一般社団法人とは?公益社団法人との違い、設立の方法や費用を簡単に解説

公開日:2022.03.22

一般社団法人とは?公益社団法人との違い、設立の方法や費用を簡単に解説

この記事で
わかること

  • 一般社団法人の特徴と一般企業との違い
  • 設立のメリット・デメリット
  • 一般社団法人の設立方法

目次

私たちの身の回りには、株式会社や合同会社、NPO法人など、さまざまな法人が存在し、社会の中で重要な役割を果たしています。法人は法律で定義が厳格に定められており、種類によって適用される法律や税制上の優遇措置も異なります。しかし、各法人の違いを詳しく把握できている方は少ないのではないでしょうか。

そこで本記事では、法人の中でも「一般社団法人」と呼ばれる非営利法人について、他の法人との違いやメリット・デメリット、設立手順などを解説します。一般社団法人とは何か基本知識を身につけたい方はぜひお役立てください。

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一般社団法人とは?

一般社団法人とは、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)」に基づいて設立される非営利法人の一種です。一般社団法人として法人格を取得することで、団体として契約を結んだり、資産を保有したりすることが可能になります。設立には2名以上の社員が必要です。法務局で登記を行うことで設立できます。

なお、ここでいう「社員」とは株式会社の株主に近い立場であり、法人の重要事項を決定する役割を持つ点にご注意ください。一般的な意味での社員は、社団法人の場合、「従業員」「職員」などと呼ばれます。

一般社団法人は、原則的に「営利を目的としない法人」ですが、公益性の有無にかかわらず設立でき、事業内容も比較的自由です。そのため、他の法人と比べて簡単に設立可能であり、資格認定機関や学術団体、医療・福祉系の学会など、さまざまな組織が一般社団法人として活動しています。

会社形態以外の法人には、一般社団法人以外のもさまざまな種類があります。以下では、公益社団法人、一般財団法人、NPO法人、そして一般企業との違いについて解説します。

公益社団法人との違い

公益社団法人とは、公益を主目的にする社団法人です。行政庁の厳格な審査を通過した一般社団法人のみが認定を受けられます。

一般社団法人は、設立時に特定の公益性を求められず、営利・非営利にかかわらず比較的自由な事業運営が認められています。一方で、公益社団法人は「公益目的事業」を中心に運営することが義務付けられており、その対象事業は学術・技芸・教育・福祉・環境保全など、認定法に基づく23種類に限られます。

公益社団法人に認定されることで、法人税の軽減や寄付金優遇税制などのメリットが得られます。一方、厳格なガバナンスが求められ、事業費の半分以上を公益目的事業に充てなければなりません。さらに、行政庁による監督を受けるため、一般社団法人よりも事業の制約度が高くなるのが特徴です。

一般社団法人から公益社団法人へ移行するには、公益認定等委員会による審査を受け、公益性に関して所定の基準を満たしていると認められる必要があります。

一般財団法人との違い

一般財団法人とは、金銭や不動産など特定の財産を管理・運用するために設立される法人です。奨学金事業や文化・スポーツ振興に関連した団体などがあります。

「財産」に対して法人格が与えられる一般財団法人は、「人」の集まりである一般社団法人とは根本的な性質が異なります。一般財団法人は設立者が拠出した財産の運用利益を原資として活動するのに対し、一般社団法人は構成員である社員の意思決定が重視されます。

設立要件も異なり、一般財団法人は300万円以上の金銭や不動産などの財産の拠出が求められます。また、理事3人・監事1人・評議員3人以上が必要です。これに対し、一般社団法人には設立時の拠出金要件がなく、社員2名以上(理事との兼任可能)がいれば法人格を取得できるため、比較的設立が容易です。

NPO法人との違い

一般社団法人とNPO法人(特定非営利活動法人)はどちらも非営利法人ですが、設立の根拠となる法令や活動目的に明確な違いがあります。NPO法人は「特定非営利活動促進法」に基づき設立される法人で、20種類の「特定非営利活動」のいずれかを行うことが設立の条件です。具体例としては、環境保全活動や福祉活動など、社会的な公益性の高い活動が挙げられます。これに対し、一般社団法人は事業内容に大きな制約はありません。

設立手続きにも違いがあります。一般社団法人は登記のみで設立できるのに対し、NPO法人は所轄庁(都道府県や内閣府)の認証が必要であり、設立までに一定の時間が必要です。ただし、NPO法人には助成金や補助金を受けやすいというメリットもあります。

一般企業との違い

一般企業との大きな違いは、「営利法人」か「非営利法人」かという点です。営利法人は、事業を通じて利益を出し、それを株主などの出資者に分配することを目的とする法人を指します。主に株式会社や合同会社があります。

一方、非営利法人は利益が出ても出資者に分配できない法人です。一般社団法人やNPO法人などが該当します。非営利法人は「利益を出さない」あるいは「ボランティアである」といったイメージが先行しがちですが、正確には「余剰利益の分配をしない」ということです。事業を行い、利益を出すこと自体は可能ですが、株式会社のような出資者への分配は行われません。利益は法人内部に留め置き、法人が目的とする活動資金として使われます。

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一般社団法人の種類

一般社団法人は大枠では非営利法人ですが、その中でもさらに「営利型(普通型)」と「非営利型」の区別があります。この区別は法人税法に基づくものです。

まず営利型は、税制上、株式会社などの普通法人と同じ課税ルールが適用される一般社団法人です。収益事業を行うことに制限はないものの、税制上の優遇措置を受けることはできません。

一方、非営利型は、非営利性を重視する一般社団法人であり、一定の条件を満たすことで収益事業以外の所得が非課税となります。非営利型一般社団法人に認定されるには、以下のような要件を満たす必要があります(抜粋)。

  • 余剰利益を社員に分配しない
  • 収益事業を主たる目的としない
  • 解散時の残余財産を国や地方自治体などに帰属させる
  • 親族などの関係者が理事総数の3分の1以下である

これらの条件を満たせば、税制上の優遇措置を受けることが可能となり、NPO法人とほぼ同等の扱いを受けることができます。そのため、近年ではNPO法人ではなく、設立が比較的容易な非営利型一般社団法人を選択するケースも増えています。

一般社団法人を設立するメリット

一般社団法人の設立には、登記が簡単で事業内容に制約がなく、税制優遇を受けられるなどのメリットがあります。

登記が簡単に行える

一般社団法人は、法務局で登記申請を行うだけで設立できるため、許認可が必要な法人形態と比べて手続きが非常に簡単です。例えば、NPO法人の設立には行政の厳しい審査や長期間の手続きが必要ですが、一般社団法人にはその必要がありません。法人の登記とは、法人の名称や主たる事務所の所在地、役員の氏名などを公示する制度です。具体的な手続きは、登記申請書などの必要書類を、主たる事務所の所在地を管轄する法務局へ提出します。

また、一般社団法人には拠出金の定めがないため、設立時に多額の資金を用意する必要がありません。社員2名以上というごく少ない人数で設立できることもメリットです。

事業内容に制約がない

一般社団法人は、公益社団法人やNPO法人のように特定の事業分野に限定されることなく、自由に事業を展開できます。例えば、NPO法人は法律で定められた20の特定非営利活動の範囲内でしか事業を行えませんが、一般社団法人にはそのような制約がありません。そのため、収益事業も含めた幅広い活動が可能です。ただし、事業内容に制限がないとはいえ、収益事業を行う場合には法人税の対象となる点を理解しておく必要があります。

税制が優遇される

一般社団法人のうち、非営利型の一般社団法人として税法上扱われると、収益事業以外の所得は非課税となる税制上の優遇措置を受けることが可能です。

これによって税負担が減り、活動資金をより効率的に活用できるようになります。ただし、営利型の一般社団法人の場合は、株式会社などの普通法人と同じ税制が適用されるため、税制優遇を受けられません。

社会的な信用がつく

法人格を取得することで、社会的な信用が向上するのもメリットです。個人事業や法人格を持たない任意団体と比べると、「一般社団法人」という肩書きは社会的に信用されやすい面があります。

そのため、行政機関や企業などとの取引や交渉も円滑になり、寄付金や人材などの獲得にも有利に働く可能性があります。また、法人名義での契約締結、銀行口座開設、資産管理などが可能となるのもメリットです。法人名義で活動できるため、代表者に何かあっても、組織としては事業を継続しやすくなります。

一般社団法人を設立するデメリット

一般社団法人には数々のメリットがある一方で、法人として一定の負担も伴います。特に以下の点には注意が必要です。

社員総会を開催しないといけない

一般社団法人には、毎年1回以上、社員総会を開催する義務があります。社員総会では、会計報告や役員の選任、法人の運営に関する重要事項の決定などを行い、議事録の作成・保存、貸借対照表の公告、税務申告などの手続きが必要です。必要に応じて臨時社員総会を開催することもあります。従って、個人事業や任意団体と比べると運営上の事務負担が増えることを想定しておきましょう。

会計処理が面倒である

一般社団法人では、事業内容や法人の種類に応じて異なる会計基準を採用するため、会計処理が複雑になりがちです。特に、非営利型一般社団法人として税制上の優遇措置を受けるためには、収益事業と非収益事業を明確に区別し、それぞれの会計処理を適切に行う必要があります。従って、収益事業で得た利益に対する課税処理、収益事業と非収益事業の経費配分など、法人税法上のルールを正しく理解しておかなければなりません。

社会保険への加入が必要となる

一般社団法人は、法人である以上、報酬を受け取る理事や雇用条件を満たす従業員がいる場合は社会保険(厚生年金保険・健康保険)の加入が義務付けられています。以下の対象者がいる場合、法人は社会保険に加入し、保険料の負担をしなければなりません。

  • 法人代表者・理事
  • 常時雇用される従業員
  • 一定の条件を満たすアルバイト・パート

法人が社会保険の加入手続きを怠ると、過去2年分の未納保険料を遡って支払わなければならない可能性があり、追徴金が課されることもあります。そのため、法人設立を考える際には、社会保険料の負担も考慮し、資金計画を立てることが重要です。

一般社団法人の設立にかかる費用

一般社団法人を設立する際には、11万円~22万円程度の費用が発生します。その内訳は以下のとおりです。

定款認証手数料

一般社団法人を設立する際、定款を作成し、公証役場でその手続きが正当であることの認証を受ける必要があります。この際の手数料は一律5万円です。また、定款の謄本手数料として、1枚当たり約250円が追加でかかります。一般的な定款の枚数を考慮すると、その費用は2,000円程度です。

登録免許税

設立登記を法務局に申請する際には、登録免許税として一律6万円が必要です。この登録免許税6万円と定款認証手数料5万円はどの場合でも必要なので、設立には最低11万円以上かかります。

司法書士報酬

設立手続きを専門家である司法書士に依頼する場合、報酬が発生します。費用の相場は、依頼する内容や事務所によって異なりますが、一般的には10万円程度です。費用負担は増えますが、専門家に依頼することで、時間や労力を節約しつつ正確に手続きを行い、法人設立をスムーズに進めやすくなります。

その他の費用

他にも、以下のような費用が発生する可能性があります。

  • 法人印鑑(実印、銀行印、角印)の作成費用:数千円から数万円程度
  • 印鑑証明書の発行費用:1通当たり400円程度
  • 登記事項証明書の取得費用:1通当たり500円程度

以上を総合すると、一般社団法人の設立には一般的に12万円以上、司法書士を利用する場合は22万円程度の費用が必要です。

一般社団法人の設立方法

一般社団法人の設立に際しては、主に以下の手順を踏みます。

  1. 定款を作成する
  2. 公証人による認証を受ける
  3. 理事を選任する
  4. 設立手続きの調査をする
  5. 登記申請を行う

1.定款を作成する

定款は、法人の基本的な運営ルールを定めた重要な書類です。定款には「絶対的記載事項」として、最低でも以下の事項を必ず記載しなければなりません。

  • 目的(事業内容)
  • 名称(「一般社団法人」を含める)
  • 主たる事務所の所在地
  • 設立時社員の氏名
  • 社員資格に関する取り決め
  • 公告方法
  • 事業年度

上記に、記載することで効力を生む「相対的記載事項」や自由に記載できる「任意的記載事項」を加えて定款を作成するのが一般的です。必要に応じて、用意されている雛形や、専門家による定款作成代行サービスを利用することをおすすめします。

2.公証人による認証を受ける

定款を作成した後、公証役場にて公証人の認証を受けます。認証には審査手数料5万円が必要です。

3. 理事の選任

定款の認証後、設立時社員は理事を選任します。一般社団法人では、最低1名以上の理事が必要です。

4. 設立手続きの調査

選任された理事は、設立手続きをチェックし、法令や定款に違反していないか確認します。もし違反が見つかった場合は、社員に報告し、適切な対応を取る必要があります。

5. 設立登記の申請

設立時理事の調査が終了したら、事業所を管轄する法務局にて設立登記を申請します。登記申請にあたっては、登記申請書のほか、定款、印鑑証明書、本人確認書類などさまざまな書類が必要となるため、事前によく確認しておきましょう。

従業員を雇用する場合は、年金事務所での手続きなど、その他細かな申請・手続きも数多く発生するため、抜け漏れのないように注意しましょう。

これから開業するならICT環境の整備が大切

一般社団法人の設立・開業をした後は、事業所の整備についても考える必要があります。特に今の時代に法人活動を行う際には、ICT環境の整備が欠かせません。以下では、開業後のオフィスの環境整備でそろえたいものを紹介します。

インターネット回線

現代のデジタル社会で法人活動を行うなら、インターネットのご利用環境は必須です。光回線なら通信速度が速く、快適な通信環境を構築できます。複数人で通信帯域を共有することも可能です。回線数はご利用環境に応じて必要な数を検討しましょう。

ひかりクラウドPBX

テレワーク時にもビジネスフォンを使用したい場合は、「ひかりクラウドPBX」が便利です。「ひかりクラウドPBX」は社内外での通話機能をクラウド上のサーバーから提供できます。また、専用のアプリケーションを使うことで、スマートフォンを内線化し、外出先からでもオフィスの電話番号で発着信することが可能です。

※外線通話を利用される場合には、ひかり電話オフィスA(エース)またはひかり電話オフィスタイプの契約が必要です。

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コワークストレージ

インターネット上でデータやファイルを共有する際にはクラウドストレージが便利です。NTT東日本グループの「コワークストレージ」なら、デスクトップ・ブラウザ・モバイルなど、使い慣れた端末で簡単に操作できます。また、データやファイルは国内のサーバーで強固な情報セキュリティ対策によって保護されるため安心です。

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ギガらくVPN

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※事例は一例であり、すべてのお客さまに同様の効果があることを保証するものではありません。

5.まとめ

一般社団法人は「非営利法人」に分類されるものの、収益事業を行うことも可能です。比較的簡単に設立できる一方で、特に非営利型の一般社団法人として認められると税制上の優遇措置を受けられるなど、数多くのメリットを期待できます。

ただし、法人ゆえのさまざまな事務負担が発生する点には注意が必要です。また、営利型の一般社団法人は利益の分配ができない一方で、税制上の優遇も受けられないため、事業目的によっては株式会社を設立したほうが適している場合もあります。一般社団法人の設立を検討している方は、事業目的や運営体制を考慮にしたうえで、慎重に法人形態を選ぶようにしましょう。

開業をご検討されている方必見!

監修

税理士法人V-Spiritsグループ代表 税理士・社労士・行政書士・FP

中野 裕哲

起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。 税理士法人V-Spiritsグループ代表。年間約1000件の起業相談を無料で受託し、起業家や経営者をまるごと支援。経済産業省後援 起業経営支援サイト「DREAM GATE」で12年連続相談数日本一。 著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)など20冊、累計25万部超

V-Spiritsグループ Webサイト
監修