【飲食・美容・不動産・建設業向け】個人事業主が経費にできる・できないもの、注意点、必要な書類などを徹底解説

公開日:2025.07.10

【飲食・美容・不動産・建設業向け】個人事業主が経費にできる・できないもの、注意点、必要な書類などを徹底解説

この記事で
わかること

  • 個人事業主が経費にできるもの・できないもの一覧
  • 4業種(飲食・美容・不動産・建設)別の経費例と注意点
  • 経費計上に必要な書類と不正計上のペナルティ
個人事業主として事業を営むうえで、経費計上を適切に行うことは重要です。必要経費を正しく把握することで、税負担の管理と確定申告をスムーズに進められます。

本記事では、個人事業主が経費にできる・できないものに加え、飲食業・美容業・不動産業・建設業別の具体例や、プライベートと事業の経費を区分する家事按分、必要な書類まで、確定申告に役立つ情報をわかりやすく解説します。

※本記事で紹介している情報は、2025年2月時点のものです。
本記事のおすすめ対象者
  • 飲食業:個人事業主として飲食店の開業を予定している/すでに開業している
  • 美容業:個人事業主として美容師やネイリストなどの活動を予定している/すでに活動している
  • 不動産業:個人事業主としてアパート経営や不動産仲介業などの開業を予定している/すでに開業している
  • 建設業:個人事業主の一人親方として独立を考えている/すでに活動している

目次

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【4業種共通】個人事業主の必要経費とは

収入を得るためにかかる費用のことを、必要経費といいます。

たとえば、カフェにおけるコーヒー豆や食材、美容室で使うシャンプーなど、事業を運営するうえで欠かせないものへの支払いは、確定申告で必要経費として計上が可能です。また、収入を得るために直接かかる費用だけでなく、事業を運営するために必要な事務所の家賃、光熱費、通信費なども必要経費として計上できることもあります。

ただし、業務の遂行と直接関係のない私的な使途の費用は経費として認められないという点に注意が必要です。

経費に上限は決められていない

個人事業主の経費に上限は決められておらず、業務遂行に必要な費用はすべて経費計上できます。

ただし、経費の総額が収入の規模に対して大きすぎるなど、適正な水準から著しく外れている場合などには、税務調査の対象となる可能性もあるため注意しましょう。

経費の適正な水準の目安として、たとえば建設業では収入の70%、飲食店業では60%、美容業では50%といった数字が挙げられます。

経費計上には節税メリットがある

経費計上をすることで、節税メリットがあるといえます。

たとえば、所得税は個人事業主が事業で得た収入から、必要経費や所得控除(基礎控除や医療費控除、配偶者控除など)を差し引いた「課税所得」に、税率をかけることで求められます。

このとき、経費計上した金額が大きいと課税所得が少なくなるため、納める所得税額も少なくなって節税につながる点がメリットです。

ただし、経費として認められにくいものも計上して課税所得を抑えようとすると、事業の実態を正しく申告していないだけでなく、手元に残る利益も減少してしまいます。また、不適切な経費計上は税務調査の対象となり、ペナルティが課される可能性もあるでしょう。

そこで、個人事業主の経費として認められる支出を正しく理解し、適切に申告することが大切だといえます。

【4業種共通】個人事業主が経費にできるもの一覧

飲食業・美容業・不動産業・建設業のいずれかで働く個人事業主が、確定申告で必要経費として計上できる勘定科目を一覧にして紹介します。

勘定科目とは、取引内容を分類するために使われる項目のことです。ここでは、個人事業主が経費の勘定科目として一般的に使用する項目をまとめています。

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勘定科目 概要
租税公課
  • 国や地方自治体に納める税金や、商工会など公共団体へ納める会費など
  • 個人事業税、消費税、印紙税、固定資産税、自動車税、不動産取得税などの経費計上が可能
  • ただし、住民税や税金の延滞税、交通反則金などの経費計上は不可
水道光熱費
  • 事業所や店舗の電気代、ガス代、灯油代、水道料金などの経費計上が可能
旅費交通費
  • 事業を営むうえで使用した電車やバスの料金、タクシー代、宿泊代などの経費計上が可能
通信費
  • 事業で必要な固定電話や携帯電話の料金、インターネット使用料、郵便代などの経費計上が可能
接待交際費
  • 顧客や仕入先など会食をしたりお土産・中元・歳暮を渡したりするために支払った費用などの経費計上が可能
広告宣伝費
  • 個人事業主として提供する商品・サービスなどを宣伝・販売するためにかかる費用
  • Web広告費用、チラシやポスターの印刷費用、新聞広告への掲載費用・名刺やノベルティ制作費・ショーウィンドウ陳列装飾費などの経費計上が可能
損害保険料
  • 事業で使う自動車の保険料、事務所の火災・地震保険料などの経費計上が可能
修繕費
  • 事業で使用している資産を修繕するための費用
  • パソコンや建物、備品などのメンテナンスや原状回復に支払う場合、修繕費として経費計上が可能
  • ただし、修理作業で性能が以前より高まる場合、修繕費に該当せず、資産として減価償却で必要経費として計上
減価償却費
  • 一定の期間を通じて、固定資産を均等に処理する費用
  • 店舗や事務所、自動車、工具など、時間の経過や使用によって価値が減少する固定資産が対象
給料賃金
  • 従業員を雇っている場合に発生する、従業員への給与、賞与、退職金などの報酬は経費計上が可能
福利厚生費
  • 従業員を雇っている場合に発生する、労災保険や健康保険、従業員の健康診断や忘年会などの慰安にかかる費用
外注工賃
  • 外部の個人事業主や企業などに依頼した、店舗のホームページや事業で使う名刺などの経費計上が可能
  • 建設業における外注費もこの項目で経費計上が可能
利子割引料
  • 事業用の借入金の支払利息や、分割払いの手数料などは経費計上が可能
地代家賃
  • 店舗や事務所、駐車場にかかる家賃、使用料などは経費計上が可能
荷造運賃
  • 荷造りのための荷造費や、商品を発送するための運賃
  • 段ボール箱、包装紙、ガムテープなどの経費計上が可能
貸倒金
  • 回収できない売掛金などの経費計上が可能
消耗品費
  • 事業で使用する、10万円未満のパソコンやデスク、文房具、包装紙、車両用のガソリンなどの経費計上が可能
雑費
  • 上記の勘定科目に該当しない、事業に関連する費用
  • 引っ越し代、ゴミ処理代などの経費計上が可能

【4業種共通】個人事業主が経費にできない例

【4業種共通】個人事業主が経費にできない例

続いて、飲食業・美容業・不動産業・建設業のいずれかで働く個人事業主が、確定申告で必要経費として計上できない例を紹介します。

事業と関連性のない支出

個人事業主の事業遂行と関連性のない支出については、経費計上ができません。

たとえば、私的な用途で購入した書籍や衣類、パソコン、家族・友人との交際費やプレゼント、生活費などは経費計上が不可能です。

私的な費用を経費として計上した場合、税務トラブルにつながるリスクがある点をあらかじめ留意しましょう。

住民税や税金の延滞税など

住民税は「事業主」としてではなく「個人」として納める税金であるため、経費計上ができません。

なお、勘定科目には「租税公課」という科目があり、個人事業税や消費税など事業遂行に対してかかる税は、経費として計上できます。

ただし、税金の申告遅延によって延滞税が発生した場合、それはペナルティの意味合いを持つ税であるため、必要経費としては認められません。

個人事業主自身への福利厚生費

個人事業主自身への福利厚生費は、経費計上ができません。

福利厚生とは、従業員のために設けられる制度であるため、従業員を雇っていない個人事業主は「福利厚生費」を勘定科目として利用できない点に注意しましょう。

たとえば、従業員の健康診断や人間ドックの費用は経費にできます。しかし、個人事業主の健康診断や人間ドックの費用は経費として計上は認められません。

【4業種別】個人事業主が経費にできるもの一覧

飲食業・美容業・不動産業・建設業のいずれかで働く個人事業主が、確定申告で必要経費として計上できるものについて、それぞれ一覧で紹介します。

飲食業

まずは、飲食業で経費計上できる可能性のある勘定科目の一覧表を見てみましょう。

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勘定科目 概要
仕入
  • 提供する料理の原材料
  • 仕込み用の食材
  • レシピ開発用の食材
損害保険料
  • カフェやレストランなど店舗の火災保険料や地震保険料
研修費
  • 従業員に新メニューをふるまう試食会のために購入した食材
地代家賃
  • 飲食店や来客用駐車場の地代・家賃
荷造運賃
  • テイクアウトメニューの包装材料費
消耗品費
  • ラップ、アルミホイルなどのキッチン用品
  • 洗剤、スポンジなどの清掃用品
  • 伝票類やコピー用紙

食材について、料理提供やレシピ開発など事業に関係する場合には、かかった費用を経費計上できます。

しかし、たとえば事業主が休憩中に自分のランチとして料理を作ったケースでは、家事消費として売上に含める必要があるなど注意が必要です。

美容業

続いて、美容業について個人事業主の美容師を例に、経費計上できる項目を見てみましょう。

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勘定科目 概要
旅費交通費
  • スキルアップを目的としたセミナーに参加するための交通費や宿泊費
広告宣伝費
  • 集客のためのホームページ作成費用、有料ポータルサイトへの登録費用、チラシの印刷費用など
研修費
  • スキルアップのためのセミナー代
地代家賃
  • 美容室や来客用駐車場の地代・家賃
消耗品費
  • 仕事で使用するハサミ、シャンプー、カラー剤、タオル、消毒液など
新聞図書費
  • お客さまのために購読している雑誌や、電子書籍の読み放題サービスなど
  • スタイリングの勉強のために購入した書籍など

なお、仕事中に着用する洋服を経費計上できるかについては、税理士によって判断が異なり、認められないケースも多く見られます。

しかし、店舗のロゴ入りのユニフォームなどは、経費計上できる可能性もあります。

不動産業

不動産業では、アパート経営しているケースを想定して、経費として形状可能な項目を紹介します。

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勘定科目 概要
租税公課
  • 固定資産税、不動産取得税、印紙税
接待交際費
  • アパートのオーナー同士で開催する情報交換会の参加費用
広告宣伝費
  • アパートへの入居者募集の広告にかかる費用
損害保険料
  • 建物の火災保険・地震保険
減価償却費
  • 建物購入にかかった金額を耐用年数で均等割にして計上する費用
利子割引料
  • アパートのローン金利
地代家賃
  • 管理事務所の賃料
消耗品費
  • 管理業務で使う文房具や帳票、プリンター用紙やインク代

注意すべき点として、アパート経営において、土地購入費用は経費計上ができません。理由は、建物と違って土地は、年数が経過しても価値が減らないと考えられているためです。建物は経過年数によって劣化していくものの、土地は地価に変動がなければ、年数が経っても購入時と価格が変わらないと考えられます。

建設業

個人事業主の一人親方として建設業に携わっている場合、一般的に、以下の勘定科目が経費で認められるでしょう。

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勘定科目 概要
租税公課
  • 個人事業税、固定資産税、自動車税、印紙税、組合費など
旅費交通費
  • 現場や事務所などへ移動する際に使う電車・バス・タクシー代、高速料金、宿泊費など
接待交際費
  • 取引先や仕入先との接待飲食代
  • お中元、お歳暮にかかる費用など
損害保険料
  • 現場への移動で使う自動車の保険料など
減価償却費
  • 自動車、工具、重機などの購入にかかった金額を耐用年数で均等割をして計上する費用
地代家賃
  • 事務所の家賃
  • 資材・重機置き場の借地料
消耗品費
  • 工具、事務用品、作業着など

飲食代については、他業種と同様で、事業遂行に直接関係のある費用のみが経費として認められます。具体的には、取引先や従業員との打ち合わせなどで飲食代を支払った場合、接待交際費となる可能性が高いと考えられます。

【4業種共通】個人事業主が知っておきたい「家事按分」とは

【4業種共通】個人事業主が知っておきたい「家事按分」とは

飲食業・美容業・不動産業・建設業に携わる個人事業主のなかには、自宅の一部スペースを事務所や店舗として使っている人もいるでしょう。または、プライベートと仕事用で同じ車を使っているケースもあるかもしれません。

そのような場合、プライベートと事業用を分けて経費計上する「家事按分(かじあんぶん)」を行いましょう。

たとえば、賃貸物件に住んでいて一部のスペースを事業で使用している場合、賃貸物件の面積においてどのくらいの割合を事業に使用しているかを計算します。自宅の面積のうち20%の広さを事業で使用しているときは、家賃の20%を「地代家賃」の勘定科目で経費計上が可能です。

家事按分ができるその他の経費は、以下のとおりです。

  • 地代家賃
  • 通信費
  • 水道光熱費
  • 車のガソリン代 など

なお、家事按分に決められたルールはありません。税務署から理由を尋ねられたとき、「全体の何%を事業用に使用している」など、根拠を合理的に説明できるよう用意しておくことが大切です。

【4業種共通】経費計上に必要な書類

一般的に、経費計上のためには、領収書やレシートが必要になります。

しかし、ローカル路線バスの切符購入などの場面では、領収書が発行されません。このような場合、出金伝票に日付と金額、品目を記入しておくことで、領収書の代わりになることがあります。

その他、領収書やレシートの代わりになる書類の例を見てみましょう。

  • クレジットカードの明細書
  • ATMの振込明細書
  • 請求書、納品書、支払通知書
  • 交通系ICカードの利用履歴 など

領収書やレシートはもちろん、これらの書類をなくしたり、Webやアプリで利用明細を確認した後に印刷を失念して計上を忘れたりしないように、日頃から小まめに整理して保存しておくことが大切です。

【4業種共通】経費の不正計上によるペナルティ「過少申告加算税」に注意

申告した金額が、納税義務のある税額よりも不足していた場合、「過少申告加算税」というペナルティが課される可能性があります。

節税メリットを得るために、私的な費用を経費計上してしまった場合などに、不足分の税金(過少申告加算税)が徴収されるだけでなく、延滞税も発生することとなります。税負担が重くなってしまうため、経費は正しく計上することが大切です。

なお、過少申告加算税は、税務署から指摘される前に、自ら修正申告を行うと課されません。申告内容の不備に気づいた場合には、ただちに修正申告を申し出るようにしましょう。

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まとめ

本記事では、個人事業主が計上できる経費について基礎知識から解説しました。

個人事業では「店舗兼住宅」で事業を営んでいる場合も想定されるため、事業用経費と、私的な出費の区別が難しいと考えている人もいるかもしれません。

重要なポイントは、「事業遂行のために必要な経費である」と合理的に説明できることです。個人事業主が判断基準を明確に持ち、日頃から領収書の仕分けなどをしっかりとしておくことが必要だといえるでしょう。

飲食業・美容業・不動産業・建設業の個人事業主においては、今回説明した「経費計上の仕方」に限らず、「税金はどうやって計算する?」「青色申告とは?」など、経営上のさまざまな疑問や不安があるのではないでしょうか。

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