公開日:2024.05.23
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わかること
目次
「DX化という言葉はよく聞くが、どのように取り組めば良いのかよく分からない」という方は多いのではないでしょうか。まずは言葉の意味や目的を正しく理解しておかないと、企業のDX化を成功に導けない可能性があります。
そこで本記事では、DX化の定義や具体的な進め方を紹介します。推進するうえでの課題も理解できる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。
DXとは、デジタルトランスフォーメーションを略して使われる言葉です。企業や組織がデジタル技術を取り入れて、ビジネスモデルや業務プロセスの根本的な変革を行うことを指します。デジタル技術を単に導入するだけではなく、組織文化やプロセスの再設計など「ビジネスモデルの全面的な変革」に取り組むことがDX化の本質です。
オンライン販売やAIとデータ分析などを利用して、新しい価値を生み、顧客サービスの改善を行います。DX化は単なるテクノロジーの更新による業務改善ではなく、デジタル技術を活用して製品やサービス、企業全体をより良いものに変革する取り組みを指します。
デジタル化とは紙で運用している契約書や請求書を電子化するなど、人の手で行っていた業務をデジタルに置き換えることです。IT化とは電子マネーやスマートフォンなどの情報技術を活用することにより、新たな価値を生み出すことを指します。
デジタル化・IT化は業務プロセスの効率化や自動化に焦点を当てる一方で、DX化はビジネスモデルの変革が目的です。デジタル化・IT化の例として、以下の取り組みが挙げられます。
横にスクロールします
デジタル化 | 紙ベースの情報を画像やPDFなどのデータに変換する |
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IT化 | デジタル化したデータから情報を読み取り作業を自動化する |
デジタル化とIT化はDX化を進めるための手段であり、それぞれを有効に活用することが求められます。
DX化が進むことで、市場の変化に対応ができる環境を構築することが可能です。日本でDX化が注目されている背景には、以下のようなものがあります。
本章では、それぞれを具体的に解説します。
DX化が注目される背景の1つに、多くの企業が直面している既存システムの老朽化の問題があります。古いシステムは現代のビジネス環境に合わず、効率性に欠けるため新しいデジタル技術への移行が必要です。
DX化を行わなければデータの喪失やシステムのブラックボックス化により、自社の財産を失うリスクも出てきます。既存システムの刷新はDX化促進に向けた業務の見える化にも繋がり、新たな技術を活用した取り組みを実践することで、ビジネスの効率性と競争力が高められます。
2025年の崖とは経済産業省が2018年9月に発表した「DXレポート」に記載されたフレーズで、多くの既存システムのサポートが終了することを意味します。日本企業で使われている多くの基幹システムが老朽化しているため、2025年までに手を打たないと経済損失が発生するという予測が立てられています。
情報セキュリティリスクの増大やビジネス機会の損失が懸念されるため、クラウド技術の採用やビッグデータの活用など、デジタル技術を取り入れることが必要です。DX化を推進しなければ、業務効率・競争力の低下は避けられません。
日本はDX化を推進するための支援政策を打ち出しており、企業の取り組みを後押ししています。DXの支援政策には、デジタル技術の導入や人材教育、社内体制の整備など幅広い領域での活動が含まれます。
2021年に政府が掲げた「デジタル田園都市国家構想」は、デジタル技術の普及を支援することが目的です。田園都市国家構想では、人口減少や少子高齢化・過疎化・産業の衰退などの社会課題に対してデジタル技術を活用して解決を図り、誰もがデジタル化のメリットを享受できる社会の実現を目指します。国の支援政策はDX化への障壁を低減し、より多くの企業が取り組める機会を提供しています。
参照元:デジタル田園都市国家構想
DX化に向けた様々な取り組みが、国をあげて行われています。企業全体がDX化に取り組むことによって得られるメリットは以下のとおりです。
自社で取り組んだ際にどのような効果があるのか、イメージしながら確認してください。
DX化に取り組むことは企業の競争力を向上させ、市場での優位性を確保する効果があります。デジタル技術の導入により、製品やサービスのイノベーションが促進され、顧客満足度の向上につながります。
AIやビッグデータの活用により、膨大な情報の分析から顧客のニーズに応じてカスタマイズされたサービスを提供することで、顧客満足度の向上や新規市場の開拓が可能です。DX化による業務プロセスの革新によって、市場での競争力が強化されるため自社の成長を加速させます。
DX化により業務プロセスが自動化・効率化され、企業の生産性が大幅に向上します。手作業による業務やデータ処理がデジタルツールに置き換わることで、時間とコストの節約が可能です。
日々のルーティン業務の自動化が測れ、作業時間の短縮や人件費の削減が期待できます。さらにデジタル技術の導入により正確性が向上し、ヒューマンエラーをなくすことが可能です。DX化は業務プロセスを改善し従業員の生産性を向上させることで、企業全体のパフォーマンスを高める効果が見込めます。
DX化により、新しいビジネスモデルの開発や新市場への進出を実現できる可能性が高まります。データやデジタル技術を活用することで、従来のビジネスモデルを進化させて未開拓市場へ参入できるからです。
身近な例としては、オンラインプラットフォームを活用した新しい商品・サービス提供や、データ分析に基づいて市場ニーズを発見できる無人店舗などが挙げられます。DX化は企業に新しいビジネスの機会を創出し、長期的な成長と収益の増加につながります。
DX化はBCP対策(事業継続計画)を強化し、災害や緊急事態における企業のリスクを低減します。デジタル技術により業務はリモートで可能となり、災害やパンデミックの影響を最小限に抑えられるためです。
クラウド技術やリモートワークツールの導入により、自宅や安全な場所からでも業務を継続できます。DX化によるBCP(事業継続計画)の強化は、緊急時における業務の継続性を保ち、企業の安定性と信頼性を高める重要な役割を担います。
現在、DX化への取り組みを実施している企業は半数以上です。一方で、中には以下の課題に直面している企業も存在します。
本章では具体的な課題の内容と解決策のヒントを解説します。
既存のシステムやプロセスをデジタル化する過程で、互換性や技術面で問題が生じる場合があります。古いシステムは新しいデジタル技術との統合が難しい場合が多く、導入に際して大規模な変更が必要です。
まずは既存のシステムが「どのような機能や互換性を持っているのか」を確認しましょう。また、システムの変更により業務のやり方が変わることに対して、現場から不満の声が挙がるケースがあります。現場社員のレベルや担当領域に合わせた導入研修の実施など、サポート面を充実させることで不満の声が軽減されます。既存システムのデジタル化はDX化の重要なステップであり、段階的なアプローチや専門家の支援が必要です。
顧客のニーズを正しく把握することは、自社におけるDX化の方向性を定める上で重要です。なぜなら、顧客の要求や期待に対応できない、不適切な商品やサービスの開発につながる懸念があるからです。
顧客ニーズの例として、ユーザーが購入履歴を確認できるようにしたり、カスタマーサポートにアクセスできるようにしたりすることなどが挙げられます。顧客のニーズを明確にするためには、顧客との直接的な対話やデータ分析などを通じて、継続的に情報を収集・分析し、顧客中心のDX化戦略を策定することが大切です。
DX化を進める上でデータの情報セキュリティ対策は欠かせず、多くの企業で不安を感じています。クラウドサービスの利用拡大に伴い、外部からの不正アクセスやデータ漏えいのリスクが高まり、これに対するセキュリティの構築は不可欠です。DX化の推進にあたっては、データセキュリティの強化を課題と捉え、最新の情報セキュリティ技術を導入し対策を講じる必要があります。
DX化は企業全体で改革を実現させる取り組みであり、それ自体がゴールではありません。DX化の実現にむけて推進するための手順は、以下のとおりです。
本章ではDX化を成功させる上で、意識しておくべきこともあわせて解説します。
DX化を成功に導くには、目的を明確にすることが不可欠です。適切な戦略を策定することで、具体的な成果に繋げられます。一方で目的が明確でないと、方向性が失われリソースの浪費やDXの効果が薄れる恐れがあります。
そのため、具体的な目的を以下のように設定することが重要です。
目的の明確化によりDXの取り組みによる効果が見えることで、社内外で関わる人のモチベーションを高めて成功へつなげます。
プロジェクトの規模や範囲を決定する上で、DX化を進展させるための予算の確保が必要になります。資金が不足していると必要な技術や人材を確保できず、プロジェクトが中途半端に終わるリスクがある点に注意が必要です。
技術導入の予算の他にも、人材獲得・トレーニングプログラムなどに必要な費用を予算計画に組み入れておきます。予算の確保はDX化プロジェクトの実行可能性を高め、目標達成にむけた重要な業務です。
DX化を進めるには、組織横断的なDX推進組織を設置して人材やノウハウを集約することと、部署を横断し社内全体で協力体制を整えることが必要です。単純なシステムの入れ替えや部署内の業務フローの改善にとどまらず、従業員に対して新しい技術を習得する意欲やプロセスを理解する能力が求められます。
デジタル技術のトレーニングプログラムを実施し、従業員が新しいツールや方法論を学び、DXに適応するための取り組みを行いましょう。人材の育成はDX化の基盤を強化し、企業の変革を実現するために必要です。
DX化ではデータの活用が中心的な役割を果たします。ビジネスの意思決定においてデータに基づいた定量的な判断が重要です。社内の様々なシステムにあるデータを適切に管理し、閲覧出来る状態にしておくことで、効果的な戦略を策定するための基盤となります。
ビッグデータ分析ツールの導入やデータサイエンティストの採用により、企業は市場動向や顧客行動を深く理解できます。DXによって様々なデバイスやセンサーから多様なデータが生成され、ビジネスや社会の課題解決に役立てられますが、同時に管理や分析にも高度な技術や知識が必要です。
OODAループの原則をDX化に適用することで、意思決定が素早く行えます。OODAループは、以下の4つのプロセスを繰り返すことで業務改善に役立つ考え方です。
DXの実現までには地道に試行錯誤を繰り返しながら、自社に最適な道を辿っていきます。現場レベルで素早く意思決定を行えるので、次々に変化するニーズへの対応が可能です。素早い意思決定を短期間で複数回繰り返し、自社にとって最適なDX化の実現につなげましょう。
DX化はデジタル技術の導入により業務プロセスを効率化し、コスト削減と生産性向上を実現します。自動化・データ活用・クラウドコンピューティングなどの技術により、業務の速度と精度の向上が可能です。
まずは自社におけるDX推進の取り組みを客観的に評価し、具体的にどの領域の何が進んでいないのか把握することにより、現在の状況が分かります。「Nにおまかせ!」の「デジタル化スタート診断」では簡単に、デジタル化に関する現状と次のアクションがわかるだけでなく、お役立ち資料の入手や無料相談も承ります。
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DX化は単なる技術の導入ではなく、企業の根本的な変革をもたらします。時間や労力がかかりますが、今後長きにわたって企業の競争力を高め組織を発展させていく上で欠かせない取り組みです。
DXを実現させることで市場での優位性を得た企業が次々に現れるでしょう。一方で、何もできないままではデジタル競争に負けてしまい、売上シェアを奪われるリスクを認識しておくことが重要です。変化の激しい時代を乗り切るためにも、DXを実現した自社の将来像を描いてみてはいかがでしょうか。
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監修
税理士法人V-Spiritsグループ代表 税理士・社労士・行政書士・FP
中野 裕哲
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。 税理士法人V-Spiritsグループ代表。年間約1000件の起業相談を無料で受託し、起業家や経営者をまるごと支援。経済産業省後援 起業経営支援サイト「DREAM GATE」で12年連続相談数日本一。 著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)など20冊、累計25万部超
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