限られた労働力でより多くの利益を得るためには、できる限り早く生産性向上へ取り組むことが重要です。しかし、方法を間違えるとさらに業務が増えることになりかねないため、自社に合った方法で生産性向上の施策を行う必要があります。
この記事では「生産性の定義とその向上の必要性」「生産性指標の種類と計算方法」について解説します。生産性指標の計算方法を学び、自社の状況を正確に把握し分析したい方は、ぜひ参考にしてください。
生産性とは、投入した人や時間などの資源に対してどれだけの成果が得られたかを表す指標です。生産性を向上させることで、少ない労働力やコストで売上向上の効果が見込めます。企業が利益を獲得するためにも、生産性を高める取り組みは重要です。
この章で、生産性の概要やその向上がもたらす効果について詳しく確認しましょう。
生産性とは経営資源の投入単位あたりに、どれだけ成果を生み出すことができたかを表す指標です。生産性を向上させるためには、現在の状況を数値化した上で、適切な施策を講じる必要があります。生産性の計算式は、以下のとおりです。
生産性=生産量(アウトプット)÷投入量(インプット)
生産量や投入量は、以下のような内容を指します。
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量 | 説明 |
---|---|
生産量 | 労働や設備、原材料などの投入で生み出された「成果」や「価値」のこと |
投入量 | 収益を上げるために企業が投入した資源の量 |
少ない投入量で多くの生産量を生み出している状態であれば「生産性が高い」と言えます。
生産性を向上させると、企業は以下のような効果を得ることができます。
生産性が高いということは、製品や商品の1単位当たりのコストを抑えられているといえます。コストが抑えられると1単位当たりの利益額が高くなり、企業全体の利益率が向上します。そのため、収益性の向上にもつながります。また生産性が低い場合、長時間労働につながる恐れがあります。長時間労働が発生すると、従業員の集中力や判断力の低下や、ストレスの蓄積につながります。長時間労働には割増賃金などのコストもかかり、企業にも従業員にも悪い影響を及ぼします。
日本は少子高齢化が進んでおり、労働力人口が減少しています。労働力人口が減ると企業の生産力を維持できないため、少ない労働力で収益を生み出す施策は重要です。
生産性を測る代表的な指標は、以下の2つです。
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指標 | 内容 | 計算式 |
---|---|---|
労働生産性 | 投入した従業員数や労働時間に対して得られた成果を数字で示したもの | 労働生産性=付加価値額 ※1÷労働者の数または総労働時間 |
資本生産性 | 保有している機械や土地などの資本に対して得られた成果を数字で示したもの | 資本生産性=付加価値額÷有形固定資産 ※2 |
生産性を向上させるためには「何にどれくらい取り組めば良いのか」を客観的に判断できる指標の設定が必要です。生産性を数値化することで、インプットした量に対して「効率良く付加価値を生み出せているか」を客観的・定量的に分析できます。
生産性の指標を継続的に算出すると、競合他社との比較が可能となり、さらには潜在的な課題を発見することができます。得られた情報をもとに、必要な対策を適切なタイミングで実施することができるようになります。従業員がスキルアップすれば、同じ時間働いてもより多くの成果を生み出せるようになり、労働生産性の向上が期待できます。設備の利用頻度や稼働率向上などにより、付加価値額が増加することで資本生産性が高くなります。
※1 経常利益+労務費+人件費+支払利息割引料-受取利息配当金+賃借料+租税公課+減価償却費(中小企業庁の加算法を参照)
※2 土地や建物、装置などの固定資産
財務分析では、生産性向上にむけて現状を把握するための指標として、一般的に以下の3つが使用されます。
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指標 | 内容 | 計算式 | 特徴 |
---|---|---|---|
労働分配率 | 付加価値額のうち、給料など人件費の割合 | 労働分配率=(人件費÷付加価値)×100 | 高すぎると利益を圧迫し、低すぎると従業員から不満が出るため目安が難しい |
有形固定資産回転率 | 有形固定資産(土地や建物など)を効率的に活用しているのか、現状を確認する指標 | 有形固定資産回転率(回)=売上高÷有形固定資産 | 高いほど設備などの生産性が高いと判断される |
労働装備率 | 従業員1人あたりの設備投資額を表す指標 | 労働装備率(円)=有形固定資産÷従業員数 | 高いほど、従業員1人あたりに十分な設備投資が行われていると判断される |
上記の3指標は、業界の平均や競合他社と比較することで自社の現状を把握することができ、生産性向上のための施策を効果的に策定できます。例えば、競合他社と比較して有形固定資産回転率が低い場合、既存の設備を最新設備に替えることで生産性の向上につながる可能性があります。また、労働装備率が低い場合、競合他社より設備投資が少ない可能性があります。その場合は、設備投資を行うことで生産性の向上が図れる可能性があります。
生産性を向上させることで、経営に以下のようなメリットがあります。
持続的な成長と競争力の強化を目指す企業にとって、生産性の向上は重要です。この章では、生産性向上による各種メリットを詳しく解説します。
生産性を高めることで、今までと同じ売上をこれまでより少ない人数や資本で獲得することができます。そのため、コストの軽減が達成できます。
軽減できたコストを商品開発や人材育成に投入していくことで、さらに企業の利益拡大につなげることが可能です。
生産性が向上すれば、少ないコストで高い成果を上げたり価値提供できたりするようになります。そのため、生産性の指標を改善することは、利益率の向上につながります。
売上高に対する利益の割合である利益率が高いほど、効率の良い経営ができていると判断可能です。従業員1人あたりや1時間あたりの生産性が高まることで、利益率が向上し労働人口不足といった企業の課題解決にもつながります。
従業員の労働時間を改善できることも、生産性向上がもたらすメリットです。生産性の向上は、従業員1人あたりや1時間あたりに生み出される成果が増えることを表します。
生産性が向上することで、これまでと同じ売上を今までより短い時間で獲得することが可能です。そのため、これまで残業や休日出勤が必要だった企業においても時間外労働の削減ができるようになります。働き方が重視される現代において、適正な労働時間で売上を上げることが重要になります。
生産性指標を向上させるための具体的な施策として、以下の3つをご紹介します。
この章で、それぞれのポイントを詳しく理解した上で実践しましょう。
従業員のスキルを正確に把握し、研修やセミナーを通じてそれらを強化すること、さらには各人を適材適所に配置することで、生産性の向上が見込めます。従業員のIT活用やタイムマネジメントのスキルがアップすれば、同じ時間でより多くの成果を獲得することが期待できるからです。
また、管理職のマネジメントスキル向上も非常に有効です。マネジメントスキルが向上すると、部下一人ひとりの適性に応じた仕事の割り当てが可能になり、結果として部下の能力を最大限に引き出すことができます。生産性を高めるためには、従業員個々のスキルアップに努めると同時に、人員配置においても適材適所を心がけることが重要です。
ITツールを導入することでも、生産性の向上が期待できます。ITツールを活用することで、従業員が手作業で行うより短時間で作業を行うことができ、ヒューマンエラーを防ぐことが期待できます。具体的には、以下のようなITツールがおすすめです。
一方、ITツールの導入にあたっては、初期費用やランニングコストが発生することも十分に考慮しましょう。
無駄な業務を把握し削減することも、生産性を向上させるために効果的です。従業員一人ひとりが担当している業務を可視化し、実態を明らかにしておくことで、無駄な業務を洗い出せるとともに改善点がわかります。以下の内容のように、減らせるものがないか確認しましょう。
生産性指標の具体的な目標数値を設定し、向上のための取り組みを共有すると、チームや企業全体のモチベーション向上につながります。既存の業務を把握し細分化したうえで「利益や成果につながらない作業がないか」を点検していきましょう。
少子高齢化で人手不足が深刻化してきている現在、生産性を向上させることは企業の利益を継続的に確保していくために重要です。より早く生産性を向上させるためには、ただ業務を減らしたり研修を行ったりするのではなく、正確な経営診断に基づいた対策が必要です。
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少子高齢化による労働力不足に備えるためには、生産性の向上に取り組むことが大切です。
そのために、財務分析に置ける生産性指標の意味や計算方法を理解し、定期的に企業の状態を把握することをおすすめします。一方で、何が生産性の向上につながるか把握できていないまま業務改善に取り組むと、逆に無駄な業務を増やしてしまう可能性があります。
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監修
税理士法人V-Spiritsグループ代表 税理士・社労士・行政書士・FP
中野 裕哲
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。 税理士法人V-Spiritsグループ代表。年間約1000件の起業相談を無料で受託し、起業家や経営者をまるごと支援。経済産業省後援 起業経営支援サイト「DREAM GATE」で12年連続相談数日本一。 著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)など20冊、累計25万部超
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